地方自治法
(昭和二十二年四月十七日法律第六十七号)
最終改正:平成二八年一二月九日法律第一〇一号
(最終改正までの未施行法令)
平成二十四年十一月二十六日法律第百二号 (未施行)
平成二十六年五月三十日法律第五十号 (未施行)
平成二十七年五月二十九日法律第三十一号 (未施行)
平成二十七年六月二十六日法律第五十号 (一部未施行)
平成二十八年三月三十一日法律第十三号 (未施行)
平成二十八年三月三十一日法律第二十一号 (一部未施行)
平成二十八年十二月二日法律第九十四号 (未施行)
平成二十八年十二月九日法律第百一号 (未施行)
地方自治法総説
行政法も最後の地方自治法になりました。地方自治については、憲法が特に一つの章を設けて保障していて、それを受けて地方自治法が、地方公共団体の区分、組織、運営等について定めています。憲法の中でも、地方自治について勉強しましたが、地方自治法は条文も多いので、ポイントを押さえた学習が必要です。そこで、重複する部分もあるとは思いますが、地方自治法に基づいた地方自治を確認も含めて学習していきます。
では、地方自治法1回目は、①地方公共団体の種類、②地方公共団体の権能――についてお話しします。
Ⅰ.地方公共団体の種類
地方自治とは、もともと国が持っていた権力をそれぞれの地方に分け与え、その地方の住民たちに自主的に運営させる行政のシステムです。憲法は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを決めると規定しています(92条)。これは、言い換えると、地方自治法等の法律によっても地方自治の本旨を侵すことはできないと言うことです。
地方自治の本旨には、
①地方政治がその地方の住民によって行われるべき住民自治
②地方自治が国から独立した機関によって行われるべき団体自治――の2つの要素があります。
また、地方公共団体には、
①普通地方公共団体
②特別地方公共団体――があります。
①の普通地方公共団体には、都道府県と市町村があります(1条の3第2項)。
さらに、市には、地方分権を推進するという目的から、大都市を対象として
a政令指定都市
b中核都市
c特例市――という3種類の特例が定められています。
aの政令指定都市は、政令で指定する人口50万人以上の都市に、都道府県に近い権限を与えるものです(252条19以下)。また、b中核市は、政令で指定する人口30万人以上の市に、政令指定都市に準ずる権限を与えるものです(252条22以下)。c特例市は、人口20万人以上の市を政令により指定して、都道府県事務のうちで政令に定める一定数の事務を移管するものです(252条26の3以下)。
②の特別地方公共団体には、
a特別区
b地方公共団体の組合
c財産区――の3つがあり、bの地方公共団体の組合は、さらに
ァ一部事務組合
ィ広域連合――に分かれます。
aの特別区とは、東京都の区のことです(281条1項)。特別区は、法律または法律に基づく政令により、都が処理することとされているものを除いて、地域における事務ならびにその他の事務のうち市が処理することとされている事務などを処理します(281条2項)。
bの地方公共団体の組合は、2つ以上の地方公共団体が事務を共同で処理するために設置されたものです。このうちァの一部事務組合は、普通地方公共団体や特別区の事務の一部を共同で処理するために設置されています。設置には、都道府県が加入する組合は総理大臣、その他は都道府県知事の許可が必要です。一部事務組合の設置で組合に加入している地方公共団体の執行機関の権限に属する事項がなくなったときは、当該執行機関は、一部事務組合の設立と同時に消滅します(284条2項)。
また、市町村と特別区は、共同処理しようとする事務が、他の市町村などの共同処理しようとする事務と同一の種類でなくても、相互に関連するものを共同処理するための複合的一部事務組合を設立することも可能です(285条)。
一方、ィの広域連合は、普通地方公共団体および特別区の広域的な事務を共同処理するために設けられる組合です(284条3項前段)。設置の許可などは一部事務組合の規定に準じます。
cの財産区とは、市町村や特別区が、当該一部の地区に山林、用水池、宅地などの財産を有し、または公の施設などを設置している場合に、これらの管理、処分のみを行う権限を有する特別地方公共団体です(294条)。
ところで、地方公共団体の区域の変更には、
①配置分合
②境界変更――の2つの場合があります(6、7条)。
①の配置分合とは、地方公共団体の法人格の変動を伴う変更のことで、a合体、b編入、c分割、d分立――の4種類があります。
これに対し、②の境界変更は、地方公共団体の法人格の変動を伴わない区域の変更です。なお、都道府県の境界にまたがって市町村の設置または境界変更があったときは、都道府県の境界も当然変更されます(6条2項前段)。
Ⅱ.地方自治体の権能
地方公共団体には、
①自主財政権
②自主行政権
③自主立法権――が憲法で保障されていて、その事務を処理します。
そこで、地方自治法2条2項では、普通地方公共団体が処理する事務として、a地域における事務、bその他の事務で法律または法律に基づく政令により処理することとされるもの――を定めています。
第2条(地方公共団体の法人格、事務、地方自治行政の基本原則)
1 地方公共団体は、法人とする。
2 普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。
市町村は、住民に身近な基礎的な地方公共団体として、都道府県が処理するものを除き、一般的に地域の事務およびその他の事務で法律または法律に基づく政令により処理することとされるものを処理します。
