5-10 ○問題演習 民法(総則) 105問 上級

1

Aが失踪宣告を受け,唯一の相続人である妻BがA所有の甲土地及び乙土地を相続した。Bは,相続の1年後に,甲土地を代金1,000万円でCに売り渡して代金を受領し,5年後には,乙土地を代金2,000万円でDに売り渡して代金を受領した。また,Bは失踪宣告後3年目にEと結婚した。失踪宣告後,12年が経過し,失踪宣告が取り消された。この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。Aが現に生存しているとの理由で失踪宣告が取り消された場合,前記各売買契約の当時,B及びCはAの生存を知っていたが,Dがその事実を知らなかったときは,Cは甲土地をAに返還しなければならないが,Dは乙土地をAに返還する必要はない。 司法試験問題

×

この場合、判例ではDは善意でもBが悪意なので、民32条に基づく返還義務が生じます。(判例)失踪宣告後相続人となった者が相続財産を処分した場合、その契約が宣告取消しにかかわらず効力を有するには、契約当事者双方が善意であったことを要する。(大判昭13.2.7)
---善意とは、失踪者の生存、または宣告時ではないときに死亡したことを知らないことをいう。===(失踪の宣告の取消し)第三十二条  失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。2  失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

 

 

2

 

次の記述について、適切か否か答えよ。Bが善意・無過失・平穏・公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合,,BがCの登記時からさらに20年,Cから権利主張をされることなく甲土地の占有を続け,その後に取得時効を援用したときは,判例によると,Bは登記がなくてもCに対し,甲土地の時効取得を対抗できる。 司法試験問題

 

 

最判(一小)S36.7.20 民集第15巻7号1903頁http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121247868502.pdfより抜粋。—時効による権利の取得の有無を考察するにあたつては、単に当事者間のみならず、第三者に対する関係も同時に考慮しなければならぬのであつて、この関係においては、結局当該不動産についていかなる時期に何人によつて登記がなされたかが問題となるのである。されば、時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないのに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては、その第三者に対しては、登記を経由しなくとも時効取得をもつてこれに対抗しうることとなると解すべきことは、当裁判所の判例とするところで…ある。—元の判例は、A所有の入会地の一部(甲土地)をB神社が神域として10年善意占有、時効取得した後で、Aから当該山林の寄付を受けたCが甲土地の登記を得、その後更にB神社が10年善意占有をした、という事例でした。設問肢ではBはCの登記取得後20年甲土地を占有した後の話になっていますが、これはC登記時のBの占有形態が善意でも悪意でも成り立つようにという作意と思われますので、上記判例と同じ結論としても問題ないと考えます。自説の根拠は、上記判例です。新たに関係性が発生していると考えれば簡単。

 

3

 

甲土地の所有権を主張するAに対し,pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが,訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合,時効の援用の意思表示のほかに,民法の規定及び判例を考慮してBが以下の事実を主張立証しなければならない場合には○を、そうではない場合には×を選べ。p時点におけるBの占有が平穏かつ公然のものであったこと。 司法試験問題

×

162&186で都合、両時点での占有を証明しさえすれば、平穏公然と所有の意思は推定される、ということでいいですよ。そうすれば、取得時効は成立する。***162条1項 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。~ 186条  占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。2  前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。(所有権の取得時効)162条&(占有の態様等に関する推定)186条
Bではなく、逆に、甲土地の所有権を主張するAが取得時効を覆すためには、186条1項における推定、つまり「所有の意思を持って」と、設問の場合の「平穏かつ公然」ではなかったという事実を主張立証しなければなりません。
※設問では、「20年の時効による所有権の取得を主張」とあるので、Aによる186条の「善意」の立証は不要であり不可です。民法162条1・2項、186条1・2項 民法Ⅰ 総則・物権総論 内田貴 著 参考 取得時効は、186条1項により所有の意思・善意・平穏・公然は推定されるので、設問の場合には162条1項の20年間の占有の事実を主張すればよいと思います。だから、設問の「p時点におけるBの占有が平穏かつ公然のものであったこと」を主張立証する必要はないと思います。

 

4

 

成年後見制度について、適切か否か答えよ。被保佐人が,貸金返還請求の訴えを提起するには保佐人の同意を要するが,被保佐人を被告として提起された貸金返還請求訴訟に応訴するには保佐人の同意は要しない。 司法試験問題

被保佐人が訴えの提起をするためには、保佐人の同意が必要。これに対し、被保佐人が相手方の提起した訴えについて訴訟行為をするためには保佐人の同意を要しない。同意がなければ訴訟行為を受けれないとすると、相手方の上訴の成立に窮するからです。民事訴訟法第28、32各条 被保佐人が民法13条1項4号にあげた「訴訟行為」とは、民事訴訟原告となって訴訟をする一切の行為を意味し、相手方の訴訟に対する応訴は含まない。参考まで 民事訴訟法32条1項では、「被保佐人、被補助人又は後見人その他の法定代理人が相手方の提起した訴え又は上訴について訴訟行為をするには、保佐人若しくは補佐監督人、補助人もしくは補助監督人又は後見監督人の同意その他の授権を要しない」民法13条1項4号および民事訴訟法32条1項

 

5

双方代理又は利益相反行為について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者の後見をしている場合,後見人が被後見人全員を代理してする相続の放棄は,後見人自らが相続の放棄をした後にされたときは,後見人と被後見人との間において利益相反行為に当たらない。 司法試験問題 [改題]

共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者の後見をしている場合において、後見人が被後見人全員を代理してする相続の放棄は、後見人みずからが相続の放棄をしたのちにされたか、又はこれと同時にされたときは、民法八六〇条によつて準用される同法八二六条にいう利益相反行為にあたらない。 昭和53年2月24日 最高裁第二小法廷 判決

 

6

 

取得時効について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。占有者がその占有開始時に目的物について他人の物であることを知らず,かつ,そのことについて過失がなくても,その後,占有継続中に他人の物であることを知った場合には,悪意の占有者として時効期間が計算される。 司法試験問題 [改題]

×

十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。 (民法 162条2項)民法162条2項「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」つまり、占有開始時点で善意無過失であれば、後で悪意となっても善意取得が可能です。[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文です。善意の占有者が、占有の途中で悪意となっても、占有開始時に善意無過失であれば10年の取得時効は成立する(大判明44.4.7)

7

消滅時効について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。割賦払債務について,債務者が割賦金の支払を怠ったときは債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定がある場合には,債務者が割賦金の支払を怠った時から,残債務全額についての消滅時効が進行する。 司法試験問題 [改題]

×

最判昭42.6.23 残全債務弁済の約定がある時、約定弁済期ごとに順次消滅時効が進行し、債権者が特に残全債務の弁済を求める意思表示をしたときに限り全額について消滅時効が進行する。昭42.6.23 割賦金の場合でも、消滅時効は原則として各返済日から進行します。しかし、本問では期限の利益喪失約款(=債務者が割賦金の支払を怠ったときは債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定)があるので、割賦金の支払を怠ったことにより、残債務全額の消滅時効は債権者の請求があった日から進行します。最判昭42年6月23日

8
権利能力なき社団について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。権利能力なき社団はその代表者により社団の名で取引をすることができるが,その取引により社団が負担した債務については,構成員各自は取引の相手方に対して直接には個人的債務ないし責任を負わない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

 

最判(三小)S48.10.19 民集27巻9号1129頁より抜粋。
「権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わないと解するのが、相当である。」自説の根拠は、上記判例です。

 

9

時効について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。債務者兼抵当権設定者である原告が債務の不存在を理由として提起した抵当権設定登記の抹消登記手続請求訴訟において,債権者兼抵当権者である被告が請求棄却の判決を求め,被担保債権の存在を主張したとしても,その債権につき裁判上の請求に準ずる消滅時効中断の効力は生じない。 司法試験問題 [改題]

×

最判(一小)S44.11.27 民集第23巻11号2251頁 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120425211873.pdfより引用。—
上告人およびEが、原判決判示のころ本件売掛代金債権につき債務の承認をした旨の原判決の事実認定、判断は、その挙示する証拠に照らし、是認することができないものではない。しかして、その後二年以内に、上告人は、債務負担の事実がないことを主張して、本件根抵当権設定登記および同移転登記の各抹消登記手続を求める本訴を提起し、これに対し被上告人は第一審第一回口頭弁論期日における答弁書の陳述をもつて、請求棄却の判決を求めるとともに、確定債権五〇万円の取得およびこれに基づく右各登記の有効なことを主張したのであつて、これによつて被上告人の本件売掛代金債権についての権利行使がされたものと認められないことはない。
このような場合においては、被上告人の前示答弁書に基づく主張は、裁判上の請求に準じるものとして、本件売掛代金債権につき消滅時効中断の効力を生じるものと解するのが相当である。—設問肢は、上記判例と結論が正反対ですね。
10

A(東京在住)は,友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで,AはBに対し,4月1日,そのための手紙を出し,この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。この場合において,AB間の甲の売買契約の成否及びその時期に関する次の記述について,適切か否か答えよ。なお,日付は,本問において,すべて同じ年のものである。本件手紙は「甲を100万円でお譲りください。」というものであったが,Aは,手紙を投函した後,気が変わり,4月2日午後9時,「本件手紙が届くかと思いますが,事情により,甲をお譲り願う件はなかったことにしてください。」という内容の文書をファクシミリでBに送信し,当該ファクシミリ文書は同日時にB宅に届いた。その翌日である4月3日,本件手紙がBに届いた。しかし,Bは,4月5日,「100万円で甲をお譲りします。」という返事の手紙を出し,この手紙が4月7日にAに届いた場合,甲の売買契約が4月5日に成立する。 司法試験問題 [改題]

×

隔地者に対する意思表示は,到達した時から効力を生じますので、発信者であるAは意思表示が到達する前であれば、任意に前の意思表示を撤回することができます。本件手紙は申込ですが、手紙が到達する前にAはFAXでこれを撤回していますので、手紙による申込は無効となり、Bが承諾の意思表示をしても契約は成立しませんので×です。因みに隔地者間の契約は承諾の通知が発信された時に成立となります。民法第97条1項、民法第526条1項設問にある申し込みは、本来、原則道り承諾の期間の定めのない申し込みに当り524条の適用のもとにあります、しかし、その申し込みの意思表示が相手側に届く前に撤回の意思表示が相手方に了知できる方法でなされています。 一般にこのような場合、(隔地者間であっても電話等で意思の疎通が図れるような場合)には524条の適用は無いとされています。
FAXの場合一方的な通知ですが、手紙での申し込み前に到達しており、有効に撤回できる というか申し込みの意思表示自体が取り消された事になる。…一部説明略有一方、FAXが手紙の到達後であった場合には、申し込みの意思表示は有効で、524条の適用となります。

11

錯誤について、適切か否か答えよ。錯誤により無効な契約であっても,表意者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは,行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。 司法試験問題 [改題]

×

追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 (民法 116条)無効な行為は追認によっても効力は生じない。ただし、この設問のように表意者が無効を知っていながら追認した場合は『新たな行為』をしたものとみなされます。民法第119条 無効な行為の追認(無効な行為の追認)第百十九条  無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。無効な行為を追認(承認)しても、無効となる原因がある限り有効とはならない。例えば、公序良俗に反する行為(民90条)強行法規(強行規定)に反する行為(民732条重婚禁止など)しかしながら、通謀虚偽表示(民94条)を行った者の両者が、後でその無効な行為を追認すれば、追認の時点で新しい行為が行なわれたとして扱われる。この点で、無効な行為の追認は、効力がはじめに遡る ①無権限の代理行為の追認(民116条)②取り消すことのできる行為の追認(民122条)とは異なる。

 

12

 

未成年者について、適切か否か答えよ。未成年者は,養親となることができない。 司法試験問題

20歳未満=未成年者ではないとうことですね。初歩的な質問で恐れ入ります。。。擬制が適用された時点で「未成年」の称号が
剥奪されるわけですね。民法753条(婚姻による成年擬制)「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす」
民法上に限られるのですが、「成年」扱いされます。民法792条(養親となる者の年齢)「成年に達した者は養子をすることができる」
両条により、「未成年者は養親となることができる」のです。よって、正解は 〇 です。民法792条で「成年に達した者は、養子をすることができる。」とあり、これを反対解釈すると、「未成年者は,養親となることができない。」となる。そうすると、正解は○となる。
ちなみに、成年擬制は民法上成年となるため、ここにいう未成年者には該当しない。民法753・792条

 

13

取消しについて、適切か否か答えよ。民法上の詐欺に該当しない場合であっても,事業者が不動産の売買契約の締結について勧誘をするに際し,重要事項について事実と異なることを告げたことにより,消費者がその内容が事実であるとの誤認をして契約の申込みをしたときは,消費者は,その申込みを取り消すことができる。 司法試験問題 [改題]

