憲法 前文/103条 前文

国内外の法解釈絡みの騒ぎが起こると、必ず引き合いに出される法律ですが、比較的少ない全103条ではあるものの、なかなか全部目を通した事があるか方は少ないのかなと思います。

敗戦直後にショックや反省の気持ち覚めやらぬ中作られたことにより、妥協無く非常に崇高な理念を謳った憲法となっています。

ただその素晴らしい理念ゆえに、時間が経つにつれて生臭い現実との間で理念との整合性を調整する必要が出てきてるんだろうなと思います。

行政書士試験では憲法の出題率は少ないですが、

憲法は最高の法規なので民法や行政法などの

「いかなる法律も憲法に反することはできず、いかなる法律でも憲法は改変できない」

とされていますので、憲法のポイントはしっかり押さえる必要があります。

1.憲法と法律の違い

2.憲法の学問上の分類

と、話を進めます。

1.憲法と法律の違い

まず、「憲法と法律の違いは何?」と聞かれて即答できる方は、法律マニアだと思います。

憲法も法律も、どちらも行為を縛るルールですが、その違いは

憲法は国家権力をしばるルールで、法律は国民をしばるルール

ということです。

憲法とは?と聞かれたら、

憲法は、国、つまり権力者が自分に都合よい法律を勝手に作って、国民に不利益を与えないために定められたルール

が模範解答です。

2.憲法の学問上の分類

憲法とは何かについて、憲法学という学問上分類すると、大きく事実的意味の憲法法的意味の憲法に分けることができます。

事実的意味の憲法とは国家の政治的統一体の構造や組織を指し、法的意味の憲法とは国家の基本法・根本法を指します。

なんか無駄に分類しているように思う分類で分かりにくいのですが、例えば日本では、憲法は法的意味の憲法(国家をしばる法典)を指します。で、事実的意味の憲法のことは国政や政治体制と言ってます。

そして、法的意味の憲法は、さらに形式的意味の憲法実質的意味の憲法に分かれます。これもドイツの通説を受けたもっとも一般的な分け方らしいですが、無駄に分類してる気がします。

形式的意味の憲法とは、表記によって憲法かそうでないかを区別するもので、つまり、その内容は問わず憲法という形式を与えられた成文法(憲法典)そのものを指します。これは、もう一つの分類の実質的意味の憲法に対応して名づけられた名称です。そして、第二次世界大戦後に独立した国の多くは、成文憲法を持っています。

一方、実質的意味の憲法とは、特定の内容を持った法を指し、明文化されているか否かは問いません。

さらに、実質的意味の憲法は

固有の意味の憲法と立憲的意味の憲法とに分かれます。

固有の意味の憲法とは、国家統治の基本となる法規範のことです。国家は、どのような社会で、どのような経済構造をとる場合であっても、必ず、政治権力とそれを行使する機関が存在しなければなりません。この場合に、国家機関や権力組織が相互に作用し合う関係を規律する規範が必要で、この規範を固有の意味の憲法と言います。ですから、国家があるということは、いつの時代でも、どこの国でも、固有の意味の憲法は存在すると言えるのです。

一方、立憲的意味の憲法とは、自由主義に基づいて定められた国家の基礎法のことです。権力を制限して、自由を中心とする国民の権利を保障する立憲主義をとり入れた憲法は、国民の自由の保障に奉仕すると言えます。これがまさに、憲法は国家権力をしばるルールと言われる所以で、立憲的意味の憲法が、憲法の最もすぐれた特長と言えるのです。

そして、憲法を違った観点から分類すると、硬性憲法軟性憲法――に分けることができます。
硬性憲法とは、改正を行う際には、憲法より下位の法律よりも厳格な手続きによらなければならない憲法のことです。一方、軟性憲法とは、通常の法律改正と同様の手続きで改正できる憲法のことです。

で、日本国憲法はどのような憲法かまとめると、(②-1)日本国憲法として明文化された形式的憲法であり、(②-2)実質的憲法でもあります。
さらに、一つひとつの条文について見ていくと(②-2-1)固有の意味の憲法でもあり、(②-2-2)立憲的意味の憲法でもある実質的憲法であることが、分かってくると思います。
もう一つの観点の分類でいえば、憲法改正の手続きは通常の法律改正より厳しい(1)硬性憲法です。

