資本主義経済と国際経済
今回から経済全般について勉強します。行政書士試験での頻出は金融・財政ですが、資本主義経済の全体像が、経済分野では基本となるので、まず、そこから勉強しましょう。
今回のメニューは、①資本主義経済の成立、②現代の市場、③国際経済――です。
Ⅰ.資本主義経済の成立
18世紀後半から19世紀中ごろにかけての自由主義(産業資本主義)の時代は、国家による保護・干渉を排除して、経済活動の自由をもっとも重視した時代です。
イギリスのアダム・スミスは、著書『富国論(諸国民の富)』を著し、自由放任主義(レッセ・フェール)を採用すれば、個人の利益追求は神の見えざる手に導かれて予定調和状態が実現するという市場機構の働きを述べました。
しかし、産業革命後の自由放任主義政策により、企業間競争において生産過剰による不況が起こり、弱小企業が淘汰される一方、大企業は市場を支配して自由競争を制限し、資本の集積と集中によって独占・寡占状態となり、独占資本が形成されるようになります。市場の独占・寡占化は、労働者と資本家との間の貧富の差を拡大させ、19世紀後半から20世紀初頭には階級対立が激化しました。
また、国内市場を支配した独占資本と銀行資本が結合した金融資本を持つ欧米諸国は、海外に新たな市場を求めて植民地再分割に乗り出し、膨張主義的な帝国主義政策を進めていくことになります。
そんな中、1929年秋に起こった世界恐慌とそれに続く1930年代前半の不況によって、世界中の失業者は約4000万人を超えたと言われています。
以上のような資本主義の矛盾を克服すべく政府が積極的に経済に介入を行い始めたのが、修正資本主義です。この代表的な政策が、アメリカ合衆国のフランクリン・ルーズベルトによるニューディール政策です。また、植民地を抱えるイギリス・フランスは、ブロック経済政策を採用する一方、植民地を持たないドイツ・イタリア・日本は、ファシズムへと傾斜していきました。ブロック経済政策とは、閉鎖的・地域的な経済圏を形成する経済政策のことです。
介入政策の共通した方法は、政府が財政政策によって、購買力の裏付けのある有効需要を管理し、経済の安定と成長を導こうとするもので、この政策を理論化したのがイギリスのケインズです。
第二次世界大戦後は、混合経済のもとでの景気調整政策、社会保障政策、労働政策、独占禁止政策、弱小産業保護政策――などが行われ、政府は小さな政府から、多様な行政サービスを提供する大きな政府へと変貌していきます。
しかし、第一次石油ショックが起こり、1973年、先進資本主義諸国の経済を活性化し、各国間の経済摩擦を抑えるために、アメリカ、イギリス等を中心として新自由主義(新保守主義)の経済路線が推進されることとなり、国際的な市場の開放と拡大が図られました。新自由主義を進めた代表的な政治家は、イギリスのサッチャー、アメリカのレーガン、日本の中曽根康弘――などです。具体的には、公営企業の民営化や経済規制の緩和などの政策がとられました。
Ⅱ.現代の市場
1.価格の自動調整機能
物の価格には、需要と供給を一致させる働きがあり、これを価格の自動調整機能と言います。市場で競争が行われていると需用と供給のバランスが崩れても、価格が変化して市場内で自動的に、需要・供給の法則に従って需要と供給は一致する方向へ働きます。
この需要・供給の原則とは、商品の需要量・供給量とその価格との関係の法則のことで、市場で自由に競争が行われている場合、供給量が一定のときに需要量が増加(現象)すると価格は上昇(下落)し、需要量が一定のときに供給量が増加(減少)すると価格が下落(上昇)します。
2.不完全競争市場
生産活動で獲得した利潤を蓄積し、生産設備の拡大に振り向け、企業規模を拡大していった資本の集積と、他の企業を吸収合併して企業規模を拡大した資本の集中などで巨大な企業が出現し、市場の自由競争が排除され、独占市場や寡占市場などの不完全競争市場が形成されることがあります。
不完全競争市場の影響は、①管理価格の形成、②価格の下方硬直性、③非価格競争――の3点です。
①の管理価格の形成とは、寡占市場で最も有力な大企業がプライス・リーダー(価格先導者)となって有利な価格を設定し、他の企業がこれに追随して管理価格が形成されることです。
②の価格の下方硬直性とは、管理価格が設定されると、価格が需要と供給の関係によって決まらなくなり、その結果、コストダウンが生じても価格が下がりにくくなることです。
③の非価格競争とは、寡占市場のもとで行われる商品の品質やブランド、アフターサービスなど、価格以外による競争のことです。
3.インフレとデフレ
次に、インフレーション(インフレ)とは、物価が相当期間にわたって継続して上昇し、通貨の価値が低下する現象のことです。インフレは原因により、①ディマンド・プル・インフレ(需要インフレ)、②コスト・プッシュ・インフレ(費用インフレ)、③マネー・サプライ・インフレ――に分類することができます。
一方、デフレーション(デフレ)とは、物価が持続的に下落する現象のことで、デフレの状況下では、供給過剰から物やサービスが売れず、商品の価格を下げざるを得なくなり、企業の売上げや利益が減少し景気は低迷します。その結果、所得の減少や失業などで、消費マインドが減退するため、ますます景気が落ち込むというデフレ・スパイラルという悪循環が起こります。