取り消しできる根拠は消費者契約法4条1項の規定です。民法の規定を直接問う問題ではありませんが、消費者保護のため消費者契約法には、民法上の詐欺に当たらない場合であっても、消費者側に取消権を認める規定がある。という理解をしておけば良い問題です。契約は成立しておらず、ただの申し込みなので撤回できるのではないでしょうか。契約成立前であっても申込みを自由に撤回することはできないのです。日本の民法では、申込みに『拘束力』を認めています。申込者は自ら行った申込みという意思表示に拘束され原則として撤回できない、という考え方です。(具体的には521条、524条を参照ください)しかし、これではタチの悪い業者に泣かされる消費者が後を立ちません。そこで、詐欺や錯誤を主張するよりも簡単に申込みを取消し・撤回できるように、クーリングオフ制度や消費者契約法があるのです。

 

14

取消しについて、適切か否か答えよ。未成年の時における不動産の売買により代金債務を負担した者は,成年に達した後にその代金を支払った場合であっても,売買の当時未成年者であったことを理由としてその売買を取り消すことができる。 司法試験問題

×

この場合、成年に達した後の債務の履行は法定追認にあたるので、制限行為能力を理由に取消し出来ませんね。民法125-1

 

15

条件及び期限について、適切か否か答えよ。金銭債務の債務者が担保を提供する義務を負う場合において,担保を提供しないときは,債務者は,期限の利益を主張することができない。 司法試験問題  [改題]

(期限の利益の喪失)第137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。民法 期限の利益 期限が到来するまでは、当事者は債務の履行を請求されない、権利を失わないなどの権利を持つ。
民法は、期限の利益は債務者のために存在するものと推定している。(136条1項)法律学小辞典 第4版(有斐閣)

1

Aは,Bに対し,自己所有の甲土地を売ったが,この売買はBの詐欺によるものであった。この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。Aは,詐欺であることに気付いた後にBに対し所有権移転登記をしたが,その後にAB間の売買を取り消すとの意思表示をした。取消し前に詐欺の事実を知ってこの土地を買い受けたCは,Aからの甲土地の返還請求を拒むことはできない。 司法試験問題 [改題]

×

Cは悪意なので保護されないから× 詐欺による第三者との関係の場合、取消前ならば96条3項に基づき善意の第三者に対抗することはできません。逆に言えば、悪意の第三者であれば対抗できるわけで、詐欺である事実を知りながらBから土地を購入しているCはAに甲土地の所有権取得を主張できません。これが取消後になると、取消によってBからAに所有権が戻ると共にBからCにも移転してしまっているために、二重譲渡の関係となります。この場合は登記の先後によって所有権の優劣が決することになります。民法第96条(詐欺又は強迫)
第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。本設問のケースでは、Aは,詐欺であることに気付いた後にBに対し所有権移転登記、つまり、債務の履行をしていますので、125条1号により当然追認したものとみなされ、その時点で取消権は消滅してしまいます。(法定追認)第125条  前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。一  全部又は一部の履行~ 125条1号

 

 

2

Aは,Bの代理人と称するC(30歳)との間で,B所有の甲土地を買い受けるとの売買契約を締結したが,BはCが無権代理であったと主張して争っている。この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。Aは,Bに対し,相当の期間を定め,その期間内に無権代理人Cのした売買契約を追認するか否か確答すべき旨の催告をしたが,Bはその期間内に確答をしなかった。この場合,Aは,Bに対し,売買契約に基づき甲土地の所有権移転登記手続をするよう求めることができる。 司法試験問題

×

無権代理の相手方の催告権 相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。民法114条 無権代理行為の相手方の権利 無権代理行為により、契約が有効か無効かという不安定な状態に置かれた相手方に与えられる権利 ①催告権(114条)相手方は、追認するかどうかを本人に催告でき、本人が返答すれば返答どおりに、返答がなければ追認拒絶が擬制される。(設問の場合)②契約取消権(115条)相手方が不安定な状態を存続させるくらいならと、本人が追認するまでの間、契約を取り消せる。但し、契約当時、相手方が無権代理に対し悪意なら、契約取消権はない。民法の基礎1 佐久間毅(著)参考 関連問題 B所有の土地をAがBの代理人として,Cとの間で売買契約を締結した。民法の規定及び判例に照らして答えよ。 Aが無権代理人である場合,CはBに対して相当の期間を定めて,その期間内に追認するか否かを催告することができ,Bが期間内に確答をしない場合には,追認とみなされ本件売買契約は有効となる。

 

4

無効又は取消しについて、適切か否か答えよ。被保佐人がした行為で取り消すことができるものについて,保佐開始の原因が消滅していない状況において,被保佐人がこれを取り消した場合,当該行為は遡及的に無効となる。 司法試験問題 [改題]

 

保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。 (民法 13条4項)これは遡及効の問題ですかね。。民法121条 制限行為能力者がした行為で取消すことができるものについての取消権者:①制限行為能力者 ②制限行為能力者の代理人、承継人 ③同意をすることができる者(設問の場合は保佐人)したがって、制限行為能力者も取消権者なので、設問の記述は正しいといえます。つまり、制限行為能力者は同意権者(設問の場合は保佐人)の同意なくして、法律行為を単独で取消すことができるということです。理由:取消がされても、法律関係が遡及的に無効となるだけなので、制限行為能力者にとって不利益にならないからです。民法120条(取消権者)(取消しの効果)第百二十一条  取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。*遡及的に無効になりますね。民法の上記条文 関連問題 行為能力について、適切か否か答えよ。被保佐人が保佐人の同意を得ることを要する行為をその同意を得ないでした場合には,保佐人は,その行為を追認することはできるが,その行為を取り消すことはできない。

5

 

無権代理と相続について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。無権代理人が本人の地位を共同相続した場合,他の共同相続人のだれかが追認をすることに反対すれば,無権代理行為は有効にならない。 司法試験問題


無権代理人が本人を相続した場合、共同相続のときは、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理行為は当然に有効となるものではない。(最判平5.1.21)最高裁平5年1月21日第一小法廷判決より本人の死亡により「追認」する権利(民113条)は共同相続され、相続人全員に「不可分的」に帰属し、その一部を分割できない。追認権が共同相続人に準共有され、「追認は未確定的無効を有効化するという処分的効果を生じさせるから」「共同相続人全員の同意が必要要・・・(民251条)」参考 他の共同相続人全員が無権代理行為を追認し、無権代理人のみ追認拒絶することは「信義則」上許されないとしている。善意の相手方には民法117条の責任追及で配慮している。関連問題 代理について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。無権代理人が本人を共同相続した場合においては,無権代理人の相続分の限度で無権代理行為は当然に有効になる。

 

6

 

Aは,Bとの間で,B所有の不動産を代金1000万円で購入する旨の契約を締結した。この事例について、以下の記述が適切か否か答えよ。Aが被保佐人であった場合,BがAに対して1か月の期間内にAの保佐人Cの追認を得るように催告し,Aがこの期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは,Aの行為を取り消したものとみなされる。 司法試験問題

特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 (民法 20条3項)条文:「~被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」被保佐人・被補助人「本人」の確答がない場合。↓追認拒絶 民20条4項(1) 相手方が「保佐人」に対し、追認するかを確答すべき旨を催告した場合⇒確答が無ければ、追認したものとみなす。(2) 相手方が「被保佐人」に対し、保佐人の追認を得るべき旨の催告をした場合⇒被保佐人が追認を得た旨の通知を発しなければ、取り消したものとみなす。*本問は(2)の場合ですね。(1)民法20条2項(2)民法20条4項 関連問題
行為能力について、適切か否か答えよ。
被保佐人が取り消すことができる行為を行った場合,その相手方は,被保佐人に対して,保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができるが,保佐人に直接追認するか否かの回答を求める催告をすることはできない。
7
権利能力なき社団について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
権利能力なき社団の財産は,その構成員に総有的に帰属するから,構成員の一人に対して金銭債権を有する債権者は,当該構成員の有する総有持分に限りこれを差し押さえることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
権利の能力なき社団は社団の名においてした取引上の債務については社団の総有財産だけが責任財産となる。
と、判例がありますけどこの問題の回答はなぜ×なんですか?
[自説の根拠]昭和48・10・9
↑持分権のない「総有」だからでしょうね。
[自説の根拠]最判S32.11.14
最判昭48.10.9によると
○構成員の債権者は、構成員が団体に拠出した財産を差し押さえることができない。
○団体の債権者は、団体の総有財産を差し押さえることはできるが、構成員の個人財産を差し押さえることはできない。
8
錯誤について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
協議離婚に伴う財産分与契約において,分与者は,自己に譲渡所得税が課されることを知らず,課税されないとの理解を当然の前提とし,かつ,その旨を黙示的に表示していた場合であっても,財産分与契約の無効を主張することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
意思表示の動機の錯誤が法律行為の要素の錯誤としてその無効をきたすためには、その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり、もし錯誤がなかったならば表意者がその意志表示をしなかったであろうと認められる場合であることを要するところ、右動機が黙示的に表示されるときであっても、これが法律行為の内容となることを妨げるものではない。
・・・ 離婚に伴う財産分与として夫婦の一方がその特有財産である不動産を他方に譲渡した場合には、分与者に譲渡所得を生じたものとして課税されることとなる。したがって、前示事実関係からすると、本件財産分与契約の際、少なくとも上告人において右の点を誤解していたものというほかはないが、上告人は、その際、財産分与を受ける被上告人に課税されることを心配してこれを気遣う発言をしたというのであり、記録によれば、被上告人も、自己に課税されるものと理解していたことが窺われる。そうとすれば、上告人において、右財産分与に伴う課税の点を重視していたのみならず、他に特段の事情がない限り、自己に課税されないことを当然の前提とし、かつ、その旨を黙示的には表示していたものといわざるをえない。
[自説の根拠]http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130537653753.pdf
「錯誤」を主張するにしても、
譲与所得の課税分は多額でもなく、「重要な要素」には
当たらないと言うことでしょうか?
本判決は、高裁判決を破棄しているので主張することはできるとのことで、☓となる。判旨を引用すると「 協議離婚に伴い夫が自己の不動産全部を妻に譲渡する旨の財産分与契約をし、後日夫に二億円余の譲渡所得税が課されることが判明した場合において、妻のみに課税されるものと誤解した夫が心配してこれを気遣う発言をし、妻も自己に課税されるものと理解していたなど判示の事実関係の下においては、他に特段の事情がない限り、夫の右課税負担の錯誤に係る動機は、妻に黙示的に表示されて意思表示の内容をなしたもの。」
[自説の根拠]民法95条,民法768条,所得税法33条
最高裁判例平成元年9月14日
9
利益相反行為について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
被保佐人と,その保佐人が親権を行う未成年の子との利益相反行為については,保佐人は臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

保佐人や保佐人を代表する者と、被保佐人の間で、利益が対立する行為については、保佐人は臨時保佐人を選任することを家庭裁判所に求め、臨時保佐人にその行為を実行してもらわなければならない。ただし、保佐監督人がいる場合は、必要ない。
[自説の根拠]民法876条2項3号
親権者である保佐人と未成年の子の利益相反行為という側面から、特別代理人の選任を請求することもできると思われますが、いかがでしょうか?
その場合、「特別代理人もしくは臨時保佐人の請求を家庭裁判所に請求しなければならない」ので回答は×になると思われます。
[自説の根拠]民法826条
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
例えば、被保佐人と,その保佐人が未成年の子の親権を争うような場合であれば、臨時保佐人を選任すべきだと思いますが、設問では、被保佐人と,その保佐人が親権を行う未成年の子との利益相反行為なので、臨時保佐人を選任して、保佐人ではなくなったとしても、未成年の子との間の利益相反関係は存在するので、臨時保佐人の選任では問題の解決にはならず、未成年の子の特別代理人を選任すべきではないかと思うのでが…何方か教えて下さい。
問題文の記述は、民法第876条の2第3項に照らせば、その通りなので○。
被保佐人に臨時保佐人が選任されれば、外形的に、被保佐人側には臨時保佐人が、未成年の子の側にはその親権者が立つことになり、利益相反行為にはなりません。保佐人に自分の子の利益ではなく被保佐人の利益を図る意図があったとしてもです。
逆に、未成年の子に特別代理人を選任し、保佐人が被保佐人の側に立ったとしても、保佐人とその親権に服する子という外形的関係が残っている以上、これはやはり利益相反行為と判断されます。
[自説の根拠]「利益相反行為にあたるかどうかは、行為自体を外形的・客観的にみて判断すべきであり、行為の動機や意図をもって判断すべきでない(最判昭42.4.18)」
(保佐人及び臨時保佐人の選任等)
第876条の2第3項 保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。
[自説の根拠]民法第876条の2第3項
10
錯誤について、適切か否か答えよ。
判例によれば,錯誤による意思表示の表意者に重大な過失があった場合には,表意者は無効を主張することができないが,相手方は無効を主張することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。 (民法 95条)
錯誤による無効の主張は、表意者しか出来ません。
[自説の根拠]民法95条但書
最判(二小)S40.6.4 昭和39(オ)609号事件(民法百選Ⅰ〔初版〕24事件)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/605CC9B8609867BB49256A85003124A8.pdf
より抜粋。