日本国憲法の3大特色、②日本国憲法の基本原理を勉強します。

Ⅰ.日本国憲法の三大特色
日本国憲法には、①自由の基礎法、②制限規範、③最高法規――という3つの大きな特色があります。
日本国憲法を読むと、人権を保障する規定が数多く出てきます。その規定の多くが「○○の自由」という名称であることから、日本国憲法は自由の基礎法だと言われているのです。
そして、憲法で自由が定められているということは、同時に、国家権力に対しては、国民の自由を妨げてはならないと宣言しているとも言えます。
このことから、憲法は、国家権力への制限規範であるとも言えるのです。
また、第5回でも少し触れましたが、憲法はわが国の最高法規です。
憲法は他の法律などのルールよりも上位に位置づけられ、憲法に違反するルールは無効とされ、そのことは憲法第98条に規定されています。
憲法に違反することを違憲と言い、裁判所の持っている権限のひとつである違憲立法審査権は、皆さんも耳にしたことがありますね。
ちなみに、違憲立法審査権とは、民事事件、刑事事件、行政事件を解決するために適用する法令や処分の合憲性を判断するものです。

Ⅱ.日本国憲法の基本原理
次に憲法の3つの基本原理をチェックしましょう。憲法前文に書かれています。

中学校の社会の授業で習ったと思いますが、憲法の基本原理は、憲法前文に宣言されている①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義――の3つです。
まず、日本国憲法に謳われている国民主権とは、国の政治のあり方を最終的に決めるのは国民であり、その権威も国民にあるという原理です。
具体的には、国民の代表である国会議員がつくった法律に従って、国民の代表が政治を行い、その過ちは国民が正せるということです。

次に、基本的人権とは人間が生まれながらにして当然持っている権利のことで、日本国憲法では、基本的人権を侵すことのできない永久の権利であると規定しています(第11条)。
では、生まれながらにして持っている当然の権利とは何でしょう? 日本国憲法で規定されている基本的人権は大きく分けて、①差別されない権利=平等権、②自由に生きる権利=自由権、③人間らしい最低限の生活を国に保障してもらう権利=社会権、④きちんと基本的人権が守られるように国にお願いする権利=請求権、⑤政治に参加する権利=参政権――の5つです。

また、わが国では第二次世界大戦に対する深い反省から、日本国憲法に平和主義の原理を採用し、戦争と戦力の放棄を宣言しています(第9条)。
日本国憲法の規定の中で、一般的に最も有名な規定で、最も関心のある規定とも言えます。しかし、行政書士試験の合否にはあまり関係ありません。
ここでは、第9条でのキーワード①戦争放棄、②戦力不保持、③交戦権の否認――を覚えておくことにしましょう。

憲法の概念が分かったところで、今回から憲法を①天皇、②人権、③統治機構――に分けて学んでいきます。

過去の行政書士試験での憲法の分野からの出題は、約1割程度…と、決して多いとは言えませんが、特に人権に関しては毎年必ず出題されますので、しっかりとステップを踏んで学習を進めていきましょう。

まず、各テーマの勉強のポイントを解説します。

Ⅰ.天皇
天皇に関する設問は、平成18年以後出題されていません。逆に考えると、そろそろ出題?とも考えられます。天皇の地位と国事行為については、しっかりと覚えてほしい項目です。

Ⅱ.人権
人権分野の設問は、オーソドックスな設問がほとんどです。オーソドックスな設問とは、次のようなパターンです。
「~に関する次の1~5の記述のうち、最高裁判所の判例によれば正しいものはどれか。」という形式で、5者択一などをする問題です。
このような問題に対応するのに必要なのは、判例の読解を心がけることです。
判例とは、裁判で決定された判決例です。ここからは少し余談になりますが、例えば、この講座で「最判平18.2.7」と書かれていれば、「平成18年2月7日の最高裁判所での判決」と考えてください。それでは、「最大判昭35.6.8」とか書かれていたらどう解しますか?
答えは、「昭和35年6月8日の最高裁判所大法廷での判決」と解すればいいのです。
大法廷とは、特に重要な事件について15名の最高裁判所裁判官全員で行われる法廷で、年平均3回ほどの開廷です。「これは、重要な事件で、重要な判決なんだ!」と思えばいいのです。
さて、実際に判決の内容を読むと何だか難しい言葉が並んでいて、分かりにくいと感じると思います。

