行政法 地方自治法14

 

第二節 国と普通地方公共団体との間並びに普通地方公共団体相互間及び普通地方公共団体の機関相互間の紛争処理

 

第一款 国地方係争処理委員会

 

(設置及び権限)

 

第二百五十条の七  総務省に、国地方係争処理委員会(以下本節において「委員会」という。)を置く。

 

2  委員会は、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与のうち国の行政機関が行うもの(以下本節において「国の関与」という。)に関する審査の申出につき、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。

 

(組織)

 

第二百五十条の八  委員会は、委員五人をもつて組織する。

 

2  委員は、非常勤とする。ただし、そのうち二人以内は、常勤とすることができる。

 

(委員)

 

第二百五十条の九  委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任命する。

 

2  委員の任命については、そのうち三人以上が同一の政党その他の政治団体に属することとなつてはならない。

 

3  委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、総務大臣は、第一項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。

 

4  前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、総務大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。

 

5  委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

 

6  委員は、再任されることができる。

 

7  委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。

 

8  総務大臣は、委員が破産手続開始の決定を受け、又は禁錮以上の刑に処せられたときは、その委員を罷免しなければならない。

 

 

9  総務大臣は、両議院の同意を得て、次に掲げる委員を罷免するものとする。

 

一  委員のうち何人も属していなかつた同一の政党その他の政治団体に新たに三人以上の委員が属するに至つた場合においては、これらの者のうち二人を超える員数の委員

 

二  委員のうち一人が既に属している政党その他の政治団体に新たに二人以上の委員が属するに至つた場合においては、これらの者のうち一人を超える員数の委員

 

10  総務大臣は、委員のうち二人が既に属している政党その他の政治団体に新たに属するに至つた委員を直ちに罷免するものとする。

 

11  総務大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、その委員を罷免することができる。

 

12  委員は、第四項後段及び第八項から前項までの規定による場合を除くほか、その意に反して罷免されることがない。

 

13  委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

 

14  委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

 

15  常勤の委員は、在任中、総務大臣の許可がある場合を除き、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行つてはならない。

 

16  委員は、自己に直接利害関係のある事件については、その議事に参与することができない。

 

17  委員の給与は、別に法律で定める。

 

(委員長)

 

第二百五十条の十  委員会に、委員長を置き、委員の互選によりこれを定める。

 

2  委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。

 

3  委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

 

(会議)

 

第二百五十条の十一  委員会は、委員長が招集する。

 

2  委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。

 

3  委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。

 

4  委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、前条第三項に規定する委員は、委員長とみなす。

 

(政令への委任)

 

第二百五十条の十二  この法律に規定するもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。

 

第二款 国地方係争処理委員会による審査の手続

 

(国の関与に関する審査の申出)

 

 

第二百五十条の十三  普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるもの(次に掲げるものを除く。)に不服があるときは、委員会に対し、当該国の関与を行つた国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる。

 

一  第二百四十五条の八第二項及び第十三項の規定による指示

 

二  第二百四十五条の八第八項の規定に基づき都道府県知事に代わつて同条第二項の規定による指示に係る事項を行うこと。

 

三  第二百五十二条の十七の四第二項の規定により読み替えて適用する第二百四十五条の八第十二項において準用する同条第二項の規定による指示

 

四  第二百五十二条の十七の四第二項の規定により読み替えて適用する第二百四十五条の八第十二項において準用する同条第八項の規定に基づき市町村長に代わつて前号の指示に係る事項を行うこと。

 

2  普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の不作為(国の行政庁が、申請等が行われた場合において、相当の期間内に何らかの国の関与のうち許可その他の処分その他公権力の行使に当たるものをすべきにかかわらず、これをしないことをいう。以下本節において同じ。)に不服があるときは、委員会に対し、当該国の不作為に係る国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる。

 

3  普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する当該普通地方公共団体の法令に基づく協議の申出が国の行政庁に対して行われた場合において、当該協議に係る当該普通地方公共団体の義務を果たしたと認めるにもかかわらず当該協議が調わないときは、委員会に対し、当該協議の相手方である国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる。

 

4  第一項の規定による審査の申出は、当該国の関与があつた日から三十日以内にしなければならない。ただし、天災その他同項の規定による審査の申出をしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

 

5  前項ただし書の場合における第一項の規定による審査の申出は、その理由がやんだ日から一週間以内にしなければならない。

 

6  第一項の規定による審査の申出に係る文書を郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者による同条第二項 に規定する信書便(第二百六十条の二第十二項において「信書便」という。)で提出した場合における前二項の期間の計算については、送付に要した日数は、算入しない。

