第四章 機関
会社の機関のいろいろ
会社の機関とは、会社の意思決定または行為をする者として法により定められている自然人または合議体のことです。機関による行為や意思決定は、会社全体の行為や意思決定となるので、すべてが会社に効果帰属することになります。会社の機関と基本的な役割は下表のとおりです。
それでは、今回は、会社法の中でも、とても複雑でややこしい機関設計の勉強です。焦らず、じっくり学習しましょう。
株式会社の社員である株主は、間接有限責任しか負いません。その結果、出資が促進されることになりますが、一方、会社経営の意思も能力もない多数の者が関わることになります。会社経営の意思も能力もない者に会社経営を任せたのでは、会社の不利益になるので、原則として、株主と会社経営者を分離して、会社経営は経営能力がある者に任せることにしています。つまり、株式会社においては所有と経営が分離されることになっています。
そこで、会社法ではすべての株式会社は、株主総会および取締役会を置かなければならないと定められています。そのほかの機関は定款の定めにより置くことができるのが原則です。これを、機関設計自由の原則と言います。
しかし、会社の規模に応じて、一定の機関を置かなければならないとされる場合があります。
まず、、株式会社の機関設計の基本的ルールを紹介します。
①すべての株式会社は、株主総会および取締役を置かなければならない。
②会計参与を置くことは、委員会設置会社以外の非公開会社かつ取締役会設置会社が監査役を置かない場合を除き、任意である。
③公開会社は、取締役会を置かなければならない。
④監査役会設置会社は、取締役会を置かなければならない。
⑤委員会設置会社は、取締役会を置かなければならない。
⑥委員会設置会社以外の取締役会設置会社は、監査役を置かなければならない。
⑦委員会設置会社以外の取締役会設置会社であっても、非公開会社かつ会計参与設置会社であれば、監査役を置くことを要しない。
⑧委員会設置会社以外の会計監査人設置会社は、監査役を置かなければならない。
⑨委員会設置会社は、監査役を置くことができない。
⑩非公開会社かつ監査役会非設置会社かつ会計監査人非設置会社である株式会社は、定款で、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができる。
⑪委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない。
⑫委員会設置会社以外の公開会社かつ大会社は、監査役会および会計監査人を置かなければならない。
(大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上である会社、または、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である会社のことです。)
⑬非公開会社かつ大会社は、会計監査人を置かなければならない。
いかがですか? ずいぶんとややこしいですね…!
そこで、違う角度から、解説を試みます。
Ⅰ.取締役会の設置・非設置
取締役会の設置・非設置は、公開会社か非公開会社か、また、大会社か非大会社か(=株主総会の権限が万能かどうか)によって決まります。
つまり、取締役会は、取締役の権限濫用を取締役相互の監督で制限している場合は、取締役に付与される権限が大きく、株主の監督権が機能しにくいので、取締役の権限濫用防止の必要性が高まります。
逆に、会社が小規模だったりして株主総会の権限が万能であれば、経営者である取締役に付与される権限は小さく、株主の監督権が有効に機能するため、取締役の権限濫用の可能性は低くなります。
公開会社を見てみましょう。公開会社の場合、もともと大規模な会社が多く、会社の合理的経営を図るために、株主総会の権限を制限して、経営は専門家である取締役に任せる必要性が高いと言えます。
ということは、取締役に付与される権限が大きくなります。さらに、株主の自由な交代が認められるので、株主の監督権も有効に機能しなくなります。
そこで、取締役の権限濫用防止のために取締役会を設置が強制されているのです。
一方、非公開会社は、もともと小規模な会社が多く、会社の合理的経営を図るために、閉鎖性を維持しつつ株主総会によって会社に関する一切の事項を決定する必要性が高いと言えます。
つまり、経営者である取締役に付与される権限は小さいこと、株主の監督権が有効に機能することから、取締役会を設置する必要性は低いと言えます。