Ⅲ.国際経済
国際経済については、①外国為替相場、②IMF=GATT体制、③WTOとFTA、④EU(欧州連合)――の順に解説します。
1.外国為替相場
外国為替相場(為替レート)とは、自国通貨と他国通貨との交換比率のことで、a為替相場を一定の値に固定する固定相場制と、b外国為替手形や外国通貨に対する需要と供給によって決定する変動相場制があります。主要先進国は、1973年以降、変動相場制が採用されています。変動相場のもとでは、通常の財市場の需要関係によって日々刻々とレートが変動します。
変動相場制では、例えば1ドル=120円から、1ドル=100円に変動することを円高・ドル安と呼び、その逆に1ドル=120円から、1ドル=150円に変動することを円安・ドル高と呼びます。
2.IMF=GATT体制
第二次世界大戦後の資本主義世界の経済再建を図るために、アメリカ合衆国が主導で成立した国際経済体制をIMF=GATT体制と言います。
その経緯をお話ししますと、1944年、ブレトン・ウッズ協定により、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD)の設立の合意がなされました。IMF設立の目的は、為替レートの安定、為替取引の自由化、国際収支赤字国への短期的な融資を通じた、自由な貿易や資本移動の促進です。ブレトン・ウッズ体制のもとでは、ドルは常に金と交換可能とされ、各国通貨はドルとの交換比率を定めた固定為替相場制が採られました。ちなみに1ドルは360円でした。
その後1971年、ニクソンショックと呼ばれるアメリカ経済の破たんから金とドルの交換が停止され、スミソニアン協定によりドルが切り下げられました。1ドルが308円となったのです。
続いて1973年から、各国が変動相場制へと移行していき、1976年のキングストン合意により、完全に変動相場制となります。
一方、第二次世界大戦の原因の一つに1929年の世界恐慌以後のブロック経済があります。その反省から貿易に対する制限の撤廃と貿易促進を目的として、1947年に関税および貿易に関する一般協定(GATT)が締結され、翌年に発行しました。GATTは、発足以来多国間の貿易交渉を主導し、a加盟国が相互に同等条件で貿易取引を行うという無差別原則の確保、b輸入制限の撤廃、c関税の引き下げ――などの貿易自由化を目指し、自由・無差別・互恵・多角――を原則とし、貿易に関するルールの形成、貿易紛争処理、貿易自由化の促進――の機能を有しています。
3.WTOとFTA
WTO(世界貿易機関)は、ウルグアイ・ラウンドにおける合意に基づいてGATTを発展的に解消して、1995年に発足した世界貿易に関する国際機関で、本部はスイスのジュネーブにあります。WTOの役割は、①貿易協定の運用、②貿易交渉の場の提供、③貿易紛争の処理、④各国の貿易政策の監視――などです。
このWTOの設立により、モノ、サービス、知的所有権などを巡る紛争はすべて統一的な処理手続きによって行われることになりました。なお、WTO協定の対象となる分野の紛争は、WTOの解決手続きに従わなくてはならないとする決まりがあります。
WTOの紛争処理は、二国間協議とパネル提訴の2段階に分けられ、二国間で協議して解決が得られない場合にはパネル提訴となります。ここでいうパネルとは紛争処理の際に設置される小委員会のことで、パネルに提訴した国は相手国の協定違反などを法的に証明して、中立的なパネリストである法律家の判断を求め、この判断に相手国が従わない場合、提訴した国は対抗措置を発動することができます。
一方、FTA(自由貿易協定)とは、締結国同士が相互に関税を撤廃したり、通関手続きを簡略化したりして、貿易や投資の拡大を図る貿易協定のことです。日本は、FTAには消極的でしたが、WTOの協議には時間がかかったり、世界的にもFTAが急増しつつあるという流れに従う形で、2002年1月に初めてシンガポールとの間でFTA の締結しました。
なお、近年では、FTAに代わり、経済全般の連携強化を目指すEPA(経済連携協定)が主流になっています。
4.TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)
TPPは、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国により締結され2006年発効した協定で、参加国は増えてきています。TPPは、加盟国間で、サービス、人の移動、基準認証などの経済制度の整合性を図り、全品目の関税を撤廃することを目的としています。
5.EU(欧州連合)
1967年にEEC(欧州経済共同体)、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EURATOM(欧州共同体)――の3つの組織を統合して、EC(欧州共同体)ができました。