 

7  普通地方公共団体の長その他の執行機関は、第一項から第三項までの規定による審査の申出(以下本款において「国の関与に関する審査の申出」という。)をしようとするときは、相手方となるべき国の行政庁に対し、その旨をあらかじめ通知しなければならない。

 

(審査及び勧告)

 

第二百五十条の十四  委員会は、自治事務に関する国の関与について前条第一項の規定による審査の申出があつた場合においては、審査を行い、相手方である国の行政庁の行つた国の関与が違法でなく、かつ、普通地方公共団体の自主性及び自立性を尊重する観点から不当でないと認めるときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び当該国の行政庁に通知するとともに、これを公表し、当該国の行政庁の行つた国の関与が違法又は普通地方公共団体の自主性及び自立性を尊重する観点から不当であると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

 

2  委員会は、法定受託事務に関する国の関与について前条第一項の規定による審査の申出があつた場合においては、審査を行い、相手方である国の行政庁の行つた国の関与が違法でないと認めるときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び当該国の行政庁に通知するとともに、これを公表し、当該国の行政庁の行つた国の関与が違法であると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

 

3  委員会は、前条第二項の規定による審査の申出があつた場合においては、審査を行い、当該審査の申出に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び相手方である国の行政庁に通知するとともに、これを公表し、当該審査の申出に理由があると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

 

4  委員会は、前条第三項の規定による審査の申出があつたときは、当該審査の申出に係る協議について当該協議に係る普通地方公共団体がその義務を果たしているかどうかを審査し、理由を付してその結果を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び相手方である国の行政庁に通知するとともに、これを公表しなければならない。

 

5  前各項の規定による審査及び勧告は、審査の申出があつた日から九十日以内に行わなければならない。

 

(関係行政機関の参加)

 

第二百五十条の十五  委員会は、関係行政機関を審査の手続に参加させる必要があると認めるときは、国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関、相手方である国の行政庁若しくは当該関係行政機関の申立てにより又は職権で、当該関係行政機関を審査の手続に参加させることができる。

 

2  委員会は、前項の規定により関係行政機関を審査の手続に参加させるときは、あらかじめ、当該国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び相手方である国の行政庁並びに当該関係行政機関の意見を聴かなければならない。

 

(証拠調べ)

 

 

第二百五十条の十六  委員会は、審査を行うため必要があると認めるときは、国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関、相手方である国の行政庁若しくは前条第一項の規定により当該審査の手続に参加した関係行政機関(以下本条において「参加行政機関」という。)の申立てにより又は職権で、次に掲げる証拠調べをすることができる。

 

一  適当と認める者に、参考人としてその知つている事実を陳述させ、又は鑑定を求めること。

 

二  書類その他の物件の所持人に対し、その物件の提出を求め、又はその提出された物件を留め置くこと。

 

三  必要な場所につき検証をすること。

 

四  国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関、相手方である国の行政庁若しくは参加行政機関又はこれらの職員を審尋すること。

 

2  委員会は、審査を行うに当たつては、国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関、相手方である国の行政庁及び参加行政機関に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない。

 

(国の関与に関する審査の申出の取下げ)

 

第二百五十条の十七  国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、第二百五十条の十四第一項から第四項までの規定による審査の結果の通知若しくは勧告があるまで又は第二百五十条の十九第二項の規定により調停が成立するまでは、いつでも当該国の関与に関する審査の申出を取り下げることができる。

 

2  国の関与に関する審査の申出の取下げは、文書でしなければならない。

 

(国の行政庁の措置等)

 

第二百五十条の十八  第二百五十条の十四第一項から第三項までの規定による委員会の勧告があつたときは、当該勧告を受けた国の行政庁は、当該勧告に示された期間内に、当該勧告に即して必要な措置を講ずるとともに、その旨を委員会に通知しなければならない。この場合においては、委員会は、当該通知に係る事項を当該勧告に係る審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

 

2  委員会は、前項の勧告を受けた国の行政庁に対し、同項の規定により講じた措置についての説明を求めることができる。

 

(調停)

 

第二百五十条の十九  委員会は、国の関与に関する審査の申出があつた場合において、相当であると認めるときは、職権により、調停案を作成して、これを当該国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び相手方である国の行政庁に示し、その受諾を勧告するとともに、理由を付してその要旨を公表することができる。

 

