憲法 45条-52条/103条 国会

第四十五条  衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

 

国会についての最終回は、国会議員の地位を①任期、②兼職の禁止、③特権――に分けて解説します。

Ⅰ.任期

憲法45条は衆議院の、46条は参議院の議員の任期を規定しています。衆議院議員の任意は原則4年、ただし、衆議院の解散があった場合は解散した時までです。一方、参議院の任期は6年で、3年ごとに議員の半数について改選します。衆議院よりも任期が長く、常に議員の半数は存在すること、解散制度もないことは、参議院議員には、継続性と安定性が確保されているということです。
国会議員が選挙によって選ばれて身分を取得するのは、当選の効力が発生した日です。一方、国会議員が身分を喪失する場合は次の9つの場合です。すべて覚えてください。
①任期が満了した場合
②他の議院の議員になった場合
③資格争訟の裁判で資格がないことが確定した場合
④懲罰として除名された場合
⑤被選挙権資格を失った場合
⑥辞職した場合
⑦法律上兼職が禁止されている公務員になった場合
⑧訴訟で選挙無効又は当選無効の判決が確定した場合
⑨衆議院が解散した場合(衆議院議員のみ)

 

第四十六条  参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

 

第四十七条  選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

 

【国会】 在宅投票制事件(最判昭60.11.21)

事例

重度の身体障害のため投票所に行くことので きないAは、従来採られてきた在宅投票制度 が廃止され投票できなくなったことから、同 制度を廃止しその後これを復活しないこと は、憲法13条、15条1項・3項、14条、44 条、47条に違反するとして国家賠償請求訴 訟を提起した。

判例の 見解

①立法内容の違憲性と立法行為の国賠法上 の違法性を区別すべきか。

国会議員の立法行為(立法不作為を含む) が国家賠償法1条1項の適用上違法となるか どうかは、国会議員の立法過程における行動 が個別の国民に対して負う職務上の義務に違 背したかどうかの問題であって、当該立法の 内容の違憲性の問題とは区別されるべきであ り、仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反 するおそれがあるとしても、その故に国会議 員の立法行為が直ちに違法の評価を受けるも のではない。 ②国会議員の立法行為が国賠法上違法と評 価される場合 国会議員は、立法に関しては、原則とし て、国民全体に対する関係で政治的責任を負 うにとどまり、個別の国民の権利に対応した 関係での法的義務を負うものではないという べきであって、国会議員の立法行為は、立法 の内容が憲法の一義的な文言に違反している にもかかわらず国会があえて当該立法を行う というごとき、容易に想定し難いような例外 的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の 規定の適用上、違法の評価を受けない。 ③在宅投票制度を廃止しその後これを復活 しないという立法行為は、国賠法上違法 か。

憲法には在宅投票制度の設置を積極的に命 ずる明文の規定が存しないばかりでなく、か えって、47条は「選挙区、投票の方法その 他両議院の選挙に関する事項は、法律でこれ を定める。」と規定しているのであって、こ れは投票の方法その他選挙に関する事項の具 体的決定を原則として立法府である国会の裁 量的権限に任せる趣旨である。そうすると、 在宅投票制度を廃止しその後これを復活しな いという立法行為が前示の例外的場合に当た ると解すべき余地はなく、結局、本件立法行 為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価 を受けるものではない。

判例の POINT

本判決によれば、国会議員の立法行為が国賠 法上違法と評価されるのは極めて例外的な場 合に限られる。そのため、立法不作為の違憲 性を国家賠償請求訴訟の中で争うことが事実 上否定されるに等しく、学説の強い批判を受 けている。

