5-12 ○問題演習 民法(債権) 90問 上級

1
次の記述について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
売買契約の売主は,履行期について特約がない限り,売買目的物を引き渡す前において,買主に対して有する売買代金債権を自働債権,買主に対して別途負っている借入金債務を受働債権として,対当額で相殺することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

本問の場合、双方の債権が弁済期にないから、相殺できないと考えてよろしいでしょか。
売主が売買の目的物を引き渡していないため、買主に対する売買代金債権に
買主の『同時履行の抗弁権』が付着しているからです。
『売買目的物を引き渡す』という自己の債務の提供をしない限り、
売主からの相殺はできません。
[自説の根拠]民法533条
●売買契約の売主は,履行期について特約がない限り,売買目的物を引き渡す前において,買主に対して有する売買代金債権を自働債権,買主に対して別途負っている借入金債務を受働債権として,対当額で相殺することはできない。
[自説の根拠]大判昭13.3.1より
2
債権者代位権について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債権者は,債務者が自ら当該権利を行使している場合でも,その方法が不誠実かつ不適当である場合には,債権者代位権を行使することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。 (民法 502条)
債権者代位権は、債権を保全するためにある。
債権者代位権は,裁判外でも裁判でも行使することができますが,判例によれば、債権者の権利行使が、“保全に適切でかつ必要である限りにおいて”、とされています。(最高裁・昭和44.6.24)
【債権者代位権の認められる要件】
1、債務者の権利を代わって行使することが債権の保全に必要だということ。
→債務者の無資力を要件とし,債務者の資力が債権者の債権を弁済するのに十分ではないときに代位行使が認められる。(民法423条1項本文参照)
2、債務者が未だその権利を行使していないこと。
3、債権が弁済期に達することは原則として必要だが、裁判上の代位は弁済期前でもすることができる。(民法423条2項参照)
4、債務者の一身専属権でないこと。(民法423条1項但書参照)
[自説の根拠]自説の根拠は、宅建○×問題1000本ノック
信義則 民1-2によって、その法律行為(権利行使)自体が無効ともいえると思います。
最高裁判例要旨より
「債務者がすでに自ら権利を行使している場合には、その行使の方法または結果の良いと否とにかかわらず、債権者は債権者代位権を行使することはできない。」
[自説の根拠]最判昭28年12月14日 民集7-12-1386
の判例要旨です。
関連問題
次の説明は、債権者代位権に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
債務者が既に自ら権利を行使している場合でも,その行使の方法又は結果の良否によっては,債権者は,債権者代位権を行使することができる。
3
次の記述について、適切か否か答えよ。
給付判決確定後にそれと実体的法律関係の矛盾が判明したが,それが故意による判決効の詐取に該当しない場合には,再審の訴えによらない限り,その判決に基づき行われた給付について,不当利得の返還は請求できない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

これは、既判力のことを聞いているのではなく、判決の執行力について問われているのだと思います。
なぜなら、「再審の訴えによらない限り」と書いてあるように、後の裁判のことは関係ないと思います。
判決の執行力 確定給付判決の主文などに掲げられた給付請求権を、民事執行手続によって実現できる根拠となる効力
なにぶん、初学者ゆえ、間違っていたらすみません。
判決の執行力は、要するに、確定判決に基づいて強制執行ができる効力のことを表しますので、設問肢に「その判決に基づき行われた給付について」とあり、この肢は給付(判決の執行)後についての記述であることが明らかですから、少なくとも執行力は問題にならないと思います。
この肢は、間違って実際の法律関係と異なる内容の判決を出してしまった場合でも、裁判所はその判決内容に拘束されるので、当該判決に基づく給付を受けた人に対して、仮に「その給付は法律の規定に反しているので不当利得だ」と返還請求(これが「後の裁判」ですね)を起こしたとしても、その請求は棄却されてしまうよ、と言っているのですから、既判力で説明がつくと思いますが。
こう言っても判り難いと思うので、事例にして説明すると、まずXがYに対して「Yに貸した借金100万円を返せ」と訴訟を提起し、Yが裁判期日に出廷しなかったためXへの給付判決がなされ、確定し、裁判所によるYへの強制執行もなされたとします。
しかし、実は裁判前にYがXに100万円を返済しており、Xがそれを何らかの手落ちで確認できずに訴訟を行っていたとしたら、Yは当然、Xに「100万円はもう払ったはずだろ。返せ」と言いたくなりますよね。
それを、再審の訴えではなくて不当利得返還請求として訴訟したとしたら、Yの請求は、前の確定判決(YはXから借りた借金100万円を返しなさい)と矛盾するので、裁判所としては「その100万円は“Yに借金100万円がある”と判決したことに基づいてXが貰ったものなので、不当利得でも何でもないんだよ」と判決しないといけない…ということを、この設問肢は言っているんですね。だから、既判力の問題なんです。
[自説の根拠]参考:関西大学法学部・栗田隆/民事訴訟法/判決の効力2
http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/procedure/lecture/JudgementEffect2.html
hitoshiさん
そうですね。執行力は給付が行われた時点で終わっていました。私の勘違いです。不当利得の返還こそが、後の裁判の焦点ですものね。詳しい解説、有難うございました。これが他の初学者の為にも役立つコメントであることを強く信じております。
4
売主の担保責任について、適切か否か答えよ。
強制競売も売買であるから,担保責任は通常の売買と同じように課される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
民法の関連条文を引用。
(強制競売における担保責任)
第五百六十八条 強制競売における買受人は、第五百六十一条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
2 前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
3 前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。
(売主の瑕疵担保責任)
第五百七十条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
強制競売の場合、「通常の売買と同じ」でない規定(民法568条2・3項、570条但書)がありますので、設問は×となります。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文です。
●民法570条;売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。→競売の場合には,買受人はある程度の瑕疵を覚悟しなくてはならない。●566条;売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
[自説の根拠]民法566、570条より
5
AがBに土地を賃貸し,Bが同土地上に建物を建築して所有する場合において,AがCに同土地を譲渡したときの法律関係について,判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
Bは,建物の所有権の登記をしているが土地の賃貸借の登記はしていなかった。この場合,Cが所有権移転登記を経ていないときは,Bは,Cに対し賃料支払を拒むことができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

hitosiさんの解説はBとCが逆でしょうか?。
あ、そうですね。すみません。
本件でBがCへ対抗できるのは、BがA,Cへ二重払いになることを防ぐ趣旨です。
6
詐害行為取消権について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は,詐害行為取消権行使の対象となり得る。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当。
[自説の根拠]最判H11.6.11
【判決要旨】
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。そうすると、前期の事実関係の下で、被上告人は本件遺産分割協議を詐害行為として取り消すことができるとした原審の判断は、正当として是認することができる。(最小判平成11.6.11)
===
但し、相続放棄については詐害行為取消権の対象とならないとする判例がある。(最小判昭和49.9.20)
詐害行為の取消権の対象となる行為は、債務者のなした【財産権を目的とする法律行為】であることが必要。
よって、婚姻、相続の承認・放棄といった身分行為は、財産権を目的としない法律行為であり、第三者の介入は不適当なので対象とならない。
判例により、共同相続人間でした遺産分割は、詐害行為取消の対象となる。
7
注意義務について、適切か否か答えよ。
株式会社の社外取締役は,善良な管理者の注意をもって任務を遂行しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

正しい記述です。
株式会社と役員等との関係:
「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。」
受任者の注意義務:
「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」
[自説の根拠]会社法330条、民法644条
8
注意義務について、適切か否か答えよ。
親権者は,善良な管理者の注意をもって子の財産を管理しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。 (民法 644条)
第827条
親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。
●善良な管理者の注意義務(善管注意義務、第400条)
– 職業や生活状況に応じ、要求される注意義務で原則的な注意義務である。
義務を欠いた場合の過失を抽象的過失という
著しく欠いた場合を重過失、多少なりとも欠いた場合を軽過失という。
o 留置権者による留置物の保管(298条)
o 特定物引渡しの債務者(400条)
o 委任契約の受任者(644条)
o 事務管理者(698条の反対解釈)
o 有償寄託の受寄者
●自己の財産におけると同一の注意義務
– 固有財産におけるのと同一の注意義務
義務を欠いた場合の過失を具体的過失という。
o 無償寄託の受寄者(第659条)
o 相続財産の管理者・相続人(第918条1項)
o 限定承認者(926条1項)
o 相続放棄した者(940条1項)
o 財産分離請求後の相続人(944条1項)
[自説の根拠]wikipedia
どちらかというとこの問題は未成年後見人と親権者との対比の問題だとおもうんですが
前者は善管注意義務ですし
民644の準用なのでいいのかもしれませんが
[自説の根拠]民法869
「自己の財産におけると同一の注意義務」と「忠実義務」とは一緒のものなのでしょうか?勉強をはじめたばかりですので疑問に思ったのですが・・・
ご教示よろしくお願いいたします。
関連問題
事務管理について、適切か否か答えよ。
管理者は,自己の財産に対するのと同一の注意をもって管理に当たらなければならない。
9
保証(連帯保証を除く。)について、適切か否か答えよ。
主たる債務者の委託を受けて保証をした者は,主たる債務が弁済期にあるときは,自ら弁済をする前であっても主たる債務者に対して求償権を行使することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。 (民法 707条2項)
シンプルに解けば、
本問は「主たる債務が弁済期にあるときは」といっているので、
460条2号本文に該当(単純明白、明文規定に該当しているわけだから)
よって、◎(事前求償できる)
[自説の根拠]単純な、条文問題です
事前求償権…【委託を受けた保証人に限り】、一定の場合、例外的に【弁済の前に】主たる債務者に対して求償権を行使することができる。
[自説の根拠]自説の根拠は、459条、460条。
民法
第460条
保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる
一 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき
二 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない
三 債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後10年を経過したとき
[自説の根拠]ご参考まで。
民法 第460条(委託を受けた保証人の事前の求償権)
関連問題
保証について、適切か否か答えよ。
保証人が検索の抗弁権を行使するためには,主たる債務者に弁済の資力があること及び主たる債務者の財産が執行の容易なものであることを証明する必要がある。
10
賃貸借契約について、適切か否か答えよ。
建物所有を目的とする土地の賃借人が,当該土地上に建物を建築した後,賃貸人の承諾を得ずに建物を第三者に賃貸し,第三者が実際に建物の使用を開始した場合には,土地の賃貸人は,土地の賃借人に対し,土地の無断転貸を理由として土地の賃貸借契約を解除することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
賃貸借の無断譲渡・転貸があっても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足ら
ない特段の事情があるときは、賃貸人は解除できない。(最判昭28.9.25)
(判決要旨)
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第612条第2項により契約を解除することはできない。
===
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
民法612条2項の「使用又は収益」かどうかが問題となります。借地上の建物の賃貸は「使用又は収益」となりませんが、借地上の建物の売買は、「使用または収益」に該当するというのが判例だと思います。
の例は、借家についての事案です。
本問は借地権に関してで、iiikkkaaa さん の事案です。
賃貸人が賃借人に対して、借地の上に建物を建築所有して土地を利用することを認めている以上、賃借人がその建物に居住しようが、第三者に賃貸して利用させようが、土地の使用方法としては何の問題もなく、両者の信頼関係を損なうものではないとの判断によります。
、賃貸人の承諾なく売却してしまうと無断譲渡となってしまい、違法です
[自説の根拠]大判昭和8年12月11日
http://www.erajapan.co.jp/lend/useful/q_a/vol/090.htm
関連問題
Aは,その所有する不動産を目的として,Aの債権者であるBのために譲渡担保権を設定し,所有権移転登記をした。この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
目的不動産が,Aが第三者から賃借する土地上の建物であり,Bが当該建物の引渡しを受けて現実に使用収益をする場合であっても,いまだ譲渡担保権が実行されておらず,Aによる受戻権の行使が可能な状態にあれば,敷地について賃借権の譲渡又は転貸は生じていないから,土地賃貸人は,賃借権の無断譲渡又は無断転貸を理由として土地賃貸借契約の解除をすることができない。
11
履行不能について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債務者は,損害賠償義務を免れるために,履行不能が自己の責めに帰することができない事由によるものであることを主張立証しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

