1
憲法第9条について、最高裁判所の判例の要約として適切か否か答えよ。
憲法第9条は,我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではなく,憲法の平和主義は決して無防備,無抵抗を定めたものではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
憲法9条は「わが国が主権国としてもつ固有の自衛権」まで否定したものではない。
に続く判旨。
[自説の根拠]最大判昭和34年12月16日
上記判例は、砂川事件。
2
国民の義務について、適切か否か答えよ。
憲法第26条第2項前段は,国民は,「その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」と定めている。この点,親権者には教育の自由があるから,親権者は,その保護する子女に受けさせる教育内容を決めることができ,子女に学校教育法による普通教育の代わりに,自ら自由に定めた内容による9年間の教育を受けさせることによっても,憲法第26条第2項前段の義務を果たしたことになる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。 (日本国憲法 26条2項)
Wikipedia「義務教育」より引用。
『現在の日本の教育については、日本国憲法第26条第2項に、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と定められており、この規定に基づく教育を「義務教育」と呼称している。そのため、保護者は、学齢期の人を小中学校などに通学するように取り計らう義務がある。これを就学義務(就学させる義務)という。
日本はあくまで「就学義務」であり、「教育義務」という定義ではないので、諸外国によくみられるホームスクーリングは義務教育の履行とはみなされない。』
親権者には、児童を小学校及び中学校に就学させる義務があります。(学校教育法16条、17条)就学義務の免除は児童が病弱や、発育不完全、またはこれに相当するやむを得ない事由がある場合のみ認められます。(同法18条)また、ここでいう、小学校中学校とは、都道府県知事、都道府県教育委員会の認可を受け設置されたものになります(同法1条、2条1項、4条1項2項・3項)
よって、親権者の方が独自に定めた内容による教育をいくら施したところで、教育を受けさせる義務を果たしているとは言えないので、設問は×。
[自説の根拠]学校教育法1条、2条1項、4条1項2号・3号、16条、17条、18条
なお、判例により、親権者は児童の教育の自由を有することが認められていると言えますが、これは、私学教育の自由や、学校選択の自由として現れるものとされています。(最大判昭和51年5月21日、刑集30-5-615)
[自説の根拠]最大判昭和51年5月21日刑集30-5-615
× 自由に定めた内容による(問題文 最後の方)
関連問題
次の憲法の条文の【 】にあてはまる言葉を記述しなさい。
日本国憲法 第26条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく【 】を受ける権利を有する。
2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
3
天皇の権能について、適切か否か答えよ。
天皇に衆議院の解散権があるとしても,それが内閣の助言と承認によって行われる以上,国会が天皇の政治責任を追及することは認められない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
天皇は一切権限がない代わりに責任もない。
憲法3条も、明文上「すべての行為」とし、例外を認めていない。
[自説の根拠]憲法3条
本問の争点は、
①天皇に衆議院解散権があるか
②その政治責任を追及することが認められるか
であるが、苫米地事件第一審では、
「衆議院解散権は天皇にある」とした上で「内閣が解散を助言し、その国事行為が趣旨に合致するかを確認し、これを承認して初めて解散される」のであり「天皇に発議権はない」と判示した。
なお上告審では「助言と承認を区別する必要はなく、内閣の実質的解散権に従った形式的儀礼的行為と解すべき」との少数意見もある。
いづれにしろ、本肢結論通り、天皇に対する問責は認められない。
[自説の根拠]苫米地事件第一審(東京地判昭28・10・19)
上告審(最大判昭35・6・8)
天皇の国事行為は内閣の助言と承認を必要とし内閣が責任を負う
4
天皇の権能について、適切か否か答えよ。
天皇に代わって摂政が置かれる場合は,摂政が自らの名で国事に関する行為を行い,その責任は摂政に帰属する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。 (日本国憲法 5条)
誰の名で?は第5条で「天皇」ですが・・・
責任は?
第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う。
からすると内閣かな?という気もするんですが??いまいちハッキリしません。
まぁ、この辺は試験にはでないと思うけど、どなたかわかりますでしょうか?
摂政は自己の名でなく「天皇の名」で国事に関する行為を行うのだから、責任も当然「内閣」に帰属するもので良いと思います。
なぜなら、摂政はあくまで天皇の「代行」として国事に関する行為を行っているだけだからです。
[自説の根拠]憲法3条、5条
摂政は、「天皇の名で」国事行為を行う(5条)。
摂政が自らの名で行うのではない。
また、摂政も天皇と同様、国事行為につき何ら責任を負わない。
[自説の根拠]司法試験・法科大学院(ロースクール)情報サイト。平成18年度新試短答公法系第16問解説。
関連問題
次の説明は、日本国憲法における天皇に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは,摂政は,天皇の名でその国事に関する行為を行う。
5
条約に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
憲法は,条約の締結方式については直接規定していないが,批准書の認証を天皇の国事行為としていることから,批准による締結を予定しており,いかなる条約であっても,締結には,署名のみでなく批准書の交換・寄託を要する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
Wikipedia「条約」より引用。
『国家が条約に拘束されることへの同意を表明する方法としては、署名、批准、加入、受諾、承認等があり、これらは締結と総称される。締結の具体的方法は、各条約に規定されており、複数の方法が認められる場合もあれば、特定の方法が指定されていることもある。複数の方法が認められる場合、日本は、批准、受諾または加入によって締結することが多く、この場合、条約は、(1) 署名(批准・受諾の場合)、(2) 国会による承認、(3) 批准書・受諾書・加入書の交換・寄託などの手順を経て効力を発生する。』
つまり、条約の締結方式はその条約自体に書いてあるので、日本国憲法だけで「批准書の交換以外認めない!」とすることはできない、ということですね。だから×。
6
条約に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
締結について国会の承認を要する条約は,広く国家間の合意をいい,条約,協約,協定,議定書,憲章など名称のいかんを問わないが,国家間の合意であっても,既存の条約を執行するために必要な技術的・細目的な協定等は,必ずしも国会の承認を得る必要はない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
Wikipediaより引用
国家間などで結ばれる個別の成文法(広義の「条約」)には、条約(treaty、convention、例:生物多様性条約 )以外に、憲章(charter、例:国際連合憲章)、協定(agreement、例:WTO設立協定)、議定書(protocol、例:京都議定書)等の様々な名称を持つものがある。これらは法的拘束力において相違はないが、主に慣習によって使い分けられているもので、例えば、議定書は一般に既存の条約を補完する条約の名称として用いられる(例:京都議定書は気候変動枠組条約を補完する内容を持つ)。
国家が条約に拘束されることへの同意を表明する方法としては、署名、批准、加入、受諾、承認等があり、これらは締結と総称される。締結の具体的方法は、各条約に規定されており、複数の方法が認められる場合もあれば、特定の方法が指定されていることもある。複数の方法が認められる場合、日本は、批准、受諾または加入によって締結することが多く、この場合、条約は、(1) 署名(批准・受諾の場合)、(2) 国会による承認、(3) 批准書・受諾書・加入書の交換・寄託などの手順を経て効力を発生する。
条約に関する国際法としては、ウィーン条約法条約がある。
*二国間条約
二国間条約の場合、政府代表が署名を行った時点で効力を発する行政協定(行政取極)(Executive Agreement / Administrative Arrangement)あるいは簡易協定と、議会による批准等の承認を受けて初めて発効の手順(批准書の寄託等)を踏むことのできる通常協定(Conventional Agreement)がある。いずれの場合においても、二国間の協定である場合は、協定に「加入」するという手続を踏むことはない。すなわち、行政協定(行政取極)の場合、政府代表間で相互に署名を行うことで当該協定を締結したことになるが、通常協定の場合は、相互の政府代表者による署名後に、議会による批准等の承認を得るまで当該協定は発効しないことになる。
たとえば日本の場合、日米安全保障条約(安保条約)は議会承認が必要な「通常協定」に当たり、2007年8月に閣議決定を経て署名・締結された「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国との間の協定」(GSOMIA)は「行政協定(行政取極)」に当たる。これらの二国間条約は、いずれも加入の対象とならない。
*多国間条約
多国間条約の場合、政府代表間での批准書の交換という手続は採らず、代わりに国連の条約局、専門機関、地域間条約などを管理・運営する事務局、条約作成地の政府などが、批准書、受諾書、加入書等の寄託を受ける仲介機関(寄託者)の役割を担う。
条約に関する用語
*署名
条約における署名には2種類の意味がある。
1つめは条約の内容が確定したときに、全権を委任された国家の代表者(通常は代表団の首席代表)が条約の内容を公式に確認した証拠として記名することを指す。条約の内容は署名によって確定し、以後、正式な手続による場合以外は内容を修正することはできない。
2つめは、国家が条約を締結する際の手続の一環として行われ、国家が条約に拘束される意思を表明するものである。多数国間条約は、通常、作成された後の一定期間、作成された地、または、関連国際機関等において署名のために開放される。条約を締結するための手続としては、署名、批准、加入、受諾、承認等がある。このうち、署名は文字通り署名のみによって条約を締結するものであるが、現在、主要な条約においてこの方法が取られることはほとんどない。また、批准及び受諾は、署名を行うことにより国家が将来的に条約に拘束される意思(条約の内容に対する基本的な賛意)を表明した後に、国会による承認などの所要の国内手続等を経て条約を締結する手続である。
1998年に国連の外交会議で採択された国際刑事裁判所ローマ規程の場合、2000年の12月31日が後者の意味での署名の期限であった。この条約の場合は、アメリカが滑り込みで期限当日に署名を行い、署名国の仲間入りを果たしたが、2002年の5月にはこれを撤回した。署名の撤回は国際法上は問題のない行為ではあるものの、慣習上はほとんど例のない行為である。
日本の場合、後者の意味での署名を行う際には、事前に閣議決定が必要なため、署名を行うのは重要な条約に限られる傾向がある。
*批准
批准は、署名をした条約の内容について国家が最終確認を行い、条約に拘束されることについて同意を与えることを指す。署名の後に、国会あるいは議会の承認を得る等の所定の国内手続により条約に同意することの確認を行い、批准書を作成する。
二国間の条約の場合は、相手国と批准書を交換して条約が発効する。また、多数国間条約の場合は会議開催地国の政府あるいは国際機関(寄託者)に批准書を寄託することで効力が発生する。
署名した条約を国家が批准するかどうかは、信義上の問題はあるものの、法的には自由である。署名した条約であっても、当事国の議会が否決することもある。
条約を締結する手続としては、批准のほかに、受諾、承認、加入等があり、どのような手続により締結することができるかは条約文書中に規定されているが、政治的に重要な条約では、批准によらなければならないとしているものが多い(例:包括的核実験禁止条約)。このような条約を批准条約という。また、複数の締結手続が定められている場合であっても、政治的に重要な条約については、締結の手続として批准を選択することが多い。
日本国の場合、批准書の承認は日本国憲法第7条8号により天皇の国事行為とされている。
*加入
加入は、条約に署名をしていない場合に、条約の規定に拘束される意思があることを正式に宣言する行為。具体的には、国会あるいは議会の承認を得る等の所定の国内手続により条約に拘束されることに同意することの確認を行い、加入書を作成し、会議開催地国の政府あるいは国際機関に加入書を寄託することで確定される。
日本の場合、手続の容易性から、批准よりも加入の手続きを踏むことにより、条約に拘束される意思を表明する場合が多い。また、署名のために開放される期間が終了した後に条約を締結する場合には、条約に署名することはできないので、必然的に批准等ではなく加入等の手続を取ることになる。
*受諾
受諾は基本的に批准に近い手続である。
日本の場合、批准書には天皇の認証が必要とされるのに対して、受諾書の作成の場合は不要である点で相違する。[1]このため、近年は重要な条約を締結する際にも、批准に代えて受諾の手続が取られることが多い(例:京都議定書)。
留保(りゅうほ reservation)及び解釈宣言(かいしゃくせんげん declaration)
留保は、条約の締結にあたって、一部の条文の規定に拘束されない意思を表明する行為であり、解釈宣言は、条約の締結にあたって、条約の特定の条文についてのその国の解釈を対外的に明らかにする宣言である。[2]留保や解釈宣言を認めることは、条約の運用の柔軟性を高め、多くの国の締結を促す効果があるが、その反面で条約本来の意義を減じることにもなりかねず、留保や解釈宣言を行った国に対して内外から批判が寄せられることがある。日本が、留保及び解釈宣言を行っている例としては、国際人権規約や児童の権利に関する条約がある。
多数国間条約の発効
多数国間で結ばれる条約の場合、条約が発効する要件として、批准書・加入書等を寄託した国が一定数に達する等の所定の条件を満たしたときに初めて締約国に対して効力を生ずるのが通例である。条約発効の要件は条約の規定中に記載されているのが常である。
条約の発効要件によっては、各国の批准・加入等の進行状況や政治をとりまく状況の変化により条約の署名から発効までに数年から十数年を要するものや、未発効のままで終わるものもある。近年のこのような例としては、包括的核実験禁止条約や京都議定書などがある。包括的核実験禁止条約の例では、1996年に国連総会で採択されたが、2008年時点では条件を満たしておらず条約は発効していない。
条約の発効後に条約を締結した国に対する効力の発生についても、それぞれの条約で定められており、通常、批准書等の寄託と同時に効力を発生するか、寄託から一定期間経過後に効力を発生するとしているものが多い。
*枠組条約
枠組条約は、基本的な構成と意志決定メカニズムのみを定めた条約で、具体的な内容は議定書等で展開される。
例:気候変動枠組条約、たばこ規制枠組条約
以下、Weblio行政協定より引用
行政協定
行政府の固有の権限に属する事項や既存の条約または国内法により容認された事項について議会の承認を必要とせず行政府の間だけで締結される協定。
1952年に締結された日米行政協定がこれにあたる。
この日米行政協定は昭和60年に締結された新安保条約に伴って改定され、今は日米地位協定となっている。
[自説の根拠]自説の根拠は、Weblio 行政協定より
条約とは、
憲法73条3号(内閣の職務)及び憲法61条(条約の承認についての衆議院の優越)に従って内閣が外国と締結する取極めの法形式をいう。
cf.行政協定は「条約」に含まれないので、天皇の公布は必要なし。
[自説の根拠]自説の根拠は、LEC択一六法
7
国民の義務について、適切か否か答えよ。
憲法が国民に職業選択の自由と財産権を保障するとともに,その意に反する苦役を禁止している以上,勤労の義務を規定した憲法第27条第1項は,道徳的・精神的な規定にすぎず,これに法的意味を認めることはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
確かに積極的な法的意味(金利生活者やディレッタントの否定)はありませんが、消極的な法的意味(勤労の能力を持ちながら、その意思を持たない者が国に対し健康で文化的な最低限度の生活をおくる権利を主張する場合に、それを遮断する)はあると考えられています。
勤労の義務の解釈
日本国憲法は、財産権(29条)と、職業選択の自由(22条)を保障しています。つまり、資本主義体制です。このため、日本国憲法での勤労の義務は、旧社会主義国の憲法で見られるような「働かざる者、食うべからず」とは意味が異なるという解釈で学説は一致しています。
従来の通説では、勤労の義務は道徳的義務を示すにとどまるとするものでした。しかし、今日では、働く能力があり、なおかつその機会があるにもかかわらず働こうとしない者には、生存権や労働権の保障が及ばないという限りで、法的意味を持つものと解するのが多数説です。
[自説の根拠]自説の根拠は、ニートひきこもりJournal
国家が存立する以上、国民はその支配に服す義務がある。但し立憲主義から、その目的は基本的人権を確保するものに限られる。よって憲法27条1項の義務は、国民の憲法上の権利を侵害しない範囲で立法府が定める必要があり、いわゆる法令遵守義務として存在する。
同条に法的意味を認める根拠として、生活保護法4条1項及び60条や、ニート困窮者を保護しない事例を挙げるコメントがあるが、この解釈には争いがあり、直ちに結びつけるのは妥当でない。
もし法律に根拠を求めるなら、軽犯罪法1条4号がよろしいかと…
[自説の根拠]【軽犯罪法第1条4号】生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついた者は、これを拘留又は科料に処する。