1992年には、マーストリヒト条約が調印され、1993年にEUへと発展しました。1197年に締結されたアムステルダム条約に基づき、共通の外交・安全保障政策に取り組む道筋を定めるとともに、1998年、欧州中央銀行が設立されました。
その後1999年から欧州共通通貨・ユーロが決済用通貨として導入され、2009年12月に、欧州理事会常任議長(大統領職)や欧州連合・外務安全保障上級代表(外相職)の設置などEUの機構改革をするためのリスボン条約が発効しました。
2011年にクロアチアのEUへの加盟が承認され、2013年に28番目の加盟国となる予定です。また、2014年にはルーマニアがユーロを導入する予定です。
EUの歩みを一覧にしますので、確認してください。
国内経済
今回は、1900年代後半から現在までの①日本経済の動向について、時系列でまとめた後、②金融、③日本銀行の役割――と勉強しましょう。
Ⅰ.日本経済の動向
★1985年~1986年【プラザ合意と円高不況】
1985年、日本の欧米に対する貿易黒字を要因とする貿易摩擦を解決するために、先進5カ国(アメリカ・日本・イギリス・フランス・ドイツ)の蔵相・中央銀行総裁会議(G5)が開催され、ドル安・円高に誘導することが決定されました。これをプラザ合意と言います。
これにより、日本の輸出は打撃を受け、円高不況と呼ばれる一時的な不況に陥りました。
★1986年12月~1991年2月【平成景気】
上記の円高不況の対策として内需転換を図るため、超低金利政策が採られる一方、円高の進行で輸入関連企業には金余り現象が生じたことにより、資産インフレが発生し、利益(キャピタルゲイン)を得た人々は、消費を拡大させました。
また、日本企業は強い円を背景に海外直接投資を増加させ、外国企業のM&A(買収・合併)を行った結果、国内産業の空洞化という新たな問題も発生しました。
★1990年代【バブルの後遺症】
1989年から金融引き締めが行われ、過剰投資の反動として株価・地価が暴落し、バブル経済が崩壊しました。これにより消費経済は低迷、不良債権を抱えた金融機関の貸し渋りが、いっそう消費・投資を減退させるという悪循環が生じました。さらに、1ドル=100円台~90円台という円高も加わり、長期の不況に陥りました。
第一次平成不況の後、一度は景気回復の兆しが見えたものの、円高の進行(1995年には1ドル=79円75銭)により輸出は減退しました。さらに、住宅金融専門会社は、バブル期に貸し付けた資金の回収が困難となり破たん、1996年に、公的資金が投入されるに至りました。その後も銀行や証券会社の破たんが相次ぎました。
また、巨額の不良債権を抱えた銀行による貸し渋りや貸し剥がしのため、企業は資金繰りに苦しみ、倒産や失業が増加しました。1997年の橋本内閣は、消費税率の引き上げ、健康保険の自己負担率の引き上げなどを行った結果、消費者の消費の減退を加速させることになりました。
★2000年代【現在の経済情勢】
2002年以降、景気回復局面に入り、景気の回復は戦後最長を記録しました。しかし、原油価格の高騰などの交易条件の悪化、2007年夏以降のアメリカのサブプライム住宅ローン問題をきっかけに、我が国でも金融市場の混乱、翌年秋のリーマンショックに端を発する金融危機――などによる世界経済減退などのため、再び景気後退局面に入っています。
Ⅱ.金融
金融とは、多数の経済主体からなる経済社会においてお金が滞ることなく流通している現象と定義されますが、その方法には、①直接金融と②間接金融――があります。
①の直接金融とは、資金需要者(借り手)が資金供給者(貸し手)から直接に資金の供給を受ける方法のことで、②の間接金融とは、資金供給者と資金需要者の間に金融機関が入り資金の流れを媒介する方法のことです。具体的には、直接金融は、企業が株式や社債などの有価証券を発行して必要な資金を他の企業や家計から調達するような場合です。一方、間接金融の例は、企業が必要な資金を金融機関からの借入れで調達するような場合です。
金融が分かったところで、ぜひ覚えてほしい金融用語に、①短期金融市場、②バーゼル合意(BIS規制)、③ペイオフ解禁――の3つがあります。
①の短期金融市場とは、1年以内の短期間、資金を調達・運用する取引が行われる市場の総称で、aインターバンク市場、bオープンバンク市場――に分けることができます。
aのインターバンク市場とは、取引に参加することができるものは金融機関に限られ、金融機関が相互に日々の短期的な資金の過不足を調整するために取引しています。
一方、bのオープン市場とは、金融機関以外にも広く一般の企業などが取引に参加できる市場です。
②のバーゼル合意(BIS規制)とは、1988年にバーゼル銀行監督委員会が発表した銀行の自己資本比率の測定方法や達成すべき最低水準(8%)に関する国際統一基準です。バーゼル銀行監督委員会とは、G10(ベルギー、カナダ、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、スウェーデン、イギリス、アメリカ、フランス)の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会のことです。通常、常設の事務局が設けられるスイスのバーゼルにあるBIS(国際決済銀行)で開催されます。