債務者に立証責任があります、正しい。
—–参考判例—–
「債務が履行不能となつたときは、債務者は右履行不能が自己の責に帰すべからざる事由によつて生じたことを証明するのでなければ、債務不履行の責を免れることはできない」
[自説の根拠]最判S34.9.17(売買代金返還請求)
義務に違反したのですから、正当な理由を立証できない限り、責任を負うのは自然なことかと思います。
損害賠償については原告側に、債務不履行に関しては被告側にそれぞれ立証責任があるということですね!
12
弁済について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
弁済を受領する権限のない者に対する弁済は,債権の準占有者に対する弁済として有効になる場合を除き,債権者に対し効力を有しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
前条の場合を除き、弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。 (民法 479条)
例えば、債権者が双子の弟で、瓜二つの兄貴が代わりに弁済を受領した場合、弟にその弁済を渡した時は有効で、兄貴が持ち逃げした時は無効。半分を渡した時は、半分だけ有効になる。
イメージをつかめば、条文を理解するのも楽ですよね。
「準占有者に対する弁済」以外に
「受取証書の持参人に対する弁済」もあると思うのですが、
それで間違いなのではないでしょうか。
なるほど、受取証書の持参人に対する弁済(480条)というのもありますね。
この持参人が無権限者であった場合でも、真正の受取証(偽ものはダメ、判例)を持参している場合は、原則、この弁済は有効ですね。善意無過失が要求されますが(真の債権者の方で、債務者の悪意又は有過失を立証しなければならない)。
真正の受取証がある場合の弁済者は480条で、478条より厚く保護されています
ただこれも「債権の準占有者に対する弁済として有効になる場合」に大きくは含まれ、そのうちの特殊ケースになるかと。
[自説の根拠]本設問の根拠条文は479条で妥当なのかと思います。
関連問題
重大な過失について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債権の準占有者に対する弁済がその効力を有するのは,弁済者が善意であり,かつ,重大な過失がなかった場合である。
13
債権の目的について、適切か否か答えよ。
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは,その選択権は,特約のない限り,債権者に帰属する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
債権者ではなく、債務者ですので誤り。
選択債権における選ぶ権利;
「債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。」
[自説の根拠]民法第406条
<事例>
少年Aが草刈りをしている際に、自己の所有する鎌を貯水池に落とし、その後、神様Bが現れ「お前の斧は金の斧か、銀の斧か」と尋ねた事例において、少年Aが落としたのは斧ではなく鎌なので、明らかに神様Bはカマをかけているとも思われるが、そもそも民法406条では、少年Aと神様Bの間に特約がない限り、金か銀かの選択権は神様Bに帰属すると考えられる。
なお、この後、弁済期に達した時点で、少年Aは神様Bに対し催告をし、それでも神様Bが決めかねている場合は、選択権は少年Aに移転する。
hachikunさん…何という素敵な事例!
何も現実に置き換える必要はない。架空のエピソードで記憶するという手は使えそうです。
司法試験問題ですが,今となっては行政書士試験受験者全員が知っている問題と思います。懸賞広告で「厳正なる抽選をもって」「当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます」というやつです。債務者は広告主です。
上の”神様”の例ですが,カマをかけているのは知っているということですから,”神様”にも当然返還義務があり,ことさら詐欺してその一方の人に別のものを返したのであれば,他方からは,後に,不法行為に基づく損害賠償請求(民709)を受けます。
14
請負契約について、適切か否か答えよ。
請負人が注文者に対して報酬請求をした場合に,仕事の目的物に瑕疵があり,注文者が瑕疵の修補を請求したときは,注文者は,報酬の支払を拒むことができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

注文者が修補請求をした場合は修補がされるまでの間、同時履行の抗弁権が認められ、報酬全額の支払いを拒絶できると解されています。
[自説の根拠]民法第634条1項、533条
この問題はおかしいような気がします。民法634条2項では、「注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。」としています。533条は同時履行の抗弁の規定ですが、「この場合」とは、損害賠償請求した場合を指しているのであり、単に瑕疵修補請求をした場合を指しているわけではないのです。
追記
あくまで本問の場合、請負人の先履行義務に基づくものとして修補がなされるまで報酬支払拒絶権があるのであり、同時履行の抗弁や、634条の問題ではない。
「請負人が注文者に対して報酬請求をした場合に,仕事の目的物に瑕疵があり,注文者が瑕疵の修補を請求したときは,注文者は,報酬の支払を拒むことができる」
判例、学説ともに設問文言を支持。
「請負人カ既ニ為シタル工事ニ瑕疵アリタルトキハ注文者ハ其瑕疵ニ付キ損害賠償ヲ請求シ又同時履行ノ抗弁ヲ為スコトヲ得ル」大判大正8・10・1
民法632条に根拠を求めた否定説として
「請負人の先履行義務に基づくものとして修補がなされるまで報酬支払拒絶権がある」
私見だが本問がおかしいとは思わない
[自説の根拠]前段 民法634条1項、同533条。後段 広中俊雄「債権各論講義・第6版」(有斐閣 1994)270項
15
契約当事者間で債務の履行を請求する訴訟において請求原因として主張立証すべき事実について、適切か否か答えよ。
不動産の売買契約に基づき目的物の引渡しを請求する訴訟においては,売買契約が締結されたこと及び同契約の締結当時目的物の所有権が売主に帰属していたことを請求原因として主張立証しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
民法560条で他人物売買が認められており、売買契約時に売買の目的物の所有権は売主にある必要はないので、請求原因とはなりません。
33点
今勉強中の仲間に、息抜きコメントを送る
1
AはBと売買契約を結び,目的物を引き渡して100万円の代金債権を得た。Aに売掛金債権を持つ債権者Cは,このAのBに対する代金債権を差し押さえて取立訴訟を提起した。Bは,Aに対して80万円の反対債権を有していたため,これをもって相殺することを主張したい。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Bは,Aに対する反対債権の弁済期がCの差押えよりも先に到来していることを主張立証しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
最大判S45.6.24 民集24巻6号587頁 より抜粋。
「債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、差押後においても、右反対債権を自働債権として、被差押債権と相殺することができる。」
判例によれば、設問のような弁済期の到来と差押えの先後関係を立証する必要はないことになります。よって×。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
Aに対する反対債権の弁済期が到来して相殺適状であれば、その弁済期がCの差押さえよりも後でもかまわないということでしょうか?てっきり弁済期が到来していなければダメと考え×にしてしまいました。
【受動債権が支払の差止めを受けた場合 511条】
支払いの差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押権者に対抗することができない。
補足の用語解説(第三債務者)
AがBにお金を貸し、BがCにお金を貸していると、Bから見るとCは債務者ですが、Aから見るとBが債務者で、Cが第三債務者になります。
(例)債権者(A)の「債務者(B)の銀行預金」の債務者たる銀行(C=第三債務者)
反対債権を自動債権として相殺するには、弁済期の到来と差し押さえの先後関係ではなく、差し押さえ時の前に反対債権を有していたかがポイントということでしょうか?
反対債権の弁済期ではなく、反対債権の発生自体が差押えの前であることを主張立証する必要があります。
2
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合における弁済充当について、適切か否か答えよ。
AがBに100万円を支払ったが,弁済の充当指定をしなかったので,Bが受領の時にこれを甲債務の弁済に充当する旨をAに告げた場合,Aは,直ちに異議を述べて,乙債務の弁済に充当することを指定することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。 (民法 488条2項)
>yoshisanさん
488条3項を弁済者の指定充当権限と解するのは、同2項本文と矛盾し、公平の観点から充当順位を定めた法の趣旨からも無理筋。
指定充当権限は
Ⅰ,まず弁済者が
①給付の時に ②意思表示により ③充当すべき債務を指定できる(1項・3項)
Ⅱ,次いで弁済受領者が
①給付の受領時に ②意思表示により ③充当すべき債務を指定できる(2項本文・3項)
Ⅲ,さらに弁済者は
①弁済受領者の指定時、直ちに ②異議を述べて ③指定を失効させることができる(2項但書)
[自説の根拠]以降通説は>iiikkkaaa さんの通り。
※なお同条及び次条は、一義的な明確性に欠けるため改正すべきとの学説は多い。
弁済の際に、
弁済者が充当すべき債務を指定できる。弁済者が指定しなかった場合、弁済の際に債権者が指定することが出来る。その際に、弁済者が直ちに異議を述べた場合はこの限りではない。
Aは異議は言えるけど、指定はできないのではないでしょうか。
3
履行遅滞による契約解除のための催告について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
催告に当たっては,債務者に対して,債務の履行を促し,履行がなければ解除する旨を通知することを要する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。 (民法 412条)
催告して相当期間が経過した後、あらためて解除の意思表示が必要です。
但し、「催告期間内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約を解除する」との意思表示も可能です。説問の様に必須ではありません。
また特約で「履行の催告を要しないで直ちに契約を解除することができる」という当事者の合意をあらかじめしておくことも有効です。
[自説の根拠]最判S40.7.2 他
民法の関連する条文を挙げておきます。

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

催告に必要なのは、「○日以内に××債務を履行しなさい」という内容だけで、「期間内にきちんと履行しなければ契約を解除しますよ」と書く必要はない、ということですね。
ちなみに、「○日以内に」という部分が抜けていても、催告としては判例上有効で、相当期間を開ければ契約を解除することができますし(大判S2.2.2 民法判例百選〔初版〕45事件)、iiikkkaaa さんがおっしゃるような意思表示や特約も有効です(解除の意思表示につき大連判M43.12.9、無催告解除の特約につき最判S40.7.2等)。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文です。
催告の際には「解除」とまで記載しなくともよい
4
履行遅滞による契約解除のための催告について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
賃貸人が,賃貸借契約の終了を原因とする賃貸借目的物の返還を請求しつつ,仮に賃貸借契約が存続しているとすれば一定額の賃料を支払うべき旨を催告しても,この催告は無効である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
それと、この問題は合格者の大部分は正解していますので、大事にして下さい。
(履行遅滞等による解除権)
第541条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
判例は、解除の前提としての予備的催告の効力を、本問同様のケースの賃料の催告に認めています
(最三判昭40.3.9)
[自説の根拠]上記判例
関連問題
借地借家法の適用を受ける不動産賃貸借契約の終了及び更新について、適切か否か答えよ。
判例によれば,土地の賃借人が賃料の支払を遅滞したときは賃貸人は催告を要せずに土地の賃貸借契約を解除することができる旨の特約は,借地借家法の強行規定に反し無効である。
5
不法原因給付について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
登記された建物の所有者がその建物を不法な原因によって贈与し,引き渡した場合であっても,当該贈与契約に基づく所有権移転登記を経由していないときは,受贈者は贈与者からの当該建物の明渡請求を拒むことができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

hitosi様 ご教授ありがとうございます。
前2行の解説を基に今一度2つの判例を見直してみてやっと自分の間違いが理解できました。
上級コースの問題は頭から湯気が出るものばかりでhitosi様はじめ、解説いただいている方々に敬服いたします。
「贈与が不法の原因に基づくものであり、同条にいう給付があつたとして贈与者の返還請求を拒みうるとするためには、本件のような既登記の建物にあつては、その占有の移転のみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることをも要するものと解するのが妥当と認められるからである。」
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120433451623.pdf
[自説の根拠]最判S46.10.28
●【不法原因給付708条】麻薬売買契約、殺人請負契約、妾契約などは公序良俗に違反する契約であり無効である。このような不法の原因のためにされた給付は、たとえ一般不当利得の要件を満たしていても返還請求ができない。
●【最判昭46年10月28日】不法原因「給付」があったというためには給付は履行の余地を残さな
い終局的なものでなければならない。たとえば愛人関係の存続を目的にした登記済不動産の贈与に
おいては、引渡しを済ませたというだけでは足りず、登記名義までをも受贈者に移転しなければな
らない。
[自説の根拠]最判昭46年10月28日より
関連問題
次の説明は、贈与者Aと受贈者Bとの関係に関する記述である。判例に照らして答えよ。
既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において,AがBにその建物を引き渡したときは,所有権移転登記が未了であっても,Aはその贈与契約を取り消すことができない。
6
債権者代位権と詐害行為取消権について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
詐害行為取消権は,訴訟において,抗弁としても行使することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
最判(二小)S39.6.12 昭和38(オ)680号事件
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/42F4EF5047F9BB4549256A850031251A.pdf
より抜粋。

民法四二四条の詐害行為の取消は訴の方法によるべきものであつて、抗弁の方法によることは許されないものと解するのを相当とする。
けだし、取消権の行使は相手方に対する裁判外の意思表示によつてこれを行うべき場合があり、裁判上の意思表示によつてこれを行うべき場合があり、あるいは相手方に対する訴によつてこれを行うべき場合があるが、そのいずれの方法によるべきかは、各場合における法律の規定を解釈してこれを定めなければならない。
取消しうべき法律行為の取消については民法一二三条に「相手方ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス」と規定し、否認権の行使については破産法七六条に「訴又ハ抗弁ニ依リ破産管財人之ヲ行フ」と規定しているのに反し、詐害行為の取消については、民法四二四条に「裁判所ニ請求スルコトヲ得」と規定しているから、訴の方法によるべく、抗弁の方法によることは許されないものと解するのを相当とする…。

ちなみに、反訴で行使するのはOKです(最判S40.3.26)。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
反訴も抗弁も相手の主張に対する反撃であることに違いないのですが、反訴が訴えであるのに対し、抗弁は反論という点で大きく違う。
抗弁は裁判外でも行使できますが、詐害行為取消権は裁判上でしか行使できない。その辺も抗弁はだめだけど反訴ならいいですよってことだと理解しています。
7
売買契約に基づき売買代金の支払を請求する場合について、以下の記述が適切か否か答えよ。
被告が抗弁として同時履行の抗弁を主張した場合,原告は,目的物引渡しにつき,その履行の提供をしたことを再抗弁として主張することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
本問は平成20年新司法試験短答式試験民法22問肢5ではないでしょうか??
ご指摘の通り、問題文を読み違えておりました。大変失礼しました。
===
(平成20年新司法試験短答式試験民法22問肢4/5)
4. 被告が抗弁として同時履行の抗弁を主張した場合,原告は,代金支払を目的物引渡しの先履行とする旨の合意があったことを再抗弁として主張することができる。
正解:○