8
天皇の国事行為に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
天皇は国会の開会式に参列するが,その際の「おことば」は天皇の象徴としての行為であるとする立場からすると,「おことば」について内閣の補佐は不要である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
象徴行為説に立つものへの批判として次のことが言える。すなわち、
「象徴としての公的行為に内閣の助言・承認は要求されておらず、内閣は天皇の行為をコントロールすることができないことになる。」
ただしこの説がそもそも、国事行為に準じて内閣のコントロールを及ぼすべきであるとしていることに注意を要する。要は、考え方そのものに中間的な矛盾を孕んでいる。
[自説の根拠]公務員試験対策本
かかる行為を国事行為とは異なる象徴行為だと解する立場からも、公的な側面を有する象徴行為へのコントロールの必要性は認められており、内閣の補佐は必要と解されている。
[自説の根拠]法ゼミNET。
象徴としての公的行為を認める場合は、助言と承認を内閣へ求めるべきことの明文規定を得られない前提があるにも関わらず、これに対し合理的説明なく国事行為に準じるべきであるとし、さらに、象徴に積極的意味を付与しようとする点で、前提となるべき象徴、国事行為等の観念の維持に、齟齬を来している。つまり、内閣の助言と承認に関しその定め等は象徴の象徴たる法的地位を認めるものでないのに、象徴の公的行為を認め、さらに内閣の助言と承認まで必要とされるに至っては、象徴についての前提と理解とが互いに前後し合う結果となる。
関連問題
天皇の権能について、適切か否か答えよ。
天皇による国会開会式の「おことば」を「儀式」に含めて理解する見解に立てば,その行為については内閣による助言と承認は要求されない。
9
宗教法人法に基づくオウム真理教に対する裁判所の解散命令は,憲法第20条第1項に違反しないとした最高裁判所の決定(最高裁判所平成8年1月30日第一小法廷決定,民集50巻1号199頁)について、適切か否か答えよ。
この決定は,解散命令の制度は信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないのであるから,信者の宗教上の行為に何らの支障も生じさせるものではないとした。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
当該決定は、宗教法人が解散されても、法人格を有しない宗教団体を存続、新設できるし、施設・物品を新たに調え宗教行為も行うことができる旨判示しながらも、
「もっとも、宗教法人の解散命令が確定したときはその清算手続きが行われ、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。」
としている。
[自説の根拠]最高裁判所平成8年1月30日第一小法廷決定
判例(抜粋)
①解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、宗教行為を行うことを妨げられるわけでもない
②即ち解散命令は、宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わない(肢の前半)
③解散命令が確定したときは清算手続の結果、礼拝施設その他の財産も処分されるから、これらを用いて行っていた宗教行為に何らかの支障を生ずる事があり得る
以上より本肢「解散命令が信者の宗教上の行為に何らの支障も生じさせない」とする後半の記述は、③の趣旨に沿わないので本肢は誤り。
この問題の正否を判断する判決の部分は「解散命令によって宗教団体やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる。」の部分の方がより直接的に「何らの支障も生じさせるものではないとした」との問題の記述があやまっていることを明確に判断することが出来る。
[自説の根拠]最判平8.1.30(オウム真理教解散命令事件)判旨
10
労働基本権について、適切か否か答えよ。
労働基本権は,団結権,団体交渉権及び団体行動権からなるが,このうち団結権は,労働基本権の最も基本的な権利であるので,現行法上,この権利が制限されている職種は存在しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
公務員は労働三権の制約を受けます(その代償措置が人事院勧告です)。
特に、警察職員・消防職員・海上保安庁職員・自衛隊員・刑務所職員には、団結権を含む労働三権の全てが認められていません。
1948年12月3日に公布・即日施行された改正国家公務員法により、国家公務員の労働基本権については、争議権の禁止、団体交渉権の制限、政治的行為の制限強化等がなされた。また、自衛隊員や海上保安官、刑務官、地方公務員の警察官や消防署員などに団結権は認められていない。
11
最高裁判所昭和41年2月8日判決(民集20巻2号196頁)は,「司法権の固有の内容として裁判所が審判し得る対象は,裁判所法第3条にいう「法律上の争訟」に限られ,いわゆる法律上の争訟とは,法令を適用することによって解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争をいうものと解される」と判示している。この判例の見解を前提にした場合,法律上の争訟に関する次の記述について、適切か否か答えよ。
具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとり,宗教上の教義に関する判断が請求の当否を決するについての前提問題にすぎなくとも,これに立ち入ることなくしてはその当否を判断することはできず,しかも,それが訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものである場合には,その実質において法令の適用による終局的解決に適しないから,法律上の争訟に該当しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
「板まんだら」事件最高裁判決からの引用ですね。
[自説の根拠]最判昭和56年4月7日(民集35巻3号443頁:百選第二版1)
この判例は有名です。
判旨を転記すると「記録にあらわれた本件訴訟の経過に徴すると、本件訴訟の争点及び当事者の主張立証も右(「信仰の対象の価値又は宗教上の狭義に関する判断」のことを指す)の判断に関するものがその核心となっていると認められることからすれば、結局本件訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、裁判所法3条にいう法律上の争訟にあたらないものといわなければならない。」となっている。この判旨を要約して書いたものが問題文であり、回答は「☓」となる。
[自説の根拠]板まんだら事件(最判昭56.4.7)
12
国会が唯一の立法機関であること(憲法第41条)について、適切か否か答えよ。
憲法第41条は実質的意味の立法が国会によってのみ制定されることを意味するが,実質的意味の立法が一般的・抽象的規範を意味するとすれば,栄典制度についても法律で定めなければならないことになる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
憲法41条の「立法」の意味について、設問は広義説(通説)の立場に立った考え方です。
これに対して、狭義説では実質的意味の立法を「国民の権利を直接に制限し、義務を課するもの」とし、中間説では「国家と一般国民との関係を規律する成文の一般的法規範を制定する作用」としますので、いずれの立場でも栄典制度は一般国民との権利義務等の関係を生じませんから、法律で定める必要はないことになります。
栄典の授与に関し、日本の内閣は法律ではなく政令に基づき行えるものとして扱っており、栄典について定めた太政官布告や勅令を政令により改正している。この点については、栄典の授与は法律事項であるとして、法律の委任に基づかない以上違憲ではないかとの疑義が、憲法学者から出されている。(wikipedia)
===
上記とhitoshiさんのコメントを参考にすると、「実質的意味の立法が一般的・象徴的規範を意味する(広義説)とすれば、栄典制度についても法律で定めなければならない」と解釈できます。
「立法」には、形式的意味の立法と、実質的意味の立法がある。通説によると、憲法41条の立法は実質的意味の立法を指す。
形式的意味の立法:
・「国家機関内部だけを規律する」法規範(内部規則)
・個別具体的な法規範(特定性ある法規範)
実質的意味の立法:
・「直接に国民を拘束し、または少なくとも国家と国民の関係を規律する」法規範
・一般性ある法規範
---
憲法41条が立法に関する内部規則と考えれば栄典制度と直接関係しないが、
直接国民を拘束する法規範と考えれば、栄典制度も政令ではなく、
国会で法律により定めなければならないことになる。
===
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
13
憲法第25条が保障する生存権の裁判規範性に関するプログラム規定説によれば,憲法第25条は政治的・道義的義務を国に課したものにとどまり,個々の国民に対して具体的権利を保障したものではない。プログラム規定説への批判となるものとして、適切か否か答えよ。
「健康で文化的な最低限度の生活」の具体的内容を一般的に決定することはできないが,特定の国における特定の時点においては一応客観的に決定することは可能である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
いわゆる「朝日訴訟」は上告審のプログラム規定説が注目されがちですが、設問の本文は、当時の保護基準を「違憲」とした第一審判決文の一節です。「憲法は目標であって具体的基準でない」というプログラム規定説と対立し、25条に裁判規範性を認める、いわゆる具体的権利説(抽象的権利説)であるので結果「批判となるもの」が適切かと思います。原告逝去にて上告審は途中で終審ながら、「人間裁判」と呼ばれる感動的な随話が色々あり、第一審直後に保護費が大幅引上げになるなど、世論が勝ち取った人権は判決から読み取れません。
[自説の根拠]東地裁判昭35・10・19朝日訴訟第一審
「プログラム規定説」では、25条は具体的権利を賦与したものではない、と言っている。しかし、行政による裁量権の逸脱がある場合など、「特定の国における特定の時点においては一応客観的に決定することは可能」だから、一部保障してるじゃん!ってことでしょうか。
25条は「純然たる」プログラム規定説とは言えない、と表現されることもあるようです。
[自説の根拠]プログラム規定説 – Wikipedia
「健康で文化的な最低限度の生活」の具体的内容を「一般的(=普遍的)」に決定することはできないが、特定の国における特定の時点においては一応「客観的」に決定することは可能なんだから、行政はその時々においてきちんと対応しなさいよ!と行政がプログラム規定説で逃げることを批判している。
14
刑事施設の被収容者の人権について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
刑事施設及びその管理態勢に関する現状を前提とした場合,火災が発生する危険性,火災発生時に被収容者が逃走するおそれ,喫煙中の通謀により罪証隠滅がされるおそれなどを考慮すると,未決拘禁者について喫煙の自由を一般に認めないのはやむを得ない措置というべきである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
昭和40(オ)1425 国家賠償請求 昭和45年09月16日 最高裁判所大法廷
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121850334396.pdf
15
地方自治に関する次のアからウまでの各記述について,aはある見解を要約したものであり,bはそれぞれの見解から導かれる結論である。bがaの結論となるものには○を,結論とならないものには×を選べ。
(参照条文)地方自治法
第223条 普通地方公共団体は,法律の定めるところにより,地方税を賦課徴収することができる。
(参照条文)地方税法
第2条 地方団体は,この法律の定めるところによつて,地方税を賦課徴収することができる。
a.「地方自治の本旨」とは,国の全域が法律で定める地方公共団体の区域に区分され,その各区域における公共事務が,多かれ少なかれ国から独立に,その地方公共団体の事務として,その住民の参与によって処理される体制を意味する。
b.この見解によれば,立法政策の当否は別として,市町村だけを地方公共団体としたり,都道府県を統廃合したりすることが,「地方自治の本旨」に反するわけではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
地方自治の本旨とは、一般に「団体自治」と「住民自治」の2つの要素からなるとされている。
団体自治: 国から独立した地方自治体を認め、その自治体の自らの権限と責任において地域の行政を処理するという原則のこと。
住民自治: 地方における行政を行う場合にその自治体の住民の意思と責任に基づいて行政を行うという原則のこと。
地方公共団体の定義の範囲や、地方公共団体の統廃合自体は、地方自治の本旨の内容の説明からは導かれないものかと。
aの趣旨:「地方自治の本旨」とは、①地方公共団体の区域は「法律」で区分され、②各区域の公共事務は国から独立して住民によって処理されることを意味する。
bの趣旨:市町村だけを地方公共団体としても、都道府県を統廃合しても(「法律」で区分されるのであれば)「地方自治の本旨」に反しない。
本問題では「aしたがってb」が成り立つので○ということになります。
33点
うーん、チョットまずいかも。ここが踏ん張りどころです。
1
次は、外国人の参政権についての最高裁判所の判決文を要約した文章である。
憲法第15条第1項にいう公務員を選定罷免する権利は,[A]に基づき,公務員の終局的任免権が[B]に存することを表明したものにほかならないから,その保障は我が国に在留する外国人に[C]。そして,[A]及びこれに基づく憲法第15条第1項の規定の趣旨にかんがみ,地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることを併せ考えると,憲法第93条第2項は,我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を[D]。
上記の文章中の[B]に入る適切な言葉を選べ。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月07日)
国民
A:国民主権の原理
B:国民
C:及ばない
D:保証したものということはできない
(最高裁平成7年2月28日)
===
マクリーン事件も併せて参照
関連問題
憲法保障には,様々な方法がある。まず,憲法保障のために,憲法自らがその保障を直接の目的とする特別の規定を置く場合がある。日本国憲法第10章(「最高法規」の章)において,(1)もその一例である。また,第9章(「改正」の章)において,(2)も憲法保障を高めている。さらに,我が国の憲法における統治機構の仕組みとして,(3)や(4)も,憲法保障のメカニズムを組み立てる原理となっている。さらに,憲法の目的である人権保障も,憲法保障の観点からは,その重要な要素となる。例えば,(5)は,憲法保障に役立っている。
上記の文章中の(1)に入る適切な言葉を選べ。
2
衆議院の解散は,憲法第69条に規定する内閣不信任決議案が可決され,又は内閣信任決議案が否決された場合のほか,憲法第7条の規定により,解散によって国民の意思を問うべき正当な理由がある場合には,行うことができるとする見解がある。次の説明は、この見解の根拠に関する記述である。
衆議院の解散権は,立法作用でも司法作用でもなく,行政権を有する内閣が行使することができる。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2007年11月02日)
×
内閣の「解散権」を明示した規定はない。
しかし、7条によって内閣に実質的な解散決定権が存するという慣行が今日成立している。
……つまり、「解散権」「慣行」、慣習における問題であって、法律上名言されているわけではない。
「解散権」=×
「解散」=○
よって、×となるのではないか。
[自説の根拠]憲法(岩波新書)
日本国憲法は、三権分立を基本原理として運用されることになっている。しかるに問題文は「衆議院の解散権は,立法作用でも司法作用でもなく,行政権を有する内閣が行使することができる。」で、そもそも行政権が立法権の上に立つようになり、三権分立を否定することとなり憲法の精神に反するので、回答は「☓」とするもの。
7条の見解に対し、根拠の記述が65条説になっている。
見解の根拠に関する記述で無い為「×」
詳細は、chikushiさん、tekigaharaさん、tipe55さんのコメントに書き尽くされています。
3
司法権を担う裁判所は,法律上の争訟について裁判する権限を有する(裁判所法第3条第1項)が,この「法律上の争訟」の意味については,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり,かつ,法律を適用することにより終局的に解決することができる紛争であることと解されている。次の説明は、判例の趣旨に照らし,司法審査の及ばない理由として「法律上の争訟」の要件を欠くことを理由に関する記述である。
裁判所法
弟3条第1項 裁判所は,日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し,その他法律において特に定める権限を有する。
2,3(略)
大学における単位授与行為は,それが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り,純然たる大学内部の問題として大学の自主的,自律的な判断にゆだねられるべきものであって,裁判所の司法審査の対象にはならない。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2007年11月02日)
×
marlboroさんにご理解頂けたようで、ホッとしました。
このあたりの問題は、数年前に勉強した時にはゴチャゴチャしてよく分からなかったんですが、最近ちょっと分かってきたので、たいへん僭越ながら繰り返しコメントさせていただきました。
おそらく、(将来を含め)他の利用者の方たちにも参考になるやりとりだったのでは、と思います。
今後も一緒に勉強頑張りましょう!