関連判例

選挙権行使の機会と立法不作為(最判平 18.7.13) 精神的原因による投票困難者の選挙権行使の機 会を確保するための立法措置については、今後国 会において十分な検討がされるべきものである が、本件立法不作為について、国民に憲法上保障 されている権利行使の機会を確保するために所要 の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それ が明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由 なく長期にわたってこれを怠る場合などに当たる ということはできないから、本件立法不作為は、 国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受け るものではない。 本件は、重度の精神発達遅滞等の精 神的原因で投票所に行くことができず、投票を棄 権せざるを得なかった原告が、精神的原因による 投票困難者の選挙権行使の機会を確保するための 立法措置がなされていないことは、憲法15条1項 等に違反するとして国家賠償を請求した事件であ る。

 

第四十八条  何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

Ⅱ.兼職の禁止

ある議院の議員である者は原則として、同時に他の議院の議員になることはできません。両議院が同じ議員から構成されたのでは、二院制の趣旨が失われてしまうからです。48条では単に「議員たることはできない」としているだけですが、公職選挙法では、議員に在職中の者が他の議院の議員選挙に立候補すること自体を禁止しています。また、地方自治法や国会法によって、他の議院の議員だけでなく、他の公務員との兼職も原則として禁止されています。

Ⅲ.特権
国会議員には、
①歳費受領権
②不逮捕特権
③免責特権――の3つが与えられています。

 

第四十九条  両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

 

1)歳費受領権

憲法49条により国会議員には国庫から歳費を支給される権利が保障されています。これは、普通選挙では、あまり財産のない一般国民が議員になることがあり得るため、そういった人も議員として活動できるためであると理解されています。
本条を受けて国会法で歳費の額を「一般職の国家公務員の最高額より少ない額」の範囲で決めると規定されています。裁判官の報酬は憲法上減額されないことが保障されていますが(後で79条6項、80条2項で学びます)、議員については、そういった保障はありませんので、国会法の改正で減額されることもあり得ます。

 

第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

 

2)不逮捕特権

憲法50条は、国会議員の不逮捕特権について2つ規定しています。
①国会議員は、原則として会期中は逮捕されない
②会期前に逮捕された国会議員がいる場合、その所属する議院の要求があれば、会期中釈放しなければならない
①の場合「会期中」とは国会の開会中のことです。休会中でも会期中であることに変わらないので不逮捕特権は認められます。また、参議院の緊急集会も国会そのものではありませんが、開催されている間は不逮捕特権が認められます。
また、「逮捕」には、刑事訴訟法にいう①逮捕、②勾引、③勾留と、行政庁の行う④身柄拘束――のことで、訴追することまでは含まないと理解されていますので、身柄を拘束しない形の起訴は行えることになります。
また、50条にある「法律の定める場合」の例外には2つあります。
①院外における現行犯罪の場合
②その議員が所属する議院の許諾がある場合
①の場合の理由は、院外における現行犯逮捕は、犯行が明白で不当な逮捕のおそれがないからです。
②の場合は、議院が許諾してよいかどうかの判断基準が2つ挙げられます。
➊正当な理由があるか
不逮捕特権の趣旨は、政府の権力によって国会議員の職務遂行が不当に妨害されることがないよう、議員の身体的な自由を確保する必要があることによります。
➋議院の活動に支障が出るか
不逮捕特権の趣旨は、個々の議員というよりは議院の正常な活動を確保することにあることによります。

 

第五十一条  両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

 

3)免責特権

憲法51条は、両議院の議員について、議院で行った演説等について院外で責任を問われないことを保障しています。そして、これを免責特権と言います。免責特権を国務大臣にも認めるかについては、国務大臣については明示されていないので認めないというのが通説です。
つまり、国会議員である国務大臣の発言は、国会議員としてのものならOKですが、国務大臣としての演説や発言は責任を負うというわけです。
また、「議院で行った」というのは、「議員活動の場面で国会議員としての職務を行うに当たって」という意味です。例えば、委員会活動や地方での公聴会などが議員としての活動なら、国会の会期中であろうとなかろうと、場所がどこでも免責特権が及びます。逆に、議院で行った発言を本にまとめて出版したような場合は、もはや議院で行ったとは言い難く、免責特権は及びません。
ここいう、「責任」については、一般国民であれば問われる民事上・刑事上の法的責任を指します。例を挙げれば、議員Aが議員Bの名誉を傷つけるような批判を国会内でした場合、一般国民であれば名誉棄損行為として損害賠償責任を負ったり、名誉毀損罪に問われたりしますが、議員であるAは、それらの法的責任は問われないのです。弁護士出身の国会議員の弁護士法に基づく懲戒も法的責任の追及ですので、責任に含まれます。
一方、マスコミが議員の言動に対して批判を行うことなどは、政治的責任の追及ですので、免責特権の対象にはなりません。