5. 被告が抗弁として同時履行の抗弁を主張した場合,原告は,目的物引渡しにつき,その履行の提供をしたことを再抗弁として主張することができる。
正解:×
傍論だったのですね。
「双務契約の当事者の一方は相手方の履行の提供があつても、その提供が継続されない限り同時履行の抗弁権を失うものでないことは所論のとおりである。しかし、
原判示によれば売主たる被上告人は本件機械全部を買主たるDに昭和二九年六月二八日までに約束通り引渡したというのであるから、Dは右引渡を受けたことによつ
て所論同時履行の抗弁権を失つたものというべきであり」
[自説の根拠]自説の根拠は、最判昭和34・5・14
関連問題
Aは,Bに対し甲動産を売却したが,Bが代金を支払わないので,Aは,その支払を求めて訴えを提起した。この事例について、以下の記述が適切か否か答えよ。
Bの同時履行の抗弁は,BがAに対し,Aが甲動産の引渡しをするまで代金の支払を拒絶することを主張して行使しなければならない。
8
民法上の契約における報酬について、適切か否か答えよ。
請負契約は有償契約であり,報酬は,目的物の引渡しを要するときはその引渡しと引換えに,物の引渡しを要しないときは仕事の完成と引換えに,支払わなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。 (民法 633条)
5110d7889dbeさん、下記のとおり回答します。
なお、質問の回答は「ユーザーコメント」欄より閲覧、再コメントできますよ。
>請負契約の~(中略)~当初から有償契約と考えるのは、間違いなのでしょうか?
◇請負契約は双務、有償、諾成契約です。
>支払いの時期についても~(中略)~問題文の内容が適切である、とするのは間違いなのでしょうか?
◇請負の支払い時期は目的物の、
①引渡しがある場合・・同時履行。
②引渡しがない場合・・仕事完成後に支払えば良く、必ずしも同時である必要はありません。
ですから設問分の「物の引渡しを要しないときは仕事の完成と引換えに支払わなければならない」が誤りであり、回答は×が正解となります。
[自説の根拠]民法632条、633条、624条1項
丁寧な解説ありがとうございました。
”引き換え”の部分が適切ではないのですね。
解説の再見についても理解できました。
ありがとうございました。
注文者の報酬支払いと同時履行の関係に立つのは、目的物の引渡しであり(633条)、請負人の仕事完成義務は先履行義務です。(大判大13.6.6)従って問題文の前半分に間違いはないが、後ろ半分に間違いがあり、全体では「☓」となる。
[自説の根拠]民法第633条、大判大13.6.6
関連問題
次の記述について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
売買契約の売主が買主に対して一度売買目的物の引渡しの提供をしたときは,買主はその後の売主からの売買代金請求に対して,売買目的物の引渡しと引換えに支払うことを主張することはできない。
9
不法行為における過失相殺について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが,第三者と夫の双方の過失が競合して衝突したため,負傷した妻が第三者に対し損害賠償を請求した場合には,特段の事情のない限り,第三者の賠償額を定めるにつき夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

共同不法行為の加害者に被害者の配偶者がいる場合、もう一方の加害者に対する賠償請求は配偶者の過失の加味した内容で行うそうです。
これは本問でいう第三者運転手が妻に賠償した後、次に夫にその過失に基づいた負担部分を求償するという2段構成を一度に解決しようという趣旨です。
ですから本問の第三者は夫の過失分を差し引いた賠償を妻に行えば良し。
[自説の根拠]最判昭和51年3月25日
これは過失相殺を問う問題である。
比較して覚える。
損害賠償の額を算定するにあたり裁判所における過失相殺の考慮
不法行為による過失相殺→任意的
債務不履行による過失相殺→必要的
被害者と身分・生活関係上、一体をなす関係にある者の過失は被害者側の過失とすると解される。本問の事例に対し、保育士(引率者)とその保育園児(被害者)の関係において、保育士の過失は被害者の過失とすることはできないとする判例がある。
[自説の根拠]最判昭42.6.27
ご参考までに、figureno5さんのコメントにある最判昭42.6.27は以下の様に出題されています。
被害者が幼児である場合における被害者側の過失とは,被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうのであり,両親より幼児の監護を委託された保育園の被用者の過失は含まれない。
【正解:○】
[自説の根拠]民法七二二条二項
最判昭42.6.2
10
契約と書面との関係について、適切か否か答えよ。
委任契約は,諾成契約であるから,口頭の合意があれば成立する。しかし,委任契約の成立を第三者に主張するためには,書面によらなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
(委任)
第六百四十三条  委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
上記解説の補足。
設問文の前段は正しいですが、後段の「書面によらなければ・・」の様な規定はありませんので×。
[自説の根拠]民§643
11
Aが所有し運転するタクシーに,Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し,AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により,Aには50万円の損害が,Bには80万円の損害が,Cには100万円の損害が,それぞれ生じ,当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で,Bが8割であり,また,Cの負傷にはCの過失がないものとして,判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Bは,その損害額である80万円のうち16万円の損害賠償請求権を自働債権として,BのAに対する損害賠償債務と相殺することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。 (民法 416条)
>∴Bは16万は相殺できると考えましたが、下記のような判例がありました。
同一事故においては、物的損害と人的損害を区別するものの、物的損害の場合には相殺を認めても良いとする考えも有力なようですが、最高裁は、この場合でも一貫して否定的なようです。
判例(最高裁昭和49.6.28)において、「民法509条の趣旨は,不法行為の被害者に現実の弁済によって損害の填補を受けさせること等にあるから,およそ不法行為による損害賠償債務を負担している者は,被害者に対する不法行為による損害賠償債権を有している場合であっても,被害者に対し,その債権をもって対当額につき相殺により右債務を免れることは許されないものと解するのが,相当である。したがって,本件のように双方の被用者の過失に基因する同一事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても,民法509条の規定により相殺が許されないというべきである。」 とし、
さらに、昭和54.9.7の判例においは、 「本件のように上告人,被上告人双方の各被用者の過失に基因する同一事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間において民法509条の規定により相殺が許されないことは,当裁判所の判例(昭和47年(オ)第36号同49年6月28日第3小法廷判決・民集28巻5号666頁)とするところであり,このことは,双方がいずれも運送業を営む会社であっても同様であるというべきである。」 と再度確認してます。
ただ、当事者が争ってる「裁判による判決」では相殺を否定されてしまいますが、「和解・調停」を利用する際には、iiikkkaaa さんの考えたように解決が図られるみたいです。
つまり、双方の損害額・過失割合を確認し、当事者の納得した上で相殺を行い残額を支払う、という一回的解決が図られることが多いようです。
「和解・調停」の場合というのは公平な第三者を交えた場での当事者間での話合いなわけですし、当事者が納得した形で互いに相殺しようとする意思があるのなら現実的な解決と言えますね。
——
(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
民法509条 債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
<趣旨>
(1)被害者に現実の弁済によって損害の填補を受けさせること
(2)不法行為の誘発を防止すること
不法行為による損害賠償請求権を自動債権とする相殺は不可能。
判例で民法509条の規定により相殺が許されないとされている理由として、民法509条の趣旨は、不法行為の被害者に現実の弁済によって損害の填補を受けさせることなどにある。 としています。
[自説の根拠]最判昭49.6.28
関連問題
次の説明は、民法上の債務不履行による損害賠償請求権と不法行為による損害賠償請求権に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
債務不履行の場合は,胎児は損害賠償請求権の主体となることができるが,不法行為の場合は,主体となることができない。
12
債権の目的について、適切か否か答えよ。
外国の通貨で債権額を指定したときであっても,債務者は,外国の通貨でなく日本の通貨で弁済をすることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権は、いわゆる任意債権であり、債権者は、債務者に対
し、外国の通貨又は日本の通貨のいずれによつて請求することもできるのであり、民法四〇三条は、債権者
が外国の通貨によつて請求した場合に債務者が日本の通貨によつて弁済することができることを定めるに
すぎない。また、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権を日本の通貨によつて弁済するにあた
つては、現実に弁済する時の外国為替相場によつてその換算をすべきであるが、(以下略)
[自説の根拠]www.courts.go.jp/hanrei/pdf/8048899881B6E4EC49256A85003120E0.pdf
「外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。」
[自説の根拠]自説の根拠は、民法403条。
13
債権の効力について、適切か否か答えよ。
ある債務の消滅時効の完成後に,債務者がそのことを知らずにその債務を弁済したときは,債務者は,不当利得として弁済金相当額の返還を請求することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
それと、この問題は合格者の大部分は正解していますので、大事にして下さい。
時効の援用がないため、債務は消滅していないからです(145条)。
なお、仮に援用したとしても、返還を請求できません。時効完成後に債務の承認があった場合、時効完成の事実を知らなくても消滅時効は援用できません(最大判S41.4.20)。弁済は、債務の承認の意思表示に当たると考えられます。したがって、仮に援用しても、返還を請求できません。
本問の趣旨として、債務者が時効完成を知っていたか否かにかかわらず、いったん承認や弁済した場合には、信義則上もはや時効を援用することはできません。
14
損害賠償について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
不動産の売買契約において,その財産権移転義務が売主の責めに帰すべき事由により履行不能となった場合には,買主は,契約を解除することなく填補賠償を請求することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

損害賠償の請求と解除は別々の規定です。
民法415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
民法543条
前段
履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。
民法545条
3項
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
[自説の根拠]民法415条、543条、545条
●最判 昭和30年4月19日
債務者の責に帰すべき事由によつて履行不能を生じたときは、債権者の請求権は、解除を俟つことなく填補賠償請求権に変ずるものである。

上記の通り、判例の趣旨に照らして、○です。
※民法545条等の規定は、「解除と損害賠償請求が同時にでき得ること」を示していますが、「解除することなく填補賠償を請求することができるか」の見解については、上記等の判例によるものです。
[自説の根拠]最判 昭和30年4月19日、大判昭和8年6月13日
15
Aは自転車を運転して歩道上を走行中,前方不注視により,歩行者Bに衝突し,Bが負傷した。この事例について、適切か否か答えよ。
判例によれば,AがD社の従業員であり,D社の業務中に自転車を運転していた場合,D社がBに対して損害額全額を賠償したときは,D社はAに対して信義則上相当と認められる限度において求償することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

判旨の通り。
「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである」
[自説の根拠]民§715-3、最高裁S51.7.8
本問は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、使用者は被用者に求償できます。全額の求償はできません。
53点
今勉強中の仲間に、息抜きコメントを送る
1
AはBとの間で,その所有する自動車をBに100万円で売り,代金はBがCに支払うとの合意をした。
この事例について、以下の記述が適切か否か答えよ。
AがBに自動車を引き渡したにもかかわらず,BがCに代金を支払わない場合,CはBに支払を催告した上,売買契約を解除することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
「第三者のためにする契約」において合意解除が可能なのは、原則として第三者(受益者)が「受益の意思表示」をするまでであり、本問のCに解除権はありませんので誤りですね。
・・・と、言うか、第三者のためにする契約において契約当事者は要約者(本問ではA)と諾約者(本問ではB)であり、契約解除権はあくまで契約当事者にのみ認められるので、受益者(本問ではC)に解除は認められないのでバツという問題。
受益の意思表示前だろうと後だろうと、解除権の帰属するのは契約当事者のみ。
この基本的理解の先に、受益の意思表示云々の話が出ると言う流れ。
●第537条;契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
●第539条;債務者は、第537条第1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。→第三者は契約上の当事者でないため、債権者が主張できる権利(取消権や解除権)を主張することはできない。
[自説の根拠]民法条文第537(第三者のためにする契約)、539条(債務者の抗弁)
2
債権者代位権について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債権者は,自己の債権保全に必要な限度で,債務者に代位して,他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。 (民法 423条)
(判旨)
一、他人の債務のために自己の所有物件に抵当権を設定した者は、右債務の消滅時効を援用することができる。二、債権者は、自己の債権を保全するに必要な限度で、債務者に代位して、他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる。(最高裁昭和43年09月26日)
===
(債権者代位権)
第四百二十三条  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
【裁判上の代位】
裁判上の代位とは、裁判所の許可を得て債権者代位権を行使することをいう。
(裁判に訴えなければならないことを意味するものではない)
【保存行為】
時効中断、未登記の権利の登記、第三債務者が破産した場合の債権の届出など。
はたして「債権保全必要限度」の範囲、つまり「時効の細分・限定援用」は可能なのでしょうか?
「私の債権分である550万円分だけ援用します!!宜しくね」は可能なんでしょうか?
どちら様か御伝授下さい。
本来消滅時効の援用は、道義的に歓迎されるものではありません。
まして、本人に援用の意思がないのに、他の債権者が代位して援用するとなると尚更です。
しかし一方で、本来消滅しているはずの債権の弁済により、他方の債権の弁済に足りる資力を失ってしまうとなると、これも不公平です。
その為、公平を期して、債権者代位による消滅時効の援用は、「自己の債権全額の弁済を受けるについて十分でない事情にあるかぎり」、「自己の債権を保全するに必要な限度で」消滅時効を援用することができる、としているのだと思います。
[自説の根拠]最判昭和43年9月26日
関連問題
次の説明は、債権者代位権に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
債権者は,自己の債権を保全するためであれば,債務者の一身に専属する権利であっても債権者代位権を行使することができる。
3
Bは,特定物を所定の期日にAの家まで持参して引き渡す債務を負っていたが,これを自分で持参せず,運送業者Cにその期日に間に合わせるように指示して配送を依頼した。
この事例について、以下の記述が適切か否か答えよ。
Cがこの特定物を誤って焼失させてしまった場合,Aは,履行不能による損害賠償を請求するためには,履行不能の事実について自らが主張立証しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