そこで、株主総会の権限を万能にするとともに、取締役会の設置は強制されていません。
また、取締役会の設置・非設置については、大会社か非大会社かによっても、規定が変わってきます。下図にまとめましたので、覚える参考にしてください。
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Ⅱ.代表取締役の選任
代表取締役の選任・不選任については、取締役会設置会社と取締役会非設置会社とで異なります。
取締役会設置会社の業務執行に関する意思決定は取締役会によって行われるのはご承知のとおりですが、取締役会は合議体ですから、株式会社の代表としての行為を行うには適していません。
そこで、会社法は、取締役会には意思決定権限だけを与え、代表行為は代表取締役を定めて行わせることを定めました。
原則として取締役の過半数が出席した取締役会で、出席取締役の過半数で業務執行の意思決定をし、代表取締役だけが会社を代表します。
これに対して、取締役会非設置会社では、取締役各自が会社を代表します。ただし、複数の取締役がいる場合には、定款・定款規定に定められた互選、株主総会決議などの方法で代表取締役を設置することも可能です。
代表取締役を選任しない場合には、原則として取締役の過半数で業務執行の意思決定をし、取締役各自が会社を代表します。
これに対し、代表取締役を選任する場合には、原則として取締役の過半数で業務執行の意思決定をし、代表取締役だけが会社を代表します。
Ⅲ.会計参与の設置
株式会社は、適時正確な会計帳簿を作成しなければならず、会計帳簿作成の権限は原則として取締役にあります。しかし、取締役が会計の専門家とは限らないので、会計帳簿の適時性・正確性を確保するために会計参与を設置するかしないか選択できます。
Ⅳ.監査役・監査役会の設置
取締役の職務執行については、取締役会非設置会社においては株主・株主総会が、取締役会設置会社においては、取締役会・株主・株主総会が監督を行いますが、取締役会では自己監督ということで厳密さに欠
けますし、株主にも十分な監督能力があるとも言えません。
そこで、会計や業務に関して取締役や会計参与の職務執行を監査するために、監査役・監査役会を設置できることになっています。
なお、大会社や公開会社では、監査役・監査役会の設置は強制されています。
以上の各機関を含め、個々の機関については、順次、詳しく解説していきますが、会計法は要求している機関設計を次の6つにまとめました。これは、絶対に覚えてください。
①すべての株式会社は、株主総会と取締役が必要。
②公開会社、監査役会設置会社、委員会設置会社は、取締役会が必要。
(委員会設置会社とは、a指名委員会、b監査委員会、c報酬委員会――と執行役を置く会社です。)
③取締役会設置会社は、a監査役、b3委員会&執行役――のどちらかが必要。
ただし、大会社以外の非公開会社では、会計参与を置けばこの限りでない。また、監査役と3委員会&執行役の両方をおくことはできない。さらに、委員会設置会社以外の大会社で、公開会社である会社は、監査役会が必要。
④取締役会を置かない場合は、監査役会や3委員会&執行役を置くことはできない。
⑤大会社と委員会設置会社では、会計監査人が必要。
⑥会計監査人を置くには、監査役または3委員会&執行役のいずれかが必要。
株主総会
今回から、株式会社の機関を個々に詳しく見ていきましょう。
まず、最初は株主総会です。株主総会は、株主によって構成される会社の意思を決定する機関で、株式会社には必ず設置しなければならない機関です。多くの株式会社の株主総会は6月下旬に開催されています。
商法・会社法の中で、一番重要な株主総会について、①株主総会の権限、②株主総会の招集と議事運営、③決議方法と議決権、④種類株主総会、⑤株主総会決議の瑕疵――と解説します。
Ⅰ.株主総会の権限
株主総会は会社所有者である株主によって構成されていますので、本来は会社に関する一切の事項について決定できるはずですが、実際の権限は株式会社の種類によって分けられます。
取締役会設置会社以外の株式会社では、株主総会には、会社法に規定する事項、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議する権限があります。
一方、取締役会設置会社である場合、株主総会には会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限って決議する権限があります。