民法九五条は、法律行為の要素に錯誤があつた場合に、その表意者を保護するために無効を主張することができるとしているが、表意者に重過失ある場合は、もはや表意者を保護する必要がないから、同条但書によつて、表意者は無効を主張できないものとしているのである。その法意によれば、表意者が無効を主張することが許されない以上、表意者でない相手方又は第三者は、無効を主張することを許さるべき理由がないから、これが無効の主張はできないものと解するのが相当である。

民法95条自体は、表意者以外の第三者が錯誤無効の主張をできないとは明示していませんし、第三者の錯誤無効の主張を認めた判例もあります(最判S45.3.26等)ので、「錯誤による無効の主張は、表意者しか出来ません。」と言い切るのは困難ですが、設問肢の事例はちょうど上記判例と反対の結論になっていることから、誤りとすることが妥当と考えられます。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
表意者が無効を主張出来なくなるのは条文を見ても明らかだが、それによって当然に相手方若しくは第三者にその意思表示の無効を主張する権利が与えられるとはしていない。相手方は元々はその錯誤による意思表示にたいして取り引きに臨んでいるわけで(錯誤だった事は表意者しかしらないのだから)本来表意者を保護するための趣旨である95条の「但し書き部分」を反対的に解釈して相手方の権利を認め保護するようなものではない。
関連問題
民法第95条本文は、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。」と定めている。民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
11
錯誤について、適切か否か答えよ。
判例によれば,家庭裁判所が相続放棄の申述を受理した後は,相続放棄について錯誤による無効を主張することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
判例があります。
「相続放棄は家裁がその申述を受理することにより効力を生ずるが、その性質は私法上の財産上の法律行為であるから民95条が適用になる」
つまり、家裁が相続放棄の申述を受理した後でも錯誤による無効主張は可能です。
[自説の根拠]最判S40.5.27 (判時413-58)
関連問題
相続の承認及び放棄について、民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
相続の放棄をする場合,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
12
代理について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
代理権授与の表示による表見代理が成立するためには,相手方が,代理人と称する者が代理権を有すると信じ,かつ,そのように信じたことについて無過失であったことを,その相手方において主張立証しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。 (民法 117条2項)
↑上の方、表見代理の成立要件で善意無過失は要求されますよ、この設問は立証責任がドコにあるかを問うていると思います。
判例では、「相手方が悪意又は有過失であることの立証責任は本人側にある」となっており、それを立証できなかった場合は表見代理が成立して本人に効果が帰属します。
その理由は、代理権授与表示があれば,代理権ありと信じるのが通常だからです。
設問では「立証責任が相手方にある」となっている為、×が正解です。
[自説の根拠]最判S41.4.22 民法109条
民法一〇九条にいう代理権授与表示者は、代理行為の相手方の悪意または過失を主張、立証することにより、同条所定の責任を免れることができるものと解すべきである。

代理権授与表示者(=本人)は、相手方の悪意・有過失を主張・立証しなければその責任を免れることはできないが、相手方は、表見代理の成立のために自らその善意・無過失を主張・立証する必要はない。
[自説の根拠]http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319124444371809.pdf
条文が本文とただし書からなる場合、本文を否定する者にただし書にあることを証明する責任がある。民法109条の場合、本人側に相手方の悪意・有過失を証明する責任がある。
(代理権授与の表示による表見代理)
第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
13
代理について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には,その後無権代理人が本人を相続したとしても,無権代理行為が有効になるものではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 (民法 113条)
本人が追認を拒絶すれば無権代理行為が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶のあとは本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることはできないとしている。あとは、問題文のとおり。
根抵当権設定登記抹消登記手続請求事件より
[自説の根拠]自説の根拠は、最判平10.07.17
関連問題
無権代理と相続について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
無権代理人が本人の地位を単独相続した場合,本人が追認を拒絶した後に死亡したときでも,無権代理行為は有効になる。
14
未成年者について、適切か否か答えよ。
未成年者は,遺言をすることができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
民法第九百六十一条 ( 遺言能力 )
満十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
[自説の根拠]民法第九百六十一条
15
消滅時効の中断について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
AがBに対して有する債権をCが連帯保証し,Cに対するAの連帯保証債権を担保するため,Dが物上保証人になった場合において,AがDに対して担保不動産競売を申し立て,その手続が進行することは,Bの主債務の消滅時効の中断事由に該当する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
抵当権実行の申立てに基づき裁判所が競売開始決定をすると,担保目的物たる不動産につき“差押え”の効力が生じる(民事執行法188条,45条)。
“差押え”は“時効中断事由”。(民法147条2号)
しかし“差押え”は,相対効を有するにすぎない。
∴主債務に対する時効中断事由とはならない。
Dが物上保証する債務は、Bの主債務ではなく、Cの連帯保証債務ですので
まず、競売開始決定正本はCには送達されるが、Bには送達されない。
また、Cに対しての「請求」は絶対効でありBにも効力が及ぶが、
Aの競売申立ては、担保権実行手続の開始を求める行為であり、Cに弁済を求める行為ではないため、「裁判上の請求」にはあたらない。
よって、Bの主たる債務の消滅時効は中断されない。
[自説の根拠]最判平8.9.27
物上保証人Dについての担保不動産競売開始決定正本はBに送達されずCには送達される。同様にBに消滅時効中断の効力が及ばずCには絶対効として及ぶ。
1
Aは,Bの代理人と称するC(30歳)との間で,B所有の甲土地を買い受けるとの売買契約を締結したが,BはCが無権代理であったと主張して争っている。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
AがBに対し,売買契約の履行を求める訴えを提起したところ,Cの代理権の存在について真偽不明となった。この場合,裁判所は,AとBの代理人と称するCとの間で売買契約が締結されたことが証拠上認められれば,A勝訴の判決を言い渡す。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
A・C間の契約の成立の有効性が証明されてもその効果はBに及ばない。
表見代理の成立要件を立証すべき。
表見代理の成立要件
1. 代理行為時には代理人の代理権が消滅していたこと
2. かつて代理人が有していた代理権の範囲で代理行為がなされたこと
3. 代理人の代理権の消滅につき相手方が善意・無過失であること
Aは有権代理の主張(BはCが無権代理であったと主張して争っているので)をしている、と考えられます。
だから、まずAは、BからCへの代理権の授与があったこと(Cの代理権の存在)を主張立証する必要がある。
ある事実について立証責任を負う者は、それが真偽不明の場合に、その事実を要件事実とする法律効果の発生が認められないという不利益を受ける(立証責任)ところ、
Cの代理権の存在について真偽不明となった。
したがって、Aの主張は認められず、請求は棄却される。
よって、×
[自説の根拠]要件事実論のさわり。本問にあてはめてみましたがどうでしょうか。回りくどいような気もしますが、、
代理権が存在する(真)ならば、Aの勝訴(履行義務発生)
代理権が不存在(偽)であれば、無権代理権によるものか
表見代理権によるものかで判決は異なってきますものね
(無権代理なら追認で履行義務発生、表見代理なら
善意無過失等の問題が生じてきますよね)
2
Aは,Bの代理人と称するC(30歳)との間で,B所有の甲土地を買い受けるとの売買契約を締結したが,BはCが無権代理であったと主張して争っている。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
配偶者のいないBが死亡し,Bに子C及びDがいた場合,Dが追認を拒絶していても,Aは,Cに対し,甲土地の共有持分2分の1について,所有権移転登記手続を求めることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
この問題は、無権代理人が本人を共同相続した場合にあたると思われます。
判例(最高裁平成5年1月21日第一小法廷)では、
-本人の死亡により本人の「追認」する権利(113条)が共同相続されるが、それは性質上共同相続人全員に「不可分的」に帰属し、その一部を分割して行使できるというものではないという点にある-
つまり、
無権代理人が本人を共同相続した場合には、追認権は共同相続人に準共有され、共同相続人全員の同意が必要となります。
[自説の根拠]民法判例百選Ⅰより
「共同相続人がいるときは、全員共同で相続を行う必要があるため」ではなく、所有権移転登記義務は不可分であるので、共同相続人全員に不可分に帰属するためです。
ちなみに相続登記は、法定相続分等の場合は共同相続人全員の分につき共同相続人の一人からでも申請できますし、相続の実体上当然に開始しますので、共同相続人が何か相続に関する行為を行う必要はないです。
[自説の根拠]登記義務の不可分につき昭和27.8.23民甲74号回答
共同相続人の拒絶後、無権代理人Cには依然として無権代理人としての義務(移転登記義務等)が生じていますが、それはあくまでも所有権全体の移転登記義務でしかないため、これを勝手に自己が2分の1の持分をもっているからといって、2分の1だけの登記として履行させる登記請求権・登記義務はなく、すなわち全体についての登記義務として履行請求するしかないのですが、自己の持分を越える部分は無権利ですから、登記請求はできないということになります。
3
Aは,Bの代理人と称するC(30歳)との間で,B所有の甲土地を買い受けるとの売買契約を締結したが,BはCが無権代理であったと主張して争っている。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Aにおいて,Cが無権代理人であることについて善意かつ無過失であれば,Cに故意又は過失がなくても,Cに対し,甲土地の転売で得られたはずの利益の賠償を請求することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

この問題で重要なのは、民法第117条は当然知っているという前提で、「転売で得られたはずの利益」の賠償を請求ができるかどうか。
つまり、「履行利益」が請求できるかというところです。
理解していないのに表面でわかっているつもりでいると、民法ではひどい目にあいます。
気を付けましょう。
[自説の根拠]自説の根拠は最判昭32・12・5
この問で要求される知識は、下記の3点です。
・行為能力のある無権代理人に対し、善意無過失の相手方は、履行又は「損害賠償を請求できる」こと。(民法第177条1項、2項)
・無権代理人の責任は、「無過失責任」であること。(最判昭62.7.7)
・無権代理人の賠償責任とは、信頼利益の賠償のみならず、「履行利益(転売で得られるはずの利益等)」の賠償も含まれること。(最判昭32.12.5)
→本問の事例は、上記要件を満たしているので、答えは○です。
本問は民法117条および最判昭32.12.5により解答は○
ただ同判例は「既に相手方の選択により賠償の請求を受けた無権代理人の方から単に物価の変動を理由として契約を解除する権利を有するものではない」と示すものであり、民法117条を前提とし、「履行利益請求ができる」を当然とした上で無権代理人が⋯⋯
amesyoさんの解説および判例引用はともかく、astsu16さんの解説、および同引用は少しばかり、的が外れている
[自説の根拠]最判昭32.12.5から「履行利益」が請求することができる旨は明らかであるが、同判例は「履行利益」請求の如何を争うものではない。「履行利益(転売で得られるはずの利益等)」が請求できる旨は民法117条のみでも明らか
4
次の記述について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
農地法第5条により都道府県知事若しくは農業委員会の許可がなければ所有権が移転しない転用目的の農地売買の場合には,例え買主が代金を支払って引渡しを受け,買い受けた農地の占有を続けても,許可手続がとられていない以上,その農地を時効により取得することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
どなたか教えてください。
この取引は無効となるのではないでしょうか?
農地法には「許可を得ないでした法律行為は、効力を生じない」と規定されていますので、問題文の農地売買は無効です。
しかし、許可を受けていなくても、買主が代金を支払って引渡しを受け,買い受けた農地の占有を続ければ、時効取得が認められます。
ただし、許可の無い占有開始ですので、有過失となり、20年間の占有の継続が必要です。
[自説の根拠]最判平13.10.26。
上の目をかいくぐっての農地取得なんですね
5
次の記述について、適切か否か答えよ。
Bが善意・無過失・平穏・公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,Cが移転登記を得た場合,登記による取引安全確保の機能を重視する学説によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