日本の民事訴訟では、原則として自己に有利な法律効果の発生を求める者は、その法条の要件事実について証明責任を負うと考えられている。(Wikipedia証明責任より引用)
つまり、履行不能の事実については損害賠償請求をするAに立証責任がある。
ただ、債務不履行の帰責事由についてはBに立証責任があるので、Aは履行不能の事実についてのみ立証すればいい。
[自説の根拠]自説の根拠は、Wikipedia証明責任
本問の場合は、BがCに委任してその輸送を行っており、実質の責任はBが負うもの。したがって、焼失はBの不法行為となる。不法行為の場合は、加害者(この場合はB)の故意・過失は、被害者(この場合はA)の側で証明(立証)する必要があるとの判例(大判明38.6.19)から、BがAの故意・過失を自らが主張立証しなければならないことになり、設問通り◯が回答となるもの。
[自説の根拠]判例(大判明38.6.19)
4
AがBに対してA所有の甲土地を売る契約を結び,Bが登記名義人となったが,Bの債務不履行を理由にAがこの売買契約を解除した。一方,BはCに甲土地を転売した。債務不履行を理由とする解除により契約が遡及的に消滅するとする考え方を直接効果説,将来に向かって失効するにすぎないとする考え方を間接効果説と呼ぶとして,次の記述について,適切か否か答えよ。
(参照条文)民法
第545条当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復さ
せる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない。
2,3 (略)
直接効果説によると,Cが解除前に登場した場合,民法第545条第1項ただし書によって解除の遡及効が制限される結果,Cは登記名義を得れば保護される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

これは行書試験としては難しい部類ですね。
判例・通説で、直接効果説における解除前の第三者は545条1項但書で保護されますが、権利保護要件としての登記が必要ですから、設問文は正解ということになります。
要するに解除前では遡及効制限の権利保護要件が登記なんですね。
逆に解除後第三者は対抗問題です。
[自説の根拠]民§545-1、民§177
では設問が間接効果説の場合、どのような解答になりますか?
<解除の法的性質>
☆直接効果説
第三者保護規定:解除の遡及効によって害される第三者を保護するため遡及効を制限した規定
解除前の第三者:第三者は545条1項により保護される(善意・悪意を問わない)が、対抗要件を備えることが必要
(大判大正10.5.17、最高裁昭和33.6.14)
解除後の第三者:対抗関係に立つ
☆間接効果説
第三者保護規定:当然のことを規定した注意規定にすぎない
解除前の第三者:対抗関係に立つ
解除後の第三者:対抗関係に立つ
[自説の根拠]「短答六法3民法」(早稲田経営出版)
5
AがBに土地を賃貸し,Bが同土地上に建物を建築して所有する場合において,AがCに同土地を譲渡したときの法律関係について,判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
Bは,建物の所有権の登記をしているが土地の賃貸借の登記はしていなかった。この場合,所有権移転登記を経たCのBに対する建物収去土地明渡請求は認められる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
債権が物権に優位する特例として賃借権の登記がありますが、これは債権のため賃貸人に登記義務はなく、ほとんど意味を成さない。
そこで建物所有者保護のため、借地借家10条1項にて、
借地権の登記がなくても、借地権者が登記されている建物を所有する場合には第三者に対抗できるとされている。ただし、新賃貸人は賃貸人の地位は主張できます。
借借法10条1項の対抗要件具備
⇒土地の譲受人が賃貸人の地位を主張するには登記が必要です。
「本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、民法一七七条の規定上、被上告人としては上告人に対し本件宅地の所有権の移転につきその登記を経由しなければこれを上告人に対抗することができず、したがつてまた、賃貸人たる地位を主張することができない」
[自説の根拠]最判S49.3.19
賃借権の第三者に対する対抗は引渡しで足りる。
賃借権も登記は可能だが、借家人の同意が必要だが、
現実的には同意は得られにくい。そんな理由から、
引渡しだけで対抗可能。
引渡しのみで対抗できるのは、契約当事者間のみです。
不動産の賃借権は、登記がなければ新たに所有者となった第三者に対抗できません。(民法605条)
しかし、借地上に登記された建物を所有する場合は、特別法である借地借家法が適用され、土地が第三者に譲渡されても、借地権を対抗できる(借地借家法10条1項)、としているのです。
※実際、賃借権の登記に協力を得られることが稀なことは確かですが、だからといって、第三者に対抗できるわけではないです。建物の登記が対抗要件です。
関連問題
Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Bが乙建物について所有権保存登記を行ったが,それを知らないCが甲土地について所有権移転登記を行った場合,CはBに対して建物収去土地明渡の請求ができるのが原則である。
6
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合における弁済充当について、適切か否か答えよ。
両債務とも無利息で弁済期の定めがないが,甲債務が乙債務より先に成立した場合,AがBに150万円を支払ったが,ABともに弁済の充当指定をしなかったときは,50万円が甲債務の弁済に,100万円が乙債務の弁済に充当される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。 (民法 491条)
(法定充当)
第四百八十九条  弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
一  債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
二  すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
三  債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
四  前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
「期限の定めのない債務は、成立とともに弁済期にあるものであるから、これら相互間では成立の先のものが弁済期の先のものということになる。」(出典は後掲)
甲と乙は弁済期の定めがなく、甲は乙より先に成立しているため、甲から充当されます。
弁済期の定めがない場合
・弁済期→成立と同時
・遅滞に陥る時期→請求時(412条3項)
本問で甲乙の充当の順序を考える実益はありません。Bは甲乙共に請求すれば、以降150万円につき年5%の遅延損害金を取れるからです(419条1項・404条)。
[自説の根拠]自説の根拠は、遠藤浩他『民法(4)債権総論第4版増補版』有斐閣双書280頁
甲債務に100万円、乙債務に50万円が
充当されると言うことでよろしいでしょうか
7
弁済による代位について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
債務者が設定した抵当権の目的である不動産の第三取得者は,保証人に対して債権者に代位しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
3号 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。 (民法 501条1項3号)
弁済するについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する(第500条)が、第三取得者は、保証人に対して債権者に代位することができない。(第501条2項)
===
(法定代位)
第五百条  弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
(弁済による代位の効果)
第五百一条  前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一  保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二  第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三  第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四  物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五  保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六  前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
第三取得者とは、抵当権が付着している不動産を抵当権が付着した状態のままで取得した者のことを言います。ですから、債務の返済ができなくなるなどで抵当権が実行され所有権を失う危険性があります。逆に、その危険を承知で抵当権付の不動産を取得した以上、保証人に対して債権者に代位できないのは当然ということのようです。
一般的には抵当権が付着している時点で、その分の価値を差し引いた対価で第三取得者が取得していることが想定されるので、更に保証人への代位は認める必要性がない。
関連問題
物上代位について、民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
なお,物上代位を行う担保権者は,物上代位の対象とする目的物について,その払渡し又は引渡しの前に他の債権者よりも先に差し押さえるものとする。
抵当権者は,抵当権を設定している不動産が賃借されている場合には,賃料に物上代位することができる。
8
利益を受ける者の意思の尊重について、適切か否か答えよ。
契約により,当事者の一方(債務者)が第三者に対してある給付をすることを約束したときは,その第三者は,債務者に対し,直接にその給付を請求する権利を有する。第三者が債務者に対し,その契約の利益を享受する意思を表示したときは,第三者の権利は,前記契約が成立した時にさかのぼって発生する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。 (民法 537条)
契約成立時ではなく、意思を表示した時に発生する。
民法
第五百三十七条  契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2  前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
9
AがBに対し有する甲債権を担保するため,Bが所有する乙土地を目的とする第一順位の抵当権が設定されてその旨が登記され,また,Cが保証人となった場合について、適切か否か答えよ。
CがAに対し保証債務の全額を弁済して乙土地のAの抵当権に代位の登記をしたときには,その後,Bが乙土地をFに譲渡してその旨の登記がされても,Cは,乙土地にAが有していた抵当権を行使することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

(法定代位)
500条弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
(弁済による代位の効果)
501条前二条の規定により債権者に代位した者は(中略)債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一 保証人は、あらかじめ(中略)抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その(中略)抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
10
債権の効力について、適切か否か答えよ。
債務者が債務を弁済しない場合に,債権者がその債務の履行を請求する訴えを提起しないという当事者間の合意は,無効である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
「不起訴の合意」の特約は有効、ということでしょうか。
↑「非係争条項(不起訴の合意)」は有効ということでしょうね。
民訴では明文の規定はありませんが、学説上の多数説は「裁判によらずに紛争を解決する旨の取り決め」は可能とされています。
[自説の根拠]関大法学部民訴セミナー
いつもご教示ありがとうございます。的外れな質問で申し訳ありませんでした。非係争条項と言うのですか。勉強になります。
折角なので判例を調べてみました。
(最判昭51.3.18)
↑この判例では直接の判断は為されていないようですので、あまり役にたたないかもしれませんが…。「不起訴の合意」が成立していない(不起訴の合意に当たらない)事を判断の根拠としておりますので、ここでも「不起訴の合意=無効」とはしていないようです。
11
損害賠償について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
善意の不当利得者の返還債務は,債務者が履行の請求を受けた日が経過した時から遅滞に陥る。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

善意の不当利得者の不当利得返還債務は法律の規定によって生じる債務であり、期限の定めのない債務として扱われます。従って、履行遅滞の時期は履行の請求を受けた時です。これに対し、消滅時効の起算点は債権成立時です。
12
債権の譲渡及び契約上の地位の移転についての主張立証責任について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債権が二重に譲渡されたが,債務者がいずれの譲受人にも弁済していない場合において,譲受人の一人が債務者に対し譲受債権の履行を請求するとき,この譲受人は,競合する債権譲渡よりも前に自己への譲渡につき債権譲渡の第三者に対する対抗要件を具備したことを主張立証しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
第467条1項
「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない」
つまり、単に債務者に履行を請求するだけなら、譲渡人からの通知だけで足りる。
請求は、債権の発生と譲渡の事実だけを主張すればOKです。
その後に、
債務者の抗弁:他にも譲受人がいて、その譲受人が対抗要件を具備していることを主張

譲受人の再抗弁:自分も対抗要件を具備したことを主張

債務者の再々抗弁:別の譲受人のほうが早く対抗要件を具備していることを主張
という流れになります。
>camisoulmaxさん
要件事実的にはそうでしょうが、本問は、「主張立証責任について」とありますので、債務者対抗要件と第三者対抗要件の違いを問うているのではないでしょうか。
そうだとすれば、譲受人は、債権の発生と譲渡の事実に加え、通知又は承諾の事実を主張立証すべきだと思います。
なお、第三者対抗要件具備は「競合する債権譲渡より前に」備える必要はありません。競合する債権譲渡の第三者対抗要件具備よりも前であればOKです。
なので、問題文はその意味でも誤りだと思います。
13
債務の引受けについて、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
免責的債務引受は,債権者,債務者及び引受人の三者の合意によらなければ,効力を生じない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
《免責的債務引受け》
引受人が直接債権者に対して債務を負うに至り、原債務者は債務を免れるもの。
第三者弁済に類似する制度であり、【債権者・引受人】の契約でなしうるもの
ただし、【債務者の意思に反することはできない】
★効果
引受人は、原債務者が有していた一切の抗弁を継承する。
免責的債務引受がなされても、当事者の地位が承継されるわけではないので、旧債務者の有していた取消権・解除権は引受人に移転せず、引受人は取消権・解除権を行使できない。
免責的債務がされても、旧債務者の有する取消権や解除権は移転しない。
(大判大正14.12.15)
判例があるから、覚えたほうが早いかも!?
債務引受けは、債権者と債務引受人の2者契約でも可能であるが、この場合には原債務者の意思に反しないことを要するとされている。更に最近では、債務者と債務引受人間の2者でもできる、但し、債権者の承認があってはじめて効力を生じる(停止条件)との学説も有力になっている。このように問題では必ず、3者契約が必要とのことが◯か☓かが問われているので、制約はあっても2者契約でも出来ることから、本問の回答は「☓」となる。
[自説の根拠]図解による法律用語辞典(自由国民社刊)
14
委任契約について、適切か否か答えよ。
受任者は,委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは,委任者に対し,その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