ここ数年の本試験・憲法の問題ではこのような深い問題が多い。参考になります…。
この判決は2つのことを述べている。司法審査の対象となるものとしての記述は、「一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のあるもの」と述べられており、一方、司法審査の対象とならないものは「純然たる大学内部の問題として大学の自主的,自律的な判断にゆだねられるべきもの」との内容が述べられている。従って、本件は単純に「法律上の争訟」の要件を欠くことを理由(この場合は後者を指す)のみの記述ではないとの理由で、回答は「☓」となる。
[自説の根拠]富山大学単位不認定事件(最判昭52.3.15)
4
適正手続の保障について、最高裁判所の判例の要約として適切か否か答えよ。
憲法第35条は同法第33条の場合を除外しているから,少なくとも現行犯の場合に関する限り,法律が司法官憲の発した令状によらずにその犯行の現場において捜索押収等をなし得べきことを規定したからといって,憲法第35条違反の問題を生じる余地はない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
判例追記
===
憲法三五条は同法三三条の場合を除外して住居、書類及び所持品につき侵入、捜索及び押収を受けることのない権利を保障している。この法意は同法三三条による不逮捕の保障の存しない場合においては捜索押収等を受けることのない権利も亦保障されないことを明らかにしたものなのである。然るに右三三条は現行犯の場合にあつては同条所定の令状なくして逮捕されてもいわゆる不逮捕の保障には係りなきことを規定しているのであるから、同三五条の保障も亦現行犯の場合には及ばないものといわざるを得ない。それ故少くとも現行犯の場合に関する限り、法律が司法官憲によらずまた司法官憲の発した令状によらずその犯行の現場において捜索、押収等をなし得べきことを規定したからとて、立法政策上の当否の問題に過ぎないのであり、憲法三五条違反の問題を生ずる余地は存しないのである。(最判昭和30年4月7日)
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
---
第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
本肢は「憲35では憲33を除外しているから、刑訴法は合憲」といえるかが論点であり、判例を知らなくても正肢と判断する。
憲35条が令状主義の例外とする「第33条の場合」とは、現行犯逮捕を含む全ての逮捕を指す。その趣旨は、既に逮捕という法益侵害が許されている以上、いわゆるガサ入れによる権利侵害性は小さく、その必要性・緊急性や証拠存在の蓋然性も高いと認めるからであり、「逮捕の現場では令状なくガサ入れできる」と規定する刑訴法(220条1項,3項)は、即ち、憲法の要請によるものといえる。
5
私人間における人権保障に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
憲法は,国家対国民の関係を規律する法であるから,憲法の人権規定は,特段の定めのある場合を除いて私人間においては適用されないとする説は,国家と社会を分離する自由主義的国家論と,人権はすべての法秩序に妥当すべき価値であるとの考え方を理論的背景としていると指摘されている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
人権規定が「特段の定めのある場合を除いて私人間においては適用されないとする説」は、無適用説になります。
「人権はすべての法秩序に妥当すべき価値であるとの考え方」は、無適用説ではなく、むしろ「人権の規定が私人間効力を有する」との考え方に馴染みます。
したがって、誤りとなります。
[自説の根拠]「憲法」芦部信喜(岩波書店)
6
政教分離原則について、最高裁判所の判例に照らして適切か否か答えよ。
憲法の政教分離規定は,国家と宗教との完全な分離を実現することが実際上不可能であることを前提として,国家が宗教的に中立であることを求めるのではなく,国家と宗教とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らして,相当な限度を超えると判断される場合にこれを許さないとする趣旨である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
津地鎮祭事件(最大判昭52.7.13)
政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないものとするものである。
問題文
「・・国家が宗教的に中立であることを求めるのではなく・・」
津地鎮祭事件
「国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが・・」kobabee↑さんの文より引用
の違いなんですね。
憲法20条における政教分離原則については、
津地鎮祭事件〈最大判昭52・7・13〉によれば、「その効果が宗教に対する援助、助長、圧迫、干渉等になるような行為をいう」としており、
単に、国家と宗教とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らして,相当な限度を超えると判断される場合にこれを許さないとする趣旨というわけではない。
津地鎮祭事件〈最大判昭52・7・13〉
7
国政調査権に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
団体の規制に関する法改正の要否に関連して,議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づき証人として出頭したある団体の代表者は,その個人的な信条を明らかにするように尋問された場合でも,証言を拒むことは許されない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
議院の国政調査権(62条)は、国政に関する調査を行い、これに関して証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる権能をいう。国政調査権は刑事司法作用ではない。憲法の認める強制手段以外は、法律をもって認めることはできない。
---
国政調査権の限界:
国政調査権は純粋に私的な事項を除き、国政のほぼ全般に及ぶ。ただし、権力分立と人権尊重の原理による制約がある。
その行使に際して、国民の権利・自由を侵害するような手段・方法であってはならない。
===
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
8
自動車検問に関する次の文章中の( )の部分に後述の文を入れて文章を完成させたときに,その文章の内容が現行法令及び最高裁判所の判例に照らして適切か否か答えよ。
警察官が,交通取締りの一環として,交通違反の多発する地域の適当な場所で,交通違反の予防・検挙のための自動車検問を実施し,その場所を通過する自動車に対し走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく停止を求め,運転者等に対し必要な事項についての質問をすることは,( 。)
(参照条文)警察法
第2条第1項警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮捕,交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
その場合の手段としての強制力の使用が,警察法第2条第1項に定める警察の責務の遂行のために合理的に必要とされる最小限度のものにとどまる限りにおいては,適法である 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。自動車検問が任意で行われている限り適法である
[自説の根拠]最判S56.12.22
交通検問の適法性はよく問われる論点のようで、平成20年の問26を始め、他の士業でも出題されている。
判例(最判昭55・9・22)では、警察法2条1項を形式的根拠としているが、自動車検問が一般的に許されるとしたわけではなく、交通の安全確保と対象者の自由という利益衡量が働いている。
本肢( )の記述問題なら厳しいが(笑)、追記の有力2説に共通する「任意」が重要で、即ち、「検問が物理的強制力を伴わず、任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでないかどうか」が論点になると思われる。
[自説の根拠]警戒検問の適法要件
(1)緩和説
①任意手段 ②警察比例の原則 ③職務質問より軽度の警察手段
(2)厳格説
①任意手段 ②重大な自動車犯罪に限り ③必要性・適切性 ④最小限度の自由の制限
9
国家賠償法第1条について、適切か否か答えよ。
弁護士会は,弁護士法により,弁護士に対する懲戒権の行使をゆだねられている団体であり,その懲戒権の行使は「公権力の行使」に当たるから,国家賠償法第1条にいう「公共団体」に当たると解されている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
【判例が公権力の行使を委ねられるとした者】
・公証人
・弁護士会の懲戒委員会委員
・競馬の着順判定員
===
【公権力の行使の範囲】
広義説(判例):
国の私経済作用、国家賠償法第2条の対象となるものを除いた全ての活動を指す。
学校教育や行政指導等も含まれる。
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
[自説の根拠]国家賠償法第1条
10
ある地方で発生した大地震について,強制加入団体であるX税理士会が,被災した地域の税理士会の業務遂行支援のために寄付を行うこととし,このため復興支援特別負担金を会員から徴収することを決議した。これに対して,X税理士会の会員であるYは,そのような強制的な寄付は,会員の憲法上の権利を侵害し,また,税理士会の権利能力の範囲外の行為であると主張し,決議の無効と特別負担金の支払義務の不存在の確認を求めて訴訟を提起した。この事例に関する次の記述について,最高裁判所の判例に照らして適切か否か答えよ。
憲法第3章に保障された権利が,自然人たる国民にのみ認められた権利であることを考えれば,法人であるX税理士会の人権は,特段の事情がない限り,自然人であるYの思想良心の自由に劣後する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
これは南九州税理士会事件の政治献金とは違って、最高裁は、お金の徴収目的が倫理的人道的見地から実施されたものであるという理由から「本件寄付は同会の目的の範囲内の行為である」としました。
[自説の根拠]最判H14.4.25 群馬司法書士会震災復興支援金事件
テスト用には、政治献金はダメと理解する。
そして司法書士会の制度維持のための拠出金(阪神大震災向け)による寄付はよいと理解しておけば混乱しないかもしれません。
最大判昭和45年6月24日
「憲法法第3章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、国内の法人にも適用されるものと解すべきである。」
→判例は、憲法第3章に保障された権利は、法人についても、自然人と同様に認められるとしているので、本問で『自然人たる国民にのみ認められた権利』、『自然人であるYの思想良心の自由に劣後する』としている点が、×です。
※「法人の人権」の規定については、この八幡製鉄事件がリーディングケースになっており、本問は、ここを聞いていると思います。
[自説の根拠]最大判昭和45年6月24日八幡製鉄事件
11
司法権について、適切か否か答えよ。
東京高等裁判所の特別の支部として,平成17年4月,特許権等の知的財産関係事件を取り扱う知的財産高等裁判所が設置された。この知的財産高等裁判所が,東京高等裁判所の支部として位置付けられたのは,仮にこれを既存の高等裁判所とは別の9番目の高等裁判所とした場合,特許権等の知的財産関係事件に関する特別裁判所を設けることになって憲法違反の疑いが強いと考えられたためである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
裁判所法
第二十二条 最高裁判所は、高等裁判所の事務の一部を取り扱わせるため、その高等裁判所の管轄区域内に、高等裁判所の支部を設けることができる。
知的財産高等裁判所設置法
第二条 東京高等裁判所の管轄に属する事件のうち、次に掲げる知的財産に関する事件を取り扱わせるため
、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第二十二条第一項の規定にかかわらず、特別の支部として、
東京高等裁判所に知的財産高等裁判所を設ける。
行政事件訴訟法 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%8C%E6%94%BF%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E6%B3%95
より引用。
—
日本国憲法の下では、日本国憲法第76条によって、最高裁判所の下に属しない行政裁判所は廃止されることとなった。但し、この措置は、最高裁判所を終審としていない裁判所を廃止したにすぎないことに注意すべきである。
—
また、日本国憲法第76条 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95%E7%AC%AC76%E6%9D%A1
より引用。
—
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
…
特別裁判所(第2項)
軍法会議、皇室裁判所、行政裁判所、憲法裁判所などの通常の裁判所体系における上訴体系に服さない裁判所を言うものと解されている。例えば、知的財産に関する知的財産高等裁判所を設置することや、各種行政機関が一次的な審査機関として裁判類似の審判手続等を司る機関を設けることは妨げられない。
—
つまり、知財高裁は、最高裁に上告できるものである限り、通常の高裁の支部であろうが、通常の高裁から独立しているものであろうが、憲法76条2項には反しないことになります。
特別裁判所とは、特定の地域、身分、事件等に関して通常の裁判所の系列から独立した権限を持つ裁判所をいう。とすれば、特定の種類の事件だけを扱う裁判所であっても、それが最高裁判所の系列化の裁判所に属するならば、特別裁判所にはあたらない。
ただし、
1つだけ、憲法64条(弾劾裁判所)に注意が必要。特別裁判所の性質を持ちながら憲法自身が認めた例外である。
12
天皇の地位又は権能に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
天皇の「象徴としての行為」を認める立場からは,天皇が全国植樹祭に出席すること及び魚類学の研究成果を公表することは,いずれも「象徴としての行為」に該当することとなるので,内閣の助言と承認により行われなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
天皇の「象徴としての行為」を認める立場とは
天皇の行為には、国事行為、公的行為=象徴としての行為、私的行為がある。
「全国植樹祭に出席すること及び魚類学の研究成果を公表すること」は憲法6条・7条所定の国事行為にはあたらず、『象徴』としての行為であるので、内閣の助言と承認は必要ない。
ちなみに、公的行為を認めない《二行為説》というのもあり、その説では上記のような行為は7条10号の「儀式を行う」を拡大解釈するそうです。
通説・政府見解は《象徴行為説》。
↑私のコメントですが、理解が浅いものでした。
訂正します。
「全国植樹祭に出席すること」は公的行為となり、
国事行為に準じて内閣のコントロールが必要と解されますが、
「魚類学の研究成果を公表すること」は私的行為であり、
内閣の助言と承認は必要ありません。
申し訳ありませんでした。
13
内閣の法律案提出権については,内閣法第5条においてこれを認める規定があるものの,これを合憲とする立場と違憲とする立場とがある。以下の記述について,それぞれ合憲とする立場の論拠となる場合には○を,論拠とならない場合には×を選べ。
法律制定は,本来内閣の権限に属するものではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
問題分に注意すれば解けますね。
まず「法律制定は,本来内閣の権限に属するものではない。」と言った意見は「内閣の権限ではない=違憲とする立場の論拠」と捉えられます。
そして「それぞれ合憲とする立場の論拠となる場合には○を,論拠とならない場合には×を選べ」とあり、合憲とする立場の論拠ではないので×となります。
14
司法権の範囲ないし限界について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
衆議院の解散に対する有効無効の判断は,たとえ法律上可能であっても裁判所の審査権の外にあり,主権者たる国民に対して政治的責任を負う政府,国会等の政治部門に任され,最終的には国民の政治判断に委ねられている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
判例は、衆議院の解散のような「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである」としています。
[自説の根拠]最判昭和35年06月08日(苫米地事件)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121634224677.pdf
15
財産権について,判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
(参考)
憲法
第29条 財産権は,これを侵してはならない。
2 財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。
3 私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。
憲法第29条第3項の「補償」を要する場合とは,特定の人に対し,特別に財産上の犠牲を強いる場合をいい,公共の福祉のためにする一般的な制限である場合には,原則的には,「補償」を要しない。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2013年03月17日)
○
個人が田畑として使っている場所を収用して、
ため池の周りに防波堤を築いた件だったと思います。
この場合に、公共的福祉のためであるから、
憲法29条による補償も必要がないとした
補償…国の合法的な行為に対しての損害補償
賠償・・・国の違法行為な行為に対しての損害補償
[自説の根拠]ため池
●最判昭和38年6月26日
本条例は、災害を防止し公共の福祉を保持するためのものであり、(中略)そのような制約は、ため池の堤とうを使用し得る財産権を有する者が当然受忍しなければならない責務というべきものであつて、憲法29条3項の損失補償はこれを必要としないと解するのが相当である。
→公用収用等、特定の個人に特別の犠牲を強いる場合には「正当な補償」が必要とされていますが、公共の福祉のための一般的な制限に関しては、当然に受忍しなければならず、従って、損失補償も原則的には不要とされています。
[自説の根拠]奈良ため池条例事件
うーん、チョットまずいかも。ここが踏ん張りどころです。
お見事!! 本日200問達成記念。三重県・伊勢神宮(御正宮)の写真で一休み♪
47都道府県の美しい日本の風景を、100問回答毎に表示しています。123種類で1周期です。
宜しければ、ちょっと息抜きコメントでも・・・。現在、学習している方全員にメッセージが送られます。
1
次の文章は最高裁判所の判決の一部である。
行政処分が当然無効であるというためには,処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならず,ここに重大かつ明白な瑕疵というのは,「処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大明白な瑕疵がある場合」を指すものと解すべきことは,当裁判所の判例である(中略)。右判例の趣旨からすれば,瑕疵が明白であるというのは,【ア】場合を指すものと解すべきである。もとより,【イ】どうかということ自体は,原審の口頭弁論終結時までに現れた証拠資料により判断すべきものであるが,所論のように,【ウ】どうかを口頭弁論終結時までに現れた証拠及びこれにより認められる事実を基礎として判断すべきものであるということはできない。
上記の文章中の【ウ】に入る適切な言葉を選べ。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月07日)
重大かつ明白な瑕疵があるか
【ア】処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である
【イ】処分成立の初めから重大かつ明白な暇疵があつたか
【ウ】重大かつ明白な瑕疵があるか
問題文の後に下記の文が続きます(外観上一見明白説)。
~~~
また、瑕疵が明白であるかどうかは、処分の外形上、客観的に、誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきものであつて、行政庁が怠慢により調査すべき資料を見落したかどうかは、処分に外形上客観的に明白な瑕疵があるかどうかの判定に直接関係を有するものではなく、行政庁がその怠慢により調査すべき資料を見落したかどうかにかかわらず、外形上、客観的に誤認が明白であると認められる場合には、明白な瑕疵があるというを妨げない。
[自説の根拠]国税賦課処分無効請求 昭和36年3月7日
「もとより、処分成立の初めから重大かつ明白な暇疵があつたかどうかということ自体は,原審の口頭弁論終結時までに現れた証拠資料により判断すべきものであるが、所論のように、重大かつ明白な瑕疵があるかどうかを口頭弁論終結時までに現れた証拠及びこれにより認められる事実を基礎として判断すべきものであるということはできない。」
~~~
この文章の意味するところは、「重大かつ明白な瑕疵」は、証拠や事実を基に判断するまでもなく当然に明らかであるということか?
昭和36年3月7日判決文より
瑕疵が明白であるかどうかは、処分の外形上、客観的に、誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきもの
だから
それは口頭弁論において認められた証拠を「直接」的根拠に判断するのが妥当
よって、証拠より「間接」的に推認しうる事情までをその判断の基礎とはできない
というスジの判示と読めますね
追記:この瑕疵の明白性については下級審ですが、専門的な知見や経験をまたず一般人の目に一見して明白であることである旨の判示もあります
[自説の根拠]massie さん の挙げてくださっている判例を調べてみますと
瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すので、証拠資料により判断すべき。
つまり、外形上、客観的に明白でない場合、証拠及びこれにより認められる事実を基礎として瑕疵の有無を判断するものではない。
ですかね?
もっと簡単に、
無効である為には、当然処分成立の当初から瑕疵が明白であり、それを証拠資料で判断する。明白な瑕疵かどうかを証拠資料で判断し、無効となる訳ではない。
すいません、どなたか解説をお願い致します。
massieさんのおっしゃる、「この文章の意味するところは、「重大かつ明白な瑕疵」は、証拠や事実を基に判断するまでもなく当然に明らかであるということか?」
→そうだと思います。
瑕疵の有無は最初から外形的に決まっているので、事実を証拠で判断する。
証拠をもって瑕疵の有無を判断するわけではない、という事になります。
関連問題
憲法保障には,様々な方法がある。まず,憲法保障のために,憲法自らがその保障を直接の目的とする特別の規定を置く場合がある。日本国憲法第10章(「最高法規」の章)において,(1)もその一例である。また,第9章(「改正」の章)において,(2)も憲法保障を高めている。さらに,我が国の憲法における統治機構の仕組みとして,(3)や(4)も,憲法保障のメカニズムを組み立てる原理となっている。さらに,憲法の目的である人権保障も,憲法保障の観点からは,その重要な要素となる。例えば,(5)は,憲法保障に役立っている。
上記の文章中の(2)に入る適切な言葉を選べ。
2
天皇の権能について、適切か否か答えよ。
天皇による国会開会式の「おことば」を「儀式」に含めて理解する見解に立てば,その行為については内閣による助言と承認は要求されない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
憲法第3条 天皇の国事に関するすべての行為は、内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う。
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、次の国事に関する行為を行う。
1~9は省略、10儀式を行うこと。
従って、「おことば」を「儀式」に含めると、内閣の助言と承認が必要となります。
3
憲法第17条及び国家賠償法に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
憲法第17条は,「国家無答責の原則」を否定する趣旨の規定であるが,国民に生じたあらゆる損害を国が賠償することまで定めたものではない。例えば,最高裁判所は,内閣等が物価安定という政策目標達成への対応を誤り原告らの郵便貯金を目減りさせたとしても,政府の政治的責任が問われるのは格別,法律上の義務違反ないし違法行為として国家賠償法上の損害賠償責任の問題は生じない旨判示した。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
国家無答責の原理について、以下Wikipediaより引用
国家無答責の法理(こっかむとうせきのほうり)とは、国家無答責の原理ともいわれ、大日本帝国憲法のもとで、官吏は天皇に対してのみ責任を負い、公権力の行使に当たる行為によって市民に損害を加えても国家は損害賠償責任を負わないとする法理をいう。
[自説の根拠]自説の根拠は、Wikipedia
各目標を調和的に実現するために政府においてその時々における内外の情勢のもとで具体的にいかなる措置をとるべきかは、事の性質上専ら政府の裁量的な政策判断に委ねられている事柄とみるべきものであつて、仮に政府においてその判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため右目標を達成することができず、又はこれに反する結果を招いたとしても、これについて政府の政治的責任が問われることがあるのは格別、法律上の義務違反ないし違法行為として国家賠償法上の損害賠償責任の問題を生ずるものとすることはできない。
[自説の根拠]昭和54(オ)579 庶民貯金減価損害賠償 昭和57年07月15日 最高裁小法廷http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319132507792724.pdf
憲法 第17条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
—
本問では、この条文により国家無答責の原則を否定されているが、無制限に全てにおいて適用されるか?と聞かれています。
上記の方々のコメントのように無制限には適用されませんので回答は×となります。
4
司法に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
憲法第77条第1項は,最高裁判所が「弁護士に関する事項」についても規則で定める権限を有すると規定しているが,これによると,弁護士の資格・職務・身分を,法律ではなく,最高裁判所規則で定めることも許される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
弁護士の身分や資格に関する事項は法律で決められるべき事なので訴訟に関する規則に含まれないとされています。
弁護士の資格・職務・身分を規定するのは、憲法22条の職業選択の自由の保障との関係から法律によるべきであると理解されているため、77条1項の規則では定めることはできないと解されています。
[自説の根拠]「成川式マトリックス六法・憲法」PHP研究所
憲法 第77条
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
—
条文中にある内部規律に資格・職務・身分まで含まれるかという問題ですね。
これらは弁護士法第一章、第二章等で規定されています。
その為、最高裁判所の規則で規定できると考えるのは無理がありますね
よって回答は×となります。
[自説の根拠]弁護士法 第一章 弁護士の使命及び職務、第二章 弁護士の資格
5
司法に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
最高裁判所の裁判官は,憲法第79条第2項に定める国民審査の結果によって罷免される場合があるほか,憲法第78条に定める「公の弾劾」により罷免される場合があるが,それ以外の方法で罷免することは許されない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
この他、裁判官は裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合もある。
裁判官分限法
第一条 (免官) 裁判官は、回復の困難な心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合及び本人が免官を願い出た場合には、日本国憲法 の定めるところによりその官の任命を行う権限を有するものにおいてこれを免ずることができる。
[自説の根拠]裁判官分限法
憲法78条
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。
[自説の根拠]憲法78条前段
裁判官が罷免されるとき 3つ
1.国民審査
2.公の弾劾
3.心身の故障
6
障害福祉年金の受給資格について国籍要件を課すことは,憲法第14条第1項,第25条に違反しないとした最高裁判所の判決(最高裁判所平成元年3月2日第一小法廷判決,判例時報1363号68頁)について、適切か否か答えよ。
この判決は,社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかは,立法府の広い裁量に委ねられており,国は特別の条約の存しない限り,その政治的判断によりこれを決定できるという考え方を前提としている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
判旨:
社会保障施策においては、外国人をどのように扱うかは、特別な条約等が存在すれば格別、国の政治的判断によって決定するのが原則であり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うにつき、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。(塩見訴訟:最高裁平成元年3月2日)
===
第14条
1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
↑恐れながら…。
以下のような意味で無い事は承知しているつもりですが、
「条約等」としますと、条約以外が含まれる可能性もあり、本問「特別の『条約』の存しない限り」に対し、「×」の可能性もあるかと…。
主文にも「特別の条約の存しない限り」とあり、それ以外も見当たらない事から、少なくともこの判決については、「等」は無しで記憶すべきかと思います。
細かいとは思いますが、「限り」「余地はない」「当然に」等々のワードがある場合、厳格に問われるケースが多いようですので、コメントさせて頂きました。
7
天皇の国事行為に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
天皇は国会を召集するが,内閣の助言と承認が国事行為の実質的決定権を含むという立場からすると,憲法第7条の規定により内閣が召集に関する決定権を有することになる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
天皇は形式的、ということなんでしょうか?