この基準は、1988年に発表され、随時、見直しが行われ、2006年度決算からはバーゼルⅡの適用が開始されています。
③のペイオフとは、金融機関が破たんし、預金などの払戻しを停止するなどの保険事故が生じたとき、預金保険機構が預金者に対して行う保険金の支払いのことです。ペイオフが実施されると、原則として、預金者一人当たり預金元本1000万円とその利息の上限が保険金の支払額となります。我が国で初めてペイオフが行われたのは、2010年9月、日本振興銀行の経営破たんの際でした。
Ⅲ.日本銀行の役割
日本銀行の目的は、我が国の中央銀行として銀行券を発行するとともに、通貨および金融の調節を行うことのほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑化の確保を図って、信用秩序の維持に資することです。日本銀行が通貨・金融の調整を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念とし、政府の経済政策の基本指針と整合するために政府と連絡を密にして、十分な意思疎通を図っています。
また、日本銀行は、透明性を確保するために、日本銀行政策委員会が議決した事項の内容と、それに基づいて行った業務の状況を記載した報告書を作成し、財務大臣を経由して国会に提出しています。さらに、日本銀行総裁・政策委員会議長は、日本銀行の業務と財産の状況を各議院またはその委員会から説明のための出席を求められたときは、出席しなければなりません。
日本銀行政策委員会とは、日本銀行に設置され、総裁、副総裁2人、審議委員6人の9人で構成される最高意思決定機関です。原則として月2回の決まって開かれる金融政策決定会合で、金融市場調節方針や預金準備率の決定等を行います。政府代表委員は出席できますが、権限は、政策委員会の議決の延期を請求することにとどまります。つまり、日本銀行と政府の意見が対立しても、最終的には日本銀行政策委員会が決定するということです。
続いて、①日本銀行の採る金融政策と②日本銀行の業務――をまとめます。
1.日本銀行の採る金融政策
まず、金融政策とは、一般に各国の中央銀行が行う経済安定化のための政策のことで、主な手段は、①金利政策、②預金準備金操作、③公開市場操作――です。
①の金利政策とは、日本銀行が金融機関に対して直接資金を貸し出す時の金利である基準割引率および基準貸付利率を調整し、市中銀行の貸出金利などに影響を与えて経済を調整する政策のことです。基準割引率および基準貸付利率は、かつての公定歩合に代えて使う用語です。
②について説明します。金融機関に対し、その受入れている預金等の一定比率(準備率)以上の金額を日本銀行に預けることを準備預金制度と言います。日本銀行がこの準備率を上下することで金融機関の貸出資金量を調節するのが預金準備率操作(支払準備率操作)です。ただし、近年、ほとんどの国で行われなくなってきています。
③の公開市場操作(オープンマーケットオペレーション)とは、民間金融機関を相手に市場で債券や手形の売買を行い、資金量を調節することです。日本銀行の金融政策決定会合で決定された方針を実現するために、短期金融市場での資金の総量を調節することを金融市場調節と言いますが、公開市場操作は、この金融市場調節の手段です。
このほか、日本銀行が行う政策に④ロンバート型貸出制度(補完貸付制度)、⑤量的緩和政策――があります。
④のロンバート型貸出制度とは、日本銀行があらかじめ定めた条件に基づいて、貸付先からの借入申込を受けて受動的に実行する貸付制度のことです。あらかじめ明確に定められた条件を満たす限り、金融機関が希望するときに担保の範囲内で希望する金額を日本銀行から借入れることができます。
⑤の日本銀行は、従来、「無担保コールレート(オーバーナイト物)が●%で推移するよう促す」というような具体的な金融誘導水準を示す金利ターゲット方式を採っていましたが、2001年3月、金融市場調節の主たる目標を「資金量(日本銀行当座預金残高)」に変更しました。これを量的緩和政策と呼び、「日本銀行当座預金残高が▲兆円となるよう金融市場調節を行う」という形で方針を示すことになります。
しかし、2006年3月、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が4カ月連続で0%以上となっていることなどから、量的緩和政策は解除され、金融市場調節の操作目標は、日本銀行当座預金残高から無担保コールレートに戻されています。
2.日本銀行の業務
日本銀行の役割を表す言葉として、①発券銀行、②政府の銀行、③銀行の銀行――があります。①の発券銀行とは、日本銀行が銀行券を発行する唯一の銀行ということです。②の政府の銀行とは、日本銀行は、a日本政府に対する無担保貸付け、b政府が徴収する租税等の国庫金の出納・管理・国債償還事務の代行――を行うということです。③の銀行の銀行とは、市中銀行などの金融機関とだけ、信金の貸出しや支払い準備金等の預金の受入れ、手形割引、手形貸付――などの取引を行うということです。