第650条①
民法650条
第1項 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
[自説の根拠]民法650条
15
委任契約について、適切か否か答えよ。
受任者が委任事務を処理するために善良な管理者の注意をもって支出した費用は,それが,後日の結果からみて必要ではなかった場合であっても,委任者に対しその償還を請求することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

(受任者による費用等の償還請求等)
第650条
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
ここでいう「必要と認められる費用」というのは、委任者が善管注意義務を果たしつつ必要だと判断した費用で、結果的に必要ではなかったとしてもよいというのが通説のようです。
60点
なかなかいい感じ。もう少しで合格点なのでファイト!
今勉強中の仲間に、息抜きコメントを送る
1
A,B,Cの3名が共同で縫製機械を所有して縫製請負事業を行うため,6:3:1の割合で金銭を出資して組合契約を締結して甲組合を結成し,甲組合がDから縫製機械を分割払で購入して縫製請負事業を開始した。
この事例について、以下の記述が適切か否か答えよ。
組合契約をもって業務執行組合員を定めなかったときは,甲組合の業務執行は,BとCの合意により決定することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

組合契約で一人又は数人の組合員に業務の執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。 (民法 672条)
組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。
[自説の根拠]民670条1項
①組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。
②前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者が数人あるときは、その過半数で決する
[自説の根拠]民法670条
BCの合意では過半数にならないと思いますが?
共有物の持ち分の様な捉え方ではなく、この場合業務執行組合員も決まってないのですから条文通りに単純に人数の「頭数」で過半数の賛同があれば足るとゆうことですね。
2
Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例に関する以下の記述について,Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まる場合には○を、そうでない場合には×を選べ。なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。
AB間の契約締結後,Bが甲建物について引渡しや移転登記を受ける前に地震で甲建物が全壊した場合,Bは残代金をAに支払う必要があるか。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
この事例の場合には、危険負担の債権者主義が適用され、Bは所有権移転していようがいまいが契約締結時からリスクを負担したことになる。
[自説の根拠]民法第534条
日本の民法上契約時に所有権移転する事から危険負担の債権者主義が取られているのではないでしょうか。(問題自体が変なので、少し困りますが)民法を曲げて、所有権移転時期を引き渡し時とするという仮定で考える問題であるなら、解答は×だと思うのですが。
534条1項の趣旨を、所有権の移転を根拠に説明しようとする説はあります。
但し、通説は、観念的に所有権が移転しただけで危険も移転するのは不合理だとし、引渡し等の「支配」の移転を要するとして、534条1項の適用を制限します。
この点、判例は、債権者主義云々を持ち出すまでもない事案であったとの批判を受けてはいますが、534条1項を文言通り適用しています(実務上特約を結ぶことが通例ですので、それで問題もないわけです)。
よって、本設問の解答は、×で良いと思います。
[自説の根拠]民法(5)契約総論[第4版]有斐閣双書104頁~109頁。
3000万円で売買契約を結んで、2ヶ月で契約を解除した場合、3000万円のほかに、2ヶ月分の賃料を取るのはわかりますが、利息は請求できないんですか?
登記の有無ではなく、債権関係と物権関係を区別する設問です。
危険負担(534条~536条)の適用により答えを導きます。
所有権移転の有無は結論を左右しない為、「×」となる。
[自説の根拠]平成18年度新試短答民事系第11問 択肢(エ)解説
関連問題
Aが,Bに建物を3,000万円で売却した場合の契約の解除について、民法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
Bが建物の引渡しを受けて入居したが,2ヵ月経過後契約が解除された場合,Bは,Aに建物の返還とともに,2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。
3
Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例に関する以下の記述について,Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まる場合には○を、そうでない場合には×を選べ。なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。
AB間の契約締結後,Bが甲建物について引渡しや移転登記を受ける前に,ABのいずれにも無断で甲建物に住み込んだFがいる場合,A自身がFに明渡しを求めていても,BはFに対して甲建物を自己に明け渡すように請求することができるか。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

AがFに甲建物の明渡を求めているかぎり、Bに所有権が移転していない場合は、無権利者であるBがFに対して同建物の明渡請求はできない。
所有権が移転している場合には、Bはその所有権に基づいてFに明渡請求ができる。
上記の通り、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まる為、○が正解。
[自説の根拠]間違えがあればどなたかご指摘ください。。
物権的返還請求権は、本権に基づく訴えなので、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まる。
よって、○。
「A自身がFに明渡しを求めていても」の意味合いは、BがAの返還請求権を代位行使できる場合を考えなくてもよい、ってことでしょうか。
うむむむ・・・不法占有者Fは登記のカン欠を主張する第三者に当たらないので対抗要件は不要というのを考慮に入れて×にしてしまいましたが良く考えれば何らかの権利を譲り受けていないとB自身も無権利者、ということになることを見落としてました。
しかしこのパターンでは不法占有されている以上、占有訴権は使えないので結局は登記して対抗要件を備えた上でないと本件に基づいた訴えによるしか対抗する手段はない、ということでしょうか?
判例はこのような場合は対抗関係に立たない為、Bからの物権的請求権も認めています。
本問は、『引渡し・登記を得なければ、所有権は移転しない』という説をとれば、判例と結果が異なるか?との問いです。
仮にBが所有権を取得していないとすると、
(1)Bは勿論、物権的請求権は行使できません。
(2)Aの物権的請求権を代位行使する事も可能ですが、今回は既にAが自己の請求権を行使済みですので、それもできない。
故に、所有権が移転しているか否かで結果が変わる。となるのです。
4
債務の弁済について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
弁済を受領した者は,弁済した者に対し受取証書を交付する義務があるが,その交付は,弁済と同時履行の関係に立つ。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。 (民法 486条)
受取り証書の交付と債務の弁済は同時履行の関係に立つ。
[自説の根拠]判例 大判昭16.3.1
『受取証書』というと難しく感じますが、身近な例としてレシートが挙げられますね。スーパーで買い物をして、精算と同時にレシートを受け取る…同時履行の関係。
弁済受領者の義務は2です。
1. 受取証書を交付すること(486条)
2. 債権証書がある場合に、全部の弁済を受けたときにはこれを返還すること(487条)
大判昭和16年3月1日 民集20巻163頁、これを通説として、受取証書の交付は弁済と同時履行の関係に立つと解されています。
[自説の根拠]平成18年・民事系・第27問 解説
5
AがBに対し金銭債権甲の支払を求める訴えを提起したところ,Bは,Aに対する別の金銭債権乙をもって対当額で相殺する旨の抗弁を主張した。この場合に関する以下の記述について、適切か否か答えよ。
乙が貸金債権である場合,弁済期の合意を消費貸借契約の成立の要件と考える見解に立つと,BがAに対して相殺の抗弁を主張するためには,貸金債権乙の弁済期の合意の存在を主張立証する必要がある。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

乙債権発生の根拠となる金消契約の成立を主張、立証しなければならない為、正しい記述です。
6
詐害行為取消権について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
不動産の贈与を詐害行為として取り消す場合には,債権者の債権額がその不動産の価額に満たないときであっても,贈与の全部を取り消すことができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

「詐害行為となる債務者の行為の目的物が、不可分な一棟の建物であるときは、たとえその価額が債権者を超える場合でも、債権者は、右行為の全部を取り消すことができる」
[自説の根拠]最判S30.10.11
関連問題
詐害行為取消権について、判例に照らして適切か否か答えよ。
債務超過の状態にある債務者XはAに不動産甲を譲渡した。Xの債権者であるYは,当該譲渡行為がYのXに対する債権の成立前にされたものであっても,その移転登記が当該債権の成立後にされたときは,甲の譲渡を詐害行為として取り消すことができる。
7
契約上の債務の不履行の場合における当該債務の履行の強制について、適切か否か答えよ。
代替執行が可能なときには,間接強制を求めることはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
民事執行法
(間接強制)
第172条 作為又は不作為を目的とする債務で前条第1項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
2~6 省略
第173条 第168条第1項、第169条第1項、第170条第1項及び第171条第1項に規定する強制執行は、それぞれ第168条から第171条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条第1項に規定する方法により行う。この場合においては、同条第2項から第5項までの規定を準用する。
第168条(不動産の引渡し等の強制執行)
第169条(動産の引渡しの強制執行)
第170条(目的物を第三者が占有する場合の引渡しの強制執行)
第171条(代替執行)
[自説の根拠]民事執行法168条~173条
間接強制が許されないのは、直接強制ができる場合です。
[自説の根拠]大審院決定昭和7年7月19日。
hedosuさんの挙げているのは古い考え方ではないでしょうか。
非金銭債務の場合、直接強制ができる場合であっても間接強制は可能です。民事執行法173条は、債権者が直接強制か間接強制か選べることを明示しています。(massieさんの挙げた条文参照)
また、平成16年改正により、金銭執行でも、扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行では、間接強制(民執172条1項)が使えます(民執168条の15以下)。
[自説の根拠]民事執行法
8
次の記述について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
債権の譲渡禁止特約の存在を知ってその債権を譲り受けた者だけでなく,同特約の存在を知らないことにつき重大な過失のある譲受人も,譲渡によってその債権を取得し得ない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

譲渡禁止の特約のある債権の譲受人は、その特約の存在を知らないことにつき重大な過失があるときは、その債権を取得しえない。
軽微な過失ならOKです。
[自説の根拠]民法466条2項,最判S48.7.19
民法四六六条二項は債権の譲渡を禁止する特約は善意の第三者に対抗することができない旨規定し、その文言上は第三者の過失の有無を問わないかのようであるが、重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、譲渡禁止の特約の存在を知らずに債権を譲り受けた場合であつても、これにつき譲受人に重大な過失があるときは、悪意の譲受人と同様、譲渡によつてその債権を取得しえないものと解するのを相当とする。
[自説の根拠]http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120459105901.pdf
関連問題
重大な過失について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債権の譲渡禁止特約がある場合,債権の譲受人が,その特約の存在を知らなかったとしても,これについて重大な過失があるときは,その債権を取得することができない。
9
借地借家法の適用を受ける不動産賃貸借について、適切か否か答えよ。
期間の定めがある建物の賃貸借契約をする場合においては,公正証書による等書面によって契約をするときに限り,契約の更新がないこととする旨を定めることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。 (民法 604条)
定期建物賃貸借の条文通りですね。
[自説の根拠]借地借家法第38条
借地借家法第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
10
不法原因給付について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
不法原因給付というためには,当事者が給付の不法性を認識しているか又は認識の可能性があることが必要である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。 (民法 708条)
判例(大判大8.9.15)は,「給付行為カ不法ノ原因ニ基ク以上ハ其不法カ受益者ニ付テノミ存スル場合ノ外ハ当事者カ不法ナルコトヲ知ルト知ラサルトニ論ナク之カ返還ヲ請求スルコトヲ得」ないと判旨しており,客観的に不法であれば不法原因給付に該当するという立場を採る。
客観的に不法であれば不法原因給付に該当する。
刑法38条3項
法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。
[自説の根拠]刑法38条3項
改めて書くほどのことではないかもしれませんが一応。「不法原因給付」とは、AがBにAB間の契約に基づき物又は金銭を給付したが、その契約が無効であったときは本来ならBに対し不当利得としてその変換を請求することができる(民法703条以下)のだがこの契約の無効が善良の風俗に反する不法な目的を理由とするものであり、かつAがその不法原因に自ら積極的に関与していた場合、法はAの不当利得返還請求を認めないこととしている(708条)。これを不法原因給付という。25年度試験の問34で出てましたね?
11
債権者代位権と詐害行為取消権について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
詐害行為の成立には,債務者がその債権者を害することを知って法律行為をしたことを要するが,必ずしも害することを意図してしたことを要しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