内閣の助言と承認が、国事行為の「実質的決定権」を含むかについては、肯定説と否定説がありますが、肯定説では、国事行為は、実質的意味を持つ行為であるが、天皇の決定権が憲法3条で否定されているため、内閣が、その助言と承認により実質的決定権を持つことを要求されていると考えます。
従って、憲法7条に列挙された国事行為は、実質、内閣に決定権があると考えるため、7条2号を根拠に、「国会の召集」は内閣に決定権があるとしています。
[自説の根拠]「皇室のきょうかしょ」サイト等
8
司法権について、適切か否か答えよ。
憲法第81条は「最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定しているが,最高裁判所の判例によれば,仮にこの規定がないとすると,最高裁判所に違憲立法審査権を認める余地はない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。 (日本国憲法 81条)
憲法76条1項
「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」
最大判昭25.2.1において、下級裁判所も司法権を行使するのだから、終審裁判所としてでなければ違憲審査権を行使できると判示しており、仮に81条の条文がないとしても、76条1項において最高裁判所に司法権があることを明示しているのだから違憲審査権は認められると考えます。
[自説の根拠]自説の根拠は、76条1項、上記判例
9
地方自治について、適切か否か答えよ。
憲法第93条第2項は地方公共団体の長,議会の議員を住民が直接選挙することを定めているにとどまり,地方自治法に定める議会の解散請求や議員,長の解職請求の制度それ自体は憲法上の要請ということはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
○
地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。 (日本国憲法 93条2項)
憲法は、住民自治の原則を具体化するため、93条2項で、地方公共団体の長、議会の議員を住民が直接選挙することを定めています。
しかし、直接請求、監査請求、議会の解散請求、議員・長の解職請求は地方自治法で別に定められた制度です。
[自説の根拠]芦部信喜「憲法 第五版(岩波書店)」、P357
15条「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」はリコール制度を要請しているわけではないのでしょうか?
問題文は(文脈上はともかく)93条に限らず憲法のどの条文の要請でもない、という意味になると思うのですが。
[自説の根拠]憲法15条1項
zasikinekoさんの疑問は、私も同様に思いましたが、これに関しては東京地裁判H14.6.14が参考になります。
●判旨
「憲法15条の趣旨は、公務員の終局的任免権が国民にあるという国民主権の原理を説明したものであって、必ずしもすべての公務員を国民が直接任免できるという意味ではなく、憲法が国民が公務員を直接的に選定すべき場合(93条2項等)や罷免の権利の認められる場合を別とすると、公務員について、国民の選定罷免権をいかに具体化するかは、法律により定められるべき事柄である。」
[自説の根拠]東京地裁判平成14年6月14日(公文書非開示決定取消請求事件)
関連問題
地方自治について、適切か否か答えよ。
憲法第93条第2項は,地方公共団体の長及び議会の議員のほか,「法律の定めるその他の吏員」についても地方公共団体の住民が直接これを選挙すると定めているから,選挙管理委員会の委員を公選とすべきことも同項に基づく憲法上の要請である。
10
人身の自由について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
憲法第39条前段は,何人も,実行の時に適法であった行為については刑事上の責任を問われない旨を規定しているが,行為の時に最高裁判所の判例が示していた法解釈に従えば無罪となるべき行為を処罰することは,同規定に違反するものではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
「行為当時の最高裁判所の判例の示す法解釈に従えば無罪となるべき行為を処罰しても本条に違反しない。」
(最判平8・11・18 刑集50・10・745)
判例は、日本法の判例は法令ではないため「判例変更による解釈の変更は、法の不遡及の問題でない」との立場。しかし、判例を信じて行動した結果、理論上「違法性の意識の可能性の欠如により故意が阻却されうる」問題や「期待可能性の欠如により責任阻却となりうる問題」など議論がある。
[自説の根拠]岩教組同盟罷業事件判決(最判小平8.11.18)に関する諸論文他
11
次の記述について、表現の自由の価値に関する文章である。aはある見解を要約したものであり,bはそれぞれの見解に対する批判である。bがaに対する批判となり得る場合には○を,批判となり得ない場合には×を選びなさい。
a.表現の自由が有する自己実現あるいは自己充足の価値を重視し,表現の自由の目的は個人の自律の保護にあり,表現の自由は思想・情報の送り手を保護する楯であると解する見解がある。b.しかし,自己実現あるいは自己充足の価値を重視するこの見解によれば,商業広告のような営利的言論は,個人の自己充足とは無関係であるとして,憲法が保障する表現の自由に含まれないことになる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
模式的にまとめると、
表現の自由を支える価値
①個人的な価値→自己実現→人格形成
②社会的な価値→自己統治→民主政
であるので、本設問a.のいう自己充足等というのは個人の人格権に基づき、重要視されるところの「知る権利」を含むと解すのは自然な読み方で、
そうすると、b.にいう「商業広告のような営利的言論」は、国民一般が「消費者」として様々な情報を受け取ることの自由としてa.のいう①の価値としての表現の自由に含まれています。
よって、批判にならないので、×バツ。
[自説の根拠]芦部『憲法』岩波、P.162~
商業広告のような営利的言論も憲法が保障する表現の自由に含まれてっから、特にaに対する批判にはならんのとちゃう?
上の文、「自分メモ」で書いたつもりが投稿になってしまいました。削除お願いします!
12
自動車検問に関する次の文章中の( )の部分に後述の文を入れて文章を完成させたときに,その文章の内容が現行法令及び最高裁判所の判例に照らして適切か否か答えよ。
警察官が,交通取締りの一環として,交通違反の多発する地域の適当な場所で,交通違反の予防・検挙のための自動車検問を実施し,その場所を通過する自動車に対し走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく停止を求め,運転者等に対し必要な事項についての質問をすることは,( 。)
(参照条文)警察法
第2条第1項警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮捕,交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
それを強制力を伴って実施しようとすると,警察法第2条第1項だけではその根拠として十分ではないが,警察官職務執行法による犯罪の予防・制止の措置として適法とされる余地がある 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
警察官職務執行法 第5条
警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。
つまり、犯罪がまさに行われようとしているのを認めたときでないと制止することができないので、走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく停止を求める自動車検問は警察官職務執行法においても適法とされる余地はない。
[自説の根拠]自説の根拠は、警察官職務執行法 第5条
質問があります
飲酒検問は警察官職務執行法 第5条 にあたらないのでしょうか?
警職法5条は、「警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたとき(中略)その行為を制止することができる」としています。
飲酒検問は、飲酒運転を認めていない段階で制止します。したがって、警職法5条を根拠に制止することはできません。
これに対して、飲酒していることが判明した後に、なお運転しようとするのを警察官が認識したならば、飲酒運転という「犯罪がまさに行われようとするのを認めた」に当たるため、運転を制止することができます。
質問なのですが、警職法による職務質問として許されるとする学説があったように思うのですが、判例ではないので間違っているということで良いのですか。
michiru さんへ
警職法2条1項の「職務質問」とは、警察官が合理的に判断して挙動不審な者に対して質問をすることができる、というもの。
しかし、交通検問は不審かどうかを判別することなく、一律に自動車を停止させ質問がされるため、
・職務質問ではなく法的根拠の無い任意調査とする説
・警職法2条1項に法的根拠を求めることができるとする説
がありますが、
いずれの立場に立っても、「強制力を伴って実施しようとすると、適法とされる余地はない。」
と思いますよ。
このような検問でも「任意性」のものであることが前提です
最決S55.9.22参照
*
判旨二 警察官が、交通取締の一環として、交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のため、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法である。
[自説の根拠]なお、上記判決は、根拠法令には、警察法第二条1項をあげています
●飲酒運転一斉検問事件①交通の安全・交通秩序の維持など警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべき。②国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無制限に許されるべきものでない。③自動車の運転者は、当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべき。④自動車検問を実施し、相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解す。
[自説の根拠]飲酒運転一斉検問事件
13
近代憲法における統治機構の基本原理の一つである権力分立は,現代国家においてその形態が大きく変容している。その現代的変容について、適切か否か答えよ。
議会の多数党が政府を形成する議院内閣制の下では,とりわけ,伝統的な議会と政府の対抗関係は機能不全に陥りがちである。政治部門における権力分立は,むしろ,政府・与党と野党の対抗関係へと機能的に変化する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
芦部教授の挙げる
権力分立制の現代的変容3つ
①「行政国家」の現象
②「政党国家」の現象
③「司法国家」の現象
このうち、②に関する記述、そのまんまですね。
本肢は。
[自説の根拠]芦部『憲法』P263
内閣は与党で占められてしまいますからね、
議会でも同じ与党ということですんなり通ってしまいます
14
財産権の制限に関する(1)及び(2)の最高裁判所の判決について,適切か否か答えよ。
(1) 共有森林分割制限を定める森林法の規定を違憲であると判断した判決(最高裁判所昭和62年4月22日大法廷判決,民集41巻3号408頁)
(2) 上場会社等の役員又は主要株主による当該会社の株式等に係る短期売買利益返還義務を定める証券取引法(現行金融商品取引法)の規定を合憲であると判断した判決(最高裁判所平成14年2月13日大法廷判決,民集56巻2号331頁)
(1)及び(2)の判決は,いずれも,財産権に規制を加える立法について規制目的の正当性は認めている。その上で,規制手段の必要性及び合理性に関して,(1)の判決はこれが認められないと判断したのに対し,(2)の判決はこれが認められると判断したものである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
(2)法164条1項は証券取引市場の公平性,公正性を維持するとともにこれに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるものであるところ,その規制目的は正当であり,規制手段が必要性又は合理性に欠けることが明らかであるとはいえないのであるから,同項は,公共の福祉に適合する制限を定めたものであって,憲法29条に違反するものではない。
[自説の根拠]平成12(オ)1965 短期売買利益返還請求事件 平成14年02月13日 最高裁判所大法廷
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120650476715.pdf
両判決ともに、財産権に規制を加える立法について規制目的の正当性は認めているのですか?
判決文には載ってませんが?
S62.4.22
「(略)~同法一八六条の立法目的は、以上のように解される限り、公共の福祉に合致しないことが明らかであるとはいえない」
H14.2.13
massieさんの解説文にそのまま載ってますよ。
15
条例に罰則を設けることについては,(1)法律による授権は不要であるとする見解,(2)法律による授権が必要であるが,一般的な委任も許されるとする見解及び(3)法律による授権が必要であるが,その授権は相当な程度に具体的であり,限定されていれば足りるとする見解がある。次の記述における「この見解」が(1)の見解を指すものとして適切か否か答えよ。
(参考)
憲法
第73条 内閣は,他の一般行政事務の外,左の事務を行ふ。
一~五 (略)
六 この憲法及び法律の規定を実施するために,政令を制定すること。但し,政令には,特にその法律の委任がある場合を除いては,罰則を設けることができない。
七 (略)
地方自治法
弟14条 (略)
2 (略)
3 普通地方公共団体は,法令に特別の定めがあるものを除くほか,その条例中に,条例に違反した者に対し,二年以下の懲役若しくは禁錮,百万円以下の罰金,拘留,科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
この見解によれば,地方自治法弟14条第3項の規定は,地方公共団体の権限を確認し,条例によって制定することができる罰則の範囲を限定するものということになる。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2013年03月17日)
○
問題文にある「その条例中に,条例に違反した者に対し,二年以下の懲役若しくは禁錮,百万円以下の罰金,拘留,科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」との規定は、地方自治法に明確に規定されている内容であり、この範囲内のものを制定する場合には、本条文で制定可能となる。したがって、別途「(1)法律による授権は不要であるとする見解」で正しいものとなる。
「本条文で制定可能となる」というのであれば、(1)の見解には当てはまりません。
*
(1)は、憲法94条は罰則の制定権を当然に含むものだから法律による授権は“不要”であるとする説(憲法直接授権説)です。
この見解によれば、地方自治法等の規定によらずとも、条例による罰則の制定は可能です。
したがって、地方自治法14条3項の規定に関しては、単に地方公共団体の権限の確認であり、罰則の範囲を限定するものにすぎないという理解となるので、(1)の見解として正しいということです。
「権限を確認」しているので、法律による授権は不要です。
基ネタ:条例に罰則を設けることについては法律による授権は不要であるとする見解によれば、地方自治法第14条第3項の規定は、地方公共団体の権限を確認し、条例によって制定することができる罰則の範囲を限定するものということになる。
解説:罰則を設けるに当たり、法律による授権は不要と考えると、「条例に違反した者に2万円以下の過料等を課してもよい。」という地方公共団体の権限を確認し、制定することができる罰則の範囲を限定するにすぎない。
[自説の根拠]司法書士試験の問題解説より引用
7点
さすがに、これはマズイかも。更に練習を。
1
次の文章は,「法の支配」に関するものである。
「法の支配」の原理は,中世における「古き良き法」の優位の思想から生まれ,英米法の根幹として発展してきた。古典的には,「法の支配」とは専断的な国家権力の支配,すなわち,「【A】支配」を排斥し,権力を法で拘束することによって,国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理である。「法の支配」の原理にいう「法」の観念が問題となる。それは,議会が一定の手続に従って制定したという形式的要件だけではなく,その内容が「理にかなっている」ものでなければならないという実質的要件を含む観念である。法の支配という場合の「法」とは,【B】の思想と固く結びついているのであり,権威主義的な法概念ではなく,民主主義的な法概念である。日本国憲法も,「法の支配」の原理に立脚しているといえる。それは,憲法の最高法規性の明確化,【C】人権の保障,適正手続の保障,【D】に見られるような司法権の拡大強化,そして裁判所の違憲審査権の確立からみて明らかである。
上記の文章中の【D】に入る適切な言葉を選べ。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月07日)
憲法第76条第2項前段の特別裁判所の設置の禁止
A:人の
B:基本的人権
C:憲法第11条及び第97条に規定されているように、理念として「不可侵」である
D:憲法第76条第2項前段の特別裁判所の設置の禁止
行政機関は終審として裁判を行うことができないのであって、全面的禁止は誤りである。
[自説の根拠]自説の根拠は、憲法76条
<特別裁判所>
「最高裁判所」を頂点とした司法ピラミッドに属しない裁判所。かつて軍法会議、行政裁判所や皇室裁判所が存在したが、これらを禁止して司法権の拡大強化が図られた。
関連問題
憲法保障には,様々な方法がある。まず,憲法保障のために,憲法自らがその保障を直接の目的とする特別の規定を置く場合がある。日本国憲法第10章(「最高法規」の章)において,(1)もその一例である。また,第9章(「改正」の章)において,(2)も憲法保障を高めている。さらに,我が国の憲法における統治機構の仕組みとして,(3)や(4)も,憲法保障のメカニズムを組み立てる原理となっている。さらに,憲法の目的である人権保障も,憲法保障の観点からは,その重要な要素となる。例えば,(5)は,憲法保障に役立っている。
上記の文章中の(1)に入る適切な言葉を選べ。
2
次の文章は,選挙権行使の保障に関する最高裁判所の二つの判決に関するものである。
選挙権行使の保障に関し問題となるものとして,在宅投票制度や在外選挙制度がある。最高裁判所は,在宅投票制度を廃止し,その後復活しないことの違憲性が争われた訴訟において,立法不作為を含む立法内容の違憲性と国家賠償法第1条第1項との関係について【A】旨述べた上,同項の適用上どのような場合に国会議員の立法活動が違法の評価を受けるかについて【B】旨判示した。最高裁判所は,その後,在外選挙制度の違憲性が争われた訴訟において,まず,在外選挙制度の憲法適合性について【C】旨判断し,さらに,国会議員の立法活動が国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受けるかについて,【A】旨述べた上で【D】旨判示した。
上記の文章中の【A】に入る適切な言葉を選べ。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月07日)
国家賠償法第1条第1項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であり,当該立法内容の違憲性の問題とは区別される
「立法の内容」や「立法の不作為」について国を訴えた2つの有名な訴訟が本問の題材となっています。(そもそも、法律確立以前の“立法”過程について裁判所の違憲審査が及ぶかが重大な問題です)
●在宅投票制度廃止事件(最判昭和60年11月21日)
→本問解答の理由により、立法の不作為について、原則国賠法1条1項の適用を否定。
●在外邦人選挙権制限違憲訴訟(最判平成17年9月14日)
→違憲判決。やむを得ない事由なく、立法措置を怠ったとして例外的に国賠請求を認めた。
[自説の根拠]最判昭和60年11月21日、最判平成17年9月14日
ご参考までに、関連判例を掲載します。
●選挙権行使の機会と立法不作為(最判平成18年7月13日)
→精神的原因による投票困難者の選挙権行使に関する立法不作為について、国賠法1条1項の適用上、違法の評価を受けない。
同じ体裁にさせて頂きました。
[自説の根拠]デル判
最判平18.7.13
関連問題
憲法保障には,様々な方法がある。まず,憲法保障のために,憲法自らがその保障を直接の目的とする特別の規定を置く場合がある。日本国憲法第10章(「最高法規」の章)において,(1)もその一例である。また,第9章(「改正」の章)において,(2)も憲法保障を高めている。さらに,我が国の憲法における統治機構の仕組みとして,(3)や(4)も,憲法保障のメカニズムを組み立てる原理となっている。さらに,憲法の目的である人権保障も,憲法保障の観点からは,その重要な要素となる。例えば,(5)は,憲法保障に役立っている。
上記の文章中の(3)に入る適切な言葉を選べ。
3
次の説明は、憲法第13条に関する記述である。判例の趣旨に照らして答えよ。
何人も,公共の福祉に反しない限り,喫煙の自由を有しているから,未決勾留により拘禁された者に対し,喫煙を禁止することは,憲法第13条の趣旨に反し,許されない。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2007年11月02日)
×
喫煙の自由が基本的人権に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。
[自説の根拠]最大判昭45.9.16
●未決拘禁者の喫煙禁止事件①喫煙を許すことにより、罪証隠滅のおそれ、火災発生の場合には被拘禁者の逃走が予想される。②煙草は生活必需品とまでは断じがたく、喫煙禁止は、精神的苦痛を感ぜしめるとしても、それが人体に直接障害を与えるものではない。③喫煙の自由は、基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。⑤喫煙禁止という自由の制限は、必要かつ合理的なものであると解するのが相当であり、拘禁された者に対し喫煙を禁止する規定が憲法に違反するものといえない。
[自説の根拠]未決拘禁者の喫煙禁止事件
捕まって牢屋にいる人は、吸いたいときに
煙草が吸えませんね。本数が制限されていたりします。
4
衆議院の解散は,憲法第69条に規定する内閣不信任決議案が可決され,又は内閣信任決議案が否決された場合のほか,憲法第7条の規定により,解散によって国民の意思を問うべき正当な理由がある場合には,行うことができるとする見解がある。次の説明は、この見解の根拠に関する記述である。
衆議院の解散は,総選挙によって国民の意思を問い,それを衆議院に反映させようという制度である。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
○
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
3号 衆議院を解散すること。 (日本国憲法 7条1項3号)
解散の根拠
(1)7条説 ←設問の見解
(2)69条説
(3)制度説
「69条説」によると、衆議院が解散できるのは
衆議院で内閣不信任決議が可決した時のみであると解されます。
しかしこれでは解散により国民の意思を問う機会が限られてしまいます。
“衆議院の解散は、総選挙によって国民の意思を問い、
それを衆議院に反映させようという制度である”のだから、
解散できる機会は多いほうが良い。(国民の意思を問う機会が増えるから。)
という主張が「7条説」および「制度説」からなされます。
関連問題
次の説明は、日本国憲法における国会に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
衆議院が解散されたときは,解散の日から40日以内に,衆議院議員の総選挙を行わなければならない。
5
憲法第9条について、最高裁判所の判例の要約として適切か否か答えよ。
憲法第9条が侵略のための陸海空軍その他の戦力の保持を禁じていることは一見明白であるが,自衛のための軍隊その他の戦力の保持を禁じているか否かに関して憲法第9条第2項は一義的に明確な規定と解することはできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
この要約は、長沼事件の札幌高判S51.8.5のものです。
控訴審であって、”最高裁の判決ではない”ので、この問題の解答としては×です。長沼事件では、最高裁は憲法に触れることなく上告を棄却していますので、判決は存在しません。
ひっかかりました・・・。
http://www.hiraoka.rose.ne.jp/C/k760805sap.htm
↑こちらの判決文の最下部らへんにある、四の冒頭部と五の最後をみてください。
[自説の根拠]札幌高判S51.8.5
いわゆる砂川事件判決では、「同条2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として」という前置きをするなど、直接その点については触れていない。
[自説の根拠]法ゼミNET
こういう問題ってアリですか?