日本銀行の通常業務は、主として①商業手形その他の手形の割引、②手形、国債その他の有価証券を担保とする貸付け、③商業手形その他の手形または国債その他の債権の売買等――です。このほか、④国に対する貸付け、⑤国庫金の取扱い、⑥国の事務の取扱い、⑦金融機関等に対する一時貸付け、⑧信用秩序の維持に資するための業務、⑨資金決済の円滑化に資するための業務、⑩外国為替の売買、⑪国際金融業務――などがあります。
また、取引の相手方である金融機関等の経営実態を把握するために行う活動の一つに考査があり、取引先金融機関等に実際に立ち入って資産内容等を調査し、これをもとに業務改善等の経営上の要請を行います。考査と類似した活動にオフサイト・モニタリングがありますが、立入調査を行わない点で考査と区別します。
一方、日本銀行またはその役員などの行為が日本銀行法に違反するか違反するおそれがある場合には、財務大臣または内閣総理大臣は、日本銀行に対して是正のために必要な措置を講ずることを求めることができます。また、日本銀行の監事に対して、必要な事項を監査し、その結果を報告することを求めることもできます。それに対して監事は、速やかに監査をし、結果を財務大臣または内閣総理大臣に報告するとともに、日本銀行政策委員会にも報告しなければなりません。
また、通貨当局が外国為替市場において、外国為替相場に影響を与えることを目的として外国為替の売買を行うことを為替介入と言いますが、日本では、円相場の安定のために、外国為替及び外国貿易法と根拠に、財務大臣の権限において実施されます。日本銀行は、財務大臣の代理として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を行います。
このほか、国内景気の実態を把握するために、日本銀行が行う調査に、短観(全国企業短期経済観測調査)があります。3カ月に一度、企業がその時々の自社の業況の良しあしのほか、売上高や収益といった事業計画の実績・予測について日本銀行が調査するもので、企業経営者の心意気や方針、景気の動向が分かるものとして高い信頼性があります。
財政とは
今回は、経済分野の最重要テーマである財政について勉強しましょう。財政とは、国や地方自治体が行う経済活動のことです。まず、①財政の基本を学んだあと、②国家財政、③地方財政と続けます。
Ⅰ.財政の基本
国や地方自治体が行う経済活動である財政について、①財政の機能、②財政政策、③財政投融資――と見ていきます。
1.財政の機能
財政の主な機能は、①資源配分の調整、②所得再分配、③経済安定化機能――です。
①の資源配分の調整機能とは、道路、橋梁などや警察や消防のように、利潤を追求する民間の経済活動では提供することの難しい公共的な施設・サービス(社会資本)を、民間に代わって提供することです。
②の所得再分配機能とは、歳入面での累進課税や歳出面での社会保障給付によって、国民相互間の所得差によるひずみを是正し、所得分配の公正を図り、個人間の所得格差を調整することです。
③の経済安定化機能とは、経済安定のため、増減税を通じて財政規模を増減し、公共事業の追加や繰り延べによって有効需要を調節し、物価の安定、完全雇用の維持、国際収支の均衡――を図ることです。
政府が行う財政上の関与の方法は、①補助金などの予算措置や税の優遇措置などによる方法と、②返済を前提とする有償資金の貸付けなど金融的手段を用いる方法があります。①の具体例は国費による道路建設、②の具体例は低金利融資による中小零細企業の創業支援――などです。
財政収入は、主に2つ、①租税の徴収と②国債の発行――です。
①の租税は、a所得税や法人税などの直接税とb消費税や酒税などの間接税―――に分けられます。a直接税は実際の税負担者と納税者が同じ租税であり、b間接税は税負担者と納税者が異なる租税です。
直接税のうち所得税は累進課税であるのが一般的で、所得の再分配機能があります。一方、間接税は生活必需品に課税されると、低所得者などの負担率の高くなる逆進性を有しています。現在、消費税の税率5%のうち国税分が4%ですが、このうち29.5%が地方交付税交付金として、地方へ配分されています。
なお、戦後の日本の税制は、シャウプ税制勧告による所得税中心主義を採っていましたが、1989年に新たに課税対象を消費全体に広げる消費税が導入されました。もっとも、現在でも直接税が税収の7割程度を占めているので、直接税中心の構成であることには違いありません。
②の国債は、政府が租税等の収入以上の財政支出をする必要がある場合に、国民から借金をするために政府によって発行される債権です。
国債は、償還期限により、a短期(1年以内)、b中期(2~5年程度)、c長期(10年程度)、d超長期(10年超)――の4種類に分けることができます。また、発行目的により、a建設国債、b特例国債、c借換債(かりかえさい)、d政府短期証券――に分けることもできます。c借換債とは、既存の国債を新条件の債務編成替えするために発行される国債です。また、d政府短期証券とは、国庫金の資金繰りのために発行される短期の公債のことです。