ここまで読むと、国会議員はずいぶん優遇されているように思われるかもしれません。しかし、51条の趣旨は、議員が自由に討議することで国政に多様な意見が反映され、ひいては国民の利益になると考えたからです。
では、国会議員が、議院で一般国民の名誉やプライバシーを侵害するような言動を行った場合にも、免責特権は及ぶのでしょうか。
これを示した事件と判例を次に挙げます。

この判例では、国会議員の一般国民の名誉を棄損するような言動について、法的な責任追及はできないし、その言動の目的は国会議員の職務として合理的であるので損害賠償の対象でないとしています。

 

第五十二条  国会の常会は、毎年一回これを召集する。

 

今回は国会の活動についてです。
①国会の会期、②参議院の緊急集会、③定足数と表決数、④会議公開の原則――を学んでいきます。○日や、△分の●以上などの数字が多く出てきて紛らわしいのですが、行政書士試験では、その数字の内容まで踏み込んだ質問が出ます。しっかり、覚えてください。

Ⅰ.国会の会期
1)常会

憲法52条はいわゆる通常国会又は常会の規定です。議会が一定の限られた期間だけ活動能力を持つとする制度を会期制と言います。これに対して、議会を構成する議員の任期が続く間は常時、議会が活動能力を持つ制度は常設制と言います。
憲法は、国会が会期制、常設制のいずれを採用しているか明言していませんが、52条で通常国会について定めたほか、続く53条・54条で臨時会と特別会を規定していることから、憲法は会期制を前提としていると理解され、国会法もその前提で制定されています。
国会の活動には、
①会期不継続の原則
②一時不再議の原則――があります。
会期不継続の原則とは、国会は会期ごとに活動能力を持ち、ある会期中に議決に至らなかった案件については、その後に開かれた会期には継続しないという原則です。憲法では、このことを明言していませんので、国会の自主的な判断に委ねられていると理解されています。
しかし、現行の国会法には、68条に会期不継続の原則の採用が規定されています。
もう一方の一時不再議の原則とは、ある議院が議決した案件については、同じ会期中に同じ議院においては再度審議する対象としないという原則です。この原則は、憲法にも国会法にも明記されていません。
しかし、一旦議決された案件を再度蒸し返すことが可能であるとすると、反対意見の議員がいればいつまでたっても重要な案件に結論が出ないことになり、国民の不利益につながります。そこで、一時不再議の原則は、国会の活動が正常であるためには当然に認められる原則と考えられています。
前回の衆議院の優越で覚えた、衆議院で可決→参議院で否決→衆議院で再議決の場合は、この原則の例外です。
ところで、憲法は、国会の活動形態を、①常会(52条)、②臨時会(53条)、③特別会(54条)――の3種類規定しています。52条の常会は、毎年1回召集することが定められていますが、いつ開かれるか、会期は何日にするかは国会の判断に委ねられています。
ただし、国会法で、①召集は1月中、②会期は150日、③両議院一致の議決があれば1回に限って会期の延長が認められる――と定められています。