6
内閣は,A国との間で,相手国から引渡請求を受けた犯罪人を相互に引き渡す義務を課す犯罪人引渡条約を締結した。ところが,内閣が事後にその承認を国会に求めたところ,国会は,引渡義務の対象から自国民が除外されていないことを理由に,引渡義務の対象から自国民を除外するとの条項を付して,その犯罪人引渡条約を承認するとの議決をした。
このような事態に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
条約の内容を確定するのは,内閣の職務に属することであるから,国会が行うことができるのは承認か不承認に限られ,国会は犯罪人引渡条約に新たな条項を加えることは認められていない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
国会が条約承認権を行使する際に、修正を肯定する説(有力説)と否定する説があります。
設問の趣旨は、いずれの説からも導けない選択肢を求めており、本問の記述は否定説から導ける帰結なので「○」となります。
[自説の根拠]「憲法」芦部信喜(岩波書店)
憲法には、条約に条文を付け加えて承認することが認められるのか、明文規定がありません。
・新たな条項を加えると、相手国の地位が不安定になる
・内閣の権限を侵し、直接外国と交渉する内閣に条約締結権を与え、迅速かつ柔軟な対応をできるようにした意義が薄れる
なんてことが反対意見としてあげられるようです。
この否定説は、多数意見となっており、明らかに誤っているとはいえず×です。
[自説の根拠]ネットで情報収集
明らかに誤っているとはいえず×です。
↓
明らかに誤っているとはいえず○です。
[自説の根拠]失礼しましたorz
7
次の文章は,いわゆる泉佐野市市民会館事件判決(最高裁判所平成7年3月7日第三小法廷,民集49巻3号687頁)の判示を要約したものである。集会の用に供される公共施設の管理者は,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合には,その利用を拒否することができる。そして,制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは,基本的には,基本的自由としての集会の自由の重要性と,当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。ただし,【(a)この較量をするに当たっては,集会の自由の制約は,基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるから,経済的自由の制約における以上に厳格な基準の下になされなければならない。】それゆえ,本件会館条例が会館の使用を許可してはならない事由として規定している「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは,広義の表現を採っているとはいえ,本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも,本件会館で集会が開かれることによって,人の生命,身体又は財産が侵害され,公共の安全が損なわれる危険を回避し,防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり,その危険性の程度としては,単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず,明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である。【(b)このように限定して解する限り,当該規制は,他の基本的人権に対する侵害を回避し,防止するために必要かつ合理的なものとして,憲法第21条に違反するものではない。】
文章中の【(a)~】に関連する次の見解が、適切か否か答えよ。
精神的自由は民主主義過程の維持保全にとって不可欠な権利であるが,自己実現に役立つわけではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
【(a)】は「二重の基準論」と呼ばれる、表現の自由を制限する場合の概念。
設問中の「自己実現」とは、
【表現の自由とは、個々の言論活動を通じて、自己の人格を形成していくことと、政治的意思決定に関与していくという民主政に不可欠なこと、がある。】(Wikipediaより)
の「個々の言論活動を通じて、自己の人格を形成していくこと」のことで、表現の自由を保障する根拠とされるもの。
「自己実現」が充分に保障されていないので、新しい人権を認めるべき、とする考え方があるようです。
上の方のコメント、恐縮ですが補足させて下さい。
先ず「二重の基準」とは合憲性を判定するにあたり、精神的自由権と経済的自由権に分け、前者ついては厳格審査が適用されるべきという理論です。
自己実現の価値は精神的自由権を論ずるにあたり、重要で、その要素は否定されるべきではないとされています。 従って「自己実現に役立つわけではない」としている本問は×ですね。
8
次の文章は,いわゆる泉佐野市市民会館事件判決(最高裁判所平成7年3月7日第三小法廷,民集49巻3号687頁)の判示を要約したものである。
集会の用に供される公共施設の管理者は,施設をその集会のために利用させることによって,他の基本的人権が侵害され,公共の福祉が損なわれる危険がある場合には,その利用を拒否することができる。そして,制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは,基本的には,基本的自由としての集会の自由の重要性と,当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。ただし,【(a)この較量をするに当たっては,集会の自由の制約は,基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるから,経済的自由の制約における以上に厳格な基準の下になされなければならない。】それゆえ,本件会館条例が会館の使用を許可してはならない事由として規定している「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは,広義の表現を採っているとはいえ,本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも,本件会館で集会が開かれることによって,人の生命,身体又は財産が侵害され,公共の安全が損なわれる危険を回避し,防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり,その危険性の程度としては,単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず,明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である。【(b)このように限定して解する限り,当該規制は,他の基本的人権に対する侵害を回避し,防止するために必要かつ合理的なものとして,憲法第21条に違反するものではない。】
文章中の【(b)~】と同じ法律解釈の方法をとった最高裁判所の判決について、適切か否か答えよ。
「選挙に関し,投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって戸別訪問をすること」を処罰する公職選挙法の規定が憲法第21条に違反しないとした判決。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
(b)の法律解釈は「合憲限定解釈」と呼ばれるものですが、戸別訪問禁止の合憲性判断において、判例は合憲限定解釈を用いていません。
[自説の根拠]最判昭和56年06月15日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120327127059.pdf
合憲限定解釈とは、解釈次第によっては違憲と判断される余地もある法令を、限定的に解釈することによって合憲とし、違憲判断を回避する手法を言う。全逓東京中郵判決や都教組事件判決に用いられた解釈方法である。
[自説の根拠]法律用語辞典(自由国民社版)
戸別訪問の禁止は、意見表明の手段方法のもたらす弊害・・を防止し、もつて選挙の自由と公正を確保することを目的としているところ・・目的は正当であり・・戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間に合理的な関連性がある・・。戸別訪問の禁止によつて失われる利益は・・単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、戸別訪問という手段方法のもたらす弊害を防止することによる選挙の自由と公正の確保であるから、得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きい・・。
[自説の根拠]最判昭和56年6月15日
得られる利益→選挙の公平性 >
失われる利益→被選挙人の選挙における競争優位
公平性の方が、ひとりの被選挙人の
利益より大きそうですね
前者が大きいといわれたので合憲といわれた
9
国政調査権に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
ある刑事事件の係属中に,当該事件で審理されている事実と同一の事実について調査することは,それが立法目的又は行政監督目的で行われるものであっても許されない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
三権分立の観点から、司法権の干渉となるような行使は認められない。だから、国政調査権の行使の目的が個人の有罪性の調査であるような場合は違法である。
つまり、設問のように立法目的又は行政監督目的であればいいということ。
国政調査権の司法への干渉が問題となった事件には「浦和事件」というのがあります。
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/urawajikenn.htm
[浦和事件]
浦和充子が無理心中をはかり子供3人を殺し自分は生き残った。裁判で懲役三年執行猶予五年の温情判決が下った。
参議院法務委員会がこの事件を調査し、量刑が軽すぎて不当だとした。
最高裁は、国政調査権とは立法権などの適法な権限を行使するために必要な資料を収集するための補充的権限であるとして、参議院の権限逸脱を指摘。司法権の独立を侵害し違憲だと述べた。
参議院法務委員会は、国政調査権は、国政の一部門である司法の運営に関し調査批判することもできる独立の権能だと主張した。
[自説の根拠]学説の多くは最高裁を支持し、議院の権能の及ぶ範囲外については国政調査権を認めることはできないという説が通説化したそうです。
「のぶらはむの 憲法学習室」を参照してまとめました。
http://www.nobraham.com/index.php?%E6%B5%A6%E5%92%8C%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%81%A8%E3%81%AF
10
憲法改正の限界については,理論上限界があるという立場(限界説)と限界がないという立場(無限界説)がある。次の記述について,限界説からの記述として適切か否か答えよ。
憲法規範には実定化された自然法規範が含まれており,それは実定化されても自然法規範としての性質を失わない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
●限界説
いかなる憲法にもその基本原理があり、当該憲法の改正手続にもとづく改正としては基本原理を超える改正はできない。
●無限界説
憲法の定める手続によれば、どのような改正でも可能である。
上記に補足しますと、自然法規範というのは明文で具体的に定められている法の基礎、理由となっているものを指すんですね。自然法規範>実際の法、のような力関係。
本問で言われる憲法改正限界説というのは、「もろもろの法の中でも最強の規範的効力を持つ憲法規定の中でも、自然法規範の実定法化と言える部分とそうでないといえる部分では効力に差があって、前者は改正ができないと考える」説を言います。
『いかなる憲法にもその基本原理があり』という問題文の、『基本原理』が自然法規範の実定化部分ですね。
細かく言うと改正限界説も他の論拠を持つものもあるし、自然法規範の重要性を認めつつもそれを逆に憲法改正無限解説の理由に持っていく説も存在します。
その辺は、司法試験でもスルー推奨の難論点です。
[自説の根拠]有斐閣憲法(高橋他所謂四人組他、単価が3000円を超える憲法解説書)
なるほど…。
時と場所を選ばず、誰も異存のないような規範(自然法規範)が、明文化された途端に、憲法改正手続で変更可能になるのはおかしい。
明文化されても自然法は自然法、人為的に変えてはいけない、って話ですね。
11
法解釈の方法の一つとして,文理解釈がある。それは,条文の文言の辞書的意味や条文の文法的構造等に基づいて条文を解釈する方法である。文理解釈は,憲法解釈における一つの方法でもある。次の記述について,文理解釈によって導くことのできる見解である場合には○を,文理解釈によっては導くことのできない見解である場合には×を選びなさい。
行政手続への憲法第31条の適用あるいは準用を否定する見解 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
上記引用条文に補足しますと、明文のみから判断する文理解釈だと、「刑罰」と明文で定める憲法31条を「行政」手続きには適用準用できない、ということです。
んなこと言ったら税務署ウハウハ、ですねw
憲法31条は、手続き面から人権保障を実効あらしめようとした規定である(立法趣旨)。
成田新法事件判決や川崎民商事件判決の論証が参考になります。
bd0e4df92e70さんの判例を調べてみました。
成田新法事件
「憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない」
という部分がポイントですね。
文理解釈しない→行政手続にも準用できる
文理解釈する→行政手続に準用できない
[自説の根拠]最判H4.7.1(成田新法事件)
12
民法第900条第4号ただし書前段をめぐる最高裁判所の決定(最高裁判所平成7年7月5日大法廷決定,民集49巻7号1789頁)について、適切か否か答えよ。
多数意見によれば,法定相続分の嫡出性に基づく別異の取扱いは民法が採る法律婚主義から生じるものであって,不合理な区別ではない。それに対し,反対意見によれば,生まれてきた子供には何の責任もないし,自らの意思や努力によって変えることができない属性に基づく差別である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
非嫡出子の法定相続分が、嫡出子の2分の1である規定について、平成25年9月4日に初めての違憲判決が出ましたね。
これまでは、当設問の判例のように、反対意見が多数出つつも合憲判決が出ていましたが、非嫡出子の出生も増え、国際的にも嫡出子との相続分の差別規定がある国は少ないという背景もあり、以前から違憲説が有力になってきたようですが、今回ついに合憲判断が覆されました。
[自説の根拠]最高裁平成25年9月4日決定
非嫡出子も嫡出子と同じように
相続分が1/2→1になったという
ことですね
民法の改正の概要
1 法定相続分を定めた民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分(900条4号ただし書前半部分)を削除し,嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にしました。
2 改正後の民法900条の規定(以下「新法」といいます。)は,平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとしています。
[自説の根拠]法務省:民法の一部改正HPより
13
国家賠償法第1条について、適切か否か答えよ。
国会議員の立法行為であっても,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというような容易に想定し難いような例外的な場合であれば,国家賠償法上違法とされる場合が有り得る。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
昭和60年11月21日 最高裁判所第一小法廷
一 国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて当該立法を行うというごとき例外的な場合でない限り、国家賠償法一条一項の適用上、違法の評価を受けるものではない。二 在宅投票制度を廃止しこれを復活しなかつた立法行為は、国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たらない。
関連問題
国会議員の立法行為は,憲法の文言に明白に違反しているにもかかわらず立法を行うというような例外的な場合を除き,国家賠償法上は違法の評価を受けない。
14
司法権について、適切か否か答えよ。
「行政機関は終審として裁判を行ふことができない」とされている。したがって,例えば,ある行政機関が認定した事実は,これを立証する実質的な証拠があるときには,裁判所を拘束する,というようなルールを設けたとすれば,それは憲法違反になるというべきであるから,我が国においては,このような制度は採用されていない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
最判(一小)S29.1.21 昭和25(オ)354号事件
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/5F9FD1FF520EDB6D49256A850041AFFB.pdf
より抜粋。
—
この裁決が行政処分であることは言うまでもないが、実質的に見ればその本質は法律上の争訟を裁判するものである。憲法七六条二項後段によれば、「行政機関は、終審として裁判を行うことができない」のであつて、終審としては、裁判所が裁判を行うが、行政機関をして前審として裁判を行わしめることは、何等差支えないのである。本件裁決のごときは、行政機関である上告人が実質的には裁判を行つているのであるが、行政機関がするのであるから行政処分に属するわけである。かかる性質を有する裁決は、他の一般行政処分とは異り、特別の規定がない限り、原判決のいうように裁決庁自らにおいて取消すことはできないと解するを相当とする。
—
この判決は、行政行為のいわゆる「不可変更力」ないし「実質的確定力」を認めた判決と言われており、農地委員会の裁決に「前審として裁判」したのと同じ効力を認めています。
なので、仮に行政事件訴訟法などに設問肢のようなルールを設けたとしても、判例上、少なくとも憲法76条違反とは言えないと考えられます。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例です。
設問は
《実質的証拠の法則》のことですね。
もしこれが、
「行政機関の判断が最終的な判断(終審)となること」
を意味すれば、
憲法76条2項後段に違反することになります。
しかし、現行法においては、
《実質的証拠の法則》が採用される場合でも、
『実質的証拠の有無は、裁判所が判断する』
とされているため(独占禁止法80条2項など)
最終的な判断はなお裁判所に委ねられており、
憲法76条2項後段には違反しないと
解されています。
[自説の根拠](ユ-キャン)より
独占禁止法は、審決取消訴訟につきいわゆる実質的証拠の原則を採用し、審決の認定した事実は、これを立証する実質的証拠があるときは裁判所を拘束する旨を定めている。従って、「我が国においては,このような制度は採用されていない」との問題文においては、この法律と相違することを言っているので、回答は「☓」となる。
[自説の根拠]独占禁止法第80条1項
15
財産権について,判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
(参考)
憲法
第29条 財産権は,これを侵してはならない。
2 財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。
3 私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。
憲法第29条第1項は,私有財産制度を保障しているのみでなく,社会的経済的活動の基礎を成す国民の個々の財産権につき,これを基本的人権として保障した規定である。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2013年03月17日)
○
●最判昭和62年4月22日
憲法二九条は、一項において「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し(中略)、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障するとともに~(以下略)
→上記判例通りなので、○です。
※ちなみに、判旨全体では、『財産権は、基本的人権として保障するとともに、公共の福祉に適合する限り規制を加えることもできる』との趣旨を述べています。
[自説の根拠]森林法事件
20点
さすがに、これはマズイかも。更に練習を。
1
次の説明は、憲法第13条に関する記述である。判例の趣旨に照らして答えよ。
何人も,公共の福祉に反しない限り,自己の意思に反してプライバシーに属する情報を公権力により明らかにされることはないという利益を有しているから,郵便物中の信書以外の物について行われる税関検査は,わいせつ表現物の流入阻止の目的であっても,憲法第13条の趣旨に反し,許されない。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2007年11月02日)
×
最判平7.4.13
上記判例の一部を抜粋。
わいせつ表現物がいかなる目的で輸入されるかはたやすく識別され難いだけではなく、流入したわいせつ表現物を頒布、販売の過程に置くことは容易であるから、わいせつ表現物の流入、伝播により我が国内における健全な性的風俗が害されることを実効的に防止するには、その輸入の目的のいかんにかかわらず(注:個人的鑑賞のための単なる所持を目的としたわいせつ表現物の輸入行為であっても)、その流入を一般的に、いわば水際で阻止することもやむを得ないというべきである。
[自説の根拠]平成4(あ)776 関税法違反 平成7年04月13日 最高裁小法廷
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115933608054.pdf
2
条約が憲法に適合するか否かを最高裁判所又は下級裁判所が審査することができるかという問題について,肯定説と否定説の二つの見解がある。次の説明は、これらの見解に関する記述である。
内閣の条約締結権が憲法によって認められた権能であることは,肯定説の根拠とはならない。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2007年11月02日)
×
内閣の条約締結権が憲法によって認められた権能であるとすると、条約は憲法を根拠とする権能により締結された法規範ということになるから、憲法が条約に優位すると解すべきことになり、また、憲法を根拠に制定された他の法規範と同様に違憲審査の対象となると解すべきことになる。
したがって、内閣の条約締結権が憲法によって認められた権能であることは、肯定説の根拠となり得る。
内閣の職務に条約締結権がある。
73条3 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
98条1項の最高法規である憲法は条約に優位し、条約は国際法であるが、国内では国内法として81条の違憲審査権の対象となる。
違憲審査権の対象は、「一切の法律、命令、規則又は処分」され、条約も含まれる。
条約の違憲審査権の学説
肯定説 条約は81条の国内法の側面から準じて扱うことができる(通説)。
否定説 81条・98条1項は条文の中に条約は含まれず、98条2項の条約の誠実遵守して違憲審査権の対象とならない。
関連
砂川事件(昭和34年12月6日)
[条約は違憲審査の対象となるか否か]
肯定説(判例)の根拠:
1.条約は憲法81条の「一切の法律」に含まれる
2.憲法98条2項は「有効に成立した条約の遵守」を定めており、違憲の条約は含まれない
3.条約は国際法といえども国内においては国内法として法律に準ずる
否定説の根拠:
1.憲法81条の違憲審査の対象に条約は含まれない
2.憲法98条2項には条約の遵守が定められている
3.条約は国家間の合意であり、極めて政治的特殊性が高い
---
上記にあてはめて考えると、本肢は肯定説の1にあたり、肯定説の根拠となる。
===
憲法81条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
憲法98条2項
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
3
内閣が国会に法律案を提出することが憲法上許されるかという問題については,これを肯定する立場と否定する立場とがある。次の説明は、否定する立場の根拠に関する記述である。
憲法上,内閣総理大臣は,内閣を代表して議案を国会に提出することができる。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。 (日本国憲法 6条)
肯定側の意見だとすると
・内閣総理大臣が議案を提出できる
↓
・内閣が法律案を提出してもいいだろ
否定側の意見だとすると
・内閣総理大臣が議案を提出できる
↓
・内閣が法律案を提出するのはおかしい
どちらが話の流れからして適当かというと、肯定側ですよね。
《肯定説》はその根拠の1つに
第72条「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し(以下略)」とあり、その『議案』には法律案も含まれる、という見解です。
《否定説》はその反対意見として
第72条の『議案』とは、本来内閣の権限に属する作用についての議案であって、内閣の権限に属しない法律案は含まれない、とします。
もちろん主流は《肯定説》で、実際に内閣法第5条において内閣の法律案提出権は認められています。
本問では《否定説》の根拠を訊いているので×です。
なんとなく納得できないのですが、「内閣を代表して」というのが「内閣の立場で」ということなのでしょうか?