また、個人投資家の国債保有を増やす目的で、2003年から募集が始まった個人のみ購入可能な個人向け国債も販売されています。
aの建設国債は、公共事業費、出資金、貸付金に充てるためにのみ発行される国債です。実は、国債の発行は財政法で原則的に禁止されていますが、例外として一定の国債の発行が認められています。この一定の国債が建設国債です。また、日本銀行の引受けによる公債の発行も禁止されています。これを市中消化の原則と言います。ただし、特別の事由があって国会の議決を経た金額の範囲は例外です。なお、いったん市中で消化された国債を日本銀行が買入れることは禁止されていません。
bの特例国債(赤字国債)とは、「財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律(財政特例法)」に基づき発行される国債です。公共事業費などに充てる目的以外で国債を発行することは禁止されているため、その年度限り通用する特例国債を発行して歳入を補います。特例国債は、1975年度以降、バブル期を除いてほぼ継続的に発行されています。ちなみに2011年の当初予算では、公債依存度47.9%、公債残高(年度末見込み)668兆円に及んでいます。
しかし、財政赤字が続くと、財政破たん(借金が累積して返せなくなること)、クラウディング・アウト(市場金利が高くなり、民間の資金需要が押しのけられること)、将来世代への負担の転化――などの問題を背負うことになります。
一方、国民所得に対する租税負担と社会保障負担の割合の合計を国民負担率と言いますが、現在、日本の国民負担率は先進諸国と比較して低水準(2011年度見込み38.8%)です。ただし、今後高齢化社会が進展するに従い、国民負担率は上昇すると考えられます。また、日本の国民負担率が低水準である理由は、財政赤字という形で負担を将来世代に先送りしているためと考えられます。なお、国民負担率に財政赤字の対国民所得比率を加えた潜在国民負担率は、2011年49.8%の見込みです。
もう一つのキーワードにプライマリーバランス(基礎的財政収支)がありますが、プライマリーバランスとは、公債費を除く歳出と公債発行収入を除く歳入との財政収支の差のことです。プライマリーバランスが均衡している場合、公債費を除く経費を借入れに依存せずに調達していることになります。赤字の場合、将来の国民が負担を負うことになります。
したがってプライマリーバランスは、中長期的な財政赤字の累積を問題とする際に使われる概念です。
2.財政政策
財政の役割のうちの一つ、経済の安定・成長の実現のための政策が財政政策です。ここでは、聞きなれない用語を覚えてください。
★ポリシーミックス:財政政策と金融政策を組み合わせ、経済の安定と成長など複数の目標を同時に実現しようとする政策(ポリシーミックスの中でも特に、ニューディール政策のように、不況時に景気の刺激策としてとられる政策をスペンディングポリシーという)
★フィスカルポリシー:財政支出と財政収入の量を調節することによって景気を調整する政策で、具体的には租税政策と公共投資があり、不況時には、減税をし公共投資を拡大します。好況時には増税し公共投資を縮小します。
★ビルトインスタビライザー:積極的に財政政策を採らなくても、財政制度はそれ自体が景気の変動を調整する機能を有していますが、この機能をビルトインスタビライザー(自動安定化機能)と言います。例えば、累進課税や社会保障給付がその代表例です。好況時には家計の賃金収入や企業の利潤が増え、所得税などの累進課税率により税収が増加、不況時には社会保障支出が増加し税収は減少されます。ただし、不況が長引くことによって本来の機能を果たさなくなることがあるとされます。
3.財政投融資
財政投融資とは、一般に国の制度や信用に基づいて集められた有償資金を用いて、民間では困難な大規模で長期的な事業の実施や長期の資金提供を行う投融資活動のことです。日本では、2001年以前は、郵便貯金や年金などの資金を大蔵省(現・財務省)資金運用部が預かり、これを特殊法人に融資するシステムを採用し、融資を受けた特殊法人はこの資金で大型公共事業を行っていましたが、2001年の財政投融資制度改革で、預託制度が廃止されたことで、財政投融資機関(財投機関)は、原則、財投機関債を発行して金融市場から直接資金を調達することとなりました。
しかし、財投機関は財投機関債で資金を調達できなかった場合は、政府(財政投融資特別会計)が財投債を発行して、金融市場から調達した資金の融資を受けることができます。
Ⅱ.国家財政
国の予算その他財政の基本は財政法の定める規定に基づき運用されます。財政法に出てくる用語でまず覚えなければならない4つは、歳入、歳出、収入、支出――です。歳入とは一会計年度における一切の収入、歳出とは一会計年度における一切の支出、収入とは国の各般の需要を充たすための支払いの財源となるべき現金の収納、支出とは国の各般の需要を充たすための現金の支払い――と定義できます。
予算とは、国の歳入と歳出の見積もりを一定の期間について明らかにする財政行為の準則のことです。予算は金額という数字で表現された、国等の政治ないし行政のプログラムと言えます。