行政書士試験合格のためには、判例の事案や争点、判旨の概要などを覚えなくてはなりません。でも、よく分からない難しい言葉を丸暗記するのは、時間もかかりますし、応用力も身につかないので、効率的な勉強とは言えません。
そこで大切なのは、判例を読むときは、書かれている事件をイメージすることです。イメージするといっても、刑事事件ではあるまいし、よく分かりませんね。

具体的に言うと、事案を読んで、
①憲法上の規定に対して何が問題になっているのか。
②法律や行政処分、裁判所の命令などによる制約は妥当か。
と考えてみるのです。
①は、言い換えれば、誰のどんな人権が侵されているのかと考えてみることで、②は、法律や国家権力による処分・命令が行き過ぎた制約を与えていないか、また、制約の必要があるのかを考えてみることです。
そして、
③自分の判断が、判例にかかれている判旨と同じだったか。
を確認します。つまり、事案が「合憲」だったか「違憲」だったかを覚える必要があるのです。
この作業を通して、行政書士試験で未知の判例に遭遇した時に、今まで読み解いた判例から正答を導き出すことが可能になるというわけです。
この講座でも、重要な判例をいくつか取り入れて、判例を読むことに慣れていけるようにしたいと思っています。

Ⅲ.統治機構
行政書士試験での統治機構分野では、何と言っても国会・内閣・裁判所が最重要ポイントです。また、条文知識を直接問う問題が多いので、条文の暗記が不可欠です。
もちろん、一字一句丸暗記しろと言っているわけではなく、キーポイントの語句をしっかり把握することが大切なのです。

また、条文を読み解くときに、文字そのままを理解するとともに、その裏も読めるようになると、得点が伸びると思います。
例えば、憲法第55条を見てみましょう。
「両議院は、各々その議員の資格に関する争訴を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。」と規定されています。
これは、文字通り読むだけなら、「議員仲間に不祥事などがあったら、議員資格の有無について自分たちで決めていい」ということです。しかし、一歩進んで読み解くと、「本来裁判所だけにある司法権の行使を立法機関である議院に負わせている」ということになります。
それを前提に、「我が国の司法権はすべて裁判所のみに有する」は、○か×かと問われたら、どう答えますか?
この問では、「すべて」「のみに」が重要ポイントです。
読み解くポイントのもう一つに、「なぜ?」と言う観点も必要と言えます。例の第55条では、「議院の自律性を尊重したから、資格争訴裁判権を議院に持たせた」と言えるのですが、この講座では、こういった条文のもう一方の見方もポイントとして押さえられるよう、学習を進めたいと思っています。

次回から、いよいよ始まる条文の解釈についての学習の取り組み方が分かりましたか?
回を重ねながら自然と身に付けられることを、目標に進めていこうと思っていますが、もし、何を学ぼうとしているのかが分からなくなったら、ぜひ、この回に立ち戻って、読み直してください。

前文は以下のようになってます。

【前文】
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

ざっと読んでも頭に入りませんが、要するに非常に良い事が書いてあります。そしてその達成を国家の名誉にかけて誓っています。

でその良いこととは

誓ったことが出来ているかといえば出来ていないような気もしますが、ただ裁判所の判断は以下の各条文に記載が無い時はこの前文に立ち返って判断され判決されます。

学校で習ったはずなのに、忘れている方のほうが多いかと思いますが憲法の骨子の一つである「国民主権」が前文でも高らかに謳われています。

ざっと読んでも、正論すぎて特に揉めるような事はないような気もしますが、その筋では有名な判例として、例えば、連座制(最判平9.3.13)について争った事例があります。