2  前項の調停案に係る調停は、調停案を示された普通地方公共団体の長その他の執行機関及び国の行政庁から、これを受諾した旨を記載した文書が委員会に提出されたときに成立するものとする。この場合においては、委員会は、直ちにその旨及び調停の要旨を公表するとともに、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関及び国の行政庁にその旨を通知しなければならない。

 

(政令への委任)

 

第二百五十条の二十  この法律に規定するもののほか、委員会の審査及び勧告並びに調停に関し必要な事項は、政令で定める。

 

第三款 自治紛争処理委員

 

(自治紛争処理委員)

 

第二百五十一条  自治紛争処理委員は、この法律の定めるところにより、普通地方公共団体相互の間又は普通地方公共団体の機関相互の間の紛争の調停、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与のうち都道府県の機関が行うもの(以下この節において「都道府県の関与」という。)に関する審査、第二百五十二条の二第一項に規定する連携協約に係る紛争を処理するための方策の提示及び第百四十三条第三項(第百八十条の五第八項及び第百八十四条第二項において準用する場合を含む。)の審査請求又はこの法律の規定による審査の申立て若しくは審決の申請に係る審理を処理する。

 

2  自治紛争処理委員は、三人とし、事件ごとに、優れた識見を有する者のうちから、総務大臣又は都道府県知事がそれぞれ任命する。この場合においては、総務大臣又は都道府県知事は、あらかじめ当該事件に関係のある事務を担任する各大臣又は都道府県の委員会若しくは委員に協議するものとする。

 

3  自治紛争処理委員は、非常勤とする。

 

 

4  自治紛争処理委員は、次の各号のいずれかに該当するときは、その職を失う。

 

一  当事者が次条第二項の規定により調停の申請を取り下げたとき。

 

二  自治紛争処理委員が次条第六項の規定により当事者に調停を打ち切つた旨を通知したとき。

 

三  総務大臣又は都道府県知事が次条第七項又は第二百五十一条の三第十三項の規定により調停が成立した旨を当事者に通知したとき。

 

四  市町村長その他の市町村の執行機関が第二百五十一条の三第五項から第七項までにおいて準用する第二百五十条の十七の規定により自治紛争処理委員の審査に付することを求める旨の申出を取り下げたとき。

 

五  自治紛争処理委員が第二百五十一条の三第五項において準用する第二百五十条の十四第一項若しくは第二項若しくは第二百五十一条の三第六項において準用する第二百五十条の十四第三項の規定による審査の結果の通知若しくは勧告及び勧告の内容の通知又は第二百五十一条の三第七項において準用する第二百五十条の十四第四項の規定による審査の結果の通知をし、かつ、これらを公表したとき。

 

六  普通地方公共団体が第二百五十一条の三の二第二項の規定により同条第一項の処理方策の提示を求める旨の申請を取り下げたとき。

 

七  自治紛争処理委員が第二百五十一条の三の二第三項の規定により当事者である普通地方公共団体に同条第一項に規定する処理方策を提示するとともに、総務大臣又は都道府県知事にその旨及び当該処理方策を通知し、かつ、公表したとき。

 

八  第二百五十五条の五第一項の規定による審理に係る審査請求、審査の申立て又は審決の申請をした者が、当該審査請求、審査の申立て又は審決の申請を取り下げたとき。

 

九  第二百五十五条の五第一項の規定による審理を経て、総務大臣又は都道府県知事が審査請求に対する裁決をし、審査の申立てに対する裁決若しくは裁定をし、又は審決をしたとき。

 

5  総務大臣又は都道府県知事は、自治紛争処理委員が当該事件に直接利害関係を有することとなつたときは、当該自治紛争処理委員を罷免しなければならない。

 

6  第二百五十条の九第二項、第八項、第九項(第二号を除く。)及び第十項から第十四項までの規定は、自治紛争処理委員に準用する。この場合において、同条第二項中「三人以上」とあるのは「二人以上」と、同条第八項中「総務大臣」とあるのは「総務大臣又は都道府県知事」と、同条第九項中「総務大臣は、両議院の同意を得て」とあるのは「総務大臣又は都道府県知事は」と、「三人以上」とあるのは「二人以上」と、「二人」とあるのは「一人」と、同条第十項中「総務大臣」とあるのは「総務大臣又は都道府県知事」と、「二人」とあるのは「一人」と、同条第十一項中「総務大臣」とあるのは「総務大臣又は都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、その委員を」とあるのは「その自治紛争処理委員を」と、同条第十二項中「第四項後段及び第八項から前項まで」とあるのは「第八項、第九項(第二号を除く。)、第十項及び前項並びに第二百五十一条第五項」と読み替えるものとする。

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