一方、都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、2条2項に定められた事務のうち、広域にわたるもの、市町村の連絡調整に関するもの、規模または性質上、一般の市町村が処理することが適当でないと認められるもの――を処理します。
また、市町村と都道府県の間に上下の関係はありません。
地方公共団体が処理する事務には、
①自治事務
②法定受託事務――があります。
①の自治事務とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものです。
②の法定受託事務とは、地方公共団体の事務のうち、国などが本来果たすべき役割に入るものを、法律または法律に基づく政令により、国などから地方公共団体に委託する事務で、国から都道府県、市町村または特別区に委託するa第一号法定受託事務(2条9項1号)と、都道府県から市町村または特別区に委託するb第二号法定受託事務(2条9項2号)があります。
法定受託事務の管理・執行が法令の規定等に違反する場合や、管理・執行を怠った場合は、国の行政機関は、一定の手続きを経て代執行をすることが可能です(245条の8の8項)。同じく、市町村の法定受託事務についても、都道府県知事が代執行することが可能です。
b地方公共団体が事務処理に当たっては次の3つの基本原則を遵守しなければなりません。
①住民福祉の原則
②行政効率の原則
③法令遵守の原則
①の住民福祉の原則とは、地方公共団体は事務を処理するに当たって、住民の福祉の増進に努めなければならないということです(2条14項前段)。
②の行政効率の原則とは、地方公共団体は、その事務処理をするに当たり、最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならず(2条14項後段)、そのために、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めて、その規模の適正化を図らなければならない(2条15項)ということです。
③の法令遵守の法則とは、地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならず(2条16項)、法令に違反した行為は無効とされる(2条17項)ということです。
地方公共団体の機関
もともと国が持っていた権力をそれぞれの地方に分け与え、その地方の住民たちに自主的に運営させるというシステムである地方自治。実際に行う普通地方公共団体にはどんな機関があるのでしょうか?
地方公共団体の機関は、
①議事機関
②執行機関――に分けられます。
①の議事機関とは都道府県や市町村の議会のことです。
②の執行機関には、長(都道府県知事や市町村長)とそれを補助するいくつかの機関がありますし、長と独立して特定の事務を行う委員会や委員も設置することもできます。
それでは、①地方公共団体の議事機関、②地方公共団体の執行機関、③長と議会の関係――の解説を始めます。
Ⅰ.地方公共団体の議事機関
1.議会の組織
都道府県や市町村などの地方公共団体には議会を置かなければなりません。これは、憲法89条、93条1項で定められ、議員定数は条例で定めます(同法90条1項、91条1項)。
また、議会の議員は任期4年で、解散があるときには解散で終了します。また、国会議員や常勤の職員等との兼職は禁止されています。
議会の議員は予算案以外の、議会が議決すべき案件について議案を提出することができますが、議員定数の12分の1以上の議員の賛成が必要です。
議会には、議員の選挙による議長・副議長が各1名置かれ、任期は議員の任期によります。また、議長・副議長は議会の許可を得て辞職することが可能です。ただし、副議長は、議会の閉会中ならば議長の許可を得れば辞職できます。
議長が、議会の委員会に出席し発言する権限を有するとともに、議会または議長の処分または裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟では、普通地方公共団体の代表となります。
議員ならびに議長、副議長の権能等について下表にまとめますので、しっかり覚えましょう。
また、地方公共団体の各種の事務が複雑化・専門化してきているため、地方自治法では、議会に委員会性を採用しています。
委員会には、
①常任委員会(109条)
②議会運営委員会(190条の2)
③特別委員会(110条)――の3つがあり、いずれも条例で任意に置くことができます。
①の常任委員会が置かれた場合には、議員は少なくとも1つの常任委員会の委員とならなければなりません。委員選任方法や在任期間等は条例で定めることができます。
また、委員会には、議会への議案提出権があります。
2.議会の権限
次は、議会の権能を見ていきましょう。
議会が議決すべきものとは、
①条例の制定または改廃
②予算の議決
③決算の認定
④一定種類や一定金額以上の契約締結――などです(96条1項)。これらは限定列挙です。
なお、地方公共団体が条例によって議会の議決事件を追加することはできます。
また、予算については、長の予算提出権を侵さない限り、増額修正をすることが可能です。
議会には上記の①議決権のほか、②検査権、③監査請求権――も認められています。
②の検査権とは、都道府県や市町村などの事務に関する書類や計算書を検閲し、所定の者の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行や出納を検査することができることです。
また、③監査請求権とは、監査委員に対して都道府県や市町村などの事務に関する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができることです。