この予算を国民の代表である国会等が審議・承認することで国の行政をコントロールすることが、民主政治の意義といえ、予算に対する国会の議決は会計年度ごとに行われています。ちなみに、2011年度国の一般会計当初予算の規模は、92兆4116億円で、前年度比+0.1%で、5年連続の増加です。
また、我が国は、歳入歳出はすべて予算に編入しなければならない総計予算主義、予算は会計年度ごとに作成しなければならない単年度主義――を採用しています。ただし、単年度主義の例外として、①継続費、②国庫債務負担行為――があります。
①の継続費とは、工事・製造などの事業を数年度(原則5年以内)にわたって実行する場合に、その総額と年度ごとの額を一括して予算とするもので、近年では、防衛省の大型警備艦・潜水艦の建造のみに用いられました。
②の国庫債務負担行為とは、その年度に契約の締結だけを行い、翌年度以降原則5年以内に代金の支払いを行う場合に、その債務負担を予算とするものです。
また、各会計年度における経費は、その年度の歳入をもって支弁しなければならないという会計年度独立の原則があり、例外は繰越明許費です。繰越明許費とは、継続費や国庫債務負担行為のように最初から複数年度にまたがると分かっているものではなく、その性質上や予算の成立後の事由によりその年度内に支出を終わらない見込みがあると予想されるものについて、翌年度に繰越して使用するために予算とするもののことです。
次に、会計の区分をお話しします。本来、財政操作を排除する理由から、歳出と歳入はすべて単一の予算の統一して計上するという予算統一性の原則がありますが、財政の範囲が拡大し、複雑化すると会計を分ける必要が出てきます。そこで、我が国では、①一般会計予算、②特別会計予算、③政府関係機関予算――の3つに分けています。
①一般会計予算とは、税を財源とする国の一般歳入歳出を経理する会計です。
②の特別会計予算とは、一般会計と区別して別個に経理する会計で、a特定の事業を実施する場合、b特定の資金を余裕して運用する場合、c一般の歳入歳出と区別して処理する必要のある場合――に限り、法律をもって設置することが認められています。
③の政府関係機関予算とは、特別の法律によって設立され、資本金が全額政府出資の機関である政府関係機関の予算のことで、やはり国会の議決が必要です。
以上のような予算の内訳は、①予算総則、②歳入歳出予算、③継続費、④繰越明許費、⑤国庫債務負担行為――で、会計年度ごとに作成されます。
本予算では、一般会計、特別会計、政府関係機関予算が一括して国会による審議・議決を受けますが、例外的な場合は本予算とは別に、①暫定予算、②補正予算――が作成されます。①の暫定予算とは、予算が会計年度開始前に成立しなかった場合に、必要な経費の支出のために作成される予算のことです。暫定予算は、本予算成立までの必要最小限に経費に限定され、本予算の成立で失効し、本予算に吸収されます。
②の補正予算とは、予算作成後に生じた自然災害、経済情勢の変化などにより、想定外の事態に対応するために作成される予算のことです。予算以上の支出は許されないのが原則なので、本予算を超える支出が必要となった場合、補正予算を組まなければなりません。もっとも、想定外の事態への対応のため、本予算には予備費の計上が認められています。それでも対応できない場合に補正予算が組まれます。
予算を作成して国会に提出する権限は内閣に属し、予算編成は財務省が行います。予算の作成は、各省庁が来年度予算において必要とする歳出額を見積もる概算要求から始まります。例年8月末までに各省庁の次年度の概算要求が財務省に提出されます。なお、各省庁による安易な予算要求を避けるため、事前に概算要求基準が設けられ、上限にシーリング(天井)が設定されます。
これをもとに財務省が各省庁に予算財務原案を内示しますが、財務省が各省庁の要求で削減した部分について、各省庁は財務省に対して予算の復活折衝を行います。
予算編成の手法には、①事業別予算制度、②計画事業予算制度(PRBS)、③ゼロベース予算方式(ZBB)、④シーリング(概算要求基準)方式、⑤サンセット(時限)方式――などがあります。
①の事業別予算制度とは、行政目的を効果的に達成するために、行政の事業目的体系に従い予算編成を管理する方法です。
②の計画事業予算制度とは、省庁ごとに政策目標を明確に把握し、長期計画を作成し限られた資源をもっとも効果的に配分するために、複数の代替案に対して費用・使益分析を行い、計画されている政策成果の能率性を測定して比較したうえで、単年度の予算を編成する方法です。
③のゼロベース予算方式とは、一施策もしくは一行政機関に対するすべての支出を、前年度の予算を前提とせず、毎年その正当性を承認されなければならないとする予算編成方法です。
④のシーリング方式とは、前出しましたが、各省庁に概算要求段階において、前年度に認められた概算要求額を基準として、そこから一定率増やした額の上限を設けて歳出の伸びを抑制する方法です。
⑤のサンセット方式とは、適用事業に対しては定められた期日以降の年度は予算措置が停止される手法です。