もとより内閣総理大臣は国会議員ですので、議員の数はともかく 議案提出権を持っているわけで、「だから 内閣としては議案提出権はない」という否定する立場なのかと考えてしまいましたが。
関連問題
次の説明は、日本国憲法における内閣に関する記述である。
法の規定及び判例に照らして適切か否か答えよ。
内閣総理大臣は,内閣を代表して議案を国会に提出する。
4
天皇の権能について、適切か否か答えよ。
天皇は,憲法で列挙された国事に関する行為以外であっても,国政に関する権能を行使することが認められている場合がある。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。 (日本国憲法 4条)
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
[自説の根拠]日本国憲法 第4条1項
5
地方自治体について、適切か否か答えよ。
憲法第93条第1項は,「地方公共団体には,法律の定めるところにより,その議事機関として議会を設置する」と規定している。したがって,地方自治法で,小規模の普通地方公共団体について,条例で,議会を置かず,選挙権を有する者の総会を設けることができる旨を規定することは,憲法に違反する。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
町村は、条例で、第89条の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。
[自説の根拠]地方自治法94条
6
政党について、適切か否か答えよ。
国民と議会を媒介する組織として政党が発達しており,政党が国家意思の形成に事実上主導的な役割を演じる「政党国家」現象が生じている。そのような状況においては,政党の数と構造が政治体制の在り方を左右するといえる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
7
予算及び決算について、適切か否か答えよ。
内閣は,国会及び国民に対し,定期に,少くとも毎年一回,国の財政状況について報告しなければならないが,国会に対しては,毎会計年度予算及び決算を提出しているから,この報告に関しては,成立した予算及び決算を国民に対して報告すれば足りる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。 (日本国憲法 91条)
91条は、財政状況公開の原則、というようです。
これを受けて、財政法46条は、その内容を具体的に規定しています。
「国民」に「財政状況」について報告しなければならないのだから、単に予算及び決算をのみを報告しただけでは、財政「状況」まで、報告したことにはならない。
官報・ホームページ等により毎年「財政法第46条に基づく国民への財政報告」がなされている、そうです。
[自説の根拠]野中Ⅱp324
8
人身の自由について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
迅速な裁判を一般的に保障する憲法第37条第1項は,それ自体が裁判規範性を有するものではないので,現実にこの保障に明らかに反し,迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる事態が生じた場合には,これに対処すべき法律上の規定があるときに限ってその審理を打ち切ることができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
「個々の刑事事件について、現実に憲法37条1項の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続きの執行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段をとることも認められるのであり…」
[自説の根拠]自説の根拠は、高田事件(最大判昭47・12・20)
「これに対処すべき法律上の規定があるときに限って」が誤り
9
憲法第9条について、適切か否か答えよ。
憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争が,いわゆる侵略戦争を意味すると解すると,同項自体は,自衛権の発動としての戦争(自衛戦争)を禁止していないことになる。しかし,この解釈に立っても,同条第2項が,侵略戦争放棄という「前項の目的」を実質的に達するために一切の「戦力」の不保持を定めたと解すれば,結局,外敵との戦闘を主たる目的とする物的組織体を設け得るという解釈は,生じる余地がなくなる。同条第1項の「国際紛争を解決する手段」及び同条第2項の内容を前記のように解することに対しては,侵略戦争以外の戦争についても,結局同条第2項によって不可能になるというのであれば,同条第1項による放棄の対象を侵略戦争に限定する意味があるか疑問であり,立法技術的にも拙劣といわざるを得ないとの批判がなされている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
「外敵との戦闘を主たる目的とする物的組織体を設け得るという解釈は,生じる余地がなくなる。」は誤りです。
自衛権を根拠に、「戦力」から「自衛のための必要最小限度の実力」を除く解釈が成り立ちうるからです(政府解釈)。
実際、自衛隊は「直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務」(自衛隊法3条1項)としており、明らかに「外敵との戦闘を主たる目的とする物的組織体」です。しかし、「自衛のための必要最小限度の実力」にとどまるため、「戦力」に当たらず、合憲と解されています。
[自説の根拠]自説の根拠は、自衛隊法3条1項に加え、http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html
です。
http://www.mod.go.jp/j/presiding/touben/174kai/syu/tou303.html
誤解していましたが、「立法技術的にも拙劣といわざるを得ないとの批判がなされている」という部分は、文章中段の「同条第1項の~」以降にかかるんですね。
つまり、この設問のような批判意見が存在するか否かという問いではなく、文章に矛盾を含んでいるかどうかを問うている問題です。
技術的に稚拙であるという反対意見の存在はともかく、前段が誤りのため×となります。
どこがおかしいのかはshiratpakuさんの解説で。
[自説の根拠]同じ勘違いをしている人がいそうなので…。
10
労働基本権について、適切か否か答えよ。
労働基本権は,自由権的側面も持つ。労働組合法には,労働組合の正当な行為について刑法第35条の規定の適用があるものとする旨の規定があるが,これは労働基本権の自由権的側面を規定したものである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
すみません。タイプミスしました。
刑法 第35条(正当行為)
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
当問題で問われている「労働基本権の自由権的側面を規定したものである。」についてはどなたか解説をお願いします。
自由権を大まかに、国家から介入制約を受けない権利とします。とすると、国民に刑事罰を科すことは国家が人権に介入する(=自由権を侵害する)最たるものとなる。憲法28条は経済的弱者(勤労者)が、労働三権の保障により勤労者を使用者と実質的に対等な立場にするなどし、勤労者の人権保障を確保しようとしたことにあります。よって我が国の憲法は労働基本権を「国家からの介入制約を受けない」で行使することができるという意味をも規定したもの、といえるのでは。
字数制限上、論理の飛躍を許してください。
[自説の根拠]最大判昭25.11.15 山田鋼業事件
最大判昭48.4.25 国労久留米駅事件
労働基本権は国が積極的に保障すべき(さもないと歴史的経緯に徴すれば、勤労者は使用者に比して弱者であり、基本的人権である生存権を実現できなくなる)であるという社会権の一つである一方性質上自由権としての性格を強く持つ。
殊に争議行為においては、それが同時に使用者の財産権と抵触し、その場合刑法上の財産に対する罪の構成要件に該当することになる。
正当な争議行為である場合、これを刑事免責するのでなければそもそも争議行為をなしえない。
この点で国が不作為義務を負うという自由権的側面を殊に強く併せ持つ。
[自説の根拠]上の方の通りだと思います。私なりに補足。芦部、長谷部、等参照。 最大判昭和41年10月26日の傍論部分など
11
内閣について、適切か否か答えよ。
最高裁判所によれば,最高の行政機関はあくまで内閣であり,内閣総理大臣は内閣の首長にすぎないことから,内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針に基づかなければ行政各部に対して指揮監督できないことはもとより,一定の方向で事務を処理するよう指示することもできない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
最大判平7.2.22(ロッキード丸紅ルート事件)
…内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務に一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。
憲法72条 内閣総理大臣の職務権限
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
dragaonroadさんの解説は平成21年行政書士試験、多肢選択問題で出題されている箇所でもあります。
[自説の根拠]憲法72条
12
司法権について、適切か否か答えよ。
明治憲法の下では,軍法会議,皇室裁判所など,いわゆる特別裁判所が認められていたが,現行憲法は,これを許容していない。しかしながら,例えば,行政事件を専門に扱う行政裁判所を法律で設けることも,それが通常の裁判所の系列に位置付けられる限り,憲法に違反するものではないと一般に解されている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
憲法第76条2項が禁止する「特別裁判所」とは
特別の人間又は事件について裁判するために、通常裁判所の系列から独立して設けられる裁判機関のことです。
「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない」とあるように、その裁判所が終審裁判所であれば禁止に該当します。
しかし、通常裁判所への上訴が認められていれば、通常裁判所の系列に属すると言えますので、憲法が禁止する「特別裁判所」にはあたらないとされています。
①議員の資格争訟に関する裁判
②裁判官の弾劾裁判
などは上訴もできない特別裁判所になり、これらは通常の裁判所の系列に属さないので、✕ではないのでしょか?
①と②自体が憲法で明文規定されています。
一般法で規定しているわけではありません。
憲法という一つの法に矛盾する二つの話があるわけですから、一方が原則、一方が例外というとらえ方でいいと思います。
変に「特別裁判所とは直接書いてない!」とか理由をつけると逆に屁理屈に聞こえますからねぇ。
13
人権の享有主体について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
会社が,国民と同様,特定の政党の政策を支持又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有するとしても,政治資金の寄附は政治の動向に影響を与えることがあるから,会社の政治資金の寄附は国民による寄附と別異に扱わなければならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によつてそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあつたとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。
[自説の根拠]八幡製鉄政治献金事件 昭和45年6月24日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122500596226.pdf
国民は政治資金の寄付を為す事が出来、
法人も、法律上は人なんですね
14
憲法第25条が保障する生存権の裁判規範性に関するプログラム規定説によれば,憲法第25条は政治的・道義的義務を国に課したものにとどまり,個々の国民に対して具体的権利を保障したものではない。プログラム規定説への批判となるものとして、適切か否か答えよ。
「健康で文化的な最低限度の生活」の保障を具体的に実現するためには必ず予算を伴うが,予算の配分は国の財政政策の問題である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
プログラム規定説というのは、生存権の規定に法的権利性を認めません。
その根拠の一つとして、本肢のような、「財政上の理由」を挙げます。
よって、本肢のような考え方は、プログラム規定説の根拠の一つであって、プログラム規定説への「批判」ではありません。
[自説の根拠]憲法[第3版]佐藤幸治620頁。
裁判所は政策問題については消極的態度であるべきと思っていますので、法適用場面と違って、政策判断場面では判断回避をしがちです。それでも、人権侵害が生じているときは積極的態度でお願いしたいですが。
【プログラム規定】
国政の目標ないし指針を掲げて,国の政治的・道徳的義務を定める憲法規定をいう。(中略)国民はプログラム規定によって保障された権利を政治的要求として主張することはできるが,司法的救済を伴う法的権利として主張することはできないとされ,日本国憲法25条の生存権保障規定は,権利の内容が明確でなく,その実現が予算・財政の問題と関連して国の裁量にゆだねられていること,および資本主義体制の下では権利実現の実質的前提が欠けていることを理由に,プログラム規定と解されてきた(朝日訴訟)。
[自説の根拠]「コトバンク」の「プログラム規定とは」のサイトより抜粋
15
条例に罰則を設けることについては,(1)法律による授権は不要であるとする見解,(2)法律による授権が必要であるが,一般的な委任も許されるとする見解及び(3)法律による授権が必要であるが,その授権は相当な程度に具体的であり,限定されていれば足りるとする見解がある。次の記述における「この見解」が(1)の見解を指すものとして適切か否か答えよ。
(参考)
憲法
第73条 内閣は,他の一般行政事務の外,左の事務を行ふ。
一~五 (略)
六 この憲法及び法律の規定を実施するために,政令を制定すること。但し,政令には,特にその法律の委任がある場合を除いては,罰則を設けることができない。
七 (略)
地方自治法
弟14条 (略)
2 (略)
3 普通地方公共団体は,法令に特別の定めがあるものを除くほか,その条例中に,条例に違反した者に対し,二年以下の懲役若しくは禁錮,百万円以下の罰金,拘留,科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
この見解に対しては,条例が当該条例を制定した地方公共団体の住民以外の者にも適用され得ることからすると,法的安全の見地から,現実的な妥当性があるという評価がある。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2013年03月17日)
×
「条例が当該条例を制定した地方公共団体の住民以外の者にも適用され得る」ことからすると、広く国民に義務を課したり、権利を制限するような侵略的な行政行為が行われることが想定できる。その場合は、侵略留保説の考え方から、法律上の根拠が必要となると考えるべきであり、「(1)法律による授権は不要であるとする見解」との見解とは逆に授権は必要となる。従って本問は「☓」が正解となる。
侵略ではなく、「侵害留保説」ではないでしょうか?
また、どちらかというと「権力留保説」の方が説明の根拠に向いてないでしょうか?