2)臨時会

臨時会は、毎年1回、定期的に開催される国会である前述の常会と異なり、必要に応じて臨時に開催される国会です。
臨時会が開催される場合には、次の3通りがあります。
①内閣が必要としたとき(53条の前段)
②衆参どちらかの議院の総議員の4分の1以上の要求があったとき(53条後段)
そして、国会法に規定される
③衆議院議員の任期満了による総選挙か、参議院議員の通常選挙が行われ、新しい議員の任期が始まる日から30日以内
ここでは、③の場合を見落とすことが多いので、注意してください。
さらに国会法によれば、臨時会の会期は、召集日に両議院の一致で決定することになっています。また、両議院一致の議決で、2回まで会期の延長ができることになっています。
必要に応じて臨時に開かれるものであることから、常会に比べて柔軟性が確保されています。

3)特別会

54条1項の規定は、衆議院が解散された場合、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行い、さらに総選挙の日から30日以内に国会が召集されることを謳っています。この国会のことを特別会と言います。
特別会の会期とその延長は臨時会と同じ扱いが国会法に規定され、会期は召集の日に両議院一致の議決により決定し、会期は2回まで延長できます。
なお、特別会の召集の時期が常会と重なる場合には、特別会と常会を合わせて召集することができると理解されています。

Ⅱ.参議院の緊急集会
54条の2項・3項は、参議院の緊急集会についての規定です。参議院の緊急集会は、次の3つの要件が満たされた場合に開催されます。
①衆議院が解散によって存在しない
②衆議院総選挙後の特別会を待てないくらい緊急の必要がある
③内閣の求めがある
ここでは、③の場合が臨時会と異なり、議院(参議院)の方から求めることはできないことに注意してください。
緊急集会は国会そのものではありません。そこで、緊急集会で採決された事項は、あくまで臨時のものですので、次の国会の開会後10日以内に衆議院の同意がなければ、将来に向かって効力を失います。将来に向かってとは、過去に遡らないでという意味です。つまり、緊急集会の採決後から特別国会衆議院の採決までは有効ということです。

Ⅲ.定足数と表決数

定足数とは、ある会議体において、議事を開き審理を行って議決をするために必要とされる最小限度の出席者数のことです。国会の定足数は、各議院の総議員の3分の1です。
ここでいう総議員とは、法定議員(公職選挙法で定められた議員)の総数を指します。
一方、表決数とは、ある会議体において、意思決定を行うために必要な賛成表決(票)の数のことです。国会の表決数は、憲法に特別の定のある場合を除いて出席議員の過半数です。ここでいう出席議員には、棄権者や白票・無効票を投じた者も含みます。賛否同数の場合は、議長の決で決定します。
また、憲法に特別な定のある場合を、下表にまとめました。しっかり覚えましょう。

Ⅳ.会議公開の原則

57条1項で規定されているとおり、国会の会議は、公開される、つまり、一般国民や報道機関の自由な傍聴を許すのが原則です。これは、①民主主義国家においては議員は国民の代表者である、②国民の知る権利のため――などから当然の原則です。
また、出席議員の3分の2以上の多数の議決で例外的に秘密会の開催を認めていますが、現在のところ秘密会が開かれたことはありません。
ただし、国会法により本会議と異なり、委員会は非公開が原則で、例外的に議員や報道機関関係者などで委員長の許可を得た者のみが傍聴できることになっています。また、両院協議会はその性質上秘密会とされ、傍聴は許されません。
57条2項により、国会の会議の議事録は、保存・公表・頒布が義務付けられ、これも広い意味での会議の公開と言えます。ただし、秘密会の会議録中の特に秘密を要するものについては、保存のみで、公表・頒布の必要はないとされています。
また、57条3項では、出席議員の5分の1以上の要求で、各議員の表決が会議録に残ります。通常の表決は無記名ですが、この場合は記名式で行われます。

今回解説した内容は、解釈するのに難しい内容ではないものの、同じような言い回しで少しずつ異なる内容を覚えるのが大変です。
下記に、覚えるためのヒントをまとめましたので、利用してください。

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