時効取得直前の第3者の登記は、時効取得後は第3者に登記無くして対抗できるのではなかったでしたっけ?(最半昭41.11.22)
時効完成後の第3者には登記無くして対抗できないと覚えてますけど…(最判昭33.8.26)
[自説の根拠]自説の根拠は、判例です。
登記による取引安全確保の機能を重視する学説に立つと、Cによる移転登記は時効中断事由と解され、登記以後、再度十分な期間の占有が認められない限り取得時効が成立しないという見解となり、正しい記述です。が、
本問は学説の知識を問うており、行書ではここまでの知識は要求されないと考えます。。安易に○×だけで覚えてしまうと本試験で間違えてしまいそうですね。。
条文・判例に即して解答するならばlmasa1975さんのコメントで正解です。
6
甲土地の所有権を主張するAに対し,pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが,訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合,時効の援用の意思表示のほかに,民法の規定及び判例を考慮してBが以下の事実を主張立証しなければならない場合には○を、そうではない場合には×を選べ。
p時点から,その20年後のq時点まで,Bが甲土地を継続して占有したこと。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
占有の継続は(10年間)は、前後2つの時点で占有が行われたことが立証されれば、その間を占有していたと推定される。
[自説の根拠]民法186条
民法第186条
1. 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2. 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
Bは前後2つの時点で占有が行われたことを立証するだけで足り、Aがそれを覆すだけの証拠を集めなければなりません
7
成年後見制度について、適切か否か答えよ。
成年被後見人が日常生活に関する行為以外の法律行為を行った場合,あらかじめ当該法律行為について成年後見人の同意を得ていたときでも,成年被後見人は,当該法律行為を取り消すことができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。 (民法 9条)
成年被後見人は、事理弁識能力を欠く状態にあるので、たとえ成年後見人が同意を与えたとしてもその同意の意味すら理解できない状態にある。よって、成年後見人の同意は意味がなく、同意権も与えられていない。
成年後見人は制限行為能力者の中で唯一同意権を有しない。
「同意を得ていたときでも」この時点で誤りです。
この手の問題はあやふやな知識だと間違えやすいです。
上級レベルにしては優しい問題ですね。
事理弁識能力を欠く状況にあるので、同意のい意味が分からない、又は、分かっても同意通りの行為が出来ない事も考えられるので、同意権は与えられていません。
単独で行った法律行為は、原則として取り消す事ができます。 例外として、日常生活に必要な範囲の行為は単独で有効に行う事ができ、取り消す事は出来ません。
[自説の根拠]第九条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
関連問題
次の説明は、民法上の行為能力に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
成年被後見人が成年後見人の同意を得て行った財産上の法律行為は,取り消すことができない。
8
無権代理と相続について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
本人は,無権代理人の地位を単独相続した場合,無権代理人の相手方に対する責任を承継する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。 (民法 105条)
民法第896条【相続の一般的効力】
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。従って被相続人の無権代理行為の相手方に対する責任も承継することになると思われます。
追認拒絶できるということと混同しがちですが
相続後も本人として追認拒絶はできますが、追認拒絶したとしても、無権代理人としての責任も同時に負うことになるということになります
相続関係にある人は、こういった状況下でも大変です
本人が他人であれば、また別の話ですね
承継する責任・・・損害賠償責任
関連問題
B所有の土地をAがBの代理人として,Cとの間で売買契約を締結した場合について、民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
Aが無権代理人であって,Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合には,Bは追認を拒絶できるが,CがAの無権代理につき善意無過失であれば,CはBに対して損害賠償を請求することができる。
9
未成年者について、適切か否か答えよ。
未成年者は代理人になれない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
代理人は、行為能力者であることを要しない。 (民法 102条)
民法102条
代理人は行為無能力者であることを要しない。
つまり未成年者や成年被後見人などでも代理人になれます。
未成年者に代理行為を頼んだ場合、制限行為能力者であることを理由に取り消すことが出来ないんですね
関連問題
Aが,Bに代理権を授与してA所有の土地を売却した。民法の規定及び判例に照らして答えよ。
Bが未成年者であるとき,Bは,Aの代理人になることができない。
10
未成年者について、適切か否か答えよ。
未成年者が婚姻をするには,法定代理人の同意を得なくてはならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
未成年の子が婚姻をするには【父母】の同意を得なければならない。未成年者の法定代理人は父母であることが多いが正確には親権者です。(養親も親権者)婚姻するには原則これら法定代理人の同意が必要になっています。ただし同意が無くとも、届出が受理された場合(誤って受理された場合など)この婚姻は有効となり、父母、法定代理人の同意が無いことを理由に取り消すことはできません。つまり例外も存在するので×かと解釈しました。「法定代理人」の種類云々を問うている訳ではなさそうに感じましたが。
[自説の根拠]あくまで設問に対する私個人の解釈です。
男は18、女は16歳で結婚できます
しかし、同意が必要だということです
そもそも、父母ともに死亡していたりなどして、法定代理人がいない場合には、同意を得ることなく、そのまま婚姻できると解されています。
関連問題
次の説明は、遺言に関する記述である。判例に照らして答えよ。
未成年者が遺言をするには,法定代理人の同意が必要である。
11
権利能力なき社団について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
権利能力なき社団の成立要件は,団体としての組織を備え,多数決の原理が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が確定していることである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

昭和35(オ)1029 建物収去土地明渡請求 昭和39年10月15日 最高裁判所第一小法廷http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121721405209.pdf
法人格を有しない社団すなわち権利能力のない社団については、民訴四六条がこれについて規定するほか実定法上何ら明文がないけれども、権利能力のない社団といいうるためには、団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によつて代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならないのである。
[自説の根拠]最判昭和39.10.15民集18-8-1671
12
代理について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
夫婦の日常家事に関する相互の代理権を基礎として権限外の行為の表見代理は成立しないが,相手方においてその夫婦の日常の家事に関する法律行為と信ずるにつき正当の理由のあるときに限り,権限外の行為についての表見代理の規定の趣旨が類推適用される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

最半昭44.12.18
夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきである。
夫婦の一方が民法761条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権を基礎として一般的に同法110条所定の表見代理の成立を肯定すべきではなく、その越権行為の相手方である第三者においてその行為がその夫婦の日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、同条の趣旨を類推して第三者の保護をはかるべきである。
[自説の根拠]判例集 最半昭44.12.18
13
条件及び期限について、適切か否か答えよ。
判例によれば,条件の成就によって利益を受ける者が故意に条件を成就させた場合には,相手方は,条件が成就していないものとみなすことができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

A:叔父さん、B:甥っ子。
AがBに結婚したら、100万あげると書面にて約定。Bは100万貰ったら山分けして離婚するからと、偽装結婚した場合、条件未成立。
dragonroadさん、4d511a58b4acさん、ありがとうございます
判例六法で調べたら、載っていました
それによると
一方が和解条項に違反した場合に違約金を支払う旨の条項があるときに、他方がその違反行為を誘引した場合
と、ありました
条件の成就によって利益を受ける者が故意に条件を成就させた場合には、民法130条を類推適用し、条件が成就していないものとみなすことができる(最判平6.5.31)
「 条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。」

アデランスのかつらピンの特許を侵害したアートネイチャー。該ピン付かつらを製造販売しない、違反したら違約金を支払うとの和解が成立。
その後一般客になりすましたアデランス関係者が該ピン付かつらの製造販売を強く要求し、拒みきれずにアートネイチャー従業員が販売してしまう。アデランスはアートネイチャーに違約金の支払いを請求。で、上記判決。
[自説の根拠] 平成6年05月31日  最高裁判所第三小法廷
民法判例百選Ⅰ総則・物権(第6版) 38事件
14
条件及び期限について、適切か否か答えよ。
停止条件付の法律行為は,その条件が単に債務者の意思のみに係るときは,無効である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

(随意条件)
第134条
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

「履行したくなったら履行する」というような場合である。停止条件の場合は、債務者を拘束する内容ではなくなるので、債権として意味が無いので無効とされる。解除条件の場合は、「期限の定めのない債務」と同様に、条件としての効力が認められる。
15
消滅時効の中断について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
物上保証人に対する担保不動産競売の申立てにより,執行裁判所が競売開始決定をし,これが債務者に送達された場合には,債権者の債務者に対する被担保債権について消滅時効は中断する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

最判S.50.11.21
債権者より物上保証人に対し、その被担保債権の実行として任意競売の申立がされ、競売裁判所がその競売開始決定をしたうえ、競売手続の利害関係人である債務者に対する告知方法として同決定正本を当該債務者に送達した場合には、債務者は、民法一五五条により、当該被担保債権の消滅時効の中断の効果を受けると解するのが相当である。
1
条件・期限について、適切か否か答えよ。
AがBに返済期限を定めて100万円を貸し付けた場合,利息の定めがあるときでも,Bは返済期限前に弁済をすることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

「B」は本来の期限までの利息も含めて支払えば
期限の利益を放棄して、
期限前に弁済することができます。
[自説の根拠]【民法136条2項】
(期限の利益及びその放棄)
第136条
1.期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2.期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
[自説の根拠]民法136条
関連問題
AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効について、民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
Aが弁済期を定めないで貸し付けた場合,Aの債権は,いつまでも時効によって消滅することはない。
2
Aが失踪宣告を受け,唯一の相続人である妻BがA所有の甲土地及び乙土地を相続した。Bは,相続の1年後に,甲土地を代金1,000万円でCに売り渡して代金を受領し,5年後には,乙土地を代金2,000万円でDに売り渡して代金を受領した。また,Bは失踪宣告後3年目にEと結婚した。失踪宣告後,13年が経過し,失踪宣告が取り消された。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Aが現に生存しているとの理由で失踪宣告が取り消され,前記各売買契約の当時,BはAの生存を知っていたが,Cはその事実を知らなかった場合において,CがBから甲土地の引き渡しを受けて平穏かつ公然に現在まで占有を継続しているときは,CはAに対し甲土地を返還する必要はない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

甲土地→ 1年後Cに売却 現在まで占有継続
乙土地→ 5年後Dに売却
です。 些細な指摘ですが一応…。
よく問題を読むと甲土地と乙土地があったんですね。
つまりCは甲土地を失踪宣告があった1年後から13年後までの12年間(13-1=12)の間、平穏公然善意無過失で占有していたので取得時効が成立しているということですね。
ご指摘ありがとうございました。
この問題のポイントは二つありますよね。
1つ目は§32-Ⅰ後段
2つ目は§162-Ⅱ
1つ目
判例通説は、民法32条1項の善意は当事者双方に必要とされています。
∴Bが悪意なので、この契約は取消され遡及的無効になり、Aの所有物に戻ると解されます。

2つめ
一方Cは取得時効の要件を満たします。
∴CはAに返還しなくてよい。と解されます。
[自説の根拠]第三十二条  失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
第百六十二条
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
3
次の事例について、判例の見解によれば要素の錯誤となるか否か答えよ。
Aは,Bから,Bの所有であると思って甲土地を賃借する契約を締結したが,甲土地の所有者はCであった。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
要素の錯誤 = 法律行為の主要部分の錯誤
もし錯誤が無ければ意思表示をしなかったであろう部分です。
故に、本件の場合の法律行為の主要部分とは、土地の賃借契約であり、相手が誰かは重要ではなくなります。
ということで、要素の錯誤とは言えず、
正解は × になると思います。
本問における錯誤とは動機による錯誤であり、動機の錯誤が要素の錯誤となり得るか否かについては、動機表示説(動機が明示または黙示に表示され、それが法律行為の内容となれば要素と言える※判例)と一元的構成説(動機の表示されると否とを問わず、錯誤がなかったならばしなかったであろう意思表示という観点から、それが要素にあたるか否かの妥当性を検討する)の対立があり、本問では判例の見解により絶対的構成をとって、動機が表示されているか否かを検討する為、×となる。
他人物賃貸借が成立する以上、債権契約は有効であり、有償契約における解除権や損害賠償の問題となるに過ぎない。
関連問題
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した場合において、民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。
4
甲土地の所有権を主張するAに対し,pという時点から長い期間にわたり同土地を占有してきたBが,訴訟において20年の時効による所有権の取得を主張する場合,時効の援用の意思表示のほかに,民法の規定及び判例を考慮してBが以下の事実を主張立証しなければならない場合には○を、そうではない場合には×を選べ。
p時点における甲土地の所有者がAであったこと。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
Bが主張立証しなければならないことは
pという時点と、20年たった時点の両時点について
占有をしていたことですよね。
その間については占有は継続していると推定されるそうです。(法律上の事実推定)
[自説の根拠]【民法186条2項】
民法第186条
①占有者は、所有の意思をもって、善意で、平然に、かつ、公然と占有するものと推定する。
②前後両時点において占有した証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
[自説の根拠]民法第186条
条文では、「他人の物」としているだけなので、所有者がAであったことまで証明する必要はありません。
そして、所有権に基づいて占有していた場合でも、取得時効が成立するので、「他人の物」であることの証明も必要ありません。
尚、判例・通説では、自己の所有物でも時効取得を肯定しています。(最高裁42.7.21)
理由:「永続する事実状態の尊重」という時効制度の趣旨は、自己の所有物の占有にも妥当する。
[自説の根拠]民法162条1項(所有権の取得時効):20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
関連問題
Aの所有する土地をBが取得したが,Bはまだ所有権移転登記を受けていない場合について、民法の規定及び判例に照らしてBが当該土地の所有権を主張できない相手として適切か否か答えよ。
当該土地の不法占拠者
5
表見代理についての民法の規定について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
権限外の行為の表見代理の規定は,本人から一定の代理権を授与された者が本人自身であると称して権限外の法律行為をした場合に類推適用することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