また、株式会社は会社の意思決定機関ですが、株主総会が決議する事項は多岐にわたるので、会社法では、会社にとっての重要性によって、
①普通決議
②特別決議
③特殊決議――の3つの決議方法を定めています。
各決議の定足数、可決数、具体例――を一覧にまとめましたので、確認してください。
Ⅱ.株主総会の招集と議事運営
株主総会には、
①定時株主総会、
②臨時株主総会――とがあります。
①の定時株主総会とは、計算書類の承認をするためのもので、毎事業年度の終了後一定の時期に招集することが定められています。
また、②の臨時株主総会は、定時株主総会以外で必要がある場合に招集され、必要に応じて臨時に開催されます。
招集をするのは、原則として取締役か取締役会ですが、例外として、少数株主により招集ができる場合があります。取締役会などが招集する場合は、取締役会で、開催日時・場所・株主総会の目的事項、書面投票・電子投票を認めるときはその旨、その他法務省令で定める事項を決定し、代表取締役等が執行します。
一方、少数株主による招集は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6カ月前からから引き続き有する株主が、取締役に対して招集を請求することによって行われます。また、この際に遅滞なく取締役などによる招集手続きが行われない場合には、当該請求をした株主は、裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集することが可能です。
招集通知は、原則として株主総会の2週間前(非公開会社の場合は原則として1週間前)までに発しなければなりません。
招集方法に関する規制は、株主の利益保護のためなので、議決権を行使できる株主全員の同意があれば、招集手続きを省略することができます。もっとも、書面・電磁的方法による議決権行使が行われる場合には、招集手続きの省略はできません。
株主総会の成立は、
①招集通知に記載された日時に、
②株主が出席し、
③定足数が満たされ、
④取締役が出席し、
⑤議長が定足数が充足していることを確認報告し、
⑥開会を宣言する――ことでなされます。
そして、議長は、定款に特段の定めのない場合には、株主総会で選任します。
議長には、総会運営の適正化を図るための強力な権限である、秩序維持権、議事整理権が与えられます。命令に従わない者や総会の秩序を乱す者を退場させることができる権利です。
また、株主に与えられた権限に株主提案権がありますが、株主の意見を株主総会に反映させ、会社と株主、株主相互間の意思疎通を図る目的の権限です。取締役会設置会社と取締役会非設置会社とで要件が異なりますので、下表で確認してください。
一方、株主総会の審議を活発化して会社と株主の対話を促進するために、取締役、会計参与、監査役などには、説明義務が課されています。
また、取締役会設置会社の株主総会で決議できる事項は、招集通知に記載された事項に限られます。したがって、議題を変更したり、追加したりして決議することはできません。なお、取締役会非設置会社では、特に制限はありません。
そして、株主総会の混乱が予想される場合などに、株主総会運営の適正化を図るため、会社や株主は、株主総会招集の手続きや決議の方法が公正かどうかを調査してその証拠を保全する検査役の選任を裁判所に請求することができます。
さらに、株主総会の議事については議事録を作成しなければなりません。議事録は10年間本店に、また写しを5年間支店に置いて、株主や会社債権者の閲覧・謄写請求に応じなければなりません。
Ⅲ.決議方法と議決権
さあ、いよいよ決議です。決議は原則として多数決が妥当します。しかし、多数決は少数派の株主の利益を害する弊害もあるため、一定の場合には多数決の制限や例外を認めています。
まず、株主平等原則に反するような決議、強行法規に反するような決議などは、多数決によってもできないことになっています。
例えば、もし「100株未満の株主には配当はしない」という決議を多数決で決定しても、これは無効です。
また、一定の重要な議案に反対の株主は、自己が保有する株式を公正な価格で買い取るよう会社に対して請求できます。これを反対株主の株式買取請求権と言いますが、詳しくは後述します。
ちょっと複雑な制度に累積投票の制度があります。