そして、議会には、都道府県や市町村などの公益に関する事件についての意見書を国会または関係行政庁に提出する権利も認められています。
さらに、俗に④100条調査権と呼ばれる、都道府県や市町村などの事務に関する調査を行えるとともに、特に必要ある場合は、選挙人などの関係人の出頭や証言、記録の提出を請求することもできます。
議会から調査の請求を受けた選挙人などの関係人は、正当な理由がない場合には出頭、証言、記録の提出――を拒否できませんし、虚偽の陳述をした場合には罰則が規定されています。さらに、選挙人などが出頭を拒んだ場合には告発を行わなければなりません。また、調査のためや、必要があると認められた場合には、議会規則の定めで議員を派遣することも可能です。
調査権に関する判例を見てみましょう。
☆議員等の派遣に関する判例(最判平15.1.17)
普通地方公共団体の議会は、議決機関としてその権能を適切に果たすために合理的な必要性がある場合には、その裁量により議員を国内や海外に派遣することができるが、上記裁量権の行使に逸脱または濫用があるときは、議員派遣の決定は違法となる。
また、議会は議案の審査または都道府県や市町村などの事務に関する調査のために必要な専門的事項に係る調査を学識経験者などにさせることも可能です。
そして、条例の定めにより、調査研究活動のための必要な経費の一部を、政務活動費として都道府県や市町村などから受け取ることができます。しかし、政務活動費の交付を受けた会派または議員は、条例に定めにより、政務活動費に係る収入および支出の報告を議長に提出しなければなりません。
3.請願の受理
もう一つ、議会の大事な仕事に請願の受理があります。請願とは、国民が国や地方公共団体に意見や要望、苦情の要請を行うことですが、議会に請願しようとする人は、議員の紹介を得て、請願書を提出しなければなりません(124条)。請願を受けた議会は、採択した請願で都道府県や市町村などの長や委員会等の執行機関において措置することが適当と認めるものはそれぞれに送付し、それぞれに対して請願の処理の経過や結果の報告を求めることができます。
4.議会の運営
議会の種類は、
①定例会
②臨時会――で、都道府県や市町村などの長によって招集されます。
①の定例会とは、毎年、条例で定める回数を招集しなければならず、付議事件の有無に関わらず、定例的に招集されます。
一方、②の臨時会は、必要がある場合にその事件に限り招集される会議です。議員定数の4分の1以上の議員で、都道府県や市町村などの長に対して、会議に付すべき事件を示して臨時会の招集を請求します。また、議長が、議会運営委員会の議決を経て、都道府県や市町村などの長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することもできます。
議員または議長から適法な手続きで招集請求があった場合には、都道府県や市町村などの長は請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければなりません。そして、臨時会招集請求に対して20日以内に長が議会を招集しないときは、議長が招集することができます。
また、平成24年の地方自治法改正により、条例の定めで定例会・臨時会を設置せずに、通年会期とすることも可能となりました。
会議の定足数は、議員定数の過半数。会議は公開が原則ですが、議長または議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決した場合は秘密会を開くことができます。
決議は、原則として出席議員の過半数で決し、可否同数の場合は議長が決しますが、議長は議員として議決に加わることはできません。また、国会と同様に会期中に議決に至らなかった事件は後の会に継続しない会期不継続の原則が採用されています。
また、会議録は、議長の指示により、事務局長または書記長(置かない町村では書記)が書面または電磁的記録で作成し、会議の次第や出席議員の氏名を記載や記録をします。
地方公共団体の議会と国会の違いをまとめましたので参考にしてください。
※地方議会は、会期を通年とすることもできる。
Ⅱ.執行機関
地方公共団体の執行機関とは、都道府県や市町村などの意思を外部に表示し、これを執行する機関のことで、一般的には長を指します。
1.長
普通地方公共団体には長として、都道府県には知事、市町村には市町村長が置かれます。知事や市町村長は、住民の直接選挙で選ばれ、執行機関として都道府県や市町村の事務を処理します。任期は4年とされ(140条1項)、国会議員との兼職や地方公共団体の議会の議員、職員などとの兼職は禁止されます(141条)。
長は、①統括権、②代表権、③管理権、④執行権、⑤規則制定権――を有します。
つまり、長は、当該都道府県や市町村を統括・代表し、その事務を管理・執行します。⑤の規則制定権とは、法令に反しない限り、権限に属する事務に関して規則を制定できるということです。
また、長は、議会に議案を提出したり、予算の調整、執行および地方税の賦課徴収なども行います。
長に万一事故があったときや長が欠けたときは、副知事または副市町村長が長の職務を代理します。
また、長の権限に属する事務の一部を補助機関の職員に臨時に代理させることも、委任することも可能です。委任は管理に属する行政庁に対してもできます。
そして、長はその権限に属する事務を分掌するため、必要な内部組織を設けることが可能です。この場合、都道府県や市町村の長の直近下位の内部組織の設置や分掌する事務は、条例で定めます。
膨大な事務を処理するため、長は補助機関を設けることも可能ですが、最高の補助機関は、副知事あるいは副市長村長で、長の職務執行を補助することを任務とします。定数は条例で定められ、設けないことも可能です。選任は、長が議会の同意を得て行い、任期は4年で、長により会期中に解職することも可能です。