昭和44・12・19 民法110
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120429720248.pdf
代理人が本人の名で代理権の範囲外の行為をした場合、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたことに正当な理由がある場合は、110条(権限外の行為の表見代理)類推適用により、本人が責任を負います。(最高裁昭和44.12.19)
したがって、回答は「○」です。
尚、代理人が自己の利益を図るためにその権限を行使した場合は、110条類推適用はありません。
この場合、93条但書を類推適用し、相手方が代理権の濫用を知り又は知ることができたときは、本人に責任が及びません。(最高裁昭和42.4.20)
[自説の根拠]「民法Ⅰ総則・物権総論」内田貴(東京大学出版会)
6
双方代理又は利益相反行為について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは,仮に親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく,親権者の代理行為の結果,数人の子の間に利害対立が現実化されていなかったとしても,利益相反行為に当たる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、親権者の意図やその行為の現実の結果のいかんにかかわらず、本条2項の利益相反行為にあたる。
[自説の根拠]昭和48・4・24 民法826条
民法826条所定の利益相反行為に当たるか否かは、当該行為の外形で決すべきであり、親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、仮に親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていなかったとしても、民法826条2項所定の利益相反行為に当たるから、親権者が共同相続人である数人の子を代理してした遺産分割の協議は、追認がない限り無効であるとされます。
[自説の根拠]杉並区行政書士HPより引用
(利益相反行為)
第826条
1.親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2.親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
[自説の根拠]コンメンタール民法/ウィキブックス
7
取得時効について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
他人の物を占有することが取得時効の要件であるので,所有権に基づいて不動産を占有していた場合には,取得時効は成立しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
所有権に基づいて不動産を永く占有する者であつても、その登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であつたり、または所有権の取得を第三者に対抗することができない等の場合において、取得時効による権利取得を主張できると解することが制度本来の趣旨に合致するものというべきであり、
[自説の根拠]昭和40(オ)1265 家屋明渡請求 昭和42年07月21日 最高裁判所第二小法廷
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122443593548.pdf
8
A(東京在住)は,友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで,AはBに対し,4月1日,そのための手紙を出し,この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。この場合において,AB間の甲の売買契約の成否及びその時期に関する次の記述について,適切か否か答えよ。なお,日付は,本問において,すべて同じ年のものである。
本件手紙は「甲を100万円でお譲りください。」というものであり,これに対し,Bが4月4日,「120万円でよろしければ甲をお譲りします。」という返事の手紙を出し,この手紙が4月6日にAに届いたところ,AがBに,4月7日,「それでは120万円で甲をお譲りください。」という手紙を出し,この手紙が4月9日にBに届いた場合,甲の売買契約が4月7日に成立する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

隔地者間は発信主義ではないのですか?
nozonozoさんの仰る通り、隔地者間の契約は発信主義なので、「それでは120万円で甲をお譲りください。」という手紙(承諾)を発信した4/7に契約成立です。
一方、4/4の「120万円でよろしければお譲りします」という手紙は承諾ではなく、最初の申込を拒絶し、新たな申込をしたとみなされます。
4/4の申込と4/7の承諾の内容(ここでは金額)が一致してるので、4/7の成立となり○ですね。
[自説の根拠]民法526条、528条
9
民法上の後見について、適切か否か答えよ。
成年後見人は,正当な事由があるときは,家庭裁判所の許可を得てその任務を辞することができるが,未成年後見人は,正当な事由があっても,家庭裁判所の許可を得てその任務を辞することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
民法844条
後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
この条文がいう後見人には、成年後見人と未成年後見人との区別はありません。
10
民法上の後見について、適切か否か答えよ。
家庭裁判所は,成年後見人を解任することができるが,未成年後見人を解任することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。 (民法 124条2項)
後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。
[自説の根拠]民法 第846条
関連問題
後見について、適切か否か答えよ。
未成年者に対して親権を行う者がないときは,家庭裁判所が職権で未成年後見人を選任する。
11
民法上の後見について、適切か否か答えよ。
家庭裁判所は,成年後見人には被後見人の財産から相当な報酬を与えることができるが,未成年後見人には報酬を与えることはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。 (民法 29条2項)
第862条 家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。
[自説の根拠]民第862条
被後見人による差異はありません。成年後見人でも未成年後見人でも、報酬を与えることはできます。
関連問題
後見について、適切か否か答えよ。
未成年者に対して親権を行う者がないときは,家庭裁判所が職権で未成年後見人を選任する。
12
Aから動産甲を購入する旨の契約を締結したBが,契約締結時に代金のうち一部を支払い,その後,残代金の弁済を提供して動産甲の引渡しを求めたにもかかわらずAがこれに応ぜず,それから相当期間が経過した後にAがその住所を去って行方が分からなくなった場合について、適切か否か答えよ。
Aがその財産の管理人を置かないで行方不明になった場合において,家庭裁判所は,Bの請求により,Aの財産の管理について必要な処分を命ずることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

(不在者の財産の管理)
第25条
従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
13
取消しについて、適切か否か答えよ。
取り消された行為は,初めから無効であったものとみなされるのが原則であるが,婚姻及び養子縁組の取消しは,いずれも将来に向かってのみその効力を生ずる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

(婚姻の取消しの効力)
第七百四十八条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
(婚姻の取消し等の規定の準用)
第808条①第747条及び第748条の規定は、縁組について準用する。
どちらも将来効です。
14
催告について、適切か否か答えよ。
無権代理人の締結した契約について,相手方が本人に対して,相当の期間を定めて,追認するかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず確答がなかったときは,その相手方は,本人に対して,契約の履行を請求することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。(相手方の善意・悪意問わず可能)
この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされます。
したがって、相手方は、本人に対して、契約の履行を請求することができません。
[自説の根拠]民法114条
15
条件及び期限について、適切か否か答えよ。
相当の期間を定めて催告をするのと同時に,その期間内に履行されないことを停止条件として解除の意思表示をしても,その解除は無効である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
催告に際して、一定の期間内に履行されないときには、解除の意思表示をあらためてすることなく契約の効力を失わせるという意思表示の効果は、相手方を不安定な地位に陥らせるものではないので、有効であると認められています。
判旨(大判・明治43.12.9)
履行遅滞による契約解除については、催告をなすさいに定めた期間内に相手方が債務を履行しなかったことを待ってはじめてこれをなしうるわけではなく、履行の催告と同時に、期間内に履行がないことを停止条件として解除の意思表示を行うことも可能である。
[自説の根拠]大判・明治43.12.9
[退室] ありがとうございました @東京都#ケア (21秒前)
1
AはBに対し,1,000万円を貸し付けた。その際,B所有の甲土地に抵当権を設定するとともに,Cがその債務を保証し,D所有の乙土地にも抵当権が設定された。甲土地はその後Eに売り渡され,乙土地にはDのFに対する債務のため次順位の抵当権が設定された。また,BはAからの借入れ後,Gからも500万円を借り受けた。
BのAに対する債務が弁済期から10年を経過したとき,判例の趣旨に照らし,Bを除き,この債務の消滅時効を援用できるのはだれか。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
C、D、E
B=(当事者)
C=(保証人)
D=(物上保証人)
E=(抵当不動産の第三取得者)
F=(後順位抵当権者)
G=(一般債権者)
民法の規定では、時効を援用できるのは「当事者」だけであると規定している。
「当事者」とは、時効によって直接利益を受ける者。
判例上、以下の者は「当事者」に該当するとされている。
・(保証人、連帯保証人)  ~(C)
・(物上保証人)      ~(D)
・(抵当不動産の第三取得者)~(E)
・(詐害行為の受益者)   ~
一方、後順位抵当権者は、先順位抵当権者の被担保債権が時効によって消滅しても、それによって受ける利益は抵当権の順位上昇による反射的利益にすぎないことを理由として、援用権者には当たらないとされている。
[自説の根拠]ウィキペディア
2
次の記述は、信義誠実の原則、権利濫用禁止の原則のいずれについて述べたものか答えよ。
権利の行使であっても,社会観念上被害者が認容しなければならない程度を超える場合には,不法行為が成立する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
権利濫用禁止の原則
(正解) 権利濫用禁止の原則
設問は権利濫用禁止の原則に関するものです。
判旨は、権利の行使が「社会的共同生活」の必要性から考えて、「社会通念上被害者において容認」すべきものと「一般に認めらるる程度」を超えたときは、権利の濫用となり不法行為責任が生じるというものです。
[自説の根拠]・大判・大正8.3.3 信玄公旗掛松事件
・「民法Ⅱ債権各論」内田貢(東京大学出版会)
民法の基本原則は
●1条1項―公共福祉の原則
「私権は、公共の福祉(社会共同生活全体としての利益)に適合しなければならない」とし、私権を制約する法令を合憲であるとであると判断する際に言及される。
●2項―信義誠実の原則(信義則)
「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」とし、元来、契約履行面で相手側の期待を裏切ってはならないとされたが、現在ではあらゆる法律関係において人々の行動準則とされる。
3項―権利濫用禁止の原則
3
AはBに対し,自己所有の土地を売却する代理権を与え,代理人欄と委任事項欄が共に白紙の委任状を交付した。この事例に関する次の教授の質問に対する学生の回答として適切か否か答えよ。
(教授)Bは,白紙委任状の委任事項欄にBのCに対する債務を担保するためA所有の土地に抵当権を設定するとの内容を記入し,Cとの間で抵当権設定契約を締結しました。この場合,相手方Cを保護することはできますか。
(学生)BにはA所有の土地を売却する代理権があったのですから,これを基本代理権として民法第110条により相手方Cを保護することができると思います。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

第109条(代理権授与の表示による表見代理)
第110条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
表見代理が成り立つらしいので。 〇
[自説の根拠]民法109条と民法110条 です。
Cが善意無過失かどうかが書いてないのでなんとも言えないような・・・
↑の方の仰るとおりです。
私はてっきり善意無過失という仮定で○にしましたが、
「悪意なら×です」というひっかけもありますし・・・
こういう類のひっかけは統一してほしいですね。
「Cが善意無過失かどうかが書いてないのでなんとも言えないような・・・」

⋯⋯が書いてないから解答は○
善意無過失であれば、「Cは保護される」。そうでなければ「Cは保護されない」。書いていないのでなんとも言えないから「Cは保護することができる」
この問題が、行政書士試験5択問題中の1肢である場合は、他の選択肢との兼ね合いにおいて、これが正解肢として残った場合は、「◯」となる。しかし、これ1肢として正否を判断するならば、「第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。」との条文から判断して、この問題だけでは「正当な理由」の有無は判断できないので、「◯とも☓」とも言えない問題である。
[自説の根拠]民法第110条2項
109条→「実際は、代理権を何ら与えられていない」
110条→「何らかの代理権を与えられている(が権限外)」
*
設問の例は、『自己所有の土地を売却する代理権』を与えられているので、110条の問題となります。
そして、委任事項欄の虚偽記載によって、相手方が「代理人の権限があると信ずべき正当な理由がある」といえるため110条の表見代理が成立、つまり110条により相手方Cを保護できるため、○です。
※よって、109条における「無権限」であることに対する相手方の善意無過失は、要求されません。
[自説の根拠]民法第110条(権限外の表見代理)
申し訳ございません、若干訂正致します。

110条の場合も、相手方の善意無過失が要求されるとするので、この場合、成立するかどうかはやはりはっきりしませんが、設問は、110条でCを保護でき得るかどうか(適用可能性)を聞いていると思うので、○で良いと思います。
4
条件・期限について、適切か否か答えよ。
AがBに100万円を貸し付け,「Aが医師の資格を取得したときに返済するものとする。」と約した場合について,この返済時期の約定は不確定期限といえる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

出世払いについて判例では停止条件ではなく、不確定期限と考える。例えば、出世払いでは、「出世しない限り支払わなくても良い」のではなく、「出世したとき、あるいは出世しないことが確実となったときに支払う」と考えるのが通常である。
「出世払債務(出世払)」は「条件」か「期限」か?
「条件」
①「試験に受かったらマンションをあげる」のように契約の効力は試験に受からない限り発生することのない不確実な附款。
「期限」
②「2011年の10月1日にマンションをあげる」のように契約の効力が将来確実(確定期限)
③「今度首相が変わったら」のように未定(不確定期限)
判例(大判大正4,3,24)では、①の「出世しなければ返さなくてもいい」ではなく、③の「出世した時か、可能性がないことがはっきりとした時点で返済請求可能とした。
不確定期限はshigemikさんが書かれている
「今度首相が変わったら」や「父親が亡くなったら」
のように期日は不明だがその期日は確実に訪れることが決まっているといったものです。
今回の問題において「Aが医師の資格を取得した時」というのは確実にやってくるものでは無い為不確定期限とは言えないと思います
「Aが医師の資格を取得したときに返済するものとする。」という条件が何故出世払いと結びつくのかも疑問
です
abroaders さんへ
確かに言葉の定義から言えば、「資格を取得したら」は『条件』です。
しかし、考えなければならないのは、お金を借りたのが誰か?ということ。
借りた本人が条件成就にむけて努力しているのならともかく、努力もしないで条件未成就を根拠にお金を返さないのは信義則に反します。
そこで、こういった場合には一義的に『条件』と捉えないで『不確定期限』とする、というのが判例です。
こういった、お金を借りた本人の努力で条件が成就するケースを、ひとくくりに『出世払い』と呼びます。
[自説の根拠]このような判例の解釈を、最低限覚える、できるだけ理解する、というのが我々受験生の立場だと思いますが、いかがでしょうか。
この問題をよく読むとAが貸主になってますよね。
貸し付けた側が資格を取得した場合に返してもらうという契約は出世払いとは違うように思うのですが。
5
次の事例について、判例の見解によれば要素の錯誤となるか否か答えよ。
Aは,Bが所有する甲土地を1,000万円で買うとの契約を締結した。しかし,Aが甲土地だと思っていたのは乙土地で,実際の甲土地は乙土地より不便で日当たりの悪い土地であった。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