2人以上の取締役を選任する際に、1株について選任される取締役の数と同数の議決権を与え、かつ、得票数の多いものから順に取締役として選任する一種の比例代表制度です。取締役会を構成する取締役は、株主総会の多数決で選任されますから、少数派株主の利益は無視されがちになりますので、少数派を代表する取締役を選任するために設けられた制度です。
分かりにくい制度ですので、次の具体例を参考にして理解してください。
A株式会社には100株を保有する多数派と50株を保有する少数派がいます。株主総会で3人の取締役を選ぶことになりました。取締役の候補者は、多数派の田中さん、鈴木さん、佐藤さん、少数派から斎藤さんです。
原則通り決議を行うと、田中さん・鈴木さん・佐藤さんは賛成100票、反対50票、斎藤さんは賛成50票、反対100票と、少数派の取締役は選出されません。
これに対して、累積投票制度を採用すると、1株について3票与え、一度に3人を選ぶので、田中さん賛成180票で当選、鈴木さん賛成100票で当選、佐藤さん賛成20票で落選、斎藤さん賛成150票で当選――というように、少数派の代表も選べることになります。
次に、議決権とは、株主総会において決議に加わる権利のことで、その数は1株につき1個であるのが原則です。これを一株一議決権の原則と言い、例外は、以下の法で定められた場合のみ認められています。
①議決権そのものを有しないとされる場合 →議決権制限株式、単元未満株式、自己株式、相互保有株式(相互保有株式とは、株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有すること、その他の事由を通じて株式会社が経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主は、その保有する株式について議決権を有しないものとされることです。株式を4分の1以上保有している支配会社の株式で議決権を行使されると、支配会社の株主総会の公正を害するおそれがあるからです。)
②議決権の行使が制限される場合 →議決権制限株式、自己株式取得・売渡請求に関する特別決議における売主である株主が有する株式、基準日後に発行された株式など
そして、議決権行使の方法は、株主自身が株主総会に出席して行使するのが原則です。
しかし、以下の4つの場合に例外が認められています。
①議決権の代理行使 →定款で代理人の資格を株主に限定することもできます。
②書面による議決権の行使(書面投票制度)→議決権を有する株主数が1000人以上である会社は必須です。
③電磁的方法による議決権の行使(電子投票制度)→定款によります。
④議決権の不統一行使 →株主が2個以上の議決権を有するときは、これを統一しないで別々に行使することができます。なお、株主が他人のために株式を有する者でないときは、会社は議決権の不統一行使を拒絶することができます。
Ⅳ.種類株主総会
種類株主総会とは、読んで字のごとく株主総会の種類株主版で、会社が2種類以上の株式を発行している場合に、ある特定の種類の株主によって構成される会社の意思決定機関です。
種類株主総会は、会社法および定款規定事項に限って決議することが可能です。
内容の異なる種類の株式として認められるのは、
①剰余金の配当
②残余財産の分配
③株主総会において議決権を行使できる事項(議決権制限種類株式)
④譲渡制限(譲渡制限種類株式)
⑤株主から会社への取得請求権(取得請求権付種類株式)
⑥会社による強制取得(取得条項付種類株式)
⑦総会決議に基づく全部強制取得(全部取得条項付種類株式)
⑧(定款に基づく)種類株式総会の承認(拒否権付種類株式)
⑨種類株主総会での取締役・監査役の選任(選解任種類株式:ただし、委員会設置会社と公開会社には認められない)――などです。
このほか、
⑩非公開会社は、剰余金配当・残余財産分配・議決権――について、株主ごとに異なる取り扱いをする旨を定款で定めることができます。その定めによる株式は、株式会社と組織変更などに関する規定との関係で内容の異なる種類の株式と見なされ、属人的みなし種類株式と呼ばれます。
議決方法は、株主総会に準じて、普通決議、特別決議、特殊決議――の3つに分かれます。
Ⅴ.株主総会決議の瑕疵
最後に、株主総会の決議に瑕疵があった場合を考えてみましょう。決議が有効か否かは、会社・株主・取締役など多数の者の利害に影響を与えるので、瑕疵の主張をできるだけ制限し、法律を画一的に確定することが必要です。
例えば、A株式会社の株主総会において、議決権のある株主Xさんに招集通知が届いていなかったとしたら、株主総会の決議はどうなるのでしょうか?