住民以外にも適応されることを考えると、法律による授権が必要というお考えはその通りだと思います。
6.○
1
「国民主権」が何を意味するかについては争いがあるが,一般に,国民が公務員の選定罷免権を有し,成年者の普通選挙が保障されるのは,国民主権の現れであると解されている。選挙権については,選挙区間での人口の移動から生じた投票価値の不平等が裁判で争われてきた。最高裁判所は,各選挙人の投票価値の平等も憲法の要求するところとしているが,投票価値の平等は,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものとされている。しかも,【(A)最高裁判所は,参議院の選挙区に関して,著しい投票価値の不平等があって初めて違憲状態になるという立場】を採っており,実際,(ア)近い格差が許容されている。また,【(B)最高裁判所は,衆議院の議員定数配分規定(公職選挙法別表)が違憲であるとしつつ,選挙を無効とした場合には憲法の所期しない結果が生ずるとして当該選挙区の選挙を無効としない判決を下している。】他方,最高裁判所は,立候補の自由についても(イ)の自由な行使と表裏の関係にあるとして(ウ)によって保障されるとしているが,選挙違反者に対する立候補の制限は選挙の公正という公共の福祉のための制限として許されるとしている。
上記の文章中の(ウ)に入る適切な言葉を選べ。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月07日)
憲法第15条第1項
『立候補の自由』について憲法に明文の規定はありませんが
三井美唄炭鉱事件(最判昭43.12.4)において
「立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持するうえで、きわめて重要である。このような見地からいえば、憲法15条1項には、被選挙権者、特にその立候補の自由について、直接には規定していないが、これもまた、同条同項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである。」
と判示しています。
立候補の自由については、hiro445 さんの挙げて頂いている判例の文言は丸暗記するとして、
内容自体は本肢からそれているのですが、判例通説では私人間効力に関しては間接適用説(三菱樹脂事件S48.12.12)であります。間違いなく、これが大原則なのでhypermasa さんのおっしゃる15Ⅳの直接効力についてのコメントには否定の山ですが
国民主権・民主主義等その趣旨を考えれば内在的制約を認められず、直接効力をもつといえるのかと(上記判例自体22・29を被告側の直接根拠にしている)
[自説の根拠]27Ⅲ児童酷使の禁止、もその趣旨より、内在的制約などありえない、芦部、辻村『憲法』等、あまり詳しく書かれていないですので、私見です。強いて根拠といえば、立法全趣旨です
(ア)6倍
(イ)選挙権
(ウ)憲法第15条1項 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
関連問題
憲法保障には,様々な方法がある。まず,憲法保障のために,憲法自らがその保障を直接の目的とする特別の規定を置く場合がある。日本国憲法第10章(「最高法規」の章)において,(1)もその一例である。また,第9章(「改正」の章)において,(2)も憲法保障を高めている。さらに,我が国の憲法における統治機構の仕組みとして,(3)や(4)も,憲法保障のメカニズムを組み立てる原理となっている。さらに,憲法の目的である人権保障も,憲法保障の観点からは,その重要な要素となる。例えば,(5)は,憲法保障に役立っている。
上記の文章中の(1)に入る適切な言葉を選べ。
2
思想・良心の自由について、適切か否か答えよ。
憲法第19条は,内心の告白を強制されないという意味では「沈黙の自由」を保障したものと解することができるから,「自己に不利益な供述を強要されない」と規定する憲法第38条第1項は,憲法第19条との関係では一般法に対する特別法の関係にあると一般に解されている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
『 憲法第19条は,内心の告白を強制されないという意味では「沈黙の自由」を保障したものと解することができる』という部分は正しいです。
しかし、憲法38条1項の自己負罪拒否特権は単なる事実の認識についてのものであるのに対し、思想・良心の自由には、単なる事実の認識は含まないというのが一般的であり、38条1項と19条が一般法と特別法の関係にあるとするのは誤りです。
一般的な解釈がどうかと論ずる以前に、憲法は国の最高法規であり、どの条文も「一般法<特別法」のような関係には立ちえない。
3
憲法改正について、適切か否か答えよ。
ポツダム宣言の受諾によって主権の所在が天皇から国民に移ったという,いわゆる八月革命説は,憲法改正には限界があるという立場を採りつつ日本国憲法の制定を正当化しようとするものである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
八月革命説では明治憲法の改正により日本国憲法が制定されたとは考えず、ポツダム宣言受諾により、「革命」が生じ、その時点で主権が国民に移り、その国民が日本国憲法を新たに作ったと考え方に立つ為、正しい。
[自説の根拠]憲法学者・宮沢俊義氏提唱
設問も投稿解説も正しいが、この「八月革命説」とゆうのがかなり無理やりな説で、通常「革命」とはその国の国民が自発的に主権を欲し為すべきものであるにも関わらずポツダム宣言の受託当時、日本政府にも日本国民にも主権が移行したとの認識はなく、ポツダム宣言受諾以後も1946年11月3日までは前憲法が維持されていた。現憲法も日本を骨抜きにするためにアメリカに与えられたものでそれをなんとか正当化するための説ですね。国民の意志により現憲法を全面的に変えてしまうのが本当の意味の「革命」に近いのでは。
八月革命説は改正限界説を根拠としています。
明治憲法73条の改正規定によって、真向から対立する国民主権を定めることは法的に不可能。 しかし、ポツダム宣言はそれを要求している。そうなると、ポツダム宣言受諾によって国民主権が成立し、日本の政治体制の根本原理となったと解さなけらばならない。これを法的に一種の革命があったとみることができるとし、
上論:明治憲法の改正としてして成立した欽定憲法
前文:日本国民が国民主権に基づいて制定した民定憲法
八月革命説はこの矛盾をつないでいます
[自説の根拠]芦部憲法
4
内閣は,A国との間で,相手国から引渡請求を受けた犯罪人を相互に引き渡す義務を課す犯罪人引渡条約を締結した。ところが,内閣が事後にその承認を国会に求めたところ,国会は,引渡義務の対象から自国民が除外されていないことを理由に,引渡義務の対象から自国民を除外するとの条項を付して,その犯罪人引渡条約を承認するとの議決をした。
このような事態に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
国会の条約承認手続において両院協議会の手続が認められていることからして,犯罪人引渡条約に新たな条項を付する決議は,国会に認められた権限である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
設問は、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
ですから説が別れているので明らかな間違いではない。よって○ということでしょう。
設問は、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
ですから、どの学説に立ったとしても、おかしいものを×とするのでしょうね。。
本問は国会の条約修正権・事後承認を欠く場合の条約の国内法的効力についての問題ですが、肯定説に立てば、「明らかな誤り」とは言えないので○かと。
国会の条約修正権(事前・事後)は
1肯定説
①事前の承認のみ可能とする説(美濃部)
②事後の承認も可能とする説(佐藤功)
Ⅱ否定説(宮沢)…一括承認するかしないか
という対立が従来よりあるとされる(が、ウィーン条約参照)
で、本問ですが、
上記中の肯定説は、その根拠として、条約の締結に必要な国会の承認について、憲法61条、60条2項で、両院協議会の手続を要求しているのは、両院が妥協により条約を修正して承認することのあることを予想しているものだと考える
よって、答えは◎
[自説の根拠]野中他『憲法Ⅱ』
5
内閣は,A国との間で,相手国から引渡請求を受けた犯罪人を相互に引き渡す義務を課す犯罪人引渡条約を締結した。ところが,内閣が事後にその承認を国会に求めたところ,国会は,引渡義務の対象から自国民が除外されていないことを理由に,引渡義務の対象から自国民を除外するとの条項を付して,その犯罪人引渡条約を承認するとの議決をした。
このような事態に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
条約に国会の承認が必要なのは今日の民主国家には共通のことであり,内閣案のとおりに国会の承認を受けることができなかった犯罪人引渡条約は,結局は不承認を意味することになるから国内法としては無効と考えざるを得ない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
事後に国会の承認が得られなかった条約の効力については、以下の通り種々の見解があります。
①法的には有効に成立。ただ、内閣の政治責任が生じるのみ。
②国内法的には無効。国際法的には有効。
③国内法的にも、国際法的にも無効。
④国会の承認権の規定の具体的な意味が諸外国にも「周知の」要件と解されているような場合には、国際法的にも無効。(条件付無効説)
設問の記述は②、③、④の説から導けるため、明らかに誤っているとはいえません。
したがって、「○」となります。
[自説の根拠]「憲法」芦部信喜(岩波書店)
6
生存権について、最高裁判所の判例に照らして適切か否か答えよ。
憲法第25条の趣旨を立法により実現することについては,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。したがって,憲法第25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量に委ねられるが,それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合には裁判所が審査判断するのであるから,憲法第25条は裁判規範性を持つといえる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
堀木訴訟
社会保障と憲法25条に関する最高裁判決のリーディング・ケースとされる判決。憲法25条に関しては、朝日訴訟の傍論を踏襲しており、25条の規定は権利ではなく責務を定めたに過ぎないとして、権利性を否定したプログラム規定説に近い立場をとっている。その一方で、憲法25条に関する裁判規範性を否定していないことから純然たるプログラム規定説をその意味で採用したともいえない判断を行っている。(Wikipedia -堀木訴訟- から引用。)
日本国憲法第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
裁判規範性とは
権利が侵害された場合にその侵害を除去し自らの権利を回復するよう司法府、裁判所に求めうる権利をいう。
7
市町村の国民健康保険条例に保険料率などの具体的規定がないことと租税法律主義を定めた憲法第84条との関係について判示した最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年3月1日大法廷判決,民集60巻2号587頁)について、適切か否か答えよ。
この判決は,国民健康保険の保険料は租税ではないから憲法第84条が直接適用されることはないが,国又は地方公共団体が賦課徴収する租税以外の公課であっても,賦課徴収の強制の度合いなどの点において租税に類似する性質を有するものについては,憲法第84条の趣旨が及ぶと解すべきであるとした。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
国民健康保険料賦課処分取消等請求事件、最大判平18・3・1
「租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきである」としている。
判例は、国民健康保険の保険料に憲法84条の「租税法律主義」が直接適用されるものではないが、租税以外の公課であっても租税に類似する性質が強いものについては、憲法84条の趣旨が及び、その適用は個別の法律、条例の内容によって総合考慮されるべきとした。
===
【租税法律主義】
近代民主主義では代表的な租税に関する考え方。英国の「代表泣ければ課税なし」に由来する。行政の恣意的な課税から国民を守るための規定とされ、日本では憲法84条に定められている。
---
憲法第84条(課税の要件)
あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
---
【判例】旭川市国民健康保険料訴訟
市町村が行う国民健康保険の保険料は、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものであるから、憲法84条の規定が直接に適用されることはない。
しかし、租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶ。その場合であっても、賦課要件が法律又は条例にどの程度明確に定められるべきかなどのその規律の在り方については、当該公課の性質、賦課徴収の目的、その強制の度合い等を総合考慮して判断すべきである。(最高最判平成18年3月1日)
8
幸福追求権について、適切か否か答えよ。
学説における一般的自由説は,包括的基本権である幸福追求権の内容について,「人格的生存」にとって不可欠という要件で限定しない。しかし,一般的自由説を採ることは,当該自由や権利の保障の程度という点で「人格」との関連性を考慮することと必ずしも矛盾しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
幸福追求権:
憲法13条の「個人の尊重」を基本原理とする、生命・自由・幸福追求の権利。個人の尊厳に基づく基本的人権を保障する包括的・具体的権利である。
===
憲法13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
---
(1)一般的自由説:
13条により、あらゆる生活領域に関する行為の自由が保障されているとする説。
人権を限定的に捉えると、人権保障の範囲が狭くなりすぎるおそれがある。違憲審査基準は個々の権利の重要性の程度によって変えればよい。幸福追求権のすべてが人格的生存に不可欠かどうかは、不明確である。
(2)人格的利益説
13条により、人格的生存に不可欠な権利が限定的に保障されている。
新しい人権(幸福追求権)を無制限に認めると、既存の人権の価値が相対的に低下する。一般的自由説では、裁判所の主観的価値判断によって権利が創設されるおそれがある。
9
内閣及び内閣総理大臣について、適切か否か答えよ。
内閣は憲法第73条第1号により法律を誠実に執行する義務を負うが,他方,憲法第99条により憲法尊重擁護義務をも負うので,内閣が違憲と解する法律が成立した場合には,一時的であれば,その執行を停止することができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
法律が違憲か否かの判断については、国会の判断が内閣の判断に優先するとされています。
そうすると、国会が合憲として立法し制定した法律である以上、内閣は国会の判断に拘束されることになります。
したがって、内閣がその法律を違憲と判断したとしても、その執行を停止することは出来ません。
10
宗教法人法に基づくオウム真理教に対する裁判所の解散命令は,憲法第20条第1項に違反しないとした最高裁判所の決定(最高裁判所平成8年1月30日第一小法廷決定,民集50巻1号199頁)について、適切か否か答えよ。
この決定は,当該宗教法人に対する解散命令は,宗教法人法第81条の規定に基づき,裁判所の司法審査によって発せられたものであるから,その手続の適正も担保されているとした。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
判例では設問の通りの見解が示されています。
[自説の根拠]最判平成8年01月30日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319123009130806.pdf
「宗教法人法第81条」では、
宗教法人が、
・法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為をした
・宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしている
・宗教団体としての実体を欠く
などの場合に、検察官等の請求により、裁判所が解散を命ずることができる旨を規定しています。
**
この規定に基づき、裁判所の司法審査によって発せられた解散命令であるゆえ、その手続の適正も担保されている、と判じています。
[自説の根拠]最判平成8年1月30日
11
政教分離原則について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
憲法第20条第1項後段にいう「宗教団体」とは,特定の宗教の信仰,礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指す。したがって,例えば戦没者遺族の相互扶助・福祉向上と英霊の顕彰を主たる目的とする団体が行う宗教的行事に対し,ある市が援助を与えたとしても,その援助は目的効果基準を用いるまでもなく合憲である。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
最高裁は「憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」(中略)とは(中略)国家が当該組織ないし団体に対し特権を付与したり(中略)公金その他の公の財産を支出し又はその利用に供したりすることが、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になり、憲法上の政教分離原則に反すると解されるものをいうのであり、換言すると、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指す」とします。
「援助~政教分離原則に反する」において目的効果基準を用いてます。
[自説の根拠]自説の根拠は、前のコメントと同じです。
申し訳ありません、私が投稿した上2つのコメントは理由付けが誤っていました。
最判平成5年2月16日によると、地区遺族会は「宗教団体」(20条1項後段)に当たらないとされたにもかかわらず、市委員会委員兼教育長が同会から招待を受け、慰霊祭に参列した行為が政教分離違反かを判断するため目的効果基準を用いています。この理由から、設問の「目的効果基準を用いるまでもなく合憲である」という部分は誤りです。
ご迷惑おかけ致しました。
[自説の根拠]自説の根拠は、最判平成5年2月16日http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319123231513445.pdf
問題文の回答を判断するのに必要な部分の判決を転記すると、「その目的は、小学校の校舎の建替え等のためであり、その効果も特定の宗教を援助、助長、促進し又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められない。したがって、箕面市の右各行為は、憲法20条3項により禁止される宗教的活動には当たらない。」とある。判決文で分かるとおり、その文面に「目的」と「効果」がはっきり書かれているので、この判断には「目的効果基準」を使って出されたものと判断出来る。目的効果基準を用いるまでもなくの部分から回答は「☓」となる。
[自説の根拠]箕面忠魂碑訴訟(最判平5.2.16)
12
最高裁判所昭和41年2月8日判決(民集20巻2号196頁)は,「司法権の固有の内容として裁判所が審判し得る対象は,裁判所法第3条にいう「法律上の争訟」に限られ,いわゆる法律上の争訟とは,法令を適用することによって解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争をいうものと解される」と判示している。この判例の見解を前提にした場合,法律上の争訟に関する次の記述について、適切か否か答えよ。
国家試験における合格・不合格の判定は,学問・技術上の知識,能力,意見等の優劣・当否の判断を内容とする行為であり,試験実施機関の最終判断にゆだねられるから,国家試験における不合格判定が誤りであることを前提とする国家賠償請求訴訟は,法律上の争訟に該当しない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
判例があります。
国家試験合格変更又は損害賠償請求事件
[自説の根拠]最判S41.2.8
上記判例の一部です。
===
法令の適用によつて解決するに適さない単なる政治的または経済的問題や技術上または学術上に関する争は、裁判所の裁判を受けうべき事柄ではないのである。国家試験における合格、不合格の判定も学問または技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、その試験実施機関の最終判断に委せられるべきものであつて、その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して、その争を解決調整できるものとはいえない。
[自説の根拠]http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121846508005.pdf
「法律上の争訟」には、次の2つの要件を満たすことが求められます。
1 当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であること
2 法律を適用することにより終局的に解決することができるものであること
関連問題
司法権を担う裁判所は,法律上の争訟について裁判する権限を有する(裁判所法第3条第1項)が,この「法律上の争訟」の意味については,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり,かつ,法律を適用することにより終局的に解決することができる紛争であることと解されている。次の説明は、判例の趣旨に照らし,司法審査の及ばない理由として「法律上の争訟」の要件を欠くことを理由に関する記述である。
裁判所法
弟3条第1項 裁判所は,日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し,その他法律において特に定める権限を有する。
2,3(略)
国家試験における合格又は不合格の判定は,学問又は技術上の知識,能力、意見等の優劣,当否の判断を内容とする行為であるから,その試験実施機関の最終判断にゆだねられるべきものであって、裁判所がその判断の当否を審査し,具体的に法令を適用して,その争いを解決調整できるものではない。
13
人権の享有主体について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
税理士会は公益法人であり,また,その会員である税理士に実質的に脱退の自由が認められないから,税理士会がする政治資金規正法上の政治団体に対する政治献金は,それが税理士法改正に関わるものであったとしても,税理士会の目的の範囲外の行為と解される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
南九州税理士会政治献金事件(最判平8.3.19)
判決要旨は設問文のとおりなんですけど、要は政治団体への寄付をどうするかは選挙への投票の自由と表裏一体をなすものだから、会員各人が市民としての個人的な思想に基づいて自主的に決定すべきことであり、脱退の自由が保障されていない税理士会において構成員にその協力を義務付けることはできないということです。
[自説の根拠]自説の根拠は、上記判例
14
内閣総理大臣の地位と権能について、適切か否か答えよ。
内閣総理大臣が欠けたときは,内閣は総辞職しなければならない。なぜなら,憲法は,内閣総理大臣に「首長」たる地位を与えており,これが欠けた場合には内閣の一体性が失われることになるからである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
○
【内閣総理大臣の欠缺(けんけつ)または総選挙後の総辞職】
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職をしなければならない。
15
刑事施設の被収容者の人権について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
未決拘禁者が刑事施設内で特定の新聞を私費により定期購読することを同施設の長が制限する場合,その態様の合憲性については,当該具体的な事情の下で,より制限的でない他の選び得る手段があるかどうかという基準によって判断されるべきである。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
×
右の制限が許されるためには、当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、被拘禁者の性向、行状、監獄内の管理、保安の状況、当該新聞紙、図書等の内容その他の具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、右の制限の程度は、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当
[自説の根拠]よど号ハイジャック記事抹消事件 最高裁昭和58年6月22日大法廷判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120516638057.pdf
より制限的でない他に選び得る手段の基準(LRA-less restrictive alternative-の基準)
人権規制立法の手段審査に関して用いられる基準の一つ。当該目的を達成するためにより制限的でない他の選びうる手段が存在しない場合に合憲とする基準をいう。
例えば、デモ行進の実施には役所の許可が必要とする公安条例があった場合に、安全、秩序の確保を目的とすると、許可制より緩い届出制でもその目的は達成できるので、この条例は表現の自由に対する過度の規制であり違憲である、という具合である。
[自説の根拠]Wikipedia「違憲審査基準」
1
次の説明は、財政に関する記述である。
衆議院で可決された予算は,参議院で否決された場合でも,衆議院で3分の2以上の多数により再び可決されたときは,予算として成立する。 司法書士試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。 (日本国憲法 59条2項)
これは法律案のときですね
ほかに気になるポイント。
法律案…「衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。」
予算案…「法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いて」
[自説の根拠]憲法59,60
衆議院の優越
関連問題
衆議院と参議院の議決に一致がみられない状況において、クローズアップされてくるのが両院協議会の存在である。次の場合が、日本国憲法の定めによると、両院協議会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合か否か答えよ。開かなくてもよいとされている場合を○とせよ。
衆議院で可決された法律案を参議院が否決した場合
2
地方公共団体において,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができる措置を執ることは,憲法第14条第1項に違反しないとした最高裁判所の判決(最高裁判所平成17年1月26日大法廷判決,民集59巻1号128頁)について、適切か否か答えよ。
この判決は,当該地方公共団体の管理職の中に,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするものが含まれていることを前提としている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
判例の中で「地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの」を「公権力行使等地方公務員」と定義している。
管理職選考受験資格確認等請求事件http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120621716286.pdf
3
憲法第17条及び国家賠償法に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
憲法第17条を受けて制定された国家賠償法第1条は,公務員の不法行為に基づく国又は公共団体の責任を定めている。論理的には,この責任につき,国又は公共団体の自己責任であると解すると,公務員個人に対する賠償請求権は否定され,他方,代位責任であると解すると,公務員個人に対する賠償請求権は否定されないということになる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
代位責任説では、本来公務員個人が負うべき責任を国又は公共団体が公務員に代位して肩代わりする。
自己責任説では、公務員の行為は国又は公共団体の行為そのものと考える。
代位責任説の意義を公務員が職務を遂行するに当たり責任問題を恐れることによる萎縮が生じないようにするために公務員の責任を軽減したものであると考えると、代位責任説では公務員個人に対する賠償請求権は否定されやすい。
自己責任だから公務員個人の責任
試験その場での国語力の問題、といわれている
問題ですね
「自己責任説」はもちろん、「代位責任説」にたっても、おもてだって責任をとるのは国又は公共団体であるため、被害者が、加害公務員個人に直接損害賠償を請求することはできません。
※国賠法1条は、公務員の故意・過失を要件とすることや、国等から公務員への求償権を認めていることから、国等の責任を「代位責任」と解釈するのが妥当とされています。(「自己責任説」をとった場合、国等の責任は無過失責任に近づき、また、求償権も存在しないことになります)
判例も「代位責任説」をとっています。
自己責任説、代位責任説どちらの立場にたっても直接公務員へ損害賠償することはできない。
理由:
公務員が損害賠償を恐れ消極的な仕事しかできなくなるから
4
憲法第17条及び国家賠償法に関する以下の記述について、明らかに誤っている記述のみを×とし、それ以外を○とせよ。
憲法第17条及び国家賠償法第1条にいう「公務員」には,国会議員も含まれると解され,憲法第51条に定める国会議員の免責特権との関係が問題となる。この点,国家賠償法第1条第1項の適用上,国会議員個々人ではなく,国会自体について,その組織的行為の評価を論ずれば足りると解する立場を採れば,憲法第51条は,国会の不法行為を理由とする国家賠償責任追及の法的障害とはならない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
国会の議決が不法行為と認められる場合において、国会議員ではなく国会そのものが組織的に不法行為を犯したと解すれば、国家賠償法1条による国家賠償責任の追及において、憲法51条の議員の免責特権は法的障害とならない。
===
日本国憲法
第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
---
国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
上記条文だけで理解できる人は天才ですねw
本問で問題とされているのは、免責特権で守られている国会議員の演説討論表決(でしたっけか)に、国賠1条1項の要件の内の故意過失要件が認められるかというものです。
それを認めるために、国会という組織体全体の故意過失を擬制できるという立場を取れば、この要件を満たすといえる、という問題ぶんですね。答えマル。
[自説の根拠]有斐閣憲法(所謂四人組)
5
政教分離原則について、最高裁判所の判例に照らして適切か否か答えよ。
神社自体がその境内において挙行する恒例の祭祀に際して地方公共団体が玉串料等を奉納することは,建築主が主催して建築現場において土地の平安堅固,工事の無事安全等を祈願するために行う儀式である起工式の場合とは異なり,既に慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとはいえない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
靖国神社玉串訴訟
「我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える」
[自説の根拠]最判H9.4.2
玉串料はダメ!