ある県議会議員が県議会議員選挙に立候補して当選しました。

しかし選挙人に票の取りまとめを依頼して金品を渡したとして有罪判決を受けた選挙運動員が公職選挙法251条の3の「組織的選挙運動管理者等」(選挙運動の計画立案、選挙運動に従事する者の指揮・監督等を行う者)に当たると認定されたため、県議会議員選挙の当選を無効とされました。

連座制とは、公職選挙の候補者以外の者が 選挙犯罪を犯し、それについて有罪判決が確定すると、候補者本人の当選無効と立候補の禁止という効果をもたらす制度です。選挙違反の悪質化に伴い、連座制は拡大強化されてきました。

そこで、県議会議員は、組織的選挙運動管理者等が買収・利益誘導などの選挙犯罪を犯すと、当選の無効・立候補の禁止等候補者も責任を負う連座制を規定する公職選挙法251条の3は、憲法前文、1条、15条、21条及び 31条に違反すると主張しました。

理屈としては国民の厳粛な信託による(国民が選択した)議員が、他人の罪状で失職してしまうような公職選挙法は、前文で「これ(今回の場合は『国民の選択』)に反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」の文言により国民の選択である県議会議員選挙の結果の方が、公職選挙法より優先されるのではないかとの考えです。

これは個人的な意見ですが、また証拠もありませんが、そもそも議員が自分の配下の運動員が買収行為をしていたことを知らなかった筈はないと思いますし、もしかしたら暗に指示すらしたのではと思います。

そのため、この訴えそのものには個人的にはなんとなく魅力を感じませんが、この議員は「自分がその犯罪行為に関与したかどうか。」ではなく、「公職選挙法251条の3は、憲法前文、1条、15 条、21条及び31条に違反するか」という争点で裁判に持っていきました。

そのため争点および、その判決に関して、本判決は、平成6年に導入された組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪にかかる連座制の合憲性を初めて認めたという点で重要な判例となっています。

公職選挙法251条の3は、憲法前文、1条、15 条、21条及び31条に違反するかについての判例の見解は以下のとおりです。

「公職選挙法251条の3は、民主主義の根幹をなす公職選挙の公明、適正を厳粛に保持するという極めて重要な法益を実現するために定められたものであって、その立法目的は合理的である。また、右規定は、組織的選挙運動管理者等が買収等の悪質な選挙犯罪を犯し禁錮以上の刑に処せられたときに限って連座の効果を生じさせることとして、連座制の適用範囲に相応の限定を加え、立候補禁止の期間及びその対象となる選挙の範囲も前記のとおり限定し、さらに、選挙犯罪がいわゆるおとり行為又は寝返り行為によってされた場合には免責することとしているほか、当該候補者等が選挙犯罪行為の発生を防止するため相当の注意を尽くすことにより連座を免れることのできる途も新たに設けている。そうすると、このような規制は、前記立法目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものというべきであり、憲法前文、1条、15条、 21条及び31条に違反するものではない。」

まあそう言われると、そうかもと思うのですが、連座制の立法目的が「公職選挙の公正、適正の保持」にあり、それが合理性を有することにはほぼ異論はありません。

でも確かに、「公職選挙の公正、適正の保持」を達成するために、簡単な口実(選挙において必ずしも重要な地位にあるとはいえない組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪に連座させること)で選挙結果を覆すことが可能になってしまう事にはやはり変な感じもあります。