一般的には瑕疵ある行為は無効となるのでしたね。そして、無効は誰でも、いつでも、どんな方法でも主張できるのでしたね。つまり、株主総会の決議は最初からなかったことにできるのです。しかも、会社と株主Xさんとの関係で無効となるのですから、招集通知が届いて議決行ったYさんと会社との関係では、株主総会の決議は有効です。これでは、収拾がつかない状態になることは、たやすく想像できますね。
そこで、会社法は、次の3つの制度を作りました。
①株主総会決議取消の訴え
②決議無効確認の訴え
③決議不存在確認の訴え
これら3つの制度の目的は、
aできる限り無効の主張を制限する(無効主張の可及的制限)
b無効になっても遡及効を阻止する(無効の遡及効阻止)
c無効判決は、当事者以外の者にも効力を持つ(法律関係の画一的決定)――ことです。
では、①~③をこれから説明します。
1.株主総会決議取消の訴え
1)取消原因
・株主総会の招集手続または決議方法が、法令・定款に違反するか著しく不公正なとき
・株主総会の決議内容が定款に違反するとき
・株主総会の決議について特別利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき
2)手続き
まず、提訴できるのは、株主、取締役、執行役、監査役、精算人――に限られます。
判例によれば、株主の場合は、自己に対する株主総会の招集手続に瑕疵がなく、他の株主に対する招集手続に瑕疵がある場合にも、株主総会決議取消の訴えを提訴できるとしています。
次に提訴期間は、決議の日から3カ月以内です。株主総会決議取消の訴えを提起した場合、その提訴期間経過後に新たな取消事由を追加して主張することはできません。
また、決議取消の方法は、この訴えのみで、取消判決が下されると決議は取消されます。
3)取消判決の効力
取消判決が確定したときは、その判決は第三者にもおよぶ対世効を持ち、遡及効も持ちます。
4)裁量棄却
取消原因の一つに、株主総会の招集手続または決議方法が法令・定款に違反するというのがありましたが、これは極めて軽微な違反ということも考えられます。この場合、議決の取消しが認められると、結果的に会社や株主全体への利益を害することも考えられます。
そこで、会社法では、招集手続または決議方法が法令または定款に違反するときでも、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないと認めるときは、請求を棄却できることにしました。これを裁量棄却と言います。
2.株主総会決議無効確認の訴え
1)無効原因
株主総会の決議内容が法令に違反する場合です。
例えば、株主平等の原則に反する決議、違法な剰余金配当決議――などが該当します。
これは、決議内容の瑕疵ですから、訴えのあるなしに関わらず無効です。なお、判例では、株主総会の決議の内容自体に法令違反の瑕疵がなく、単に決議の動機や目的が公序良俗に反する不法がある場合には、その決議は無効とならないとしています。
2)手続き
提訴は、正当な利益がある者なら誰でも、いつでも行えます。どんな方法で無効の主張をしてもOKです。無効判決は、当然無効な決議を無効と確認するだけです。
3)無効判決の効力
無効判決が確定したら、その判決は対世効、遡及効を有します。
3.株主総会決議不存在確認の訴え
1)原因
株主総会の事実がないのに総会議事録が作成されたり、事実上決議があったとしても、決議の手続上の瑕疵が著しく、決議が法律上存在すると認められない場合のことです。決議が存在しないのですから、決議は当然に不存在です。
2)手続き
提訴は正当な利益がある者なら誰でも、いつでも、どんな方法でも提訴できます。判決は、存在しない決議を不存在と確認するだけです。
3)不存在判決の効力
不存在判決が確定したときは、判決は対世効、遡及効を有します。
最後に決議取消の訴えと決議無効・不存在確認の訴えとの相違点をもう一度確認します。
決議取消の訴えは、取消権者・提訴期間が制限され、訴えを起こすしか取消しを主張する方法がありません。
これに対して、議決無効・不存在確認の訴えの場合は、当然に無効あるいは不存在なのですから、主張権者・提訴期間に制限はなく、どんな方法で提訴してもかまいません。
このような違いは、決議取消の訴えの原因は、主に手続的な瑕疵で、比較的軽微で、判定も時間の経過で困難となるのに対し、決議無効の原因は決議の内容上の瑕疵で、重大であるとともに時間的経過で判定が困難となることもないことによるものです。決議不存在は、手続的な瑕疵であるものの瑕疵の程度が極めて重大だからです。
第一節 株主総会及び種類株主総会
第一款 株主総会
(株主総会の権限)
第二百九十五条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
(株主総会の招集)
第二百九十六条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
(株主による招集の請求)
第二百九十七条 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第三百二条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が金融商品取引法第二条第十六項 に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。
3 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「前項第二号に掲げる事項」とする。
4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
(株主総会の招集の通知)
第二百九十九条 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 株式会社が取締役会設置会社である場合
3 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
(招集手続の省略)
第三百条 前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
(株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等)
第三百一条 取締役は、第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「株主総会参考書類」という。)及び株主が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
2 取締役は、第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、株主の請求があったときは、これらの書類を当該株主に交付しなければならない。
第三百二条 取締役は、第二百九十八条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、株主総会参考書類を交付しなければならない。
2 取締役は、第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による株主総会参考書類の交付に代えて、当該株主総会参考書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、株主の請求があったときは、株主総会参考書類を当該株主に交付しなければならない。
3 取締役は、第一項に規定する場合には、第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対する同項の電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。
4 取締役は、第一項に規定する場合において、第二百九十九条第三項の承諾をしていない株主から株主総会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該株主に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
(株主提案権)
第三百三条 株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)を株主総会の目的とすることを請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。
3 公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
4 第二項の一定の事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
第三百四条 株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第一項において同じ。)につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。
第三百五条 株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第二百九十九条第二項又は第三項の通知をする場合にあっては、その通知に記載し、又は記録すること)を請求することができる。ただし、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、当該請求をすることができる。
2 公開会社でない取締役会設置会社における前項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項ただし書の総株主の議決権の数に算入しない。
4 前三項の規定は、第一項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には、適用しない。
(株主総会の招集手続等に関する検査役の選任)
第三百六条 株式会社又は総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
2 公開会社である取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」と、「有する」とあるのは「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とし、公開会社でない取締役会設置会社における同項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」とする。
3 前二項の規定による検査役の選任の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。