地鎮祭は合憲
6
国民の義務について、適切か否か答えよ。
憲法第30条は国民の納税義務を定めているが,国際法や条約に基づいて免除される場合を除き,法律の定めるところにより,我が国に居住する外国籍の者から徴税することは違憲ではない。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
「日本に居住する外国籍の者」の納税義務については憲法に定められていないため、そもそも合憲・違憲の問題は生じません。
従って、日本に居住する外国籍の者から徴税することを法律に定めることも、それに基づき徴税することも、違憲とはなり得ません。
(※実際所得税法第2条第3号、第4号、第5号等に定められています)
在留資格の問題(マクリーン事件)、障害補償の問題(塩見訴訟)、選挙権がない等、不利に扱われる事があるのに、徴税はされるんですね
先の私のコメントは、根拠に欠けるところがあるため追記致します。
●憲法30条が「国民」と表現していることについては、「国民の納税義務を宣言的な意味で定めたものにすぎず、納税義務者の範囲を国民または法人に限定する趣旨ではない」こと。(東京地判昭42.4.11)
●原則として、外国人も納税義務を負うのが国際慣習であること。
以上から、法律の定めるところにより、定住外国人等から徴税することは違憲ではないとされます。
7
政党について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして適切か否か答えよ。
国民には,政党を結成し,政党に加入し,若しくは政党を脱退する自由が保障されている。他方,政党は,政治上の信条や意見を共通にするものが任意に結成する団体であるから,党員に対して政治的忠誠を要求し,一定の統制を施すことができる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
判決主文より。
「政党は、政治上の信条、意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって、内部的には、通常、自律的規範を有し、その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり、一定の統制を施すなどの自治権能を有するものである。」
[自説の根拠]最判S63.12.20
上記判決文の続きです。
「したがって、各人に対して、政党を結成し、又は政党に加入し、若しくはそれから脱退する自由を保障するとともに・・高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。他方、右のような政党の性質、目的からすると、自由な意思によって政党を結成し、あるいはそれに加入した以上・・自己の権利や自由に一定の制約を受けることがあることもまた当然である。」
※尚、政党の自由は、憲法上明記がありませんが、21条「結社の自由」に含まれるとするのが通説です。
[自説の根拠]最判63年12月20日(共産党袴田事件)
ご参考までに
「共産党袴田事件」は、日本共産党が除名した袴田里見に対し、除名後も党所有の家屋に住居していた為、党が家屋の明け渡しを求めた裁判の被告上告審です。 党員に対する除名処分に司法審査が及ぶかが争点となっており、政党が党員に対してした処分は、内部的な問題にとどまり、裁判所の審判権は及ばない。 政党が定めた規範または条理に基づき適正な手続に則ってなされたか否かによって決すべき、という判決になっています。
[自説の根拠]最判昭63.12.20
8
内閣及び内閣総理大臣について、適切か否か答えよ。
議院内閣制に関する責任本質説は,内閣の国会に対する連帯責任,衆議院の内閣不信任決議権,内閣の衆議院解散権を,議院内閣制の必須の要素としている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。 (日本国憲法 69条)
責任本質説と、内閣の衆議院解散権を認めることとは馴染まない。
これだけは定説です。後は、学者の言いたい放題ですので、少なくともこの試験では必要ない知識です。
[自説の根拠]有斐閣憲法(所謂四人組)
内閣は主に国会議員から構成されるため、内閣は国会の信任によって存在するというのが「責任本質説」です。
国会の信任が前提である以上、内閣の側から国会を解散する権利はなじまないものです。こちらが多数説のようです。
これと対立するのが「均衡本質説」で、三権分立を重視し、互いが互いの責任を追及できるという立場です。この場合は両者が解散権を持つ、という結果になります。
●(議院内閣制の本質)議院内閣制の本質をめぐり責任本質説と均衡本質説の対立がある。①責任本質説;議院内閣制の本質を、内閣の存立が議会の信任に依存している点に認め、内閣が議会の不信任決議に対抗する解散権を持たなくても、議院内閣制でありうるとする。通常の憲法学または政治学上の多数説とされる。②均衡本質説;議会と内閣の対等性を重視し、議会の不信任権に対し内閣の解散権が対抗することにより、両者が均衡するところに議院内閣制の本質があると考えるため、解散権は不可欠のものであるとする。
[自説の根拠]議院内閣制 – Wikipedia
関連問題
内閣について、適切か否か答えよ。
内閣は国会に対して連帯して責任を負うとともに,衆議院が内閣不信任案を提出することで内閣の政治責任を追及することになっているのであるから,国会の両院が内閣を構成する大臣の政治責任を不信任決議などによって追及することはできない。
9
人権の享有主体について、適切か否か答えよ。
憲法第3章の人権規定は,未成年者にも当然適用される。もっとも,人権の性質によっては,社会の構成員として成熟した人間を主として対象としており,それに至らない未成年者に対しては,その保障の範囲や程度が異なることがある。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
憲法15条3項「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」
憲法27条3項「児童はこれを酷使してはならない」
[自説の根拠]自説の根拠は、上記条文
(人権の享有主体)
未成年者は心身の発展途上にあるため、健全な発達のために必要最小限度の制約が許されると解されている。また、憲法条文でも15条3項で参政権について「成年者」という制限を設けている。
[自説の根拠]法ゼミNET
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大学の自治について、適切か否か答えよ。
大学における研究と教育は,大学が国家権力等による干渉を排し,組織体としての自律性を保障されることなしには全うすることが不可能であるから,学問の自由と不可分のものとして大学の自治も保障される。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
東大ポポロ事件判例の補足意見で、
「教授その他の研究者が国家権力により干渉されることなく~(中略)~大学は学術の中心としての教育の場であり、学問の場であるから~(中略)~その自由を保障するため必要な限度において、大学の自治をも保障しているものと解する」
また、国家権力(警察)などの干渉に対して、
「到底学問の自由及び大学の自治が 保持されないことは明白」
と述べられています。
確かに「不可能」という表現はひっかかりますが、設問の根拠になると思います。
[自説の根拠]最判S38.5.22(東大ポポロ事件)
昭和38年といえば60年安保と70年安保の間の時期ですね。反共的な国家転覆への警戒が国内治安や司法判断を巡り存じたとすればですが、一方で組織体として学問の府の自治権を守るという考え方が同時期にあっても、学問の府に対するものたる以上は理解できますね。
東大ポポロに関しては、
学問や研究をする場であって政治的目的(松川事件)
ならば、また別ということなんでしょうね
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衆議院解散権について、適切か否か答えよ。
日本国憲法は議院内閣制を採っていると理解できるから,この制度の本質からして内閣には自由な解散権が認められるという説に対しては,議院内閣制の概念は一義的ではないという批判がなされている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
議員内閣制の概念は一義的ではないという批判⇒議員内閣制としての考え方の大切な部分から逸脱している⇒自由な解散権など認められない…という批判がある⇒よってその通りの〇である………と私は考えましたが皆様いかがでしょうか…どなたかご教授願えれば幸いです。
『衆議院解散権の所在』については、いろいろな学説がありますが、
その内の『制度説』についての問題です。
○制度説の根拠
議院内閣制の下では、内閣に自由な解散権の行使を認めるのが通例であり、日本国憲法は議院内閣制を採用しているから、内閣が実質的解散権を有する。
●制度説への批判
議院内閣制と内閣の解散権は、必ずしも結びつくものではなく、「通例である」とは言えない。(一義的ではない)
「均衡本質説」…三権分立を重視し、国会と内閣は互いに監視しあい、両者はお互いを自由に解散権を持つ
「責任本質説」…内閣は主に国会議員から構成される、つまり、内閣は国会の信任を前提とするため、内閣が衆議院の解散権をもつのはなじまない
前者の立場に立てば内閣には自由な解散権が認められますが、後者の考え方もできます。
どこに責任の所在を見いだすかによって立場は変わるため、議院内閣制の概念は一義的ではない、と考えました。
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自動車検問に関する次の文章中の( )の部分に後述の文を入れて文章を完成させたときに,その文章の内容が現行法令及び最高裁判所の判例に照らして適切か否か答えよ。
警察官が,交通取締りの一環として,交通違反の多発する地域の適当な場所で,交通違反の予防・検挙のための自動車検問を実施し,その場所を通過する自動車に対し走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく停止を求め,運転者等に対し必要な事項についての質問をすることは,( 。)
(参照条文)警察法
第2条第1項警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮捕,交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
強制力を伴わない任意手段による場合であっても,国民の権利自由の干渉にわたるおそれのあるものであるから,そのこと自体についての法令の根拠が必要であり,そのような法令の根拠としては,警察法第2条第1項だけでは足りない 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
道路交通法違反判旨より;
(。)の文言、判例では下記の通りとなってます。
「それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法である。」
[自説の根拠]最判S55.9.22
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行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第1号にいう「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)について、適切か否か答えよ。
事業を営む個人の当該事業に関する情報は,法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報該当性を判断することが適当であることから,個人情報から除外されている。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
○
開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)
と、あります。
[自説の根拠]自行政個人情報保護法14条2項
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づく処分に係る審査基準
「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断する。
関連問題
「個人情報の保護に関する法律」について、適切か否か答えよ。
行政書士会、税理士会などの士業の団体は、営利事業を営むものではないので、この法律にいう「個人情報取扱事業者」に該当することはない。
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「国民主権」が何を意味するかについては争いがあるが,一般に,国民が公務員の選定罷免権を有し,成年者の普通選挙が保障されるのは,国民主権の現れであると解されている。選挙権については,選挙区間での人口の移動から生じた投票価値の不平等が裁判で争われてきた。最高裁判所は,各選挙人の投票価値の平等も憲法の要求するところとしているが,投票価値の平等は,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものとされている。しかも,【(A)最高裁判所は,参議院の選挙区に関して,著しい投票価値の不平等があって初めて違憲状態になるという立場】を採っており,実際,(ア)近い格差が許容されている。また,【(B)最高裁判所は,衆議院の議員定数配分規定(公職選挙法別表)が違憲であるとしつつ,選挙を無効とした場合には憲法の所期しない結果が生ずるとして当該選挙区の選挙を無効としない判決を下している。】他方,最高裁判所は,立候補の自由についても(イ)の自由な行使と表裏の関係にあるとして(ウ)によって保障されるとしているが,選挙違反者に対する立候補の制限は選挙の公正という公共の福祉のための制限として許されるとしている。
次の記述について、最高裁判所が【(B)~】で挙げた選挙無効判決のもたらす「憲法の所期しない結果」に該当するか否か答えよ。
公職選挙法別表及びこれに基づく選挙を当然に無効であると解した場合,当該選挙により選出された議員がすべて当初から議員としての資格を有しなかったこととなる結果,既にその議員によって組織された衆議院の議決を経た上で成立した法律等の効力にも問題が生じ,また,今後における衆議院の活動が不可能となる。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2009年11月03日)
×
問題は前の方の引用部分から続く次の箇所の中で、
・・・選挙を当然に無効であると解した場合、これによつて憲法に適合する状態が直ちにもたらされるわけではなく、・・・
と言われる部分で、
「憲法に適合する状態が直ちにもたらされ」れば別に無効で構わないと言っているのも同じです。「かえつて、右選挙により選出された議員がすべて当初から議員としての資格を有しなかつたこととなる」云々は末葉です。だから当然に無効と言えない等の結論を導くものでないです。
この部分でしょうか。
「選挙無効の判決によつて得られる結果は、当該選挙区の選出議員がいなくなるというだけであつて・・全国の選挙について同様の訴訟が提起され・・仮に一部の選挙区の選挙のみが無効とされるにとどまつた場合でも・・右公選法の改正を含むその後の衆議院の活動が、選挙を無効とされた選挙区からの選出議員を得ることができないままの異常な状態の下で、行われざるをえないこととなるのであつて、このような結果は、憲法上決して望ましい姿ではなく、また、その所期するところでもないというべきである。」
[自説の根拠]最大判S51.4.14
「憲法の所期しない結果」へ行きつくまでの判旨は、次の所である。「本件選挙が憲法に違反する議員定数配分規定に基いておこなわれたものであることは上記のとおりであるが、そのことを理由としてこれを無効とする判決をしても、これによって直ちに違憲状態が是正されるわけでなく、かえって憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生じる。」これは事情を考慮した「事情判決の法理」と呼ばれるものである。従って、判決文には問題文にあるような具体的事項には触れていないので、回答は「☓」となる。
[自説の根拠]衆議院議員定数不均衡訴訟判決:最大判昭51.4.14
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関税法第118条第1項により第三者の所有物を没収することをめぐる最高裁判所の判決(最高裁判所昭和37年11月28日大法廷判決,刑集16巻11号1593頁)について、適切か否か答えよ。
この判決は,第三者の所有にかかる物件につき没収の言渡しがあったからといって,被告人においてこれを違憲無効であると主張することは許されないとして,被告人の上告を棄却した。 司法試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年07月06日)
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【第三者所有物没収事件】
貨物密輸につき有罪判決を受けた際に、密輸にかかる貨物の没収判決を受けたが、その貨物には第三者の所有する貨物が含まれていた。
この事件において判決は
第三者の所有物を没収する場合において、その所有者になんら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であり違憲とした。
第三者が違憲と言うのは理解できるが、被告が違憲と言うのもアリなのだろうか?
jun03000 さんへ
もっともな疑問ですよね。
当判決では、
・被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告できる。
・被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有する。
としています。
大きなお世話かもしれませんが、せっかく疑問に思ったのなら、実際に判決文を読んでみては・・・。
本試験では、法令分野でも読解力を試す問題が出るので、そういった問題の対応力がアップしますよ。