次に、特別予算について少しお話しします。我が国の厳しい財政状況を背景に、特別会計の廃止・統合、一般会計と異なる扱いの整理、特別会計の財務情報の開示などを実現する目的で、特別会計改革が行われ、2007年、特別会計に関する法律(特別会計法)が制定されました。特別会計は、2011年までには従来の31会計から17会計に減っています。
Ⅲ.地方財政
地方財政について規定している法律は、①地方自治法と②地方財政法――です。①地方自治法は財務関係規定が地方財政制度の基本であることを定め、②地方財政法はa地方債の制限を含む財務処理上の基本準則、b国と地方公共団体との経費負担の関係、③都道府県と市町村との財政関係――などについて規定しています。我が国の租税は、総額の6割が国税として4割が地方税として徴収されています。逆に使用率は国が4割、地方公共団体が6割です。その差はどうしているのかというと、国が地方公共団体に対して、国税収入の一部を、地方交付税、地方譲与税、国庫支出金――などの調整制度を通じて配分しています。
地方財政の財源の分類の一つに、使途目的で分ける①一般財源と②特定財源――があります。①の一般財源とは、いかなる経費にも使用できる地方公共団体の収入であり、地方税、地方特例交付金、地方交付税――などが該当します。一方、②の特定財源とは、一定の使途のみに使用できる地方公共団体の収入で、国庫支出金や地方債――などが該当します。
もう一つの分類に、調達方法による③自主財源と④依存財源――があります。③の自主財源とは、自治体がみずから調達する収入のことで、地方税などが該当します。また、④の依存財源とは、国(または都道府県)の意思に依存する財源で、国庫支出金、地方譲与税、地方交付税、地方債――などが該当します。
政府が、地方交付税により自治体財源を保障しようという場合に、その程度の総額を確保すべきかの最終的な意思決定を地方財源計画といいます。この計画は、毎年度、内閣が地方交付税法に基づき、翌年度に地方公共団体の歳入と歳出の総額の見積額を記載した書類を作成し、国会に提出するとともに一般にも公表することが義務付けられています。ちなみに、2011年の地方財政の規模は、82兆5054億円で、歳入において最も多くの割合を占めるのは地方税でした。
地方財政計画には、①地方交付税制度との関係で地方財源の保障を行う、②地方財政と国家財政・国民経済などを調整する、③個々の地方公共団体の行政運営の指針となる――という3つの役割があります。
では、いったい地方交付税とはどのようなものなのでしょうか? 地方交付税は、国が行う地方財政調整制度であり、地方税収入の不均衡による地方公共団体間の財政力格差を調整するものです。普通交付税と特別交付税があり、普通交付税は、必要な需要額が収入額を超過した場合に、その差額に応じて交付され、特別交付税は、災害や予測できない事件に対応して交付されるものです。東京都のように財政が豊かな都道府県は地方交付税の交付を受けていません。
また、地方交付税の使途は、地方公共団体の自主的な判断に委ねられていて、国がその使途を制限したり、条件を付けることは禁じられています。憲法で保障された地方自治の理念を実現していくために、地方税と並んで重要な財源です。
地方交付税の機能は2つ、①財政調整機能、②財源保障機能――です。①の地方交付税の持つ財政調整機能により、普通交付税は基準財政需要額が基準財政収入額を超える自治体に対して、財源不足分が交付されます。
②の財源保障機能とは、財源に、5つの国税の一定額(法人税34%、所得税・酒税32%、消費税29.5%、たばこ税25%)が与えられるということです。
次に地方譲与税と国庫支出金とはどういう財源でしょう? 地方譲与税は、国が徴収し、客観的基準により地方公共団体に対して譲渡する税です。これには地方道路譲与税や自動車重量税――などがあります。地方譲与税は、2011年度の地方財政計画では2兆1749億円で、歳入の約2.6%程度です。
一方、国庫支出金とは、国が特定の使途のために地方公共団体に交付する支出金の総称で、①国庫負担金、②国庫委託金、③国庫補助金――があります。①の国庫負担金とは、地方公共団体が行う事務のうち国が共同責任を持つ事務に対して経費の一定割合を負担するものです。②の国庫委託金とは、本来国が行うべき事務を地方公共団体に処理させる際の経費として給付するものです。また、③の国庫補助金とは、特定の施策の奨励または財政援助のために給付するものです。国庫支出金は、2011年度の地方財政計画では、12兆1745億円で、歳入の14.8%となっています。
国家財政に国債があったように、地方財政にも地方債があります。地方債は、一般に地方公共団体が資金調達のために負担する債務のことです。2006年より原則として総務大臣あるいは都道府県知事の許可を必要とする起債許可制度が廃止され、総務大臣あるいは都道府県知事の同意を要する事前協議制となり、発行条件の緩和が図られました。ただし、実質公債費発行比率が18%を超える地方公共団体については、地方債協議制度移行後も起債に当たっては総務大臣または都道府県知事の許可が必要です。