4 裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。
5 第三項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。
6 裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第三項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
7 第三項の検査役は、第五項の報告をしたときは、株式会社(検査役の選任の申立てをした者が当該株式会社でない場合にあっては、当該株式会社及びその者)に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
(裁判所による株主総会招集等の決定)
第三百七条 裁判所は、前条第五項の報告があった場合において、必要があると認めるときは、取締役に対し、次に掲げる措置の全部又は一部を命じなければならない。
一 一定の期間内に株主総会を招集すること。
二 前条第五項の調査の結果を株主に通知すること。
2 裁判所が前項第一号に掲げる措置を命じた場合には、取締役は、前条第五項の報告の内容を同号の株主総会において開示しなければならない。
3 前項に規定する場合には、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)は、前条第五項の報告の内容を調査し、その結果を第一項第一号の株主総会に報告しなければならない。
(議決権の数)
第三百八条 株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
2 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。
(株主総会の決議)
第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一 第百四十条第二項及び第五項の株主総会
二 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
三 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会
四 第百八十条第二項の株主総会
五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会
六 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会
七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)
八 第四百二十五条第一項の株主総会
九 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。
ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
十 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
十二 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
3 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
二 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)
三 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)
4 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
5 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。
(議決権の代理行使)
第三百十条 株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。
2 前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない。
3 第一項の株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。
4 株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には、株式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
5 株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。
6 株式会社は、株主総会の日から三箇月間、代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
7 株主(前項の株主総会において決議をした事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条第四項及び第三百十二条第五項において同じ。)は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 代理権を証明する書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
(書面による議決権の行使)
第三百十一条 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。
2 前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する。
3 株式会社は、株主総会の日から三箇月間、第一項の規定により提出された議決権行使書面をその本店に備え置かなければならない。
4 株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。
(電磁的方法による議決権の行使)
第三百十二条 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。
2 株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には、株式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
3 第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する。
4 株式会社は、株主総会の日から三箇月間、第一項の規定により提供された事項を記録した電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
5 株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる。
(議決権の不統一行使)
第三百十三条 株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。
2 取締役会設置会社においては、前項の株主は、株主総会の日の三日前までに、取締役会設置会社に対してその有する議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければならない。
3 株式会社は、第一項の株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
(取締役等の説明義務)
第三百十四条 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
(議長の権限)
第三百十五条 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。
2 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
(株主総会に提出された資料等の調査)
第三百十六条 株主総会においては、その決議によって、取締役、会計参与、監査役、監査役会及び会計監査人が当該株主総会に提出し、又は提供した資料を調査する者を選任することができる。
2 第二百九十七条の規定により招集された株主総会においては、その決議によって、株式会社の業務及び財産の状況を調査する者を選任することができる。
(延期又は続行の決議)
第三百十七条 株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第二百九十八条及び第二百九十九条の規定は、適用しない。
(議事録)
第三百十八条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
2 株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
3 株式会社は、株主総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における次項第二号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
4 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求
二 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
5 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第一項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
(株主総会の決議の省略)
第三百十九条 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
2 株式会社は、前項の規定により株主総会の決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
3 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
4 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第二項の書面又は電磁的記録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
5 第一項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。
(株主総会への報告の省略)
第三百二十条 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。