詐害意思は、債権者を害することの【認識で足り】、債権者を害する意欲までは必要ない。
なお、判例は、詐害行為の成否を柔軟に判断するため、【詐害意思は行為の詐害性と相関的に判断】すべきとしている
債権者を害する事を知っていただけで十分に成立の要件は満たしている。債務者の心理の内に「債権者をどうにかして困らせてやれ」などの思いがあったかどうかなど本人のみぞ知るわけで議論の対象にすらならない。ちなみに詐害行為の対象に関する問題が25年度試験の問30番にモロ出ていたので今年は出ないでしょう
【共通点】
債務者の責任財産の保全と強制執行の準備という点で共通
【要件】
要件に違いがある。
・債権者代位権
債権者が自己の債権を保全する必要があること。
・詐害行為取消権
[客観的要件]債務者が債権者を害する法律行為(詐害行為)をしたこと。
[主観的要件]債務者及び受益者(転得者)が詐害の事実を知っていること。
→知っていれば足り、害することを意図する(欲する)必要はない。
12
AがBに対し有する甲債権を担保するため,Bが所有する乙土地を目的とする第一順位の抵当権が設定されてその旨が登記され,また,Cが保証人となった場合について、適切か否か答えよ。
Aが,Bに対し有する甲債権をGに譲渡し,その旨をBに通知した場合において,Gから保証債務の履行を請求する訴訟を提起されたCは,Cに対する債権譲渡の通知がされるまで保証債務を弁済しない旨の抗弁を提出して請求棄却の判決を得ることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
質問です。
AG間の譲渡はBに対して通知されているので有効です(民法467条)。
設問をみる限り、確定日付のある証書によらないBへの通知でも、保証人のCに対しては債権の譲受を対抗できるということですよね。
つまり民法467条2項の第三者に保証人は含まれないという考えでいいのでしょうか?
譲渡債権の保証人は、467条の第三者に含まれません。
これは、保証債務の随伴性によるものです。
つまり、主たる債務者に通知すれば、保証人にもその効力が生じます。
したがって、保証人は、自分に対して通知が無いことを抗弁として主張できません。
判例:
・保証人は、譲渡された債権によって間接的に影響を受けるのみで、通知のないことを主張する正当な利益が無い。(大判大正元年.12.27)
・主債務者への債権譲渡の通知があれば、債権譲渡を保証人にも対抗できる。(大判大正6.7.2)
[自説の根拠]「成川式マトリックス六法・民法」PHP研究所ほか
13
債権の目的について、適切か否か答えよ。
特定物の引渡しを目的とする債権の債務者は,その引渡しをするまで,自己の財産に対するのと同一の注意をもって,その物を保存すべき義務を負う。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第400条
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
14
Aが所有する土地をAから建物所有目的で賃借したBが,同土地上に自ら建築して所有する建物をCに賃貸して引き渡した場合について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
AがBの賃料不払を理由に土地の賃貸借を解除した場合において,Cは,Aが土地の賃料の支払をCに対し催告しなかったことを理由に,土地の賃貸借の終了を否定することができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

最判S37.3.29
「適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない」
趣旨にあるとおり、転借人に対する支払の催告は不要です。
信義則に照らして、転借人に通知すべきだという意見も多いです。
最判S37.3.29、S49.5.30、H6.7.18など何度も争われているようですが、判例は今のところ覆っていません。
[自説の根拠]最判S37.3.29 S49.5.30 H6.7.18など
上記解説には誤りがあります。
「借地上の建物の賃貸」は、借地の転貸や借地権の譲渡が生じず、転貸にあたりません。
この場合は、
最判S51.12.14
「賃貸人が賃料延滞を理由として土地賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、地上建物の借家人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない」
こちらが適用されます。
勘違いしたまま解説してしまったことをお詫び申し上げます。
※転貸借の場合は以前の解説通りです。
[自説の根拠]最判S51.12.14
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319131216266277.pdf
15
Aは自転車を運転して歩道上を走行中,前方不注視により,歩行者Bに衝突し,Bが負傷した。この事例について、適切か否か答えよ。
判例によれば,Aが14歳の中学生である場合,AはBに対して損害賠償義務を負い,Aの親権者であるCはBに対して損害賠償義務を負うことはない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
それと、この問題は合格者の大部分は正解していますので、大事にして下さい。
「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立する」
最判昭和49.3.22民集28.2.347
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120459997222.pdf
易しい (正答率90~100%) ほぼ全ての人が正解する問題です。絶対に正解して下さい。
60点
なかなかいい感じ。もう少しで合格点なのでファイト!
今勉強中の仲間に、息抜きコメントを送る
1
次の【見解】を有する裁判所が,次の【事案】について,詐害行為取消しを認容すべきとの判断に至った場合,Yに命ずべき給付等の内容として正しいか否か答えよ。
【見解】
共同で抵当権の目的とされた不動産の全部又は一部の売買契約が詐害行為に該当する場合において,詐害行為の後に弁済によって抵当権が消滅したときは,詐害行為の目的不動産の価額から当該不動産が負担すべき抵当権の被担保債権の額を控除した残額の限度で売買契約を取り消し,その価格による賠償を命ずるべきであり,価格賠償の額は,詐害行為の目的不動産の価額から,共同抵当の目的とされた各不動産の価額に応じて抵当権の被担保債権額を案分して詐害行為の目的不動産について得られた額を控除した額である。
【事案】
債務超過にあったAは,その所有する甲土地(時価4000万円),乙土地(時価1000万円)及び丙土地(時価1000万円)をYに廉価で売り渡した。上記売買当時,甲土地及び乙土地にはB信用金庫の共同抵当権が設定されていたが,上記売買後その被担保債権3000万円が全額弁済され,当該抵当権の設定登記は抹消された。その後,Aの債権者(債権額3500万円)Xは,詐害行為取消権に基づいて上記売買契約を取り消し,所有権移転登記の抹消登記手続等を求めた。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
甲土地の売買については1600万円の限度で,乙土地の売買については400万円の限度で取り消し,丙土地の売買については全部を取り消して,Yに対し2000万円の価格賠償及び丙土地の現物返還を命ずる。
(不正解) 甲土地の売買については2000万円の限度で,乙土地の売買については500万円の限度で取り消し,丙土地の売買については全部を取り消して,Yに対し2500万円の価格賠償及び丙土地の現物返還を命ずる。
最大判昭36.7.19 でしょうか??
最判(一小)H4.2.27 民集第46巻2号112頁(民法百選Ⅱ〔第五補訂版〕18事件)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120834699117.pdf
より抜粋。

共同抵当の目的とされた数個の不動産の全部又は一部の売買契約が詐害行為に該当する場合において、当該詐害行為の後に弁済によつて右抵当権が消滅したときは、売買の目的とされた不動産の価額から右不動産が負担すべき右抵当権の被担保債権の額を控除した残額の限度で右売買契約を取り消し、その価格による賠償を命ずるべきであり、一部の不動産自体の回復を認めるべきものではない)…。
そして、この場合において、詐害行為の目的不動産の価額から控除すべき右不動産が負担すべき右抵当権の被担保債権の額は、民法三九二条の趣旨に照らし、共同抵当の目的とされた各不動産の価額に応じて抵当権の被担保債権額を案分した額(以下「割り付け額」という。)によると解するのが相当である。

この設問、金額まで上記判例の事案と同じですね。
破棄差戻し判決なので、回答のような金額ズバリは判決には書いていないのですが…。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
こういう計算です。
①抵当権の被担保債権額:3千万
②抵当権の目的不動産:5千万
・甲土地(4千万)+乙土地(1千万)=5千万
③賠償額:2千万
・②(5千万)-①(3千万)=2千万
つまり甲地と乙地が負担すべき被担保債権を控除した残額を限度に詐害行為となるわけですね。
<割り付け額>
④甲土地(4千万):2400万(3千万×4/5)
⑤乙土地(1千万):600万(3千万×1/5)
<賠償額>
・甲土地:1600万(4千万-④=1600万)
・乙土地:400万(1千万-⑤=400万)
丙土地は抵当権の目的となっていないので100%詐害行為取消の対象となり、現物返還。
2
詐害行為取消権について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債務者が,その行為によって債権者を害することを知っていたという詐害行為の成立要件については,取消債権者が証明しなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

詐害行為取消権
第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害するべき事実を知らなかったときは、その限りではない。
「債務者が債権者を害することを知ってした法律行為」であれば、債権者が取消しを請求できるということは、詐害行為の要件を充足することによって利益を受ける債権者が証明責任を負うことになります。(大判昭和13.3.11)
したがって、設問の記述は正しいといえます。
ただし、「受益者又は転得者がその事実を知らなかったとき」は、詐害行為取消権は成立しません。
この場合の証明責任は、要件の成立によって利益を受ける「受益者又は転得者」にあります。(最高裁昭和37.3.6)
[自説の根拠]「短答六法3・民法」早稲田経営出版ほか
関連問題
次の説明は、債権者取消権に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
債権者取消権の短期消滅時効の起算は,債務者が債権者を害することを知って法律行為をなした事実を債権者が知った時からである。
3
次の記述について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
Bは,信用を増すために,Aからその所有する甲土地の仮装譲渡を受け,AからBへの所有権移転登記を了し,その登記簿をCに見せて融資を依頼した。Cは,Bが真実甲土地を所有しており,資力のある者と信じて,Bに対して1,000万円を貸し付けたが,その後,BはAに対して登記名義を戻してしまった。この場合,Cは,甲土地がBの所有であることを主張できる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
民法94条2項の「第三者」とは、「虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者」(大判T9.7.23)ですね。
これを設問肢にあてはめると、Cが甲土地について法律上利害関係を有しているか?ということが問題となります。
Cは甲土地の仮装名義人Bの一般債権者に過ぎず、甲土地の譲受人でも抵当権者でも何でもないので、甲土地について法律上利害関係を有しているとは言えない、というのが前記判例の要旨です。
つまり、Cは民法94条2項の「第三者」に該当しないので、通謀虚偽表示により生じた外観(この場合はBが甲土地の所有者であること)をCが信じたことにつき保護する必要がないことから、民法94条1項の原則通りAB間の仮装譲渡は無効(甲土地はAの所有のまま)となります。
[自説の根拠]参考:
http://foggia2011.blog7.fc2.com/blog-entry-42.html
登記に交信力は無いって事で×にしたのですがこの理由での正解もおかしくないでしょうか?
どなたか宜しくお願いします。
Cがその登記を信じ1000万融資してしまったのは事実だが、甲土地については何ら権利を有しているわけではなく保護される正当な理由もない。抵当権を設定さすなどの防御処置を怠ったのはマズいが設問はBを無資力とはしておらず金銭債権については契約通りの返済債務の履行を請求できるわけで完全に詐取された状況でもないと考えられる。
4
債務の弁済について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
売買契約の履行期に買主が履行場所に代金を持参すれば,売主が来なかったために代金を支払うことができなくても,現実の提供があったと認められる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

最判(三小)S23.12.14 民集第2巻13号438頁 裁判要旨
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=57107&hanreiKbn=01
より引用。

債務者が弁済のため現金を債権者方に持参してその受領を催告すればこれを債権者の面前に提示しなくても、現実に弁済の提供をしたものとみるのが相当である。

設問肢の見解は、ほぼ上記の裁判要旨と一致しますね。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
5
弁済による代位について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において,その被担保債権は,代位弁済者の債務者に対する求償権である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。 (民法 502条2項)
弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、法の規定
により弁済によつて消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保
権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを
認める制度であり、したがつて、代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合にお
いて、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であつて、保証人の債務者に対する求償権でないこと
はいうまでもない。
[自説の根拠]最高裁昭和59年5月29日判決
①委託保証人が債務者に代わって弁済をすると、債務は消滅し、保証人は債務者に対して求償権を取得します。(民法459条)
②上記の保証人は、債権者に当然に代位するので、原債権に付従する担保権を実行できます。(民法500条、同501条1項)
**
これをふまえると、原債権は消滅しているはずなのに、それに付従する担保権を実行できるという矛盾が生じます。
※続く
※上記続き
では、代位弁済者が取得するのは、原債権と切り離された担保権のみであり、その被担保債権は“求償権”に代わるのかというと、そうではなく、判例は、原債権が「消滅」するのではなく、代位弁済者に「移転」すると考え、それに付従して移転した担保権を、求償権の範囲内で実行するものとするので、当然、この場合の被担保債権は“原債権”であり、“求償権”ではない、としています。
[自説の根拠]最判昭和59年5月29日
関連問題
次の説明は、弁済に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
債権の一部について代位弁済があった場合で,残りの債務について債務不履行があるときは,債権者及び代位者は,契約を解除することができる。
6
借地借家法の適用を受ける不動産賃貸借について、適切か否か答えよ。
期間の定めがない建物の賃貸借契約において,賃貸人は,正当の事由があるか否かにかかわらず,6か月前の解約申入れにより,契約を終了させることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
関連する条文を引用しておきます。