また、地方公共団体には、会計管理者が1人置かれます(168条1項)。会計管理者は、長の補助機関である職員のうちから、長が命ずることで選任されます。会計管理者は、都道府県や市町村の会計事務を行いますが、都道府県や市などでは、さらに事務を補助するために出納員などの会計職員が置かれます。
2.委員会
都道府県や市町村には、執行機関として、長のほかに、長から独立した地位や権限を有する委員会(委員)が置かれます。これは、多元主義の考えから、長への権力の集中を回避し、政治から独立した行政の中立的な運営を確保するためのものです。
なお、執行機関は、地方公共団体の組織の根本と言えるので、条例で新たな執行機関を設けることはできないという執行機関法定主義がとられています。
委員会の特色は、まず、合議制が採られていることです。これは行政の中立的運営確保のためです。なお、監査委員は独任制の機関ですが、委員は複数選任され、監査結果の報告や監査意見の提出は合議制により行われます。
また、権限行使の独立性が認められていることから、委員会は権限に関する事務の規則制定権を有しています。ただし、法律に特別の定めのある場合を除き、都道府県や市町村の予算の調整や執行、議会が議決すべき事件についての議案の提出をすることなどはできません。
普通地方公共団体に置かねばならないとされている委員会の種類は次のとおりです。
☆すべての普通地方公共団体に置かれるもの
教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会または公平委員会、監査委員
☆都道府県に置かれるもの
公安委員会、労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会
☆市町村に置かれるもの
農業委員会、固定資産評価審査委員会
上記のうち、監査委員について補足します。監査委員は、長が、議会の同意を得て行政運営に関し見識を有する者および議員の中から選任します。このうち、有識者から選任される監査委員を代表監査委員とします。監査委員の定数は、都道府県および政令で定める人口25万人以上の市は4人、その他の市および町村は2人とされます。
監査委員の職務は、地方公共団体の財務に関する事務の執行および地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査します。また、必要があると認めるときや、長の要求があるときは財政的援助団体や指定管理者等の出納関連事務について監査を行うことも可能です。
代表監査委員は、代表監査委員または監査委員の処分または裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟(199条の3の3項)や住民訴訟(4号訴訟:242条の2の1項4号)の判決確定後に普通地方公共団体がその長に対して提起する訴訟において、訴訟に関する事務等を処理し、当該普通地方公共団体を代表します(199条の3の2項、3項、242条の3の5項)。
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3.地域自治区
市町村の中には、地域住民の意見を行政に反映させ、行政と住民との連携強化のために地域自治区を、独自の判断で設けるところもあります。地域自治区には、市町村長の事務を分掌させるための事務所およびその区域の住民のうちから市町村長によって選任される者により構成される地域協議会が置かれています(202条の5の1項、2項)。
地域行政区の特色は、条例により市町村の区域を分け、区域ごとに設置される法人格を有しない行政区域であることで、事務所の位置、名称および所管区域は、条例で定め、事務所の長には都道府県や市町村の長の補助機関である職員があてられます。
また、地域協議会は、地域自治区の事務所が所掌する事務に関する事項など一定の事項のうち、市町村長その他の市町村の機関により諮問されたもの、または必要と認めるものを審議し、市町村長はその他の市町村の機関に意見を述べることができます。
Ⅲ.長と議会の関係
1.長の再議権
憲法上、長と議会の議員は、それぞれ住民によって直接に選挙され、両者は独立対等の立場に立ちます。ただし、行政の円滑な運営と相互抑制という観点から、両者が関係を持つ場合について3つのことが、地方自治法に定められています。
①長の再議権行使と議会の再議
②議会の不信任議決とされに対する議会の解散
③長の専決処分と議会の承認
①の長の再議権は、a任意的再議権とb必要的再議権――に分けることができます。
aの任意的再議権は、議会においての議決について異議があるときに、長が原則として送付を受けた日から10日以内に再議に付すことができることです。これに対して議会が過半数で同一内容を再議決した時は、議決は確定します。なお、条例の制定や改廃、予算に関する議決については、出席議員の3分の2以上の者の同意により同一内容の再議決をした時に議決が確定します。
bの必要的再議権とは、議会が下記のァ~ゥような一定の議決をしたとき、長は理由を示して再議に付すか、または再選挙を行わせる義務を負うことです。
ァ議会の議決または選挙がその権限を超え、または、法令もしくは会議規則に違反すると認めるとき
ィ議会において法令により負担する経費等を削除または減額する議決をしたとき
ゥ議会において非常の災害による応急もしくは復旧の施設のために必要な経費等を削除または減額する議決をしたとき
これらの場合には、長は理由を示してこれを再議に付す、あるいは再選挙を行わせなければなりません。
さらに、再議された場合に、議会において同一内容の議決等がなされたらどうなるのでしょう?