【要素の錯誤】
・その錯誤がなければ、当の本人のみならず、一般人も
そのような意思表示をしなかったであろう。と
言えるような錯誤。
すなわち「法律行為の重要な部分に錯誤があること」をいいます。
「甲土地だと思っていたのは、実は乙土地だった。」
売買の目的物を甲土地にするか、乙土地にするかは
一般人にとっても契約の最重要部分になりますから
この錯誤は【要素の錯誤】になります。
[自説の根拠]ユ-キャンより
6
表見代理についての民法の規定について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
代理権消滅後の表見代理の規定は,法定代理に適用することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。 (民法 111条)
代理には任意代理と法定代理が存在します。
表見代理は109条、110条、112条の3類型があり任意代理の場合は全ての場合に適用されます。
他方、法定代理の場合は109条には適用されません。109条は法律上当然に与えられる代理権であるため、本人が代理人に対して自由にに代理権を与えること自体が不可能だからである。
よって相手がそれを信用するなんてこと自体もあり得ないことになり、相手を保護する必要もないことになります。
[自説の根拠]内田・民法Ⅰ
第109条《代理権授与の表示による表見代理》
第三者の対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。
ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、または過失によって知らなかったときはこの限りでない。
第112条《代理権消滅後の表見代理》
代理権の消滅は、善意の第三者の対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
代理権が消滅(代理関係が終了)した後に代理人と称してした法律行為は無権代理となり、本来であれば本人がその責任を負うことはない。しかし、代理権の消滅は本人と代理人間の内部事情であって、外部からはわかりにくい。
無権代理人が代理権を有しているかのような外観が残存しており、第三者がその外観を信頼して取引した場合には、その第三者を保護する必要がある。
代理権が消滅した後も代理権が存続するかのような外観を取り除かなかったことに本人の帰責性が認められる。
[自説の根拠]●民法112条適用
最判昭44.7.25
最判昭45.12.2
大判明38.12.26
●112条と110条の重畳適用
大連判昭19.12.22
最判昭32.11.29
●法人の代表者の退任登記
最判昭49.3.22
最判平6.4.19
7
条件及び期限について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
現在の配偶者との離婚を条件として他人との間で婚姻の予約をした場合,この条件は無効であるから,無条件で婚姻の予約が行われたものとみなされる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
身分行為に設問のような条件を付けることは公序良俗違反であり、婚姻の予約自体が無効となります。
条件に関する制約として、条件を付けてはいけない行為や、それを条件とすることが認められない事柄があります。
☆条件に親しまない行為(条件を付けてはいけない行為)
①身分行為(公序良俗違反)
②単独行為(原則)
☆条件として認められない事柄
①不法条件(132条):無効
②不能条件(133条):停止条件は無効、解除条件は無条件
③純粋随意条件(134条):債務者の意思のみに係る停止条件は無効
[自説の根拠]「民法Ⅰ総則・物件総論」内田貢(東京大学出版会)
条文です。
(不法条件)
第132条  不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
*法律行為全体が無効という意味(前段)
[自説の根拠]132条
8
消滅時効について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
確定期限の定めのある債権の消滅時効は,その期限が到来した時から進行する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。 (民法 135条2項)
消滅時効の進行;
「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」
※確定だろうが不確定だろうが消滅時効起算点は期限到来の時です。
[自説の根拠]民法第166条1項
9
時効について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債務につき消滅時効が完成した後に,債務者が債務の承認をした以上,時効完成の事実を知らなかったときでも,以後その完成した消滅時効を援用することは許されない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

判例は、債務者が、消滅時効完成後に債権者に対し当該債務の承認をした場合には、時効完成の事実を知らなかつたときでも、その後その時効の援用をすることは許されないと解すべきであるとしています。
[自説の根拠]最判昭和41年04月20日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319124436915336.pdf
関連問題
次の説明は、Aが有する権利の消滅時効に関するに関する記述である。民法の規定及び判例に照らして答えよ。
AのDに対する債権について,Dが消滅時効の完成後にAに対して債務を承認した場合には,Dが時効完成の事実を知らなかったとしても,Dは完成した消滅時効を援用することはできない。
10
行為能力について、適切か否か答えよ。
成年被後見人がした行為であっても,日用品の購入は,取り消すことができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。 (民法 9条)
成年被後見人が単独で成した法律行為は、成年後見人の同意の有無にかかわらず取り消せる。例外として、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消せない。→取り消すことができないとする本問は×となる。
補足すると、取り消された行為は初めから無効であったと見なされ、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。(第121条)
[自説の根拠]第9条
(成年被後見人の法律行為)
第9条
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
(解説)
成人の被後見人(旧法の禁治産者に相当)の法律行為の制約を定めた規定である。かつては全面的に取り消しうるとされていたが、近時の改正により日用品の購入その他日常生活に関する行為については行為能力が認められるようになった。
[自説の根拠]コンメンタール民法/ウィキブックス
11
A(東京在住)は,友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで,AはBに対し,4月1日,そのための手紙を出し,この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。この場合において,AB間の甲の売買契約の成否及びその時期に関する次の記述について,適切か否か答えよ。なお,日付は,本問において,すべて同じ年のものである。
本件手紙が「甲を100万円でお譲りください。」というものであり,これに対し,Bが4月4日,「100万円で甲をお譲りします。」という返事の手紙を出し,この手紙が4月6日にAに届いた場合,甲の売買契約が4月6日に成立する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
1. 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
2. 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
[自説の根拠]民法第526条
つまり本件契約は4月4日に成立するという事ですね。
本件に類似の項目として、「隔地者に対する意思表示」がある。民法§97によると、「隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じる。」(この到達とは、意思表示又は通知を記載した書面が、受領権限のある者の支配圏内に置かれることをもって足りる。)とあり、これは到達主義を取っている。問題文の趣旨を充分に読み取り、どちらの状況を聞いているのかをしっかり把握して回答をする必要があります。
[自説の根拠]民法第97条1項
12
A(東京在住)は,友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで,AはBに対し,4月1日,そのための手紙を出し,この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。この場合において,AB間の甲の売買契約の成否及びその時期に関する次の記述について,適切か否か答えよ。なお,日付は,本問において,すべて同じ年のものである。
本件手紙は「甲を100万円でお譲りください。」というもので,4月3日午後3時にBに届いたが,Aは,本件手紙を投函した後,気が変わり,4月3日午後9時に,「本件手紙が届くかと思いますが,事情により,甲をお譲り願う件はなかったことにしてください。」という内容の文書をファクシミリでBに送信し,当該ファクシミリ文書は同日時にB宅に届いた。しかし,Bは,4月4日,「100万円で甲をお譲りします。」という返事の手紙を出し,この手紙が4月6日にAに届いた場合,甲の売買契約が4月4日に成立する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申し込みは,申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは,撤回することができません。
従ってAによる「ファクシミリでした撤回」は無効となりますので、Bが4/4に承諾を発信した時に,売買契約が成立します。
[自説の根拠]民法524、526条
設問の場合は承諾者が撤回の通知の遅延を遅滞なく発しなければ契約は成立しないのではないのでしょうか。要するに、承諾者はファクシミリの到達が申し込みの到達より遅かったことを申込者に遅滞なく通知しなければ、申込者は撤回できたと思っているはずです。
[自説の根拠]民527条1項及び2項
momosanさんのご指摘の民527は「1項:申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合・・・」となっており、手紙の郵送等で起こり得る所謂「行違い」を想定したものです。
本問では民524が前提であり、条文中の「相当な期間」とは、「申込みを受けた者が諾否を決めるのに考える時間と、承諾の通知が到着するのに通常必要とされる時間の合計」と解されています。
従って本問の場合
①相当な期間を経過していない
②撤回の通知が承諾の前に発信された
以上の事から承諾者が撤回の通知の遅延を遅滞なく発する義務はなく、契約は成立すると考えられます。
因みに民527条文中の「通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは・・」は消印等から判断され、対話者の通知として扱うFAXには該当しません。。
[自説の根拠]民法第524、526、527各条、wiki
申込みは97条1項より隔地者間においては到達主義をとっており、FAXによる撤回が申込みより後に届いているため、民法524条より撤回の効力が生じない。ただ、524条の「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間」の起算点は申込みが到達してからとなるので、FAXによる撤回が申込みと同時かそれより前に到達していれば、撤回は有効と考えられます。従い、この問題は、FAXの到達時間もしっかりチェックする必要があります。
13
利益相反行為について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
後見監督人がある場合でも,後見人と被後見人との利益相反行為については特別代理人を選任しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
民法第860条
第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
民法第826条
1. 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2. 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
関連問題
後見について、適切か否か答えよ。
後見監督人がいない場合,後見人は,自己と被後見人との利益が相反する行為について,被後見人のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
14
虚偽表示に当たる法律行為がされた場合における次の者について,判例の趣旨に照らし「相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効を対抗することができない第三者」に該当するものか否か答えよ。
虚偽の意思表示により譲り受けた目的物を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

第三者に該当する例
1.不動産の仮装譲受人から目的物につき抵当権の設定  を受けた者(大正4・12・17)
2.虚偽表示の目的物を差し押さえた債権者
(昭和12・2・9)
3.仮装債権が譲渡され仮装債務者に債権譲渡の通知が  なされた場合の譲受人(明治40・6・1)
民法94条2項の「第三者」とは、
「虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者」とされています。(大判大正5年11月17日)
**
本問の場合、「目的物を差し押さえた一般債権者」というところが重要で、仮装譲受人の「単なる一般債権者」は、虚偽表示に関し新たに利害関係に至った者とはいえず、94条2項の第三者には当たらないので、注意が必要です。
[自説の根拠]民法94条2項、大判昭和12年2月9日
15
催告について、適切か否か答えよ。
売買の一方の予約における完結の意思表示について期間を定めなかったときに,予約者が相手方に対し,相当の期間を定めて,売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず確答がなかったときは,予約者は,相手方に対し,売買契約の履行を請求することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

催告に対し、確答がないと、予約の効力がなくなるので、履行請求できなくなります。
☆民法556条 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
2  前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。
1
Aは,Bの代理人と称するC(30歳)との間で,B所有の甲土地を買い受けるとの売買契約を締結したが,BはCが無権代理であったと主張して争っている。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Aは,Bに対しては売買契約の履行を,Cに対しては無権代理人の責任として損害賠償をそれぞれ求める訴えを提起するとともに,同時審判の申出をした。第一回口頭弁論期日にBは出頭して争ったが,Cは答弁書等の書面を提出せずに欠席した場合,裁判所は,Cに対する請求について弁論を分離して終結し,A勝訴の判決を言い渡すことができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
同時審判の申出がある共同訴訟では、弁論の分離ができません。
☆民事訴訟法41条1項
共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
2
次の記述について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
他人の不動産を自己の所有と過失なく信じたAが死亡してBがAを相続し,さらにCがBを相続した場合,その不動産が他人の所有であることをC自身が知っていても,A・B・Cの占有を通算して10年を超えれば,Cは,短期取得時効を主張することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

相続による継続占有の時効の援用の場合は、本人の過失を含んで継承するのではありませんでした?
今回の場合はCが他人の所有であることを知っているのになぜ10年で取得できるのですか?
分かる方、解説をお願いします。
↑恐らく条文上は「過失」ではなく「瑕疵」ですね。。
占有者の承継人は前主の占有も併せて主張できます。
判例では、占有に承継があった場合、占有者の善意・無過失の存否は前主の占有開始時点で判断するとしています。
民187-2の「瑕疵」は瑕疵の有無も承継すると解されます。
[自説の根拠]民法第187条1項、2項、最判S53.3.6
間違って送信してしまった。。
従って、本問のCは悪意でも前主が善意なのでそれを承継する為、正解です。
更に複数の前主も承継できるとされる為、A-B-Cでも可。です。
[自説の根拠]民法第187条1項、2項、最判S53.3.6
3
次の記述について、適切か否か答えよ。
Bが善意・無過失・平穏・公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合,,BがCから権利主張をされることなく占有開始時から20年間甲土地の占有を続けたとしても,判例によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
取得時効完成後に第三者が所有権を承継して登記をしても、新たに取得時効が完成した場合、時効取得した者は当該第三者には登記をせずとも対抗できます。
【参考判例】最判昭和36年7月20日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121247868502.pdf
問題文には「占有開始時から20年間」とありますので
Cが移転登記を得てから、新たに時効期間が経過した場合ではなく
Bが20年の時効を主張すると、AとCは当事者の関係となるので、Bに登記が無くてもCに対抗できるのだと思います。
取得時効の起算点は、占有開始時であり、これを任意に繰り下げることはできません。
しかしながら、短期取得時効と長期取得時効の両方の要件を具備した場合、自己に有利な方を選択することはできます。
設問の場合、Bの時効取得が短期取得時効(10年)であれば、時効完成後に登記を備えたCが所有権を取得します。
一方、Bの時効取得が長期取得時効(20年)の場合、時効完成前に移転登記を受けたCは、Bに対抗できません。
したがって、Bは長期取得時効を選択して、Cに甲土地の取得時効を対抗することができます。
[自説の根拠]・短期取得時効と長期取得時効の選択(大判昭和15.11.20)
・取得時効の起算点(最高裁昭和35.7.27)
関連問題
A所有の土地の占有者がAからB,BからCと移った場合のCの取得時効について、民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
Bが所有の意思をもって5年間占有し,CがBから土地の譲渡を受けて平穏・公然に5年間占有した場合,Cが占有の開始時に善意・無過失であれば,Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわらず,Cは10年の取得時効を主張できる。
4
次の事例について、判例の見解によれば要素の錯誤となるか否か答えよ。
Aは,知人のBから頼まれ,借主はBだと思って100万円を貸し付けたが,実は借主はCであった。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