借地借家法第二十八条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文です。
今回は、問題文に「借地借家法」と書いてあるので、特別法優先による、借地借家法28条を適用する。
もし借地借家法の適用がない場合
「民法617条1項」(解約の申入れ)
存続期間の定めのない賃貸借は、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、土地は1年、建物は3ヶ月の猶予期間を経て賃貸借は終了する。
・期間の定めあり→そもそもの期間に関わらない一方的な解約申し入れはできない。その代わりに更新拒絶が認められる。但し、正当事由が必要。
・期間の定めなし→そもそもの期間がないため、更新というものは基本的にありえない。その代わりに、一方的な解約申し入れが認められる。但し、この場合でも正当事由は必要。
関連問題
不動産賃貸借について、適切か否か答えよ。
建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において,期間の定めがないときは,賃貸人は,正当の事由があれば,賃借人に1年前に解約申入れをすることにより,契約を終了させることができる。
7
委任の終了について、判例の判旨に照らして適切か否か答えよ。
受任者の利益のためにもなされた委任において,委任者は,やむを得ない事由がなくても,委任者が委任を解除する権利自体を放棄したものと解されない事情があるときは,委任を解除することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。 (民法 651条2項)
上記判例の一部抜粋です。
===
本件管理契約の如く単に委任者の利益のみならず受任者の利益のためにも委任がなされた場合であつても、委任契約が当事者間の信頼関係を基礎とする契約であることに徴すれば、受任者が著しく不誠実な行動に出る等やむをえない事由があるときは、委任者において委任契約を解除することができるものと解すべきことはもちろんであるが、さらに、かかるやむをえない事由がない場合であつても、委任者が委任契約の解除権自体を放棄したものとは解されない事情があるときは、該委任契約が受任者の利益のためにもなされていることを理由として、委任者の意思に反して事務処理を継続させることは、委任者の利益を阻害し委任契約の本旨に反することになるから、委任者は、民法六五一条に則り委任契約を解除することができ、ただ、受任者がこれによつて不利益を受けるときは、委任者から損害の賠償を受けることによつて、その不利益を填補されれば足りるものと解するのが相当である。
===
[自説の根拠]http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319123216758664.pdf
委任の解除に関しては、原則と例外、更に本問のような例外の例外があるので注意が必要です。
●原則:各当事者がいつでも解除することができる。(民651条1項)
●例外:委任が「受任者の利益をも目的とするとき」は、やむを得ない事由がない限り、委任者は解除することができない。(最判昭43.9.20)
●例外の例外:「受任者の利益をも目的とするとき」であって、やむを得ない事由が“ない”場合でも、委任契約の解除権自体を放棄したものとは解されない事情があるときは、解除できる。(最判昭56.1.19)
[自説の根拠]最判昭和56年1月19日
委任者にやむをえない事由がなくても原則として解除を認めています。解除による受任者の不利益は損害賠償によってまかなえばよく、意に沿わない委任契約から委任者を解放することの方が委任契約の趣旨に合致しているというのが判旨です。
[自説の根拠]最判昭56.1.19、試験にデル判例
関連問題
契約の解除について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
委任契約が受任者の利益のためにも締結された場合であっても,委任者は,やむを得ない事由があるときには,契約を解除することができる。
8
売主Xと買主Yとの間の売買契約において手付が交付された場合について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Yが手付を放棄して契約を解除した場合,X及びYに損害賠償義務は生じない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。 (民法 566条3項)
買主が売主に手付けを交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付けを放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる
[自説の根拠]民法557条 手付
売買における手付は、反対の証拠がない限り、本条所定のいわゆる解約手付と認めるべきである。

なお、当事者間で当該手付が証約手付又は違約手付である旨の明示の合意があれば、上記判例とは異なり、損害賠償義務の生じる余地があると考えられます。
売買 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%B2%E8%B2%B7
も参照のこと。
[自説の根拠]最判S29.1.21 民集第8巻1号64頁
○である根拠は、557条2項の規定になります。
●民法第557条
1項 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
2項 第545条第3項の規定(※)は、前項の場合には、適用しない。
※545条3項 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
→つまり、買主の手付解除および売主の倍額償還解除の場合は、双方とも、損害賠償を別途請求することはできません。
[自説の根拠]民法第557条第2項
9
売買契約に基づき売買代金の支払を請求する場合について、以下の記述が適切か否か答えよ。
法律行為の附款である条件をそれが付された法律行為の成立要件とは区別される可分なものと考える見解に立った場合,売買契約に停止条件が付されているときは,停止条件が成就したことが再抗弁となる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

本問の見解に立つと、契約とは別に停止条件成就も法律行為が成立する要件になり、抗弁が可能ということですかね。。
[自説の根拠]どなたかご教示下さい。。
停止条件付契約と停止条件の成就との主張責任の分配ないし証明責任の分配については、抗弁説と否認説とが対立している。
「法律行為の附款である条件をそれが付された法律行為の成立要件とは区別される可分なものと考える見解に立った場合」とは「抗弁説」を指す。
抗弁説は、「例えば、ある物についての停止条件付贈与契約が成就した場合に、受贈者甲が贈与者乙に対し、目的物の引渡しを求めるには、甲は、請求原因として、目的物引渡請求権の発生原因事実である贈与契約締結の事実を主張立証すれば足りる。これに対し、甲の請求を拒む乙は、当該契約にある停止条件(例えば、甲が大学の入学試験に合格すること)が付された旨を抗弁として主張立証することができる。右の停止条件が成就したことは、甲が再抗弁として主張立証しなければならない。」というのである。
[自説の根拠]所詮、法律素人のコメントです。参考程度にしておいて下さい。
10
保証について、適切か否か答えよ。
保証人が検索の抗弁権を行使するためには,主たる債務者に弁済の資力があること及び主たる債務者の財産が執行の容易なものであることを証明する必要がある。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。 (民法 453条)
関連する民法の条文を引用しておきます。

第四百五十三条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

なお、検索の抗弁権の行使は、債務者に若干の財産があればでき、必ずしもそれが債権の全額に及ぶことを必要としません(大判S8.6.13)。
[自説の根拠]参考:検索の抗弁権 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%9C%E7%B4%A2%E3%81%AE%E6%8A%97%E5%BC%81%E6%A8%A9
および だったので×にしました
かつ ですよね?
hamusutarさん
僭越ながら…
「および」≒「かつ」≒「&」
です。
11
指名債権譲渡の承諾について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
未完成仕事部分に関する請負報酬金債権の譲渡について,債務者が異議をとどめない承諾をすれば,譲受人がその債権が未完成仕事部分に関する請負報酬金債権であることを知っていたとしても,債務者は,その債権の譲渡後に生じた仕事完成義務不履行を理由とする当該請負契約の解除をもって譲受人に対抗することができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
◆請負契約の解除と異議なき承諾の効力
債務者が異議を留めない承諾をしても、譲受人が右債権が未完成仕事部分に関する請負報酬請求権であることを知っていた場合は、債務者は譲受人に契約の解除をもって対抗できる。
[自説の根拠]最判S42・10・27 民集21巻8号2161頁
12
保証について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
貸金等根保証契約においては,元本の確定期日を定めた場合であっても,極度額を定めなければ,その効力を生じない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

(貸金等根保証契約の保証人の責任等)
第四百六十五条の二  一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」)が含まれるもの(以下「貸金等根保証契約」)の保証人は、(略)その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2  貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
[自説の根拠]民法465条の2
貸金等根保証契約は、極度額を定めなければ効力は生じません
保証契約であるから、貸金等根保証契約は要式契約である。そして必要的約定事項である極度額の設定についても、書面または電磁的記録でしなければ効力は生じず、これに違反した場合は貸金等根保証契約自体が無効となる。
極度額は以下の全てを含むものとしなければならない。
(1)主たる債務の元本
(2)主たる債務に関する利息・違約金・損害賠償
(3)その他主たる債務に従たるもの
(4)保証債務にいて約定された違約金・損害賠償
なお、元本確定期日は任意的約定事項です。
ちなみに、保証人が法人であるものは除かれます。(465条1項カッコ書き)
→保証人が法人の場合は極度額定めなくても有効!
根保証における保証人が個人の場合には、人的無限責任を負うことに伴う経済生活の破たんの恐れがあるのに対し、法人の場合にはそのようなおそれはないうえに、保証の要否や必要の範囲につき合理的な判断が期待できることから、なお契約自由の原則に委ねるべきこととしました。
[自説の根拠]自説の根拠は、『LEC完全整理択一六法』
法人の場合は民465条の2は妥当しないので本問の正誤早まりであると考えられます
13
贈与について、適切か否か答えよ。
特定物を受贈者の負担なく贈与する場合において,目的物に瑕疵があることを贈与者が知らずに贈与したときには,その瑕疵について贈与者は担保責任を負わない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

知っていて告げなかったときは責任を負います
民法第551条(贈与者の担保責任)
1. 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
2. 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
よって、○です。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文。
14
不当利得について、適切か否か答えよ。
判例によれば,強行法規に違反する給付は,不法な原因のために給付をしたものとして,返還を請求することができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
民法第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
ただし書きにもあるように、返還請求が認められる場合がある。
たとえば、密輸のために資金を出すよう脅迫されやむなく資金を提供した場合、給付者と受益者の違法性を考慮し、給付者の返還請求を認めた。(最判昭29.8.31)
[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文及び判例。
単に強行法規違反というだけでは「不法の原因」にはあたりません。
参考:最判昭和37年3月8日
「不法の原因のための給付とは、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるのみならず、さらにそれが、その社会において要求される倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要とする。」
[自説の根拠]上記判例
15
Aは自転車を運転して歩道上を走行中,前方不注視により,歩行者Bに衝突し,Bが負傷した。この事例について、適切か否か答えよ。
Aが5歳の幼児である場合,AはBに対して損害賠償義務を負うことはなく,Aの親権者であるCが,Aに対する監督義務を怠らなかったとき及びその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときを除き,Bに対して損害賠償義務を負う。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

「A又はBのときは責任を負わない」=「A及びBを除き責任を負う」
設問を窺う限り、監督義務を怠る等の715条以外に因果はない
上記より本問が特に悪問であるとは思えません
[自説の根拠]本問趣旨
「A又はBのときは責任を負わない」=「A及びBを除き責任を負う」
本問において715条は論外(事業の執行に該当しない)。
設問は「5歳の幼児(責任能力なし)」と前提するもので、714条で処理が可能。敢えて709条をもちだすはナンセンス。
例えば、設問前提が「中学生(責任能力あり)」であれば、714条の余地はなく、監督義務違反と損害の因果の立証、つまり一般不法行為を根拠に損害賠償責任を負う(709条)。
[自説の根拠]日本語も内容もおかしいので訂正します。07/04のコメントの削除をお願いします
被害者側は厄介な709条に基づく不法行為で敢えて賠償請求する必要はなく、容易な714条で請求で足りる。
一般的不法行為である709条の場合、具体的な不法行為との関係における監督義務違反となり、不法行為の範囲としては714条より狭くなる。
また709条と異なり、714条は加害者側に過失の立証責任が求められることからも然り。
加害者側としても立証責任の転換(714条は被害者救済のための規定)があるも、その立証により損害賠償を免れる。
本問で709条を前提とするはナンセンスである
40点
[入室] おはようございます @社労 (27秒前)
1
債権者代位権について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
債権者は,債権者代位権行使のために必要な費用を支出したときは,その費用の償還請求権を有する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。 (民法 500条)
共同担保の保全を目的とするものである為、債権者はその費用償還返済につき先取特権を有している
[自説の根拠]民法306,307各条
(一般の先取特権)
民法306条「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一  共益の費用
(共益費用の先取特権)
民法307条「共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。」
債権者代位権は、保存行為に当たります。
[自説の根拠]自説の根拠は、「『判例六法Professional平成21年版』有斐閣」の民法307条参照条文
コメントがおかしいですね。
306条、307条には一般の先取特権について書いていますが、それ以前に費用償還請求権が認められるか、の根拠がなければ、担保権の成立を論じても意味がありません。
費用償還請求権については、法定委任と解することで認められるとする解釈があります。
債務者と代位債権者の関係を一種の法定委任関係と考えられる。
必要な費用を支出した場合には委任契約における受任者と同様に,債務者に対し,その費用の償還を請求することができると考えられる(民法650条1項)。
債権者代位権の行使のために必要な費用(債務者のために有益な費用)を支出した場合には,事務管理における管理者と同様に,債務者に対し,その費用の償還を請求することができると考えられる(民法第702条)
[自説の根拠]民法650条1項、同702条
益費用の先取特権について
代位債権者が本来型の債権者代位権の行使のために必要な費用を支出する行為は本来型の債権者代位権における事実上の優先弁済の機能を否定する立場を採る場合には特に,債務者の責任財産の増加という総債権者の利益に資する行為であって,共益性を有するものと言える。
費用償還請求権については,本来型の債権者代位権の行使によるものである場合には,共益費用に関する一般の先取特権の規定(民法306条、307条)が適用される。
2
AはBと売買契約を結び,目的物を引き渡して100万円の代金債権を得た。Aに売掛金債権を持つ債権者Cは,このAのBに対する代金債権を差し押さえて取立訴訟を提起した。Bは,Aに対して80万円の反対債権を有していたため,これをもって相殺することを主張したい。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
BのAに対する反対債権が,BがAに対し別訴で現在訴求中のものであるときは,この反対債権を自働債権として相殺することは許されない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

最判H3.12.17
「別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として、相殺の抗弁を主張することは、許されない」
相殺の抗弁ができないと、支払がなければ反対債権で相殺するつもりだったBの期待が失われます。
しかし、相殺を許すと、二つの訴訟の判決に矛盾が発生する可能性があり、許されないというのが多数説のようです。
相殺の期待よりも、二つの訴訟で異なる結果が出ることにより、既判力が抵触するのを防ぐことを重視するという考えですね。
まあ、司法試験らしい問題です。
[自説の根拠]最判H3.12.17、二重起訴の禁止 – Wikipedia
3
AがBに土地を賃貸し,Bが同土地上に建物を建築して所有する場合において,AがCに同土地を譲渡したときの法律関係について,判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
Bは,土地の賃貸借の登記と建物の所有権の登記のいずれもしていなかったが,建物の登記記録に表題部所有者として登記されていた。この場合,CのBに対する建物収去土地明渡請求は認められる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
最判(一小)S50.2.13 民集第29巻2号83頁
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120458309869.pdf
より抜粋。