①越権、法令・会議規則違反の議決または選挙に関する再議・再選挙の場合
都道府県知事なら総務大臣、市町村長なら都道府県知事に対して当該議決または選挙があった日から21日以内に審査を申し出
↓
審査の申立てがあった場合は、総務大臣(都道府県知事)は、審査の結果、議会の議決または選挙がその権限を超えまたは法令もしくは会議規則に違反すると認めるときは当該議決または選挙を取消す旨の裁定
↓
裁定に不服があるときは、議会または長は裁定のあった日から60日以内に裁判所に出訴できる
②義務費の削除・減額に対する再議の場合
長は、経費およびこれに伴う収入を予算に計上して経費を支出することができる
③非常災害対策または感染症予防費の削除・減額議決に対する再議の場合
長は、当該同一内容議決を不信任議決と見なすことができる
2.議会の長に対する不信任議決
また、議会は、議員数の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意による議決によって、長に対する不信任議決をすることができます。これに対し、長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができます。もしこの期間内に議会を解散しないときは、3分の2以上の者が出席し、その過半数の者の同意による再度の不信任議決があった場合は、長は職を失います。
なお、特例法によれば、議員数の4分の3以上が出席し、出席議員の5分の4以上の多数の賛成によって地方議会は自主解散することができます。
3.長の専決処分
普通地方公共団体の長には、議会で議決・決定をしなければならない事項について、地方自治法の規定に基づいて議会の議決・決定の前に自ら処分することができます。 これを専決処分と言います。
専決処分には、緊急の場合と議会の委任による場合とがあります。
緊急の場合とは、
1.地方公共団体の議会が成立しない場合
2.議長又は議員が親族の従事する業務に直接の利害関係があるため等の除斥事項に該当し会議を開くことができない場合
3.議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかな場合
4.議会において議決すべき事件を議決しない場合 ――のことですが、平成24年の改正で、副知事及び副知町村長の選任の同意については、専決事項から除くことが規定されています。
そして、これら緊急の場合に専決処分を行った場合、長は、次の議会で報告し、議会の承認を求めなければなりません。 平成24年の改正で、条例の制定、改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が不承認された場合は、長は、速やかに当該処置に関して必要と認める措置を講じて議会に報告しなければならないことが追加されました。
また、議会の委任による場合は、長は議会に報告しなければならないことになっています。
4.給与その他の給付
普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も、法律または法律に基づく条例に基づかなければ支給することができません。
また、普通地方公共団体は、議会の議員に対して議員報酬を支給しなければならず、条例で、さらに期末手当を支給することも可能です。また、議会の議員は、職務を行うために要する費用の弁償を受けることができます。やはり、これについても条例の定めに従います。
次に、委員会の委員や非常勤の監査委員その他に対しても、報酬を支払わなければなりません。報酬は条例で特別の定めをした場合を除き、その勤務日数に応じて支給します。また、職務に係る費用の弁償を受けることもできます。
常勤の職員等の給与は、長およびその補助機関である常勤の職員、委員会の常勤の委員、その他の常勤職員などに対しては、給料や旅費を支給しなければなりません。
給与その他の給付に関する処分に不服がある場合、法律による特別の定めがある場合を除いて、行政不服審査法による不服申立てを行うことができます。