大判大7・10.3
要素の錯誤とは、法律行為の重要な部分についての錯誤のことをいい、錯誤がなければ表意者のみならず一般人もその意思表示をしなかったであろうと考えられる場合をいいます。
設問は、借主はBだと思って100万円を貸し付けたが,実は借主はCであったとなっていますので、法律行為の重要な部分についての錯誤と考えることができると思います。
借主の資力や誠実さ等は返済を受けることのできる可能性に直結しますから、借主が誰であるかの錯誤は「法律行為の重要な部分についての錯誤」に該当します。
5
次の事例について、判例の見解によれば要素の錯誤となるか否か答えよ。
Aは,Bに対し,CのBに対する債務を担保するつもりで自己の所有地に抵当権を設定したが,実はDのBに対する債務を担保することになっていた。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

要素(法律行為の重大な部分)の錯誤
主要な事例のひとつが、人違い。

ただし、個人に重きを置かない場合を除く。
最判S29.2.12
[自説の根拠]勁草書房 民法Ⅰ(我妻榮他)
錯誤(勘違い)による法律行為の無効を主張するには「法律行為の要素(その法律行為の重要部分)」に錯誤があることが必要です。
民法上の法律行為は①動機→②効果意思→表示意思→表示行為、つまり①●が必要になる②●が欲しいと思う③「●を下さい」と言おうと思う④「●を下さい」と口に出す。という流れです。
この過程で、動機の錯誤(①と②)、内容の錯誤(②と③)、表示上の錯誤(③と④)の3つに分けられますが、内容や表示の錯誤は「要素の錯誤」と考えられます。
設問の場合は表示上の錯誤となり、正解は〇です。
6
成年後見制度について、適切か否か答えよ。
未成年後見人が選任されている未成年者については,後見開始の審判をして成年後見人を付することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。 (民法 8条)
さらに、成川式マ六法では、誤りの根拠に、838条2号を挙げています。
***
しかし、ギモンというか、余談というか、、
「未成年」者に「成年」後見人がつく、
未成年なのに、成年被後見人(8条)とされるんですね。
しかも、未成年後見人がいる状態でも。
言葉の本来の意味はどこへ行ってしまうのか、こういうときは、、奇妙です。
[自説の根拠]8条
民法等の一部を改正する法律(法律第61号、平成24年4月1日施行)において、未成年後見人について改正がなされていますので補足します。
・未成年後見人に複数の者を選任することができるようになり(第842条に人数を一人と制限していたが、同条文は削除となった)、法人が未成年後見人になることも可能になりました。
・また、親権停止制度も創設されています。(民法834条の2)
[自説の根拠]民法等の一部を改正する法律 法律第61号
なぜ、未成年後見人が選任されている「未成年者」に、「成年後見人」を付することができるのか、については、未成年の知的障害者が成年に達したときに、未成年後見が終了してしまい、法定代理人が欠けてしまうことを防ぐため、未成年のうちから、成年後見人を選任することができることとしているそうです。
関連問題
民法上の後見について、適切か否か答えよ。
成年後見人の配偶者は後見監督人になることができるが,未成年後見人の配偶者は後見監督人になることはできない。
7
表見代理についての民法の規定について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
権限外の行為の表見代理の規定は,自己の利益を図るためにその権限を行使した場合にも適用することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
民法93条ただし書の類推適用
判例は、代理権の濫用の事例につき、本条ただし書の類推適用を行っている(最高裁昭和42年4月20日判決)。
~~~
代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法第93条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。
[自説の根拠]Wikipedia
(a)代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人はその責任を負う(110条)。
(b)しかし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。(93条但し書き→類推適用)
意思表示自体が無効なので、権限外の行為の表見代理の規定(110条)を適用できず、本人は責任を負わない。
(結論)本問には相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたか否かが書かれていないので、必ずしも表見代理の規定を適用できるとは言えない。
[自説の根拠]民法110条、93条ただし書き
設問の内容を噛み砕いて言うと本人のために権限内の行使をしたのだが、実は代理人の利益を図るためだったと言うもの(代理権の濫用)。
でもこれでは110条(権限外の表見代理)は適用できない。権限内の行使だから(設問は代理の三要素を備えた有権代理であり、無権代理である表見代理には該当しない)。
相手方を110条で保護できないので本問は×
相手方の保護はtigerreyeさんとmassieさんの解説とおり
権限外の表見代理で相手方が悪意有過失であれば本人に帰責しない(110条)。わざわざ93条但書を持ち出して、その意思表示を無効にするのは無意味ですね。
8
無効又は取消しについて、適切か否か答えよ。
詐欺による意思表示をした者が,相手方から,1か月以上の期間を定めて,その期間内に当該意思表示を追認するかどうかを確答すべき旨の催告を受けた場合,その期間内に確答を発しないときは,その行為を追認したものとみなされる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。 (民法 114条)
詐欺による意思表示の場合は、相手方の催告権の制度は存在しないと思います。
催告の制度は不安定な地位に置かれる相手方を保護するものであり、その相手方が詐欺や強迫をした者であるときは保護に値しない。また、詐欺や強迫が、どの時点でその影響がなく判断できるようになっているのかが不明確であるため、催告制度の意味がない。
関連問題
次の説明は、制限行為能力者と取引をした相手方の保護に関する記述である。
制限行為能力者が未成年者の場合,相手方は,未成年者本人に対して,1か月以上の期間を定めてその行為を追認するかどうかを催告することができ,その期間内に確答がなければその行為を追認したものとみなされる。
9
行為能力について、適切か否か答えよ。
補助開始の審判がされる場合においても,補助人は当然に代理権を付与されるわけではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。 (民法 15条2項)
補助開始の審判は必ず、
同意権付与の審判(第17条第1項)
あるいは
「代理権付与の審判」(第876条の9第1項)の一方又は双方が併せておこなわれます。
「代理権付与の審判」のみの場合には『代理権のみ』が認められ、同意権付与の審判のみの場合には同意権・取消権のみが認められます。
双方の場合は『代理権』・同意権・取消権が認められます。
問題文は「補助人は当然に『代理権』を付与されるわけではない」と書かれています。
補助開始の審判があっても「代理権付与の審判」が併せてなければ『代理権』は付与されないため、回答は○になります。
10
重大な過失について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
心裡留保の場合,相手方が表意者の真意を知らなかったとしても,知らないことについて重大な過失がなければ,その意思表示は有効である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。 (民法 98条)
《民法93条》~心裡留保~
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知っていたときであってもそのためにその効力を妨げられない。
ただし、相手方が表意者の真意を知り、または知ることができたときは、その意思表示は無効とする。
となってますので、重大でなくても過失があれば無効です。
上記されているとおり、93条では、心裡留保(簡単に言うと冗談やウソ)を原則有効としながら、
ただし、相手側が表意者の真意を知り(悪意)、又は知ることができたとき(有過失)は、その意思表示は無効とするとなっています。
まとめると
相手側が善意無過失…有効
相手方が悪意…無効
相手方が有過失(過失の重大さは関係なし)…無効
となりますね。
心裡留保(民法93条)
民法では、明らかな冗談や単なる励まし以外の、「ウソ」・「冗談」・「励まし」などは、原則として有効な意思表示とされます。
なぜなら、後になって「あれはウソだ、冗談だ」で済まされるとなると、だれも安心して取引できなくなるからです。
しかしながら例外があって、
1、相手方がウソ・や冗談であることを知っていた場合
2、普通ならウソや冗談だとわかる場合
3、相手側に過失がある場合(よくひっかかるのですが  過失の度合いは無関係です)
は、無効な意思表示とされます。
[自説の根拠]民法93条
11
錯誤について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
和解契約において,代物弁済の目的とした商品の性質に瑕疵があり,和解契約の要素に錯誤がある場合,瑕疵担保責任の規定の適用は排除され,錯誤無効の主張も,和解契約の確定効に反し許されない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
仮差押の目的となっているジャムを、実は粗悪品であったにもかかわらず、一般に通用しているジャムであるという前提に立ってなした和解契約に基ずき、代物弁済の目的とした場合、和解は要素に錯誤があるものとして無効である。
[自説の根拠]昭和33・6・14 民法95条
12
行為能力について、適切か否か答えよ。
負担のない贈与をする旨の申込みを受けた未成年者が法定代理人の同意を得ないでした承諾は,取り消すことができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。 (民法 6条2項)
民法第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
→設問の「負担のない贈与」は(未成年者にとって)単に権利を得るだけの法律行為なので、法定代理人の同意を得る必要はなく(第1項)、取り消す事ができません(第2項)。
[自説の根拠]上記条文です。
13
利益相反行為について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
親が自分が代表取締役をする会社の債務について,親権を行う子に保証をさせた場合は,利益相反行為にならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

☆最判昭和42年4月18日
「民法八二六条にいう利益相反行為に該当するかどうかは、親権者が子を代理してなした行為自体を外形的客観的に考察して判定すべきであつて、当該代理行為をな
すについての親権者の動機、意図をもつて判定すべきでない。」
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122448027010.pdf
親と会社は別人格であるから、親が自分が代表取締役をする会社の債務について、親権を行う子に保証をさせた行為は、外形的・客観的にみて、利益相反取引には該当しない。
[自説の根拠]伊藤塾のサイト
https://www.itojuku.co.jp/shiken/gyosei/kouza/chokuzen/ichimonittou/index.html
14
利益相反行為について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
父母が共同で親権を行う子の所有する不動産を,父の債務の担保に供するためには,特別代理人を選任して,その特別代理人と母が共同で子の代理をする。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

最判昭35.2.25
親権者たる父母の一方に826条1項にいう利益相反関係があるときは、利益相反関係のない親権者と同項の特別代理人とが共同して子の為の代理行為をなすべきである。
15
虚偽表示に当たる法律行為がされた場合における次の者について,判例の趣旨に照らし「相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効を対抗することができない第三者」に該当するものか否か答えよ。
虚偽の意思表示により目的物を譲り受けた者からその目的物について抵当権の設定を受けた者 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

本設問の文言ですが、要は、
94条2項にいう「第三者」にあたるかどうか、と問うているにすぎないシンプルな設問ですよ、
そういう意味で「(虚偽表示の当事者が)無効を対抗することができない」という限定詞が「第三者」にかかっているわけで、そうじゃないと、当事者以外はすべて第三者になってしまうから、
したがって、判例では、虚偽表示の目的物に抵当権の設定を受けたものは新たに法律関係に入った者とされているので、とりあえずは、◎正
その上で、善意・悪意が問題になりますが、ここでは別の話です
[自説の根拠]上掲他、最判昭和55年9月11日民集34巻5号683頁等
元の問題は5択であり、どの肢にも善意悪意の表記がないので、善意である前提だとわかります。また、題意を汲めばmottuuさんの見解になると思います。
しかし抜き出しの単問だと、善意悪意を考慮すべきか判断しにくいですよね。
試験によってクセも違うので、サイトの初級・中級・上級レベルを混ぜて解いていると、どの論点を聞かれているのか混乱することがあります。
その点で、massieさんの疑問ももっともだと思いますよ。
あまりにも間違うので・・・
この場合の『第三者』とは、《当事者および包括承継人以外の者で、虚偽表示の外形を基礎として新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者》です。
《》内の文言は定型フレーズの一つとして必須。
該当例としては
a:不動産の仮装譲受人からの譲受人
b:aからの転得者(aが善意ならbが悪意でも保護される)
c:目的物に対する差押債権者
d:仮装譲受人の不動産に抵当権の設定を受けた者
あとは全て、第三者ではない、と覚えておけばOK
[退室] 100問完成 @宮城県#社労 (13秒前)
お見事!! 本日200問達成記念。大分県・別府温泉(血の池地獄)の写真で一休み♪
1
AはBに対し,自己所有の土地を売却する代理権を与え,代理人欄と委任事項欄が共に白紙の委任状を交付した。この事例に関する次の教授の質問に対する学生の回答として適切か否か答えよ。
(教授)Bは,白紙委任状の委任事項欄にBのCに対する債務を担保するためA所有の土地に抵当権を設定するとの内容を記入し,Cとの間で抵当権設定契約を締結しました。この場合,相手方Cを保護することはできますか。
(学生)私は,AはBに対し,白紙委任状を交付することによりCに対して代理権授与表示をしたといえるから,民法第109条により相手方Cを保護することができると考えます。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

本設問肢のケースなら、
法律構成の違いで、
110条でも保護可能
さらに、
109条・110条の重畳適用も可能
だと思われます
[自説の根拠]プレテスト第15問
白紙委任状の交付は、あたかも代理権の交付を与えたかの外観を生じますから109条が適用されます。
しかしながら、
109条の要件の1つに「表示された代理権の範囲内」という要件があり、設問ではこれを満たしてはいません。
ところが109条が適用されて表見代理が成立すると、基本代理権として110条の適用が認められています。
これを109条と110条の重畳(ちょうじょう)適用といい、判例では、109条が成立することで、「代理権の範囲を超えて」という部分を110条で補えるとされています。
申し訳ありません、根拠を書き忘れました。
最判昭和45年7月28日
民法1 総則・物権総論 内田貴「著」参考
2
Aは,Bに対し,自己所有の甲土地を売ったが,この売買はBの詐欺によるものであった。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
※【問題訂正】問題を修正させて頂きました(2010/08/03)。