建物保護ニ関スル法律一条が、建物の所有を目的とする土地の借地権者(地上権者及び賃借人を含む。)がその土地の上に登記した建物を所有するときは、当該借地権(地上権及び賃借権を含む。)につき登記がなくても、その借地権を第三者に対抗することができる旨を定め、借地権者を保護しているのは、当該土地の取引をなす者は、地上建物の登記名義により、その名義者が地上に建物を所有する権原として借地権を有することを推知しうるからであり、この点において、借地権者の土地利用の保護の要請と、第三者の取引安全の保護の要請との調和をはかろうとしているものである。
この法意に照らせば、借地権のある土地の上の建物についてなさるべき登記は権利の登記にかぎられることなく、借地権者が自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有する場合もまた同条にいう「登記シタル建物ヲ有スルトキ」にあたり、当該借地権は対抗力を有するものと解するのが相当である。

よって、設問肢のBは保護されます。
建物保護法1条は、現在の借地借家法20条1項ですね。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
《表題部所有者》
借地上の建物登記は,表題登記で足りる。
借地人が借地上に自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有する場合は,建物保護に関する法律1条にいう登記したる建物を有するときにあたる(最判昭50.2.13)。
なぜ建物表題登記のみ済ませ、所有権保存登記をしない場合があるのかが疑問だったので、調べてみました。
建物表題登記は、取得の日から1か月以内に登記しないと過料10万円に処せられます。
所有権保存登記にはこのような罰則がありません。そこで、登記しないこともあるようです。
*登記には費用がかかりますものね。
[自説の根拠]不動産登記法
第47条1項 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
第164条
・・・第四十七条第一項・・・の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
関連問題
Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。
この事例について、判例の趣旨に照らして以下の記述が適切か否か答えよ。
Bが乙建物について所有権保存登記を行ったが,それを知らないCが甲土地について所有権移転登記を行った場合,CはBに対して建物収去土地明渡の請求ができるのが原則である。
4
不動産賃貸借について、適切か否か答えよ。
建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において,期間の定めがないときは,賃貸人は,正当の事由があれば,賃借人に1年前に解約申入れをすることにより,契約を終了させることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
第1条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃貸借の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
第3条 借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
[自説の根拠]借地借家法
設問の状況下(一時使用目的ではない場合)では、途中(契約時から30年)で賃貸人の方から契約解除の申し入れはできないため誤りとなります。
期間の定めのない建物の賃貸借の場合と期間を定めなかった土地上の建物所有目的の借地契約は民法の絡みからも(604・617等)適用が全く違います。
借地借家法において、借地権設定者が更新を拒絶できる要件は、借地権の存続期間が満了する場合において、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、その意義に正当な事由がなければならないとしています。「賃借人に1年前に解約申入れをすることにより」という規定は、借地借家法にはなく、あくまで更新時が基準になります。いつでも言えるわけではありません。
[自説の根拠]自説の根拠は、借地借家法5条、6条
関連問題
借地借家法の適用を受ける不動産賃貸借について、適切か否か答えよ。
期間の定めがない建物の賃貸借契約において,賃貸人は,正当の事由があるか否かにかかわらず,6か月前の解約申入れにより,契約を終了させることができる。
5
保証について、適切か否か答えよ。
継続的売買契約により生じる代金債務を主たる債務とする根保証契約がされた場合,主たる債務の元本,主たる債務に関する違約金,損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,極度額を定めなければ,根保証契約の効力は生じない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。 (民法 465条の3)
継続的売買契約により生じる代金債務は、「債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもの」所謂「貸金等根保証契約」に該当しない為、誤りです。
[自説の根拠]民法第465条の弐1項
《極度額》
継続的売買契約により生じる代金債務を主たる債務とする根保証契約がされた場合,主たる債務の元本,主たる債務に関する違約金,損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,極度額を定めなくても,根保証契約の効力を[生じる]。
《極度額》
貸金ではなく,代金債務については,極度額を定めなくても,効力を生じる(民法465条の2第2項)。
6
使用者責任について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
使用者は,被用者の加害行為が被用者の職務権限内で適法に行われたものでないこと及び加害行為時に被害者がそのことを知っていたか,知らないことに過失があったことを証明すれば,責任を免れる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
過失ではなく、重過失です。
[自説の根拠]最判S42.11.02
被用者のなした取引行為がその行為の外形からみて使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなくかつその行為の相手方が右の事情を知りながらまたは少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条の「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、その取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当。
7
使用者責任について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
責任を負った使用者又は代理監督者は,被用者に対して求償し得るが,被用者がこの求償権を信義則上制限すべきことを基礎付ける事実を証明すれば,この求償権は制限される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。 (民法 715条3項)
この求償制限は抗弁事由となってます。
経費節減でタンクローリーに保険をかけなかった会社が被用者の運転手と事故の求償について争い、求償額について上限を付されました。
[自説の根拠]最判S51.7.8
8
Aは,Bに対し甲動産を売却したが,Bが代金を支払わないので,Aは,その支払を求めて訴えを提起した。この事例について、以下の記述が適切か否か答えよ。
Aが,Bの同時履行の抗弁に対し,AB間において代金支払の10日後に甲動産を引き渡す旨の合意をしたことを主張しても,再抗弁にならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
関連する民法の条文を挙げておきます。

第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

Aの再抗弁は、Bに先履行義務があることを主張しているので、Aの主張が正しいならば、民533条但書から、Bは同時履行の抗弁により支払を拒むことはできなくなります。
(この場合、Bは、Aの資産状況等によっては、不安の抗弁を主張することが考えられますが、設問肢からはそこまでの記述はないので、このケースでは考えなくてもいいでしょう。蛇足まで。)
[自説の根拠]参考:同時履行の抗弁権 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8C%E6%99%82%E5%B1%A5%E8%A1%8C%E3%81%AE%E6%8A%97%E5%BC%81%E6%A8%A9
被告の抗弁に対して、原告が、抗弁事実に基づく法律効果を拝訴するために、これと両立する新たな別個の事実を主張することを再抗弁といい、以下、再々抗弁、再々々抗弁と続く。
[自説の根拠]wikipedia
9
民法上の組合について、適切か否か答えよ。
組合の業務執行を委任する場合,業務執行者は組合員の中から選ばなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。 (民法 670条)
民法670条2項で、
「前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任したものが数人あるときは、その過半数で決する。」
とありますが、それを組合員の中から選ばなければいけないとの記載はない。
関連問題
匿名組合について、適切か否か答えよ。
匿名組合員は、営業者の業務を執行し、または営業者を代表することができない。
10
民法上の組合について、適切か否か答えよ。
組合員は,組合の債権者に対し,互いに連帯して債務を履行する責任を負う。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
組合の債務者は、その債務と組合員に対する債権とを相殺することができない。 (民法 677条)
組合員に対する組合の債権者の権利の行使;
「組合の債権者は、その債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知らなかったときは、各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができる。」
各組合員の損失分担割合に応じて責任を負うにすぎない為、誤りです。
[自説の根拠]民法第675条
組合員の債務は割合的に分割された債務であり、連帯の規定は存在しない。
[自説の根拠]民674、675条
11
重大な過失について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
被用者のした取引行為が,その行為の外形からみて,使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合であっても,その行為が被用者の職務権限内において適法に行われたものでなく,かつ,その行為の相手方がその事情を知りながら,又は,重大な過失によりそれを知らないで,取引をしたときは,取引の相手方である被害者は,使用者に対し,その損害の賠償を請求することができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

判例の通りです。
[自説の根拠]最判S42.11.2
極端な例になりますが、被用者が、個人的に怪しいものを(開運の壷とか)取引先に販売して被害を与えてしまった。そりゃ、会社に損害賠償できませんね。
12
相殺について、適切か否か答えよ。
判例によれば,受働債権が差し押さえられても,差押え前から自働債権となる債権を第三債務者が有していた場合,第三債務者は,それらの債権の弁済期の先後を問わず,相殺適状に達すれば,相殺をすることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)

最大判S45.6.24 民集第24巻6号587頁
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122429711584.pdf
より抜粋。

第三債務者は、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、自働債権および受働債権の弁済期の前後を問わず、相殺適状に達しさえすれば、差押後においても、これを自働債権として相殺をなしうるものと解すべきであ(る)。

これは、「銀行(第三債務者)は、預金者への貸付債権を(それが預金差押えの後に取得したものでない限り)自働債権として、差押えされた預金者の預金と相殺できます」と言い換えることができます。
判例は基本的に銀行が勝つようにできているので、このことは受験テクニックとして覚えておくといいかもしれませんね。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
問題文の読み替え
判例によれば,受働債権(預金)が差し押さえられても,差押え前から自働債権となる債権(貸出金)を第三債務者(銀行)が有していた場合,第三債務者(銀行)は,それらの債権の弁済期の先後を問わず,相殺適状に達すれば,相殺をすることができる。
事件名>定期預金等請求(最高裁大法廷/S45.6.24)
[自説の根拠]判例検索システム
13
利益を受ける者の意思の尊重について、適切か否か答えよ。
利害関係を有しない第三者は,債務者の意思に反して,その債務の保証をすることができない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。 (民法 474条2項)
利害関係を有しない第三者でも、債権者と保証契約を締結すればできますので×が正解ですね。
余談ですが、債務者の意思に反する第三者弁済を禁止するはずの民474-2の規定は合理性がないと学説では批判されているようです。
[自説の根拠]民法474条2項
保証契約は債務者の意に反して債権者と結べますが、結果保証人が全額弁済してしまうと、それは債務者の意思に反した弁済にならないんですかね?債務者にとって好まざる相手が新たな債権者になるのと大きくは変わらない訳で。私の経験上誰も親切で勝手に保証人になんかなりませんよ。
関連問題
次の説明は、弁済に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
利害関係を有しない第三者であっても,債務者の意思に反して弁済することができる。
14
安全配慮義務について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
安全配慮義務は,使用者が労働者の生命及び健康等の安全を確保する包括的な義務であるから,使用者の履行補助者が道路交通法に基づいて負うべき注意義務に違反した場合には,その注意義務違反を理由として,使用者の安全配慮義務違反が認められる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
下記裁判において、
「運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。」
履行補助者が道交法違反した場合にまで、使用者の安全配慮義務違反を問うことはできません。
[自説の根拠]陸上自衛隊第三三一会計隊事件(1983年5月27日)
安全配慮義務ってなぁに?という方へ(私もです)。
判例で提唱された概念です。以下が判例です。
最判S50.2.25
「国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設若しくは器具等の設置管理又はその遂行する公務の管理にあたつて、国家公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負つているものと解すべきである」
信義則上発生する義務とされ、義務に違反した場合は損害賠償を請求できるとされます(債務不履行です)。
[自説の根拠]最判S50.2.25
いくら包括的に安全を確保する義務があるからといって、法令に基づいて当然に負うべきものとされる「通常の注意義務」は安全配慮義務の内容には含まれない。使用者が履行補助者に法令違反をしないと決して達成できないような強制的な任務を課していたのなら問題になるのかもしれないが。
15
弁済の提供について、判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
金銭債務の債務者が債務の弁済期に現実の提供をしたが,債権者がその受領を拒絶した場合には,債務者は,提供後の遅延損害金の支払義務を負わない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)

民法413条[債権者が債務の履行を受けることを拒み、または受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があったときから遅滞の責任を負う。」
[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文
民法492条(弁済の提供の効果)
債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。
設問のケースでは、債務者は弁済期に現実の提供を行っているので、提供後の損害遅延金の支払いの責任を免れる(支払い義務を負わない)ことになります。
したがって、設問の記述は正しいといえます。
[自説の根拠]上記条文
民法492条 弁済提供の効果
① 債務者は債務不履行による損害賠償責任を負わず違  約金を支払う必要もない。また契約を解除されず、  担保権の実行を免れる。
② 法定利息が発生しない。
③ 債権者は同時履行の抗弁権を行使できなくなる。
④ 債務者は目的物の保管に要した増加費用を請求でき  る。
⑤ 債務者の注意義務が自己の財産における同一の注意  義務に軽減される。
⑥ 危険負担が債権者に移転する。
[自説の根拠]自説の根拠は、成○堂テキスト

スポンサーリンク

スポンサーリンク

関連記事

  1. 民法 138条-174条 /1044条 代理

  2. 民法 1条-2条/1044条 人

  3. 民法 623条-696条/1044条 雇用

  4. 民法 838条-881条/1044条 後見

  5. 民法 33条-89条/1044条 法人

  6. 民法 206条-264条/1044条 所有権