まず、日本国憲法(にほんこくけんぽう)ですが昭和21年11月3日憲法に制定されました。

今まで学んできた「国民の権利及び義務」は憲法第3章に規定されていますが、最後に外国人、法人――について特別に取り上げます。なぜ、特別に取り上げるのか疑問に思われるかもしれませんね。
なぜなら、今回の外国人については、第3章のタイトルに「国民の…」と記載されているし、第11条のも「国民は…」から始まるので、外国人の人権は保障されなくていいか、という疑問が沸いてくるからです。しかし、人権は国家や憲法で与えられているものではなく、人間が人間として生まれてきたら当然にあるものとも勉強しましたね?
日本人と日本に住んでいる外国人に、人種による差別はあるのでしょうか?
周りを見てみましょう。選挙の投票所で外国の方を見かけますか? 出入国の際の審査は日本国民と同じなのでしょうか? 国民年金を外国人で受給している人はいるのでしょうか? そんな疑問がたくさん出てきます。
そして、それを裏付けるように、在日外国人が関係する重要な事件もたくさん存在し、その判例は、行政書士試験でもよく取り上げられます。そこで、外国人について、まとめて勉強しちゃおう!というわけです。
日本憲法は自然権思想の立場に立っているとともに、国際協調主義をとっています。これは、憲法前文と98条に明示されています。そこで、基本的には、外国人にも人権は保障されていると考えられています。正確に言うと、憲法によって保障されている人権は、その性質を検討して、日本国民にだけ保障されていると考えるべき人権を除いて外国人にも保障されていると言えます。これを性質説と言いますが、分かりやすく言い換えると、人権によってはその性質上、外国人には保障されないものや、保障されるけれど日本国民と同等には保障されない人権もある、と言うことです。
そこで、裁判で外国人にも保障されるかが問題となった人権について、いくつか見ていきましょう。

Ⅰ.入国の自由
通説では、外国人の入国の規制については国際慣習法上、国家の裁量に委ねられているので、外国人の入国の自由は憲法上保障されていません。それでは、それに関する「マクリーン事件」を見てみましょう。この事件では、①そもそも外国人に人権保障が及ぶのか、②及ぶとしたら、政治活動を行う自由や在留の権利は保障されているのか、③法務大臣のした更新拒否の処分は憲法に違反しないか――の3つの争点があります。

判例では、性質説を採用し、憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると理解されるものを除き、日本に住む外国人にも等しく及び、政治活動の自由についても、日本の政治的意思決定や実施に影響を及ぼさないと思われるものについては保障が及ぶことを認めています。

Ⅱ.政治活動の自由
政治活動の自由は、表現の自由(21条1項)の一環をなすものでしたね。通説は、性質説を前提に、外国人にも政治活動の自由は保障されるけれども、それは我が国の政治問題に関する不当な干渉に渡らない限度にとどまる――ものとしています。

Ⅲ.参政権
通説では、少なくとも国会議員選挙などの国政レベルでの参政権については、国民主権の原理に従い、日本国民にのみ保障されることとなっています。これは、公職選挙法に規定されています。
一方、地方公共団体レベルでの参政権については、外国人に参政権を保障することは可能である、という許容説を判例では示しています。これを示す事件が「定住外国人の地方選挙権」の判例です。この事件は、外国人には選挙権が保障されているかが争点でした。

Ⅳ.公務員になる権利
公務員になることのできる権利を公務就任権と呼びます。外国人に公務就任権が保障されるかについては、政府見解としては、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使または国家の意思形成への参画に携わる公務員となるためには、日本国籍を必要とする――としています。
判例によれば、下記の定住外国人の地方選挙権をめぐる事案では、当然の法理ではなく、国民主権の原理を根拠に、憲法は外国人に地方公共団体の管理職に就任する資格があるとはしていない(回りくどい言い方ですね)――としています。その上で、具体的な管理職の任用の在り方については各地方公共団体の裁量に委ねられていて、日本国民に限って管理職に昇任することができるという措置をとることは、合理的な理由で日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別しているので、憲法14条1項にも、労働基準法にも違反していないと言っています。

なお、この判決には、特別永住者*については、管理職への機関を与えないことは違憲であるという反対意見が付いていますので、これも覚えておいてください。

*【特別永住者】昭和20(1945)年の敗戦以前から日本に住み、昭和27(1952)年サンフランシスコ講和条約により日本国籍を離脱した後も日本に在留している台湾、朝鮮半島出身者とその子孫のことです。

Ⅴ.社会権
社会権の保障については、かつては、外国人は国籍国から保障されるのが当然という考え方もありました。
現在では、限られた財政状況の下では、外国人より日本国民を優先した社会保障制度がとられても許されるけれども、少なくとも生存に直結するような最低限のレベルにおいて、外国人の社会権を保障することは憲法の理念に合っていると理解されています。
判例は、社会保障政策上、外国人をどのように取り扱うかについては、国の政治判断、具体的に言うと国会の立法判断――に委ねられるとしています。

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