AはAB間の売買を取り消すとの意思表示をしたが,その前に,BがCに対し,この土地を売った。Cは,Bから所有権移転登記を受けていなくても,BC間の売買契約当時,AB間の売買がBの詐欺によるものであることを知らなかったときは,Aに対し,甲土地の所有権取得を主張できる。
この場合において,詐欺のためAに動機の錯誤があり,それが契約時に表示されていた場合は,Cは,例えBC間の売買契約当時,錯誤の事実を知らなかったとしても,Aからの甲土地の返還請求を拒むことはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年08月03日)

錯誤無効が善意の第三者に対抗できるかという点にはいろいろ議論があるようですが、判例では、詐欺や虚偽表示の場合のように第三者保護規定はなく、善意の第三者にも常に対抗できるとしている。(大判大11.3.22)
[自説の根拠]自説の根拠は、wikibooks-民法95条
詐欺による取消しと、錯誤による無効は、表意者が選択できるという学説が多いようです。
詐欺師による転売→ドロンの流れにも錯誤無効を主張すれば救いはありますね。
[自説の根拠]詐欺による意思表示 – Wikipedia
民法95条(錯誤)には、
96条(詐欺または脅迫)3項のような規定(第三者の保護)がないので、錯誤無効の主張は、善意の第三者に対抗できるとされています。
つまり、
「Cは、たとえBC間の売買契約当時、錯誤の事実を知らなかったとしても、Aからの甲土地の返還請求を拒むことはできない」となります。
よって設問の正解は〇となります。
※96条3項
「前二項の規定による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することはできない。」
[自説の根拠]大判大11,3,22 民法95条、96条3項
3
消滅時効について、適切か否か答えよ。
商行為によって生じた債権で履行遅滞になったものについて,債務者が分割弁済をする旨の民事調停が成立したときは,当該債権の時効期間は10年となる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

☆民法174条の2第1項
確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
補足です。
●民法174条の2第2項
前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

設問の事例では、『履行遅滞になった』債権について、民事調停が成立しているということなので、2項の要件も満たしています。
従って、商行為によって生じた債権につき、本来、時効期間が5年であるところ、調停成立によって、10年の時効期間となります。
[自説の根拠]民法174条の2第1項、同2項
4
消滅時効について、適切か否か答えよ。
時効の完成後に,そのことに気付かないで債務を弁済した債務者は,債権者に対して,弁済金を不当利得として返還請求することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
債務につき消滅時効が完成した後に、債務者が債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかったときでも、以後その完成した消滅時効の援用をすることは許されない。
との、判例があるので、このような請求は出来ないかとおもわれます。
[自説の根拠]昭和41・4・20 民法145条
補足させて頂くと、時効完成後の「弁済」が時効完成後の債務の「承認」と解される。という判例ですね。
∴信義則上もはや時効を援用することは許されませんので問題文は誤りです。
[自説の根拠]最大判S41.4.20
5
無効又は取消しについて、適切か否か答えよ。
強迫を受けてした動産売買契約を取り消した売主は,取消し前に買主から当該動産を善意かつ無過失で買い受けた者に対して,所有権に基づいて,当該動産の返還を求めることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
mottuu さんありがとうございます。
強迫の意志表示の取消しの効果
動産取消し前の善意の第三者 即時取得が成立すると取消すことができない
不動産取消し前の善意の第三者 取消すことができる(登記の有無不要)
oyajida さん
の上の整理、賛成です。すっきりしていて。
追記:動産の場合の妥当性について
考えてみれば、A-B間の都合(強迫)とB-C間の都合(動産取引の安全)とは別問題であり、利益衡量の問題ともいえます。一般的に動産の価値は低い、瑕疵ある意思表示の問題はA-B間にあることで、転得者Cによる取引行為(B-C間)そのものはあくまで有効、などより、取引の安全という法的安定性の見地からすればCを保護する要請が強い。
そこで、上記結論が妥当である、となるのでしょう。
[自説の根拠]司法協会『民法概説』、田山『物権・担保物権』ほか
即時取得の要件を一応書いておきます。
1 目的物が動産であること。(公示制度が完備されている物は除く。登記や登録を対抗要件とする、登記 登録済みの船舶、航空機、自動車など。)
2 前主との間に有効な取引関係があること。
3 前主に占有があること、前主が無権利であること。
4 平穏・公然・善意(186条1項で推定される。)無過失(188条で推定される。)に占有を取得したこと。(占有改定は除く。)
3の前主の無権利が、脅迫取消の遡及効果により成立して即時取得となりますね。
6
取得時効について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
所有権以外の財産権についても時効取得は可能であるが,財産権のうち債権に関しては占有を観念できないので,時効取得することはない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。 (民法 167条2項)
所有権以外の財産権の取得は地上権、地役権など明文の規定があります。
判例では借地権(債権)は時効取得が可能としています。
[自説の根拠]民法第163条、最判S43,10,8
関連問題
次の説明は、民法上の時効に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
取得時効の対象となるのは所有権だけであり,所有権以外の物権及び債権は,対象とはならない。
7
権利能力なき社団について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
代表者の定めのある権利能力なき社団は,その名において訴え,又は訴えられることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

法人でない社団等の当事者能力:
法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
[自説の根拠]民事訴訟法第29条
「代表者又は管理人」とは、肩書きのことではなく、財産の処分について、全構成員から委任を受けている者のことをいう。
[自説の根拠]権利能力なき社団 – Wikipedia
8
民法上の代理について、適切か否か答えよ。
自己契約及び双方代理は,債務の履行行為及び本人があらかじめ許諾した行為を除き原則として効力を生じないが,本人の保護のための制度であるから,無権代理行為として,本人が追認すれば有効になる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。 (民法 108条)
正しい記述です。
[自説の根拠]民法第108条、116条
確認のためにコメントさせていただきます。
iiikkkaaaさんのコメント
第108条「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為」第116条「契約の時にさかのぼってその効力を生ずる」
自己契約及び双方代理は、
事前に「許諾」をしても、
事後に「追認」をしても、
どちらでも有効である。
この解釈でよろしいでしょうか。
「本条(民108条)は、本人の利益を保護するために代理権を制限した規定なので、本人があらかじめ許諾をしていた場合には、代理人が自ら相手方となり又は相手方の代理人になってした行為は有権代理行為として有効である。」

上記判例が、自己契約及び双方代理に関して「事前の許諾」がある場合の有効性を示したものです。
これを基に考えると、事前の許諾がない場合、その行為は“無権代理行為”となるが、116条の規定により「事後の追認」によって有効になる。そしてその趣旨は、本人の保護のためである、と言えます。
[自説の根拠]大判大正8年12月26日
9
民法上の代理について、適切か否か答えよ。
復代理人は,本人の代理人であって代理人の代理人ではないから,復代理人が代理行為をするに当たっては,本人のためにすることを示せば十分である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。 (民法 107条)
☆民法107条
復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
2  復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
関連問題
無権代理と相続について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
無権代理人の地位を相続した後に本人の地位をも相続した第三者は,無権代理行為の追認を拒絶することができる。
10
法人の剰余金又は残余財産について、適切か否か答えよ。
社員に残余財産の分配を受ける権利を与える旨の一般社団法人の定款の定めは,その効力を有しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(定款の記載又は記録事項)
第11条 一般社団法人の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 名称
三 主たる事務所の所在地
四 設立時社員の氏名又は名称及び住所
五 社員の資格の得喪に関する規定
六 公告方法
七 事業年度
2 社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しない。
11
利益相反行為について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
父の相続に当たり,母が数人の子の親権者として遺産分割の協議をした場合,母が取得する財産はないとする遺産分割であれば,利益相反行為にならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、親権者の意図やその行為の現実の結果のいかんにかかわらず、利益相反行為にあたる。
[自説の根拠]昭和48・4・24 民法826条
この場合、母が「取得する財産はないとする」のではなく「相続放棄」をすれば、利益相反行為にならない。
「共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者の後見をしている場合において、後見人が被後見人全員を代理してする相続の放棄は、後見人みずからが相続の放棄をしたのちにされたか、又はこれと同時にされたときは、民法八六〇条によつて準用される同法八二六条にいう利益相反行為にあたらない。」
[自説の根拠]最判昭和53年2月24日第二小法廷
genkidazoさんのコメントは誤りです。
そもそも、相続放棄と遺産分割協議では行為の性質が異なりますので、引用判例は直接的には関係ありません。
(引用判例は一律全員相続放棄するという事案で、親権者も相続放棄していれば利益相反にならないという話です。親権者が相続放棄しても、子が遺産分割するなら利益相反になります。)
親権者が相続放棄によって相続人でなくなったとしても、数人の子供の利害対立が生じうることから、利益相反に該当するというのが最判昭48.4.24の見解です。
[自説の根拠]最判昭48.4.24判時704号50頁
figureno5さん、ありがとうございました。
ご指摘通り本問は「遺産分割協議」で、「相続放棄」ではありません。(先の私のコメントは削除ください)
「親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、かりに親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていなかつたとしても、同条二項所定の利益相反する行為にあたる」
12
民法上の後見について、適切か否か答えよ。
成年後見人になる者は必ず家庭裁判所の選任によるが,未成年後見人になる者は必ずしも家庭裁判所が選任するとは限らない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

第839条
1. 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2. 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
第840条
前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
[自説の根拠]民法第839条,第840条
関連問題
後見について、適切か否か答えよ。
未成年者に対して親権を行う者がないときは,家庭裁判所が職権で未成年後見人を選任する。
13
民法上の後見について、適切か否か答えよ。
成年後見人の配偶者は後見監督人になることができるが,未成年後見人の配偶者は後見監督人になることはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。 (民法 8条)
後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
よって、成年でも未成年でも後見人の配偶者は後見監督人にはなれません。
[自説の根拠]民法850条
関連問題
成年後見制度について、適切か否か答えよ。
未成年後見人が選任されている未成年者については,後見開始の審判をして成年後見人を付することはできない。
14
Aから動産甲を購入する旨の契約を締結したBが,契約締結時に代金のうち一部を支払い,その後,残代金の弁済を提供して動産甲の引渡しを求めたにもかかわらずAがこれに応ぜず,それから相当期間が経過した後にAがその住所を去って行方が分からなくなった場合について、適切か否か答えよ。
Bは,債権者を確知することができないとの理由により,残代金を供託してその債務を免れることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
債権者が覚知できないとは、kihokihoさんやhiro445さんのいう、債権者が誰だかわからないことを表します。
債権者がAだとわかっている以上、「覚知できないこと」を理由に供託するのは×です。
ただし、行方不明とのことなので、494条前段の「受領することができないとき」に相当し、こちらを理由にすれば供託できると思われます。
×覚知→○確知
です。
申し訳ございません。
供託は、国家に対する寄託であり、法令の規定(根拠法令)に基づくものでなければできない。
民法494条を根拠法令とする供託は、
①受領拒否 (債権者が弁済の受領を拒むとき)
②受領不能 (債権者が受領することができないとき)
③債権者不確知 (弁済者が過失なく債権者を確知することができないとき)
の場合である。
本問は、債権者不確知を理由とする供託はできない。受領不能を理由とする供託はできる。
15
取消しについて、適切か否か答えよ。
相手方の詐欺によって不動産の売却を承諾した者は,その承諾を取り消す前に善意の第三者がその不動産を譲り受けて登記を備えた場合において,取消しをその第三者に対抗することができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

詐欺による取消しは、取消前の善意の第三者には対抗できない。
善意の第三者にとって、被詐欺者は無権利者になるようです。よって、登記がなくても善意なら対抗できるとされます。
[自説の根拠]民法96条
民法96条3項
「詐欺による意思表示の取消しは、善意の第3者に対抗(主張)できない」
詐欺に基づいてなされた意思表示の有効性を信頼して、新たに取引に入った「第三者」の期待が保護される。
ただし、「取り消し前」に限られる。
なお「第三者」とは
詐欺による意思表示に基づいて生じた法律関係について、その当事者との新たな利害関係に至った者なので、「反射的利得者」は該当せず。
たとえば、一番抵当権が詐欺によって放棄された二番抵当権者や、詐欺を受けて代物弁済をした連帯債務者以外の連帯債務者。
[自説の根拠]民法96条3項

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